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中山求一郎が持ち歩く一冊とは「大事なことを思い出さなきゃダメだな、と思ったときに…」

中山求一郎が持ち歩く一冊とは「大事なことを思い出さなきゃダメだな、と思ったときに…」

俳優の中山求一郎が、自宅の本棚や5月に上演する舞台『エンドゲーム』について語った。

中山が登場したのは、3月22日(日)放送のJ-WAVE『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:小川紗良)の「DAIWA HOUSE MY BOOKSHELF」。本棚からゲストのクリエイティヴを探るコーナーだ。

本棚の写真は、大切な本を厳選して

中山は1992年生まれ、埼玉県出身。映画『何者』や『ミッドナイトスワン』、ドラマ『あなたの番です』やNHK連続テレビ小説『エール』をはじめ、数々の映画・ドラマ・舞台に出演している。

「DAIWA HOUSE MY BOOKSHELF」では、ゲストの本棚の写真を見ながらトークを展開する。中山の本棚の写真を見ながら、ナビゲーターの小川はまず写真集に注目した。

中山:荒木経惟さんの『センチメンタルな旅』(HeHe)という写真集です。

小川:白黒で、電車の中で女性がもたれているような写真、迫力がありますね。

中山:奥さんとの新婚旅行など、いろいろなところを赤裸々に撮っている写真で、好きなんですよね。

小川:では、けっこう生活感がある感じですか?

中山:だいぶ赤裸々です(笑)。

小川:そのまわりには演劇についての本がけっこうありますね。岩松 了さんの本も。

中山:岩松さんも好きです。戯曲の言葉が美しくて、『薄い桃色のかたまり』(白水社)という本が大好きで、たまに読み返してますね。

小川:戯曲を読むようになったきっかけはあったんですか?

中山:学生演劇から始めたんですけど、母親がけっこう演劇をよく観ていたので、その影響で読むようになりました。

小川:普通の小説を読むのと、戯曲を読むのは違いますか?

中山:そうですね。(戯曲は)役者さんの姿を思い浮かべたり、「自分がやってみたらどうなるんだろうな」と考えたりします。

小川:同じ戯曲でも、演出の仕方によって見え方は全然違いますもんね。

2枚目の本棚の写真には、村上春樹訳のJ.D.サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(白水社)などの本が並ぶ。

中山:(写真で)「どの本を出そうかな」とすごく迷って、大切な本を並べてみました(笑)。

小川:ありがとうございます。『ケアとは何か』(中央公論新社)と言う本もありますね。

中山:ケアとか社会学系の本とかも昔から好きで、よく読んでます。

小川:ほかには、坂本龍一さんに関する本もありますね。

中山:はい。人が人についてしゃべっている本もけっこう好きなんですよ。

小川:ご本人じゃなくて、研究されている方などが書いている本は、その人についてまた違う見え方がしてきますよね。最後の写真の『ポンヌフの恋人』は、パンフレットですか?

中山:そうです。シネマライズで販売していたパンフレットが神保町で安く売っているのを見かけまして、「これはゲットしないといけないな!」と思って買いました。

小川:最近リバイバル上映もされていましたが、これは当時のものでもう手に入らないから貴重ですね。

“指針”として常に持ち歩く大切な1冊

中山は、最近読んだなかで本棚に残したい1冊として、2024年7月に発刊された永井玲衣の『世界の適切な保存』(講談社)を挙げた。

中山:前から知っていたんですけど、「蟹ブックス」という本屋さんに足を運んだら置いてあって、あらためてちゃんと買ってみるかと思って読んだら、自分が思っていることに近いようなことがすごく書いてありました。たとえば、永井さんは小学校の授業中に「先生が1分くらい『か』って言ってないな」「この1分くらい、世界には『か』という言葉が足りていないんじゃないか」と思って、独り言で「かかかかか」と言ったりしてたらしいんですよ(笑)。それが元となって「この世界に足りていないものや世界に適切に保存したいものを大事にしたい」ということが書いてあって、ものすごく素敵だなと思いました。

小川:永井さんは“対話する哲学者”としてJ-WAVEでもお馴染みですが、タイトルがまた秀逸ですね。

中山:忘れてしまっているものや消えかけているもの、掘り出されないものなどに目を向ける姿勢がものすごく共感できますし、好きです。

小川:いいですね。忘れているものは、忘れているからそんなに目を向けられないじゃないですか。永井さんは、そこにどうやって目を向けられているのでしょうか。やっぱり普段から視点が違うのかな。

中山:哲学対話をお仕事としてされていて、置き忘れてしまった言葉や会話、本音がチラっと出たときの未整理の言葉を紐解いているので、やっぱり「徹底的に見る、聞く」ということをいちばん大事にされているのかなと思います。

さらに中山はライフスタイル、人生に影響を与えた1冊として早川義夫の『生きがいは愛しあうことだけ』(筑摩書房)を挙げた。

小川:早川さんは歌手としてご存じの方も多いと思いますが、(この本は)エッセイ集ですか?

