なぜ人間は「心臓病」や「腰痛」になるの？ 人体進化の不都合な真実

J-WAVEで放送中の番組『GOLD RUSH』（ナビゲーター：渡部 建）のワンコーナー「CURIOUSCOPE」。11月22日（金）のオンエアでは、分子古生物学者の更科 功さんが、最新の研究で明らかになった“人体進化の不都合な真実”について解説した。何億年という進化のプロセスをたどりつつ、なぜ人間は心臓病や腰痛になるのか。それは、「そうなるようにヒトが進化した」結果だというが……!?

【この記事の放送回をradikoで聴く】（2019年11月29日28時59分まで）


■人間はなぜ「心臓病」になるの？

更科さんは、ポピュラーサイエンス系新書としては異例の8万部を超えるロングセラーとなった『絶滅の人類史―なぜ「私たち」が生き延びたのか』（NHK出版新書）の著者であり、東京大学総合研究博物館研究事業協力者を務める。

渡部：「分子古生物学」とは、どういった学問ですか？
更科：化石からDNAやタンパク質を見つける学問ですね。普通のDNAに比べるとすごく量が少ないのですが、何万年前などのDNAを直接見られるので、過去を見る“窓”のような存在として私は捉えています。

そんな更科さんが、人間が進化のプロセスをたどりながらも、「心臓病」や「腰痛」を患ってしまう理由を解説した。

更科：心臓病になるのは、自分からすると悪いことかもしれないけど、子ども（子孫）からしたら悪いことではないかもしれません。それは、進化は子どもがたくさん生まれた方が進むからです。

どういうことか。人間の脳は大きく、心臓は無理をして血液を脳まで上げているために、心筋梗塞などを起こしやすいと、更科さんは続ける。

更科：しかし、心臓の性能がよいから人間は激しく動き、運動ができて、賢く、そのため生き残って子孫がたくさん残ってきたわけです。だから、自分の幸せか子どもの幸せか、どちらがいいかということですね。
渡部：そういう考え方なんですね。これらは人間が直立二足歩行になったことも原因にありますか。
更科：ありますね。直立二足歩行によって脳の位置が高くなり、心臓に負担が増えたことも原因ですね。


■腰痛は二足歩行が原因？

更科さんによれば、人間が腰痛を起こすことも直立二足歩行が原因だという。

更科：人間の背骨は真っすぐではなくS字型のカーブになっていますよね。S字型のカーブでないと、少し体が揺れたときに倒れてしまうんです。一方、チンパンジーの腰骨は縦長で、背骨の下の方は固まっているために腰痛になりません。ただ、立っているとふらつき転びそうになってしまう。だから、人間は腰痛にはなるけど立って動くことができるのか、腰痛はいやだから二足歩行をやめるのか、どちらがいいかってことですね。
渡部：人間が二足歩行を選ばなければ、ここまで腰痛が叫ばれることもなかったわけですね。

運動能力の話題になると、更科さんは「基本的に生物は四つ足で走るものだが、人間は無理をして二本足で走っているため、もしかすると四つ足の方が二本足よりも早く走れるかもしれない」という説を紹介した。

更科：今、実際に四つ足で走る世界記録が二本足の記録に迫ってきているようです。だから、人間が100メートル走で9秒を切るには四つ足だという説があります。
渡部：うわ、そうなんだ！
更科：四つ足で走る方が、今後の伸びしろがあるかもしれません。

更科さんは10月に『残酷な進化論 なぜ私たちは「不完全」なのか』（NHK出版新書）を上梓した。

更科：これは進化全般の本なんですが、進化っていうと進歩のようにいいイメージがあるので、そこに「いいことばかりではないぞ」と冷や水を浴びせるような内容ですね。

「ヒトのほうがチンパンジーよりも、じつは『原始的』だった！」「生物の寿命も進化によってつくられた！」など、わかりやすくユーモアあふれる言葉で進化の本質に迫った知的エンターテインメントとして楽しめる一冊だ。ぜひ手にとって確かめてほしい。

『GOLD RUSH』のワンコーナー「CURIOUSCOPE」では、毎週ひとつのトピックをピックアップ。その道に精通したゲストを迎え、流行・現象の本質に迫る。放送は16時40分頃から。お楽しみに。

【この記事の放送回をradikoで聴く】（2019年11月29日28時59分まで）
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【番組情報】
番組名：『GOLD RUSH』
放送日時：毎週金曜 16時30分－20時
オフィシャルサイト： https://www.j-wave.co.jp/original/goldrush/