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『SHOGUN 将軍』の日本人キャストはこうして決まった。キャスティング・ディレクター川村恵が語る舞台裏

『SHOGUN 将軍』の日本人キャストはこうして決まった。キャスティング・ディレクター川村恵が語る舞台裏

真田広之がプロデューサーと主演を務めた大ヒット海外ドラマ『SHOGUN 将軍』で、日本人俳優のキャスティング・ディレクターを担当した川村 恵が、これまでの経歴やキャスティング・ディレクターという仕事について語った。

川村が登場したのは、3月1日(日)放送のJ-WAVE『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:小川紗良)の「WORLD CONNECTION」。ゲストを招き、世界の最新カルチャーに迫るコーナーだ。

最初は電通グループで雑誌のキャスティングを担当

川村は、2024年に『SHOGUN 将軍』で日本人として初めて第76回エミー賞でキャスティング賞を受賞。さらに2026年2月には、映画『レンタル・ファミリー』のキャスティングが評価され、アメリカキャスティング協会のアワードである第41回アルティオス賞のインディペンデント長編コメディ部門で同作が受賞した。

小川:まず、川村さんがキャスティングという仕事に就かれた経緯を教えてください。

川村:大学卒業後に電通グループに入社していろんな部署を経験したんですが、いちばん長かったのが雑誌メディアの部署だったんです。そこに長く在籍していろいろな仕事を経験させていただいたおかげで、エンターテインメントの世界の方々と多く広く知り合うことができて、エンターテインメント業界のネットワークを築くことができました。その後、ご縁あって2003年から電通キャスティングアンドエンタテインメントという会社に在籍し、22年間仕事をさせていただき、実は2026年からは業務委託というかたちで関わっています。

小川:ずっとキャスティングに携わられてきたと思うんですけど、このキャスティングというお仕事はどういうものなんですか?

川村:映画やドラマに登場する役の配役を決めるお仕事になります。

小川:企画段階から監督やプロデューサーのなかに入って提案していくんですか?

川村:ケースバイケースですね。私の場合は比較的、最初の段階から監督とプロデューサーと一緒に話し合って、主演を決めるところから作業していくことが多いんです。でも一般的には、おそらく主演が決まって、作品の制作が正式に決まったあとにキャスティングというかたちで作品に関わる方もいらっしゃると思いますし、私にもそういう場合がございます。

小川:『SHOGUN 将軍』では、主演の段階から川村さんも入られていたんですか?

川村:海外の場合はいずれにしても、すべてオーディションからスタートしますので、「日本人のキャストを探します」っていう段階でお声がかかることが多いです。主演は正式にもう決まっていて、日本人のキャストを探したいとなったときに相談がきます。

世界中の俳優にチャンスがある時代に

次に、実際の仕事の進め方について話を訊いた。今はオンラインオーディションが一般化しており、俳優もよりグローバル化しているという。

小川:まずお声がかかったら、脚本をきっと読まれると思うんですが、その後どういうふうにお仕事が進んでいくんですか?

川村:映画の企画段階から携わることができる場合は、監督やプロデューサーと話し合いながら主演にふさわしい方をまず候補として絞り込んでいって、そこから交渉をスタートさせます。日本映画の場合は主演が決まらないと作品自体が成立しないので、まずは作品を成立させるためのキャスティングを始めることが最初のお仕事になります。それで無事に主演が決まり、作品の制作も決まったら、そのほかの役を組み立てていきます。登場する役をひとつずつ、アカウントプロデューサーと話し合いながらキャスティングしていきます。

小川:『SHOGUN 将軍』でいうと、真田広之さんという主役の方がいらっしゃって、その次にヒロイン役のアンナ・サワイさんがいらっしゃって、日本語と英語、両方のセリフがあるという特殊なキャスティングだったと思うんですが、難航しなかったですか?

川村:そうですね。『SHOGUN 将軍』は最初からオーディションでしたので、どの役も本当に苦労してオーディションを進めていきました。アンナさんに決定した理由は、おっしゃるとおり日本語と英語両方の演技ができなきゃいけない役で、なおかつヒロインという役にふさわしい魅力を持った女優さんを探さなきゃいけないということで、本当に時間がかかりましたし、世界中でオーディションをしました。

小川:オーディションの場にいるために、世界中を飛び回ったり?

川村:いえ、コロナ禍以降は特にそうなっていますが、セルフテープオーディションといって、最初からオンラインですべてオーディションが進んでいくんです。いろいろな国からテープで参加できますし、2次以降で対面になった際も、Zoomなどのオンラインを通じてオーディションをするスタイルで進めていきます。

小川:オンラインでオーディションができるようになったことで、作品にとってもキャスティングの幅が広がりますし、俳優もいろんな国の作品に参加できる。それはすごくいいですね。

川村:そうですね。今の時代、システムが整っているので、いろんな方にチャンスが広がったなとつくづく思います。

なるべく新しいことを提案したい

話は次第に、キャスティングの核とも言える「仕事でいつも心がけていること」へと移っていった。

小川:川村さんがキャスティングで心がけていることは何でしょうか?