中山:はい。早川さんはジャックスというバンドをやられていたのですが、1回辞めて古本屋さんを開いて何年かされて、またシンガーソングライターとして作品を作って、そのあとに出された本です。もともと、知り合いのスタイリストさんから早川さんの『たましいの場所』(筑摩書房)というエッセイ集をご紹介いただいて、そこから派生してこの本に出会いました。表現することの切実さや正直さが自分の指針になっていて、あまりに持ち歩きすぎてもうぐちゃぐちゃなんですけど(笑)。

小川:今日持って来ていただいていますが、本当に中山さんの手になじむ形になっているというか(笑)。ここまで持ち歩かれたら、本もうれしいと思います。

中山:舞台や映画の本番前などに必ずバッグに入れて、「大事なことを思い出さなきゃダメだな」と思ったときにパっと開くと、ちょうどいいことが書いてあったりします。

小川:では、どこを開いても何か響くところがある?

中山:そうですね。本の引用もすごくあるので、この本からさらに本を知ることもできます。

不条理劇ならではの世界観を楽しみながら演じたい

中山は5月15日(金)、16日(土)のプレビュー公演を経て、5月20日(水)より新国立劇場で本公演がスタートする舞台『エンドゲーム』に出演する。サミュエル・ベケットの傑作である同作は、初演から半世紀以上、世界中で上演され続けている。

また、本舞台は小川絵梨子芸術監督が就任以来取り組んできた、すべての出演者をオーディションで決定し、上演する企画の第8弾。中山は1,016名のなかから見事4人のみのキャストの座をつかんだ。

小川:決まったときはどうでしたか?

中山:僕は過去にも1度、フルキャストオーディションを受けたことがあるのですが、落ちてしまって悔しい思いがありました。ですから、「今回は絶対に受かりたい」と言う気持ちと、どこか「叶うかな」と言う気持ちがない混ぜになっていたので、いざ決まったときはちょっと信じられないような、受け入れられないような感覚でした。

小川:オーディションの過程はどうでしたか?

中山:4次審査、5次審査まであって、最初はサミュエル・ベケット以外の戯曲を演じたり、組み合わせを変えてやったりもしました。オーディションの環境がすごくよくて、精神的な安全を担保されるような場所だったので素晴らしかったですね。

小川:そういう環境で挑んで決まると、安心して作品に入っていけますよね。サミュエル・ベケットは不条理劇で有名ですが、今回の『エンドゲーム』はどんな内容ですか?

中山:荒廃した世界のなかで足が不自由な人や目が見えないような人など、さまざまな状況の4人の登場人物がどういう日常を生きているのか、という話です。

小川:不条理劇を演じる感覚はどうですか? (台本を)読んでいて、何を感じ取りますか?

中山:読んでいてわかりづらいところもありますし、「これで会話が成立しているのか、していないのか」「何について語っているのか」が不明瞭なところもすごく多いんです。ただ、紐解いていくと「このセリフとこのセリフはちゃんと会話になっているな」というのがわかるようなところもあります。もちろん、わからないところもあるので「それをどう楽しんでいくか」が、この座組と小川絵梨子さんと翻訳の岡室美奈子先生との今回のテーマです。

小川:不条理劇は最初「なんだこれ、わけわからないな」と思うんですけど、ちゃんと読み解いていくと、ふとつながる瞬間や自分の人生と重なる瞬間がありますし、不条理だからこそいろいろな見え方ができるので、考察のしがいがありますよね。

中山:そうですね。観た方おひとりずつに響くセリフや、「これは私だ」みたいな瞬間が必ずある気がします。サミュエル・ベケットは戦時下で本を書いていて、戯曲の言葉は戦火のなかから生まれたようなものも多いです。だから冷たい世界観のなかに、置き忘れたものや小さなものへの慈しみの愛みたいなものがどこか感じられるような気がするので、それを実現できたらいいなと思います。

中山求一郎の最新情報はハイイロの公式サイトまで。

『ACROSS THE SKY』のコーナー「DAIWA HOUSE MY BOOKSHELF」では、本棚からゲストのクリエイティブを探る。オンエアは10時5分ごろから。

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