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なぜ熱海の人気は「V字回復」したのか? 仕掛け人が語る、地域再生の課題

なぜ熱海の人気は「V字回復」したのか? 仕掛け人が語る、地域再生の課題

J-WAVEで放送中の番組『TRUME TIME AND TIDE』(ナビゲーター:市川紗椰)。9月1日(土)のオンエアでは、観光地として衰退した熱海の人気を回復させた仕掛け人のひとりである、株式会社『machimori』代表取締役/NPO 法人『atamista』代表理事の市来広一郎さんがゲストに登場。熱海の人気がV字回復するまでのストーリーを伺いました。


■まずは、地元の人を「熱海のファン」にした

90年代以降、ホテルや旅館が相次いで撤退し、繁華街もシャッター街化が進んだことで、一度は“衰退した観光地”としてのイメージが広まってしまった熱海。しかし、2014年頃から徐々に盛り返し、今や「V字回復」とまで言われるほどに。市来さんによると、移住する人や起業する人なども増加しています。

市来さんは1979年に熱海で生まれ、絶頂期の熱海の賑わいを肌で感じながら育ちました。しかし、思春期の頃になると、バブル崩壊などで街の人気が凋落。高校の頃には「熱海をなんとかしないと」と友だちに語っていたそう。東京の大学に進学、卒業後はコンサルタントになりましたが、「いつか熱海に戻ろう」という気持ちがありました。そして実際、熱海に戻って地域再生を始めた市来さんに、まずは街の魅力を訊きました。

市川:他の地方都市、温泉街と異なる“熱海ならではの魅力”というのは?
市来:熱海は温泉地で、“旅行に行くところ”みたいなイメージが強いと思うんですけど、住んでいても楽しい街だと感じます。たとえば、毎日温泉に入れます。
市川:おうちにもだいたい温泉が?
市来:はい、引けるんです。食べ物も、おいしい魚があります。景色も、海からの日の出が毎日のように見れたり。日常のちょっとしたことが豊かになる街なんです。もちろん観光で来て、旅行しても楽しい場所。その両方が混ざりあってるところが、熱海の面白さかなと思います。
市川:そういった魅力を持つ熱海が、今どういう状況なのか、改めて教えていただけますか?
市来:メディアでも「熱海の人気がV字回復した」と取り上げていただくのですが、観光客の方がどんどん増えています。熱海で暮らしていて、すごく実感するところで、特に若い人たちが増えましたね。
市川:わかります。宿も予約も取りづらくなりましたもん。観光客としてすごい実感します。この復活は、市来さんが大きな役割を果たされたそうですね。
市来:観光客については、僕がどれだけ貢献できたかわからないですけど……最近の熱海は観光客以外にも、若い人たちが移住したりとか、東京と熱海の2拠点で居住したりしているんです。そのへんは、僕らのやっていることも、ちょっとは効果的だったのかなと。20代とか、30代、40代ぐらいまでの方々が増えてきました。
市川:具体的にどういった活動をされたんですか?
市来:とにかく最初は、外から人を呼び込むことより、まず地元の人たちに熱海の魅力に気づいてもらわないとなって。「熱海、どこかいいところないですか?」って訊かれても「なにもないです」って言うんですよ(笑)。まずそこから変わんなきゃいけないんじゃないかと、地元の人向けに体験ツアーを実施したんです。「昭和の雰囲気がいいよね」っていうのも、だんだん地元の人からジワジワ広めていきました。
市川:へー! なんでまず地元からということにしたんですか?
市来:僕自身も、海外とかを旅しているとき、地元の人が楽しそうに暮らしていると印象に残りますし、そこで会話をしたりすると「楽しかったな、また行きたいな」と思うので。熱海は10年ぐらいまで、来てくれた人たちの満足度が低いという問題があったんです。そこからまず変わっていかないとな、と。そのためには、地元の人たちが熱海のファンになってもらう必要がありました。
市川:どういうツアーをしたんですか?
市来:220種類ぐらい企画したんですけど(笑)。主にやってたのは、“路地裏昭和レトロ散歩”といって、喫茶店を訪ねたりとか。海が使われていなかったので、シーカヤックをやったりとか。あとは農業体験とか、“ありとあらゆる熱海でできること”を発掘してツアーにしました。