川村:監督のイメージがやっぱりいちばん大切ではあるんですけど、自分なりの提案ですね。自分なりに新しい提案をすることをなるべく心がけようと思ってます。新しい提案って何かというと、特に日本ではオーディションスタイルじゃないことが多くて。実は、監督さんやプロデューサーさんは、知っている俳優さんのなかから選んでしまう傾向にあるんです。そんななかで、私はなるべく新しいキャスティングの提案をしようと心がけています。

小川:それはいいですね。作品の可能性がすごく広がっていく感じがしますよね。

川村:うまくいけば、ですけど(笑)。あともうひとつ、特に海外の作品でオーディションを行うときに心がけているのは、先入観を持たずに俳優さんを見るようにすることです。

小川:海外で日本人のキャストが起用されるときって、ネームバリューとかあんまり関係なくなるというか、けっこうみなさんフラットに挑めるというか。

川村:そうですね。海外はそれが本当にいいところだと思います。逆に言うと、日本の方だとどうしてもこちらがいろんな情報で先入観を持ってしまいがちになるので、それをとにかく排除して。もちろん、演技力は必要なんですけど、演技力だけではなく、その方が作品にどう向き合おうとしているのかとか、あとは背景ですね。どんな背景を持ってらっしゃるのかといったところまで、その辺も全部読み取るようにしていきたいと思っています。たまに直感みたいなこともあるんですけれども、その現場で力を発揮できて、ふさわしい俳優さんを送り出すのが私の仕事になりますので、その責任を考えると、まずは自分の目がしっかりしてなきゃいけないなって思っています。

自身のキャスティング人生でもっともうれしかったこと

続いて、川村のプライベートでの映画との関わり方についても話を訊いた。

小川:プライベートで映画やドラマを観るときも、やっぱりキャスティングって気になりますか?

川村:もちろんです。私にとっては、映画やドラマを観ることって個人的な趣味の延長だと思っていて、趣味を仕事にできていることはとても幸せなことだと本当に感じています。

小川:これまでのキャスティングで、とくに印象に残っていることはありますか?

川村:今ちょっと思い出したんですけど、お仕事ではないんですが、『SHOGUN 将軍』でエミー賞の舞台に立ったときに、アメリカのキャスティング・ディレクターさんが私に「あなたがトロフィーを持って、真ん中に立ってください」って言ってくださったんです。それがとっても感動的で、私にとってはすごく印象的な出来事でした。自分のキャスティング人生のなかで、最高にうれしかったことです。アメリカの方が日本をリスペクトしてくださった、その想いが伝わってきてすごく感動しました。

小川:川村さんがそういう場に立ったことで、日本でもキャスティング・ディレクターという立場があるんだって知った方や、これからこの分野を目指したいと思った方もいらっしゃると思うので、本当にすばらしいことだなと思います。そして、すでに『SHOGUN 将軍』シーズン2の制作が発表されているじゃないですか。話せる範囲でかまわないのですが、川村さんも関わっていらっしゃいますか?

川村:はい、関わってまして、ちょうど今やっているんです。すでに一部のキャストが発表されていますし、撮影はもうすでに始まっています。

小川:そうなんですね。撮影が始まると、キャスティングの立場として現場に行ったりしないのですか?

川村:行きませんね。キャスティングという仕事は、どうしても撮影が始まる前までのお仕事になるので。特に海外の場合は遠いので、行かせていただくようなことはあんまりないんです。日本の場合は、たまに差し入れを持ってスタジオにお邪魔させていただいて、様子を伺いに行くことはあります。こういう仕事なので、逆にすごく現場が気になったりします。キャスティングした俳優が現場でどう評価されているか、撮影中どうしているのかっていうことを、いちおうスタッフからフィードバックをもらうようにはしています。

小川:ちなみに先日、日本で公開された映画『レンタル・ファミリー』、HIKARI監督の作品ですけど、こちらもキャスティングで入られてるんですよね。

川村:はい。主演はブレンダン・フレイザーさんというアメリカの有名な俳優さんなんですけど、それ以外のキャストのオーディションに関わらせていただきました。

小川:今日の放送を機に、これからは映画のスタッフロールで川村さんのお名前を探すようになると思います。

川村:ありがとうございます。キャスティングというお仕事にみなさまが注目してくださるようになったらうれしいです。

『ACROSS THE SKY』のコーナー「WORLD CONNECTION」では、ゲストを招き世界の最新カルチャーに迫る。オンエアは毎週日曜の9時20分ごろから。

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