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「共感されないと思って書いている」作家・小川 哲から見た、日常の“ささいなもやつき”は?

「共感されないと思って書いている」作家・小川 哲から見た、日常の“ささいなもやつき”は?

小説家の小川 哲が、作家を志したきっかけやSFを選んだ理由、初のエッセイ『斜め45度の処世術』に込めた考え方などを語った。

小川が登場したのは、7月9日(木)放送のJ-WAVE『GRAND MARQUEE』(ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann〈セレイナ・アン〉)のゲストコーナー。東京をGROOVEさせる音楽とカルチャー、そして日夜それを創り出す刺激的で面白い人々が集い、語らうプログラムだ。

東京大学の博士課程から小説家を目指した理由は?

小川は2015年に『ユートロニカのこちら側』で第3回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞し、作家デビュー。2017年の『ゲームの王国』で第38回日本SF大賞と第31回山本周五郎賞を受賞。さらに『地図と拳』で第13回山田風太郎賞、第168回直木賞を受賞。そのほか、『君のクイズ』『君が手にするはずだった黄金について』『火星の女王』など話題作を次々に発表している。今回、小川はJ-WAVEに初登場となる。

タカノ:もう何百回も訊かれている質問だと思いますが、作家を目指したきっかけは?

小川:何百回も訊かれましたね。何百回も答えてきたので完成したパッケージがあります。基本的に公式見解として出しているのは、当時、博士課程の学生だったんです。

タカノ:東京大学ですよね。

小川:はい。大学の教員になろうと思って博士課程まで残っていました。そもそも大学の教員になろうと思ったのは、サラリーマンになるのが嫌だったからなんです。サラリーマンになるのが嫌で、大学の先生になって自由に好きな研究をして生きていこうと思ったら、大学の先生って今すごくサラリーマン的なんです。会議もいっぱいあるし、大学という組織の運営を大学の先生がやっている状況で。だから組織運営の会議とかを、大学で僕が教わっていた先生もいつもやっていて。「いや、こういうことじゃないんだよな」と思って。ほかに選択肢があるかなというなかで、「職業小説家になる」というのを自分のなかの目標として頑張ってみたという感じですね。

タカノ:消去法で小説家になってるっていう(笑)。

小川:そうです。消去法なんです。

セレイナ:それまでに小説を書いたことはあったんですか?

小川:ちゃんと書いたことはなかったですね。書きかけたこととか、ちょっと短いものを書いてみたりしたことはあったんですけど。ちゃんと小説家になろうと思って、最後まで書き上げたのはそのときが最初でした。

タカノ:なぜ、SFというジャンルを選ばれたんですか?

小川:いちばん好きなジャンルだったから、というのが大きいですかね。ちょうどタイミングよく、そのときにハヤカワSFコンテストっていう僕が受賞した賞があって。第3回と書いてあると思うんですが、もともとコンテスト自体が20年ぐらい中断していたんです。でも、伊藤計劃(けいかく)さんというSF小説家がすごく売れたことで復活したんです。それで、復活して3回目だったので第3回なんですけど、SFは20年ぐらい新人があまりいなかったというか。だから、「いっぱいコンテストからデビューさせよう」みたいな流れがあって。第1回とか第2回は最終候補に残った人はみんなデビューしていて、受賞していなくても本になっていたんです。「これは最終候補までいけばデビューできるじゃん、倍率もいいし」みたいな感じで(笑)。

セレイナ:ジャンル選びも消去法ということですか(笑)!?

小川:SFが好きというのももちろんね、好きじゃないと書けないので。それはどちらかというと運がよかったという感じですかね。タイミングがよかったというか。

独自の視点でつづった、初のエッセイ集を発売

小川は4月に『斜め45度の処世術』(CEメディアハウス)を発売。雑誌『Pen』で連載していたコラムを再編集した、初のエッセイ集だ。小川が日常のなかで感じた“ささいなもやつき”、人間関係のコツ、人生哲学を独自の視点でつづった1冊になっている。

タカノ:めっちゃ面白かったです。笑いました(笑)!

セレイナ:笑いのなかに学びがたくさん隠されていて、本当に「あ、なるほど」という。まさに背中を押してもらえるような1冊だなと感じました。

小川:それはもう、うれしいです。ありがとうございます。

タカノ:小川さんがこの本を出すことによって「私、ひねくれものです」と表明しているようなものじゃないですか。ご本人は書いていて、抵抗はなかったのでしょうか。

小川:これは恐ろしいことに一切ないですね。僕自身がどう思われるかより、面白くない文章を書くほうがよっぽど怖いので。「僕がこう思われちゃうな」ということよりも、どちらかというとそっちに必死です。「こいつ、つまんないこと言うな」「当たり前のこと言うな」と思われることのほうが、どちらかというと僕の場合は怖いです。

セレイナ:強い……。そんなことなかなか言えないです。

タカノ:日々の日常の分析力だったり、現象から構造を抽出する力がすごいなと思って。デスゲームとか参加したら、めっちゃ生き残りそうだなと(笑)。

小川:デスゲームが放送されていたら、強いかもしれないです(笑)。つまり、視聴者がいるという前提だったら「デスゲームを盛り上がるためにこういう展開にするんじゃないか」とか「こういう設定なんじゃないか」みたいな。本当にただデスゲームをやりたい貴族だったら、なにを考えてるからわからないから、そういう構造の読みは効かなそうですよね。

