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積水ハウスはなぜ63億円もだまし取られたのか? 地面師の巧妙な手口や詐欺集団の実態に迫る

積水ハウスはなぜ63億円もだまし取られたのか? 地面師の巧妙な手口や詐欺集団の実態に迫る

J-WAVEで放送中の番組『JAM THE WORLD』(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。1月8日(火)のオンエアでは、火曜日のニュース・スーパーバイザーを務める青木 理が登場。ゲストに、『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』(講談社)の著者でジャーナリストの森功さんを迎え、地面師の巧妙な手口や詐欺集団の実態について迫りました。


■地面師が最も横行したのはバブル期

昨年、積水ハウスが63億円もの巨額の地面師詐欺に引っかかったという事件がメディアでも大きく伝えられました。そもそも地面師はどのような手口で巨大企業からお金をだまし取るのでしょうか。そして、どうして巨大企業がこのような詐欺に遭ってしまうのでしょうか。

地面師はバブルの絶頂期にまん延していたイメージが強いと語る青木は、今回の報道を受け、警察の取り締まりや法律の改正が進むなかでも地面師が生き延びていたことに驚いたようです。

:地面師が最も横行したのはバブル当時の1980年代後半から90年代はじめにかけてと言われています。その後、今度はITバブルやファンドバブルの頃にも出現しました。その都度、地面師は大がかりに摘発されていますが、今回事件になっている地面師の多くは、ITバブルやファンドバブルの頃に一斉摘発されて服役し、出所して戻ってきた人たちです。

今回の積水ハウス地面師事件で捕まり、あらゆる地面師案件に登場する大物地面師・内田マイク容疑者も、ファンドバブルの頃に捕まって服役後、2020年東京五輪などによる東京の地価高騰にあわせて地面師詐欺を多くはたらいてきました。


■地面師は地主になりすます詐欺行為

そもそも地面師とは一体どのような詐欺行為なのでしょうか。

青木:他人の土地を自分の土地のように見せかけて、その土地を売りつけたり売り払うように見せかけ、お金をだまし取る行為ですよね?
:そうです。いわゆる「なりすまし」です。地面師は少なくとも5〜6人、多ければ今回の事件のように17〜18人でグループを組み、それぞれ役割分担をして詐欺行為を行います。首謀者が計画立案して土地を物色し、その土地の地主になりすます人間を探してきて、積水ハウスのような不動産会社に売り飛ばしてしまいます。
青木:でもいくらなりすましても、登記簿もあるし「これは俺の土地だ」とだますことは簡単なことではないですよね?
:地面師は調査能力に長けています。最近は地主が高齢化してきているので、介護施設や病院に入ったりして、地主が不在の土地がよくあります。今回の積水ハウスの事件で対象となった土地の地主は、五反田の旅館の女将さんですが、その女将さんがガンにかかり入院したと同時に今回の事件が動き出しています。それまでにこの土地をリサーチして、「この女将さんはそろそろ入院するぞ」と察知したうえで、なりすましを用意し計画していくわけです。

登記簿はその人物になりすませばよいですが、土地の権利書は偽造していると森さんは続けます。

:この五反田の旅館は戦前からあるので、古めかしい赤茶けた権利書を用意して、それを積水ハウスに持ち込んでいるわけです。そうすると積水ハウスは「この権利書は本物だ」と喜ぶわけです。そのような舞台設定を(小道具担当の)地面師が行っています。


■地面師は大企業が故に陥りやすい落とし穴でもある

ここで青木は2つ疑問があると投げかけました。ひとつは「いくら巧妙な手口だったとしても、積水ハウスのような大企業がなぜだまされてしまったのか」という疑問です。

:地面師詐欺は大企業が故に陥りやすい落とし穴でもあります。今回の事件では、積水ハウスの営業担当者が上司に持ち込み、社長が乗り気になってしまったんですよね。社長が視察まで行って「この土地はいい」と走り出してしまった。実は内容証明付きで「これはなりすましですよ」と警告書もきていましたが、なりすましている地面師が「こんな警告はあり得ない!」と主張し、積水ハウス側はまるめこまれてしまいました。また、地主側の本人確認のためのパスポート照合がありましたが、それも巧妙に偽造されていたので通ってしまい、そのまま進んでしまいました。

次いで「地面師をやる人たちは詐欺行為を繰り返し行っているにも関わらず、なぜ警察は気付かなかったのか」との疑問です。

:地面師のベテラン捜査官はいても、その数は少ないです。また、これだけ巧妙に行うことで捜査員もだまされてしまう。詐欺集団の中に本物の地主の息子がいたりすることもあって、事件にならなかったりするケースもあるので、そういう事案を警察はやりたがらないんですよね。
青木:森さんは、地面師詐欺で明るみに出ているのは氷山の一角で、実は事件化されていない部分があると指摘されていますよね。
:なりすまし犯は公文書偽造などをやっているから立件はできますが、「それを指示したのは誰か」となるわけです。指示した人間は何人かいるわけですが、彼らも「なりすましにだまされたんだ」と言って逃げ切ってしまう。そのパターンによって、なりすましだけが立件されて終わってしまうケースがけっこう多いです。そのため、地面師詐欺の全貌を解明することは非常に難しいです。


■年に1度は登記簿を確認

「日常茶飯的に地面師詐欺は行われているため、今後も地面師はなくならない」と話す森さん。地面師に騙されないために何をすべきか訊くと、「地面師詐欺はいつの間にか誰かに土地を売られている詐欺なので、年に1度くらいは自分の登記簿を確認すること」と土地を持つ人たちに向けてアドバイスしました。

森さんの著書『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』もぜひ手に取ってみてください。

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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld

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