文部科学省は9月、外国籍の子どもの就学状況に関する初めての全国調査の結果を公表。全体のおよそ16パーセントにあたる1万9654人が公立や私立、あるいは外国人学校などにも在籍していない「不就学」の可能性であることが明らかになった。
新たな労働力の担い手として外国人の受け入れの拡大が続く中、どんな対策が必要になってくるのか? 今夜は海外にルーツを持つ子どもの学習などを支援しているNPO法人青少年自立援助センターの田中宝紀さんに話を訊いた。
【10月21日(月)『JAM THE WORLD』の「UP CLOSE」(ナビゲーター:グローバー/月曜担当ニュースアドバイザー:津田大介)】
(音源はradikoで2019年10月28日28時59分まで)
■国が対応を自治体に丸投げしている
今回、文部科学省が行った調査は小中学生の学齢相当の外国籍が対象となるが、田中さんは「就学手続きを行っていない子どもを不就学と定義するのであれば、16パーセントという数字は妥当だ」と話す。ただ一方で「就学の手続きは行ったけれど、学校教育へきちんとアクセスできていないという広義の意味で捉えれば、就学状況が不十分である子どもはもっと多いのではないか」と見解を述べた。
田中:学校に就学手続きをしようとして自治体に行っても「日本語がわからないために就学を見合わせる」、「どこかで日本語を勉強してから就学手続きに来てください」と言われるようなケースもあります。そういったことを含めると、不就学の子どもはもっと多くてもおかしくはないと思います。
そして日本の多くの学校が、日本語がわからない子どもを受け入れる体制にないことが問題だと田中さんは指摘する。
津田:文部科学省はこの問題をどう捉えているのでしょうか?
田中:日本語教育推進基本法が可決したばかりなので、外国人や日本で暮らす日本語学習が必要な人々に対して、日本語教育機会を保証していく方針は確立されています。しかし、実際はその対応が自治体に丸投げされているような状況が続いています。
一定の割合で外国人が集まっている地域であれば日本語教育の予算化をしやすいが、日本語がわからない子どもたちの半数以上が、彼らが通う学校に日本語がわからない子どもが1人か2人しかいない自治体に住んでいる。そのため、例えば「昨年まで日本語がわからない子どもが0人だったのに、今年は1人来る」となる場合も多く、自治体が前もって対応することが難しい状況にあるという。
田中:これまで国がきちんとイニシアチブをとってこなかったために、自治体間で温度差が生まれてしまっている。受け入れの体制が整っていないために、学校側も「日本語がわかるようになってからではないと、学校に来てもらってもかわいそうだ」というような対応にならざるを得ない部分があります。
■日本国内の教育の枠組みを見直すべき
田中さんは、外国人労働者の受け入れ拡大を掲げて改正入管法が成立するなか、日本語がわからない子どもへの教育が不十分であり、教育を受けてこなかった人たちがどんどん日本社会に増えていくことになるため、社会福祉のコストが上がっていくと予想する。その上で、「きちんと教育機会を提供すればそれぞれが自立をして日本社会の中で、例えばバイリンガルの人材として活躍できるなど期待ができるため、そういった可能性を切り捨てることは日本社会の近い未来にとって重大なリスクになる」と指摘した。また、外国籍の子どもたちは義務教育の対象外であることも不就学の大きな要因となっているという。
田中:義務教育の対象外なので、約4割の自治体が外国籍の子どもに対してきちんと就学通知をしていないという調査結果もあります。そこも含めて、外国籍の子どもに向けた日本国内の教育の枠組みのあり方をもう一度見直すべき時期にきていると思います。
■本国籍・外国籍にかかわらず日本の子どもとして育てることが必要
今後、外国籍の子どもたちに向け、どのような政策が求められるのか。田中さんは「海外にルーツを持つ子どもたちを、日本の子どもとして育てていけるような長期的なビジョンを伴う政策が必要だ」と述べ、こう続ける。
田中:そのために社会統合も視野に入れた移民政策に近いものを国が準備をしていく必要があります。そうしないと、小さな自治体では対応しきれない状況がいつまで経っても終わりません。
田中さんは、日本国籍・外国籍にかかわらず、日本国内に暮らしている子どもに対してしっかり育てていく視点を持たないと日本社会全体に影響がおよぶと懸念しつつ、「何より子どもたち自身の可能性を閉ざすことになるので、それは避けなくてはいけない」と述べた。
まずは私たち一人ひとりが外国籍の子どもの就学状況を正しく知ることが必要ではないだろうか。
