J-WAVEで放送中の番組「JAM THE WORLD」(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。4月2日(月)のオンエアでは、月曜日のニュース・スーパーバイザー、津田大介が登場。メディアのあり方や放送法に詳しい専修大学教授の山田健太さんをゲストにお迎えし、「放送制度改革案」について考えました。
安倍政権が検討する「放送制度改革案」が波紋を広げています。テレビやラジオ番組に政治的公平性を求めた放送法4条を撤廃するなど、規制を緩和することで新規参入を促して多様な番組を流通させる狙いがあるとされますが、一方で「偏った番組が台頭する恐れがある」との懸念も出ています。
まずは山田さんに放送法4条について説明していただきました。
山田:放送法4条自体はとてもシンプル。わいせつな放送はいけない、うその放送はいけない、偏った放送はいけない、というようなことが明記されています。ただ、もっと大きなポイントとして、放送法は他の法律と違って、ある種、憲法と同じなんです。憲法は国が勝手なことをしてはいけないと国を縛る法律ですが、それに比べて、普通の法律は一般市民生活を縛る法律になります。放送法は「放送の自由を守りましょう」という法律であるため、どちらかというと“政府・国家を縛る”法律なんです。政府としては「国家を縛る法律はやだな」というのがあるのかもしれません。
放送法は本来放送の自由を守るためのものでしたが、のちに番組を制限するものになっていると山田さんは話します。
山田:放送法は自由を定め保証しましょう、そのためには放送人がそれについてきちんと職責を果たしましょうというもので、そのひとつの目安として放送法4条で「こういうような番組を作りましょう。ただしそれは放送局が視聴者に対して約束していることですよ」というものでした。しかし、政府はこの放送法4条を使って、「そういう放送番組を作っちゃいけないよ」という、いわゆる放送番組を制限するためのルールとして使ってしまったんです。
諸外国のように、本来なら政府が直接放送局に権力を行使できないように、独立機関が番組を審査する、あるいは放送する免許を出すのが普通ですが、日本や北朝鮮、ベトナムなど特別な国だけが、直接政府が管轄していると山田さん。
政府が管轄する放送法4条は、この条文が成立した当初は倫理規定であって、強制力はなかったと言います。
山田:特にこの20年間で、政府と放送現場との関係ががらっと変わり、放送法の解釈も、倫理規定から放送法を根拠とした政府が違法と判断する理由付けとなってしまったので随分意味合いが変わってきてしまいました。
津田:そこが一番のポイントで、放送法4条は放送法ができたときは倫理規定であって、強制力はなかった理由はなんなんですか?
山田:あくまで放送は自由であるということが大前提です。ただし免許制度があって、特別に選ばれた放送局が電波をある種、独占しているわけですから、その責任として、豊かで良い放送を流しなさい、その基準として4条を設け、放送局自身が自律するかたちで実現しようと決まっていました。ただ、だんだん一般の視聴者から「いまの放送ヒドいじゃないか」「ピンク番組が多いじゃないか」などいろんな声が出て、そこに乗っかって1980年代後半から1990年代にはっきりと政府が「じゃあ、自分たちが良いか悪いかは判断します」となったんです。
そんな放送法4条の撤廃などを検討する「放送制度改革案」が可決されることは、非常に危険だと山田さんは言います。
山田:今回の放送制度改革案は「4条をなくしましょう」ということではなくて、「放送法を全部やめちゃいましょう」ということで、なおかつ「民放を全部なくしましょう」というのが今回の規制改革案の骨子なんです。民放をなくし、放送という制度をなくし、いまの放送の仕組みをチャラにしてしまう考え方は相当危険だと思います。そうしてしまうと、僕らは何をベースにみんなが同じ意見を戦わせるのか、戦わせる場所がなくなってしまうということですから。
最後に一連の騒動を踏まえて、放送法4条はどうあるべきかを山田さんに伺いました。
山田:もともと放送法4条は倫理規定であって、放送局が守るべき目標であり、視聴者に対する約束事ですから、それはそれであっていいと思いますが、ここまで批判され、政府からも見直しと言われたのだから、放送局自身がもう一度毎日の番組を見直していって、より面白い番組を作れるかどうかにかかっていると思います。
私たちの価値観が大きく変わってしまうかもしれない放送制度改革案は果たしてどう進んでいくのか、目が離せません。
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【番組情報】