■行政ではなく、民間が街づくりを行うメリット

街づくりは“行政がやるもの”というイメージも。民間で行う上では、お金の苦労もあったそうです。どうやって打開したのでしょうか。

市来:僕は地元で商売やっていた人の跡継ぎでもなく、ゼロから始めているので、お金もないし人のつながりもそんなにあるわけじゃなかった。ですので、「どうやって自分も食っていきながら、そういうことをやっていくのか?」は課題でしたね。さっき言った地元の人向けの体験ツアーも、最初は全然お金にならなくて。
市川:え、どうしたんですか?
市来:熱海でシャッター街になってたところの再生を始めたんです。空きビルや空き店舗にお店や宿を作ったり、お店を出す人に入ってもらったりしました。不動産を活用したビジネスが、そのまま街づくりにもなるという。
市川:まず地元の人に“熱海愛”を再認識させて、商店街を再生・復活させて……ということですね。そこから、どうやって今の熱海の復活劇を遂げたんですか?
市来:僕らは、本当に小さな商店街に集中して、何店舗も空き物件を再生していくみたいなことを、ひたすらやり続けてきて。道路もあまり人が使ってないから、そういうところでマルシェやイベントを開催したり。小さいエリアでやり続けることによって、人が集まったり、メディアで注目していただいたり。
市川:ずっと諦めずにやってこられた、と。いつ頃から、「あ、なんか熱海変わってきたな」って感じられました?
市来:僕が熱海に帰って活動を始めたのが2007年なんで、11年前ですね。そこから3、4年して、「地元の人たちも、雰囲気や空気が変わってきたな」と思いました。明確に変化を実感したのは、ここ数年ですね。活動を始めてから7、8年が経って。
市川:ずばり、“復活の要因”の一番は何だと思います?
市来:他の地域とも関わらせていただいて思うので、「やはり人だな」と。その地域をなんとかしようと、リスクもとりながら、何かを始める人がいるか。そして、それをやり続けるかが重要で。そういう意味で、熱海はそんな人たちがすごく多かったっていうことが、大きいんじゃないかなと思っています。
市川:とりあえず「やってみることが大切」ってことですよね。
市来:そうですね。やらないと何も変わらないので。
市川:たしかに。それは、市来さんのようなビジネスマンが主体となったメリットかもしれないですね。行政だと、どうしても「あとで何かトラブルがあるかもしれないから」という理由で、いろいろやらないじゃないですか。
市来:そうですね。行政の場合、気持ちが強くても、職員が異動することもありますし、市長や町長も選挙で変わっちゃうかもしれないですしね。同じ方針でやり続けるのは、すごく難しいと思いますね。だからこそ、民間でやる価値があるのかなと思います。


■地域再生、ひとつの方法は「新しい使い方を発見する」

今後も、熱海をはじめ多くの地域が再生し、その後も発展し続けるためには……。

市来:僕は東京に10年くらい住んでいて、そのときは月1回くらい熱海に戻っていました。「そういう暮らし方ってすごいいいな」って思って。忙しい東京での仕事、暮らしの合間に熱海で過ごすという、そんな関わり方をしてくれる人が増えたら嬉しい。観光でもなく移住でもなく、その間のいろんな使い方があるんじゃないかなと思って。週末行ってみたりとか、年に1週間滞在してみたりとか、多様な過ごし方ができる街になったら、より熱海は再生していくと思っています。また最近、熱海で起業する人たちも増えてますけど、移住せずとも、東京と2拠点にするとか。それが一般的になっていったらいいなって。そしたらもっと熱海だけじゃなくて、都会に住んでいる人たちも、ちょっぴり、ちょっとずつ、暮らし豊かになっていきますよね。
市川:“2拠点住宅”ならぬ、“2拠点ビジネス”、面白いですね。既にやっている人がいると思うと心強いですね。

熱海の人気を回復させた市来さんの取り組みは、他の地域でも応用できるのでしょうか。

市来:僕も違う街でお手伝いをさせてもらったりしていますし、けっこうどの街でも使えるものだと思います。とくに“一度成功したけども衰退しちゃった街”とかには、すごく使える手法かと。過去に成功した街は、空き店舗とか、過去の資産がいっぱいあるんですよね。若い人たちが何かをするとき、建物からつくるのはお金がかかるけど、空いてるところを使うならすぐにやれますよね。今までと違う層にアプローチして、その街を使ってもらうことが、再生するひとつの手段なんじゃないかなと。そういうのは、ずっと街にいる人たちだとわからなかったりするから、外の目も入れながら、新しい使い方を発見することが、地域再生の課題なんじゃないかと思います。

市来さんは、地域再生に関する活動と並行して、「泊まると熱海がクセになる」という「guest house MARUYA」を経営しているそうです。こちらもぜひチェックしてみてください。

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【番組情報】
番組名:『TRUME TIME AND TIDE』
放送日時:毎週土曜 21時-21時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/timeandtide/

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