山梨県上野原市にあるミニシアター「CineYama」の館長、ケルソン・マシューさんが映画との出会いや映画館誕生の経緯などを語った。
マシューさんが登場したのは、8月2日(日)放送のJ-WAVE『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:小川紗良)の「WORLD CONNECTION」。ゲストを招き、世界の最新カルチャーに迫るコーナーだ。
JR中央本線・上野原駅から車で5分ほど、細い一本道を進んでいくと緑色の屋根の建物が見える。園庭の遊具、園舎の外観など、幼稚園の面影を残しながらも、内装はマシューさんのこだわりがつまった雰囲気へとリノベーションされている。
小川:ロビーに入ると、カラフルで温かみのある空間が広がっていました。マシューさんはこの空間を「映画のライブラリをイメージした」と仰っていて、フィルムの映写機が置いてあったり、マシューさんお気に入りの映画のポスターもたくさん貼られていました。ちょっと前のカンヌ国際映画祭の大きなポスターなど、貴重なものが揃っている感じもしました。
小川は、ロビーにあるカフェテーブルが「特にかわいいなと思った」と語る。
小川:そのテーブルは35ミリフィルムの大きなリールをリメイクしたもので、細かいところまですごく映画愛にあふれているなと思いました。さらにフードカウンターもあり、ポップコーンなどを買って映画を楽しむことができるのですが、スナックも海外から取り寄せたものが並んでいて、ちょっと異国に来たような雰囲気を楽しむことができます。フードカウンターの壁が「味わいがあるな」と思っていたのですが、なんと幼稚園の砂場の砂を練り込んでいるそうで、その土地の歴史も踏まえてすごくいい空間づくりがされていました。
映画、そして上野原への愛情が感じられるCineYamaを訪れた小川は、マシューさんに「映画を好きになった原点」を訊く。
マシュー:子どものころから、本当に映画が大好きでした。最初に夢中になった作品のひとつが、レイモンド・ブリッグズの『スノーマン』です。ほとんど音楽だけで物語が進む作品で、クリスマスのたびに何度も観ていました。また、父が国際関係学の教授だったこともあり、世界各国を舞台にした映画にもたくさん触れ、映画を通してまだ見ぬ世界に憧れるようになりました。
マシューさんは、父親から教わった映画を通して映画の世界に触れ、大学時代には映画を観るだけでなく、届ける側の面白さにも出会ったそう。
マシュー:「映画を仕事にしよう」と思ったのは、大学生のころです。当時、映画理論や映画史を学ぶなかで、デトロイト・フィルムセンターという小さな施設に出会いました。大学のような大きな学校ではなく、映画を実際に作ったりフィルムに触れたりできる、とても小さな場所でした。
そこでマシューさんは、とあるワークショップに参加する。
マシュー:16ミリフィルムに直接、絵を描いたりさまざまな加工を施したりするワークショップです。映画をただ観るだけでなく、フィルムそのものに触れ、映写機の仕組みを学び、1本の映画がスクリーンに映し出されるまでの工程を知ることに、どんどん夢中になっていきました。それまでは作品の内容に惹かれていましたが、この体験を通して映画というメディアそのものや映画を上映するための機械、空間にも強く興味を持つようになりました。このワークショップが大きなきっかけとなって、「映画に関わる人生を送りたい」と強く思うようになったんです。
マシュー:Netflixでは、いくつかの異なる仕事を経験しました。入社した当初は、サービス上に表示される映画のポスターなど、作品を紹介するアートワークを担当していました。その後、Netflixが世界各国へサービスを広げていくなかで、それぞれの国の観客に作品の魅力が伝わるよう、現地のデザイナーや制作会社と一緒にアートワークを作る仕事にも携わりました。さらに上映チームへ異動してからは、新作映画やドラマのプレミア上映や試写会を担当しました。監督や出演者が大切にしてきた作品をもっともよい環境、もっともよい状態で観客へ届けることが、そこでの仕事でした。振り返ってみると、働く場所や方法が変わっても私はいつも映画を人に届け、誰かと一緒に映画を体験できる場所を作ってきたんだと思います。
映画に惹かれ、その魅力を多くの人に発信するさまざまな仕事をしてきたマシューさん。そんな彼が、なぜ日本に移り住みミニシアターを立ち上げたのか。日本との出会いも、映画だったと語る。