番組名:「JAM THE WORLD」
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
安倍政権が検討する「放送制度改革案」が波紋を広げています。テレビやラジオ番組に政治的公平性を求めた放送法4条を撤廃するなど、規制を緩和することで新規参入を促して多様な番組を流通させる狙いがあるとされますが、一方で「偏った番組が台頭する恐れがある」との懸念も出ています。
まずは山田さんに放送法4条について説明していただきました。
山田:放送法4条自体はとてもシンプル。わいせつな放送はいけない、うその放送はいけない、偏った放送はいけない、というようなことが明記されています。ただ、もっと大きなポイントとして、放送法は他の法律と違って、ある種、憲法と同じなんです。憲法は国が勝手なことをしてはいけないと国を縛る法律ですが、それに比べて、普通の法律は一般市民生活を縛る法律になります。放送法は「放送の自由を守りましょう」という法律であるため、どちらかというと“政府・国家を縛る”法律なんです。政府としては「国家を縛る法律はやだな」というのがあるのかもしれません。
放送法は本来放送の自由を守るためのものでしたが、のちに番組を制限するものになっていると山田さんは話します。
山田:放送法は自由を定め保証しましょう、そのためには放送人がそれについてきちんと職責を果たしましょうというもので、そのひとつの目安として放送法4条で「こういうような番組を作りましょう。ただしそれは放送局が視聴者に対して約束していることですよ」というものでした。しかし、政府はこの放送法4条を使って、「そういう放送番組を作っちゃいけないよ」という、いわゆる放送番組を制限するためのルールとして使ってしまったんです。
諸外国のように、本来なら政府が直接放送局に権力を行使できないように、独立機関が番組を審査する、あるいは放送する免許を出すのが普通ですが、日本や北朝鮮、ベトナムなど特別な国だけが、直接政府が管轄していると山田さん。
政府が管轄する放送法4条は、この条文が成立した当初は倫理規定であって、強制力はなかったと言います。
山田:特にこの20年間で、政府と放送現場との関係ががらっと変わり、放送法の解釈も、倫理規定から放送法を根拠とした政府が違法と判断する理由付けとなってしまったので随分意味合いが変わってきてしまいました。
津田:そこが一番のポイントで、放送法4条は放送法ができたときは倫理規定であって、強制力はなかった理由はなんなんですか?
山田:あくまで放送は自由であるということが大前提です。ただし免許制度があって、特別に選ばれた放送局が電波をある種、独占しているわけですから、その責任として、豊かで良い放送を流しなさい、その基準として4条を設け、放送局自身が自律するかたちで実現しようと決まっていました。ただ、だんだん一般の視聴者から「いまの放送ヒドいじゃないか」「ピンク番組が多いじゃないか」などいろんな声が出て、そこに乗っかって1980年代後半から1990年代にはっきりと政府が「じゃあ、自分たちが良いか悪いかは判断します」となったんです。
そんな放送法4条の撤廃などを検討する「放送制度改革案」が可決されることは、非常に危険だと山田さんは言います。
山田:今回の放送制度改革案は「4条をなくしましょう」ということではなくて、「放送法を全部やめちゃいましょう」ということで、なおかつ「民放を全部なくしましょう」というのが今回の規制改革案の骨子なんです。民放をなくし、放送という制度をなくし、いまの放送の仕組みをチャラにしてしまう考え方は相当危険だと思います。そうしてしまうと、僕らは何をベースにみんなが同じ意見を戦わせるのか、戦わせる場所がなくなってしまうということですから。
最後に一連の騒動を踏まえて、放送法4条はどうあるべきかを山田さんに伺いました。
山田:もともと放送法4条は倫理規定であって、放送局が守るべき目標であり、視聴者に対する約束事ですから、それはそれであっていいと思いますが、ここまで批判され、政府からも見直しと言われたのだから、放送局自身がもう一度毎日の番組を見直していって、より面白い番組を作れるかどうかにかかっていると思います。
私たちの価値観が大きく変わってしまうかもしれない放送制度改革案は果たしてどう進んでいくのか、目が離せません。
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番組名:「JAM THE WORLD」
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
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