J-WAVE『JAM THE WORLD』のコーナー「UP CLOSE」では、社会の問題に切り込む。放送時間は月曜~木曜の20時20分頃から。お聴き逃しなく。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年10月28日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
新たな労働力の担い手として外国人の受け入れの拡大が続く中、どんな対策が必要になってくるのか? 今夜は海外にルーツを持つ子どもの学習などを支援しているNPO法人青少年自立援助センターの田中宝紀さんに話を訊いた。
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■国が対応を自治体に丸投げしている
今回、文部科学省が行った調査は小中学生の学齢相当の外国籍が対象となるが、田中さんは「就学手続きを行っていない子どもを不就学と定義するのであれば、16パーセントという数字は妥当だ」と話す。ただ一方で「就学の手続きは行ったけれど、学校教育へきちんとアクセスできていないという広義の意味で捉えれば、就学状況が不十分である子どもはもっと多いのではないか」と見解を述べた。
田中:学校に就学手続きをしようとして自治体に行っても「日本語がわからないために就学を見合わせる」、「どこかで日本語を勉強してから就学手続きに来てください」と言われるようなケースもあります。そういったことを含めると、不就学の子どもはもっと多くてもおかしくはないと思います。
そして日本の多くの学校が、日本語がわからない子どもを受け入れる体制にないことが問題だと田中さんは指摘する。
津田:文部科学省はこの問題をどう捉えているのでしょうか?
田中:日本語教育推進基本法が可決したばかりなので、外国人や日本で暮らす日本語学習が必要な人々に対して、日本語教育機会を保証していく方針は確立されています。しかし、実際はその対応が自治体に丸投げされているような状況が続いています。
一定の割合で外国人が集まっている地域であれば日本語教育の予算化をしやすいが、日本語がわからない子どもたちの半数以上が、彼らが通う学校に日本語がわからない子どもが1人か2人しかいない自治体に住んでいる。そのため、例えば「昨年まで日本語がわからない子どもが0人だったのに、今年は1人来る」となる場合も多く、自治体が前もって対応することが難しい状況にあるという。
田中:これまで国がきちんとイニシアチブをとってこなかったために、自治体間で温度差が生まれてしまっている。受け入れの体制が整っていないために、学校側も「日本語がわかるようになってからではないと、学校に来てもらってもかわいそうだ」というような対応にならざるを得ない部分があります。
■日本国内の教育の枠組みを見直すべき
田中さんは、外国人労働者の受け入れ拡大を掲げて改正入管法が成立するなか、日本語がわからない子どもへの教育が不十分であり、教育を受けてこなかった人たちがどんどん日本社会に増えていくことになるため、社会福祉のコストが上がっていくと予想する。その上で、「きちんと教育機会を提供すればそれぞれが自立をして日本社会の中で、例えばバイリンガルの人材として活躍できるなど期待ができるため、そういった可能性を切り捨てることは日本社会の近い未来にとって重大なリスクになる」と指摘した。また、外国籍の子どもたちは義務教育の対象外であることも不就学の大きな要因となっているという。
田中:義務教育の対象外なので、約4割の自治体が外国籍の子どもに対してきちんと就学通知をしていないという調査結果もあります。そこも含めて、外国籍の子どもに向けた日本国内の教育の枠組みのあり方をもう一度見直すべき時期にきていると思います。
■本国籍・外国籍にかかわらず日本の子どもとして育てることが必要
今後、外国籍の子どもたちに向け、どのような政策が求められるのか。田中さんは「海外にルーツを持つ子どもたちを、日本の子どもとして育てていけるような長期的なビジョンを伴う政策が必要だ」と述べ、こう続ける。
田中:そのために社会統合も視野に入れた移民政策に近いものを国が準備をしていく必要があります。そうしないと、小さな自治体では対応しきれない状況がいつまで経っても終わりません。
田中さんは、日本国籍・外国籍にかかわらず、日本国内に暮らしている子どもに対してしっかり育てていく視点を持たないと日本社会全体に影響がおよぶと懸念しつつ、「何より子どもたち自身の可能性を閉ざすことになるので、それは避けなくてはいけない」と述べた。
まずは私たち一人ひとりが外国籍の子どもの就学状況を正しく知ることが必要ではないだろうか。
J-WAVE『JAM THE WORLD』のコーナー「UP CLOSE」では、社会の問題に切り込む。放送時間は月曜~木曜の20時20分頃から。お聴き逃しなく。
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