マシュー:私は子どものころから、日本の映画やアニメーションが大好きでした。14歳の夏には愛媛県でホームステイを経験し、そのときに出会った日本の田舎の風景や、ゆっくりとした暮らしがずっと心に残っていました。その後も仕事で日本を訪れる機会が何度もあり、Netflixの仕事をきっかけに、実際に日本で生活をするようになりました。日本で数年暮らし、妻や子どもたちの生活も根づいていました。私たち家族にとって、日本は一時的に滞在する場所ではなく、これからも暮らしていきたい場所になっていたんです。そして、「日本で暮らし続けるなら、これまで映画の仕事で培ってきた経験を自分が暮らす地域のために生かしたい」と考えるようになりました。地域の人たちが集まり、映画を通して新しい出会いや会話が生まれるような場所を作りたい。その思いがCineYamaにつながりました。
小川:子どものころからの憧れで実際に日本に住むことになるのは、すごいですよね。映画館には奥さんも一緒に立たれていて、とても仲よく営まれている様子が伝わってきました。
続いて、映画館の舞台となっている元幼稚園との出会いについても訊いた。
マシュー:インターネットでいろいろな地域を探すなかで、上野原で古い家を再生しながら農園を営む人の動画を見つけました。その暮らしに興味を持って実際に上野原を訪ね、地域の人たちに紹介してもらううちに、「ここが自分たちに合った場所だ」と少しずつ感じるようになりました。東京へ通える距離にあり、必要であれば空港にも行ける。その一方で、自然に囲まれた場所に暮らしていると、まったく違う世界に来たように感じられる。生活のペースもゆっくりしていて、私たち家族が求めていたものがここには揃っていました。
そして、マシューさんは上野原に映画館を開こうと考える。
マシュー:上野原にあるカフェ・ハシドイのオーナーに「地域で映画館を開きたい」と相談したところ、市役所の方々につないでくれました。私は以前にも使われなくなった学校を映画館にした経験がありますが、そこには子どもたちが過ごした記憶や、何かを生み出すエネルギーが残っています。役目を終えた学校を、別の場所へと生まれ変わらせることにも大きな魅力を感じていました。市の方にいくつかの建物を案内してもらい、この元幼稚園を初めて訪れたとき、桜の木や竹林に囲まれた坂道を上がっていく景色が、まるで魔法のように感じられました。当時の建物はサビやつる草に覆われ、周囲にはゴミもあり、決していい状態ではありませんでした。一緒に訪れた友人たちは「少し怖い場所だ」と感じていたそうです。でも、私にはここがどんな空間に生まれ変わるのか最初からはっきりと見えていました。
最後に、マシューさんが考える「映画館という場所の魅力」を訊いた。
マシュー:私にとって映画館の魅力は「コミュニティを生み出せること」です。自分と同じ興味を持つ人に出会い、自分以外のさまざまな生き方や文化について深く語り合うことができます。また、映画や映画館には他の芸術にはないかたちで、他者への共感を生み出す力があると思っています。映画を観ていると本当に誰かの人生のなかに入り込んだような感覚になり、その人に共感できます。アルゴリズムによって自分の好きなものだけを見るようになり、異なる生き方や文化に触れる機会が減っている今の時代に、それはとても重要なことであり、映画館にとってもっとも大切な役割のひとつだと考えています。
小川:私も本当にそう思います。「映画館で映画を観る」って、単なる鑑賞を超えてひとつの体験だと思うんですよね。その日の天気やたまたまその場で居合わせた人、そこでしか生まれない体験があって、CineYamaはまさにそんな体験を豊かにしてくれる場所だと思いました。
CineYamaの詳細は公式サイトまで。
『ACROSS THE SKY』のコーナー「WORLD CONNECTION」では、ゲストを招き世界の最新カルチャーに迫る。オンエアは毎週日曜の9時20分ごろから。
マシューさんが登場したのは、8月2日(日)放送のJ-WAVE『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:小川紗良)の「WORLD CONNECTION」。ゲストを招き、世界の最新カルチャーに迫るコーナーだ。
この日の放送は8月9日(日)28時ごろまで、radikoのタイムフリー機能で楽しめる。
「映画好き」から「仕事にしたい」と思うようになった理由
北は東京都西多摩郡、東は神奈川県相模原市に隣接する、山梨県上野原市。都心から約1時間ほど離れた場所ながら豊かな自然に恵まれたこの地に、ミニシアター・CineYamaが3月15日にオープンした。アメリカ・デトロイト出身のケルソン・マシューさんが館長を務めるCineYamaは、幼稚園を改装して作られた。JR中央本線・上野原駅から車で5分ほど、細い一本道を進んでいくと緑色の屋根の建物が見える。園庭の遊具、園舎の外観など、幼稚園の面影を残しながらも、内装はマシューさんのこだわりがつまった雰囲気へとリノベーションされている。
