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「男性が育休さえとれば世の中が変わる」は幻想。本当に必要な理解と支え合いは

画像素材:PIXTA

「男性が育休さえとれば世の中が変わる」は幻想。本当に必要な理解と支え合いは

J-WAVEで放送中の番組『STEP ONE』(ナビゲーター:サッシャ・増井なぎさ)のワンコーナー「BEHIND THE SCENE」。1月27日(月)のオンエアでは、千葉商科大学の専任講師で、労働社会学者の常見陽平が登場。育児におけるモヤモヤについて議論した。常見は現在、保育園に通う娘を持つ父親だ。

【1月27日(月)『STEP ONE』の「BEHIND THE SCENE」(ナビゲーター:サッシャ、増井なぎさ)】

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年2月3日28時59分まで)


■「イクメン」という言葉のおかしさ

育児に積極的な男性を指す「イクメン」という言葉を耳にするようになって久しい。この言葉の是非について、世間ではさまざまな意見が飛び交っている。自身が育児に取り組む常見は否定的な立場だ。

常見:「イクメン」という言葉があること自体が、「男性が育児をすることが異常である」っていう前提があると思うんです。「イクメン」も「キャリアウーマン」も、それぞれ珍しいからそう言ってるんでしょ?って。だからよくないなって思います。
サッシャ:なるほど。それが当たり前になればその言葉は消えると。
常見:それに「イクメンだよね」って褒められたところで、確かに家族といれて楽しいけど、結局お父さんたちは会社で仕事を減らしてもらえずに苦しんでいるっていう現状があるんです。そのモヤモヤを形にしていきたいなと思っています。


■育休中なのに「1日3時間」しか家事・育児に関わらないケースも

妊娠中・子育て中の女性に人気のアプリ「ママリ」を運営する「conne hito」が、夫が育休を取得した女性にアンケート調査を実施したところ、育休中、夫が家事・育児をした時間は1日あたり3時間以下だったというのが47.5%。およそ半数が「名ばかり育休」だったという。このような調査結果から常見は、現場における育休がまだまだ発展途上であると指摘した。

常見:この結果は、男性の育休なるものがこれからだっていうことを表していると思います。育休取得率が10%以下だというのも話題になっていますけれども、企業でも起こっていることは、とにかく育児する人を増やそうということなんです。だから数や時間はまだまだだけれど、それがいいきっかけになればという見方もわかります。ただ結局、名ばかりの育休になってしまっている。もっと言うと、育休ってまだ入り口であって、その後の方がずっと長いですから。
サッシャ:そうですね。育休で子育てが終わるわけではないですから。
常見:だから、今後この活動を増やしていこうっていうなかで、1〜2週間休んで3時間しか働かない人を増やしたところで……というのはありますね。厳しく見ないといけないなと思います。
サッシャ:この結果は、妻も一緒に休んでるっていう状況だと思うので、共働きで、旦那さんだけが育児をする場合はまた違った結果になるとは思われますね。

大学教員である常見は、育休を取ることはなかったものの、仕事をペースダウンし、1日6時間を育児に充てている。共働きのため、妻と自分の得意分野で家事を分担して育児をしている。

J-WAVEで放送中の番組『STEP ONE』(ナビゲーター:サッシャ・増井なぎさ)(この日、スタジオにて)

常見:大学教員は比較的柔軟に時間が使えるというのもあるのですが、パフォーマンスとしての“数字作りのための育休”はとらずに、仕事を抑えることによって、時間を育児に充てました。
サッシャ:それができる職種だっていうこともありますよね。
常見:そうです。それもあると思います。柔軟にできるか否か。ただし、柔軟にできる働き方も危険で、その分、長く働いてしまうこともあると思います。また、柔軟に働けなくてもできることはあります。だから、まずはやってみるのが大事。でも、“すごい人”ができているからと言って、それを前提にするのはやめようということですね。


