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ペットボトル227億本がゴミに!? スタバのストロー廃止で考える、日本のリサイクルの実態

ペットボトル227億本がゴミに!? スタバのストロー廃止で考える、日本のリサイクルの実態

J-WAVEで放送中の番組『JAM THE WORLD』(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。7月17日(火)のオンエアでは、火曜日のニュース・スーパーバイザーを務めるジャーナリストの青木 理が登場しました。

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■大量のゴミが海に流れ、世界のあちこちに

先日、米コーヒーチェーン大手スターバックスが、2020年までに世界の店舗でプラスチック製の使い捨てストローを廃止する計画を発表し話題になっています。一部の推計によると、「2050年までに海に流入するプラスチックごみの総重量は、世界の海に生息する魚の総重量を超えるのではないか」と予測されるなど、非常に深刻な問題です。世界中でさまざまな対処が進められています。

この問題について、環境問題やエネルギー問題などを長く取材している、共同通信編集委員兼論説委員の井田徹治さんにお話を伺いました。

井田:大量のゴミが海に流れ、それが集まったゴミの海やゴミの川が世界中のあちこちにあって、非常に深刻な問題になっています。
青木:このプラスチックゴミの問題は、最近になって活発化してきたように思います。
井田:ここ10年くらい前から取り上げられ、あまりにも深刻になってきたので、国連や国際機関などが放っておけない状況になり、国際的な対応が進んできました。スターバックスもこの状況を受けての行動になったんだと思います。

ストローは、プラスチックゴミのごく一部に過ぎません。

井田:その他、ペットボトルやプラスチック製のカップなど、大量の使い捨てプラスチックゴミが溢れています。
青木:スーパー、コンビニなどのレジ袋もそうですよね。
井田:使い捨てプラスチックと呼ばれる、1回使うだけでゴミになってしまうものとして、日本で一番多いのは飲料のペットボトルで、急激に増えています。リサイクルをするにせよしないにせよ、食品容器関連のプラスチックごみが非常に多くなっています。


■日本独自のリサイクル方法…大きな問題点

PETボトルリサイクル推進協議会のホームページによると、日本の16年度の年間生産量は、ペットボトル227億本、レジ袋は300億枚と言われています。

井田:これらは全部が使い捨てなので、一度使えばゴミになります。データによると、2004年くらいにはペットボトルの年間生産量は約150億本だったので、この十数年で急激に増えていることがわかります。

使い終わったペットボトルをリサイクルのために、容器・キャップ・包装紙に分別してゴミに出しているという人も多いと思いますが……。

井田:ペットボトルは全体で約90パーセントのリサイクル率がありますが、少しずつその率が減っています。もとのペットボトルの量が多いので、10パーセントがリサイクルにまわらないとしても、かなりの量のゴミが出てしまいます。レジ袋はほとんどリサイクルされていません。

さらに、日本人はごみを分別しているので「リサイクルに貢献している」と思いがちですが、実際のところ、“ゴミを燃やしてその熱エネルギーを回収・利用したらそれをリサイクルと呼びましょう”という、日本独自のリサイクル方法「サーマルリサイクル」に過ぎないと井田さんは指摘します。

井田:これは真のリサイクルではなく、一方通行でただ燃やしているだけですから。本当にリサイクルされているのは、プラスチックゴミ全体の4分の1くらいしかありません。6割から7割のプラスチックゴミは燃やされているんです。


■日本がプラスチック憲章に署名しない理由

6月にカナダで開催されたG7サミット(先進7カ国首脳会議)において、「海洋プラスチック憲章」が取りまとめられました。これには、「2030年までに使い捨てプラスチックを原則なくしましょう」など、2030年周辺の数値目標が盛り込まれています。ほとんどの国がこの憲章に署名するなか、日本とアメリカは署名をしませんでした。

青木:日本はなぜプラスチック憲章に署名しなかったのでしょか。
井田:先ほど話したように、日本はプラスチックゴミを燃やしている部分が非常に多いし、ちゃんとリサイクルできているようで、2030年までになくすと言われると結構つらいところがあります。日本政府は「国内でまだそこまで踏み切る準備ができていない」と言っているようです。
青木:この問題に関して、先進国のなかで日本は取り組みが遅れているということですか?
井田:日本はリサイクルが進んでいると思われていますが、先ほど言ったように本当のリサイクル率は20パーセント以下だと言われています。また、OECD(経済協力開発機構)の(リサイクル率)ランキングでは、日本は32カ国中、27位くらいなので、日本のリサイクルは進んでいません。そのため、今回のプラスチック憲章には署名できなかったという背景があるんです。


■どう「削減」するかが大事

これからの日本は「リサイクルさえすればいい」という考えを再考する必要があると井田さんは指摘します。

井田:リデュース(削減)、リユース(再利用)、リサイクル(再生利用)の頭文字を取り「3R」という言葉があります。この順番で進めることが重要なんですけど、日本はリサイクルが先行し、しかも焼却を中心に置いているため、リユースが進んでいない。さらに、リデュースに関してはなんのインセンティブもないので全く進んでいない。しかし、プラスチック製品の消費量は増えているので、リサイクルできずにごみになってしまうものが増えてしまいます。この先、リデュース=削減をどう考えるかが重要になると思います。

最後に井田さんは「消費者にプラスチックごみの問題を過剰に押しつけるのではなく、企業が変わらなくてはいけない」と話します。

井田:各国でプラスチックごみの問題を解決するために規制が入っている。それを見越してスターバックスもストローの廃止など問題の転換をしているわけですよね。この流れを日本のなかでも作っていく必要があると思います。

スターバックスの取り組みなど、世界中でゴミ問題に注目が集まるなか、日本はこの問題をどう考え、どのように解決していくのか。今後の動向に注目です。

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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld

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