小川:ロビーに入ると、カラフルで温かみのある空間が広がっていました。マシューさんはこの空間を「映画のライブラリをイメージした」と仰っていて、フィルムの映写機が置いてあったり、マシューさんお気に入りの映画のポスターもたくさん貼られていました。ちょっと前のカンヌ国際映画祭の大きなポスターなど、貴重なものが揃っている感じもしました。
小川は、ロビーにあるカフェテーブルが「特にかわいいなと思った」と語る。
小川:そのテーブルは35ミリフィルムの大きなリールをリメイクしたもので、細かいところまですごく映画愛にあふれているなと思いました。さらにフードカウンターもあり、ポップコーンなどを買って映画を楽しむことができるのですが、スナックも海外から取り寄せたものが並んでいて、ちょっと異国に来たような雰囲気を楽しむことができます。フードカウンターの壁が「味わいがあるな」と思っていたのですが、なんと幼稚園の砂場の砂を練り込んでいるそうで、その土地の歴史も踏まえてすごくいい空間づくりがされていました。
WORLD CONNECTION
— ACROSS THE SKY (@acrossthesky813) August 2, 2026
本日は
ミニシアター「 #CineYama 」@CineYamaJPに注目
ロビーには彩り豊かな壁には
映画のポスターが多数展示!
他にもフィルムの映写機
テーブルの天板にリメイクされた
「35mmフィルムのリール」 なども!#sky813 #jwave pic.twitter.com/1T3LUe467B
マシュー:子どものころから、本当に映画が大好きでした。最初に夢中になった作品のひとつが、レイモンド・ブリッグズの『スノーマン』です。ほとんど音楽だけで物語が進む作品で、クリスマスのたびに何度も観ていました。また、父が国際関係学の教授だったこともあり、世界各国を舞台にした映画にもたくさん触れ、映画を通してまだ見ぬ世界に憧れるようになりました。
マシューさんは、父親から教わった映画を通して映画の世界に触れ、大学時代には映画を観るだけでなく、届ける側の面白さにも出会ったそう。
マシュー:「映画を仕事にしよう」と思ったのは、大学生のころです。当時、映画理論や映画史を学ぶなかで、デトロイト・フィルムセンターという小さな施設に出会いました。大学のような大きな学校ではなく、映画を実際に作ったりフィルムに触れたりできる、とても小さな場所でした。
そこでマシューさんは、とあるワークショップに参加する。
マシュー:16ミリフィルムに直接、絵を描いたりさまざまな加工を施したりするワークショップです。映画をただ観るだけでなく、フィルムそのものに触れ、映写機の仕組みを学び、1本の映画がスクリーンに映し出されるまでの工程を知ることに、どんどん夢中になっていきました。それまでは作品の内容に惹かれていましたが、この体験を通して映画というメディアそのものや映画を上映するための機械、空間にも強く興味を持つようになりました。このワークショップが大きなきっかけとなって、「映画に関わる人生を送りたい」と強く思うようになったんです。
Netflixでの仕事をきっかけに日本に定住
その後、アメリカ・デトロイトで仲間とともに「バートン・シアター」という映画館を立ち上げたマシューさんは、元Netflixの社員でもある。Netflixでは、どのようなかたちで映画に関わる仕事をしていたのだろうか。マシュー:Netflixでは、いくつかの異なる仕事を経験しました。入社した当初は、サービス上に表示される映画のポスターなど、作品を紹介するアートワークを担当していました。その後、Netflixが世界各国へサービスを広げていくなかで、それぞれの国の観客に作品の魅力が伝わるよう、現地のデザイナーや制作会社と一緒にアートワークを作る仕事にも携わりました。さらに上映チームへ異動してからは、新作映画やドラマのプレミア上映や試写会を担当しました。監督や出演者が大切にしてきた作品をもっともよい環境、もっともよい状態で観客へ届けることが、そこでの仕事でした。振り返ってみると、働く場所や方法が変わっても私はいつも映画を人に届け、誰かと一緒に映画を体験できる場所を作ってきたんだと思います。
映画に惹かれ、その魅力を多くの人に発信するさまざまな仕事をしてきたマシューさん。そんな彼が、なぜ日本に移り住みミニシアターを立ち上げたのか。日本との出会いも、映画だったと語る。