タカノ:エンターテイナーなんですかね。

小川:ものづくりというものに対しては、普段から小説を書いていることもあって、ずっと考えていることなので。ほかの人より単純にかけている時間が多いというか。だから、ほかの人より細かいことに気づいたりする部分はあるのかなと思います。それは僕の職業が普通と違うので、みなさん自分のやっている職業ごとに得意なものの見方とか分析の仕方があると思います。僕はそれが小説だったということだと思います。

「共感されない」と思って書いている

さらに、タカノとセレイナは『斜め45度の処世術』のなかで気になったエピソードをピックアップして小川に話を訊いた。

タカノ:好きだったエピソードがあって、これネタバレは大丈夫ですか?

小川:そんなものはないです(笑)。

タカノ:「フェイクブロッコリー」という。小川さんがスーパーでお買い物をするんですが、ジャガイモやニンジンをカゴに入れていくと、店員さんに「こいつカレー作るんじゃないか」と思われたら嫌だなと思って、あえてフェイクでブロッコリーを入れるというエピソードがあって。日常の買い物シーンはいつもあんな感じ、ということなんですよね。

小川:いつもそんな感じでもないんですが(笑)。まあでも、実際にブロッコリーを入れたこともあるし、「今からこいつ、これを作るな」っていうのがわかることが、ちょっと不快感というか。

セレイナ:不快感(笑)。

タカノ:僕は全然、気にしたことがなくて。

小川:だいたいの人がそう言うので、たぶん気にしない人がほとんどだし、「レジやってるけど、そんなこと気にしている余裕はありません」みたいな人もいっぱいいらっしゃるから。

タカノ:店員さん側もね。

小川:僕だったら「この人はどういうものを食べるのかな」とか考えながらレジをやるだろうなと思って。だから、そういう発想になるんですけど。

セレイナ:面白い。

タカノ:番組スタッフの放送作家は「めっちゃわかる」って言っていました。

小川:たまにいるので、僕だけじゃなかったと。僕はこれ、共感されないと思って書いているので。さすがに、これは「こいつやべえ」と思われるだろうと思って書いていたら、けっこう「わかる」っていう人が意外にいて。やっぱり言ってみるものだなと。

セレイナ:私が好きだったのは「運動神経とメンタル神経」の章で。運動に対しての神経というか、そういうワードがあるなら“メンタル神経”というワードもあっていいじゃんという。心の上手な動かし方という意味で、このワードもひとついいんじゃないかと定義されていて、めちゃくちゃ納得しました。

小川:僕自身が、ほかの人とのことで傷ついた、こういうことを気にした、こういうのにやる気が出ないとか、なかなかできないというときに、よくも悪くも僕自身が自分の心を自在に動かすのが得意だなと思って。それが得意な人と苦手な人がいて、それは運動神経みたいに人によって得意不得意があるなというのは、ずっと感じていて。そういう発想もいいんじゃないかなみたいな。

セレイナ:小川さんはメンタル神経が高めというか。

小川:自分ではけっこう得意なんじゃないかなと思いますね。自分という人間の心の動かし方を熟知しているというか。わりと「こうするとうまくいくんじゃないか」とかは、わかるほうです。

セレイナ:メンタル神経を高めるコツはありますか?

小川:自分がやる気がないときとか、自分が傷ついたとき、怒ったときは自分の心が自分のコントロールから外れるときがありますよね。なんでそれが外れて、なにがきっかけで、どういうふうに外れているのか。なるべく言語や理解、正常な自分が、自分の心が自分の思いどおりに動いていない理由を理解できるようにすると。

セレイナ:冷静さ、みたいな?

小川:そうですね。たとえば、怒っているときは夢中になってるから、なかなかそういう冷静さはできないと思います。あとで反省して「なんであんなに頭にきたんだろう」とか。あのひと言なのか、でもあのひと言を言われたときにほかでは頭にこなかったよなとか。じゃあ、こういう展開で言われたからなのかとか、この人に言われたからなのかとか。なるべく原因を自分のなかで理解しようとすると、次にそのシチュエーションに近づきそうになったときに「あ、これは自分の心が思わぬ方向に動くかもしれないな」って警戒できるというか。動いてしまっても「これはこういう理由だから怒ってるんだ」とわかると、すごく気が楽になるというか。自分で怒ってる理由とかコントロールできない理由がわからないと、より心が暴走しちゃう気はします。とか言ってるけど、別にわからないです(笑)。

タカノ:いや、でもすごく参考になりました。

セレイナ:運動と一緒で、振り返って自分のなかでちゃんと「なにがダメだったのか」というのを理解して練習するみたいなことが必要なんですかね。

小川:日々の日常をちゃんと練習の場にする、というのは重要かもしれません。フィードバックして反省して、みたいな。とか言ってるけど、僕も自分の一例しかないから、わからないです。

J-WAVE『GRAND MARQUEE』は月~木曜の16時30分~18時50分にオンエア。

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月・火・水・木曜
16:30-18:50