■女性が抱えていたモヤモヤを、今は男性が感じるようになっている

仕事量をセーブした常見は、自分と周りを比べてモヤモヤを感じたという。その気持ちは、以前は女性が感じていたものだったと考えている。

常見:かつて(自分は)たくさん仕事をしていて、その頃に比べると今すごく落ち着いていて。だから、周りに自分が置いていかれる感覚があります。これは会社員も同じだと思います。育休している間に同期が出世したとか。僕は以前、リクルートやバンダイで会社員をしていましたが、そのとき女性の社員が抱えていた問題なんですよね。大学を出て憧れの会社に入って、出産前は社内で表彰されるほどバリバリ働いていたのに、時短勤務になって仕事量を“考慮”されてしまった、とか。今やっと男性が、そういうモヤモヤを感じているということですね。
サッシャ:昔から女性が、キャリアを積む上で感じていたモヤモヤを男性が感じるようになって。それを今常見さんが感じていると。
常見:そうですね。だから、僕は男女関係なく、親としてどうかっていうことを考えていますね。


■家事をよくする男性ほど職場での女性観が差別的…なぜ?

男女ともに感じているモヤモヤに、どう対処していけばいいのか。ヒントになるような調査結果がある。昨年、笹川平和財団が行った、男性の家事育児への参加実態に関する調査では、「家事をよく行う男性ほど職場での女性観が差別的」という結果が出て話題になった。

サッシャ:えっ、逆じゃないの!?
増井:男性も家事や育児の責任を果たすべきという社会的リクエストに応えたからといって、仕事の責任が軽くなるわけではないという現実がありますよね。そのため、女性に対する競争意識が生まれて差別感情になっているという現状があるようです。
常見:これは、働き方改革にも通じると思います。働き方改革と聞いても、もうワクワクしないと思うんですよ。早く仕事を終わらせないといけないだけで、何かが変わるわけじゃない。同じように、イクメンと叫んだところで、会社も社会も救ってくれないのが現状です。ただ、優等生発言になるけれども、お互いに優しくなるのが大事だと思っていて。育児だ、家事だ、仕事だと言ってるけど、みんな何かをやって、そうして社会が動いているんですよ。そこを理解しないといけない。

今、「人生100年時代」と言われている。長い人生のなかで、仕事に打ち込む年代、育児に力をいれる年代など、人それぞれのペースがあるのだと理解することが、誰もが生きやすい社会への第一歩となる。


■社会と会社で支え合わないといけない

日本では出生率の低下が取り沙汰されることも多いが、実は「1人でも子ども産んでいる人」の出生率は下がっていない。産む人は複数産むが、産まない人が増えているから、相対的に出生率が下がっているということだ。

常見:産む年齢の人のボリュームゾーンが減ってしまったという現状がありますね。少子化が叫ばれて30年が経ち、何度も(対策を打ち出す)タイミングを逸したと思っています。出生率の前に、「そもそも結婚する人が減っているんじゃないの」という問題があるわけで。恋愛すらオワコンだとか、一部の(恵まれた)人のものじゃないのと言われている。希望の持てない社会になっていると思いますね。
サッシャ:その先に育児や家事の問題が出てくる、ということですね。どうしていくのが正しい道なんでしょうか。
常見:男女関係なく役割分担し、社会と会社で支え合わなければいけないですね。もっと言えば、お金で解決することが大事。さまざまな保育サービスを利用する。金銭的な補助をしてくれる制度を持つ自治体もあります。僕の住んでいる墨田区では、ベビーシッターをお願いした場合、自治体が半分負担してくれて、よく使っています。それから、家庭を優先して働かない男性が出てきても、みんな石を投げないことですね。育休さえとれば世の中が変わるという幻想には警鐘を鳴らしたほうがいいと思っています。

J-WAVE『STEP ONE』のワンコーナー「BEHIND THE SCENE」では、気になるニュースの裏側から光を当てる。放送は月曜~木曜の10時10分頃から。次回もお聴き逃しなく!

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年2月3日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

【番組情報】
番組名:『STEP ONE』
放送日時:月・火・水・木曜 9時-13時
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/stepone

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