マシュー:私は子どものころから、日本の映画やアニメーションが大好きでした。14歳の夏には愛媛県でホームステイを経験し、そのときに出会った日本の田舎の風景や、ゆっくりとした暮らしがずっと心に残っていました。その後も仕事で日本を訪れる機会が何度もあり、Netflixの仕事をきっかけに、実際に日本で生活をするようになりました。日本で数年暮らし、妻や子どもたちの生活も根づいていました。私たち家族にとって、日本は一時的に滞在する場所ではなく、これからも暮らしていきたい場所になっていたんです。そして、「日本で暮らし続けるなら、これまで映画の仕事で培ってきた経験を自分が暮らす地域のために生かしたい」と考えるようになりました。地域の人たちが集まり、映画を通して新しい出会いや会話が生まれるような場所を作りたい。その思いがCineYamaにつながりました。
小川:子どものころからの憧れで実際に日本に住むことになるのは、すごいですよね。映画館には奥さんも一緒に立たれていて、とても仲よく営まれている様子が伝わってきました。
映画館は“コミュニティ”創出の場
長らく東京で家族と暮らしていたマシューさんだが、パンデミックをきっかけに「家族でもう少し広い場所に住みたい」「子どもたちを自然に近い環境で育てたい」と考えるようになったそう。続いて、映画館の舞台となっている元幼稚園との出会いについても訊いた。
マシュー:インターネットでいろいろな地域を探すなかで、上野原で古い家を再生しながら農園を営む人の動画を見つけました。その暮らしに興味を持って実際に上野原を訪ね、地域の人たちに紹介してもらううちに、「ここが自分たちに合った場所だ」と少しずつ感じるようになりました。東京へ通える距離にあり、必要であれば空港にも行ける。その一方で、自然に囲まれた場所に暮らしていると、まったく違う世界に来たように感じられる。生活のペースもゆっくりしていて、私たち家族が求めていたものがここには揃っていました。
そして、マシューさんは上野原に映画館を開こうと考える。
マシュー:上野原にあるカフェ・ハシドイのオーナーに「地域で映画館を開きたい」と相談したところ、市役所の方々につないでくれました。私は以前にも使われなくなった学校を映画館にした経験がありますが、そこには子どもたちが過ごした記憶や、何かを生み出すエネルギーが残っています。役目を終えた学校を、別の場所へと生まれ変わらせることにも大きな魅力を感じていました。市の方にいくつかの建物を案内してもらい、この元幼稚園を初めて訪れたとき、桜の木や竹林に囲まれた坂道を上がっていく景色が、まるで魔法のように感じられました。当時の建物はサビやつる草に覆われ、周囲にはゴミもあり、決していい状態ではありませんでした。一緒に訪れた友人たちは「少し怖い場所だ」と感じていたそうです。でも、私にはここがどんな空間に生まれ変わるのか最初からはっきりと見えていました。
元幼稚園であったことを
— ACROSS THE SKY (@acrossthesky813) August 2, 2026
感じさせる外観!#sky813 #jwave pic.twitter.com/VFrWIlLqKE
マシュー:私にとって映画館の魅力は「コミュニティを生み出せること」です。自分と同じ興味を持つ人に出会い、自分以外のさまざまな生き方や文化について深く語り合うことができます。また、映画や映画館には他の芸術にはないかたちで、他者への共感を生み出す力があると思っています。映画を観ていると本当に誰かの人生のなかに入り込んだような感覚になり、その人に共感できます。アルゴリズムによって自分の好きなものだけを見るようになり、異なる生き方や文化に触れる機会が減っている今の時代に、それはとても重要なことであり、映画館にとってもっとも大切な役割のひとつだと考えています。
小川:私も本当にそう思います。「映画館で映画を観る」って、単なる鑑賞を超えてひとつの体験だと思うんですよね。その日の天気やたまたまその場で居合わせた人、そこでしか生まれない体験があって、CineYamaはまさにそんな体験を豊かにしてくれる場所だと思いました。
CineYamaの詳細は公式サイトまで。
『ACROSS THE SKY』のコーナー「WORLD CONNECTION」では、ゲストを招き世界の最新カルチャーに迫る。オンエアは毎週日曜の9時20分ごろから。
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毎週日曜9:00-12:00
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小川紗良
