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綿矢りさ×吉岡里帆が、京都での不思議な体験を語り合う「その音、私も聞いたことがあります」

綿矢りさ×吉岡里帆が、京都での不思議な体験を語り合う「その音、私も聞いたことがあります」

小説家の綿矢りさと吉岡里帆が対談。京都で聞こえる“不思議な音”の正体をふたりで語り合い、さらに新作『激しく煌めく短い命』の魅力に迫った。

綿矢が登場したのは、11月30日(日)放送のJ-WAVE『UR LIFESTYLE COLLEGE』(ナビゲーター:吉岡里帆)。心地よい音楽とともに、よりよいライフスタイルを考えるプログラムだ。トークの模様は、Spotifyなどのポッドキャストでも配信中。

本棚は…ライフスタイルに迫る

綿矢りさは1984年生まれ、京都府出身。高校在学中の2001年に『インストール』で文藝賞を受賞し、鮮烈なデビューを飾った。さらに、早稲田大学在学中の2004年には『蹴りたい背中』で芥川賞を受賞。その後も精力的に作品を発表し、『勝手にふるえてろ』『私をくいとめて』『夢を与える』など、多くの著作が映像化されている。綿矢が『UR LIFESTYLE COLLEGE』に出演するのは、2021年11月以来、2度目の登場だ。

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この番組では、ライフスタイルや部屋のこだわりをゲストに聞いている。今回、綿矢は「寝室に関する気づき」や、作家らしく「本棚」の変化を明かした。吉岡も増えていく本をどうするか困っているかを明かし、手放す基準を聞く場面も。全編はポッドキャストで配信している。

この記事では、内容の一部をテキストで紹介する。

・ポッドキャストページ

連載から大幅に加筆・修正した『激しく煌めく短い命』を発売

前回はリモートで出演した綿矢。今回は対面でじっくり語り合った。

吉岡:そのときは『ひらいて』が映画化するというお話を伺いました。今回も新作のお話をしていきたいと思います。文藝春秋さんから8月に発売された『激しく煌めく短い命』は、月刊文芸誌『文學界』で4年にわたって連載されていた作品をまとめたものになっています。1冊にするとすごい厚みになりましたね!

綿矢:そうですね。連載していたときはわからなかったんですけど、本になってみるとたしかに厚いなと感じました。

吉岡:タイトルは連載当初「激煌短命」でしたが、書籍では「激しく煌めく短い命」に変更され、加筆・修正が加えられています。本にする際に加筆・修正というのは、綿矢さんご自身よくされるのでしょうか?

綿矢:あまりしないんですけど、今回は雑誌で連載されていたときの反響を見つつ、「もうちょっと踏み込んで書いてもいいかな」と思い、大幅に加筆しました。

吉岡:それは「もっとこういうシーンが見たかった」という声を聞いていくような感じでしょうか?

綿矢:どちらかというと、自分にとって「ここまで書いて大丈夫かな」と不安だったところが通過されるかどうか、ですね(笑)。

吉岡:たしかに、題材的にセンシティブなところがたくさんありますもんね。

綿矢:そうなんです。すごく物議をかもしたら調節しようと思ったけど、通過したならもうちょっと書いてもいいのかなと、そういう反応の見方でした。

京都で聞こえる“不思議な音”の正体は?

『激しく煌めく短い命』は二部構成の作品だ。第一部では、京都を舞台に、久乃(ひさの)と綸(りん)の中学生時代が描かれる。ふたりは周囲の偏見にさらされながらも、手探りで愛を育んでいく。そして十数年後、第二部では、東京の会社に勤める久乃が、思いがけないかたちで綸と再会する。

吉岡:これまでも京都を舞台にした作品を書かれていますが、今回は女性同士の恋愛ということで、センシティブな部分や踏み込んだ描写もたくさんありました。物語は、主人公の久乃が「山の音」を聞くシーンから始まりますが、こちらは綿矢さんご自身が経験されたことなんですよね?

綿矢:そうですね。夜の決まった時間になると「ボー」っていう音が街全体から聞こえてきて。この鼓膜だけ震えるような音は何なのかなと京都の家で思っていたので、それを冒頭で書きました。

吉岡:その音、私も聞いたことがあります。

綿矢:本当ですか!

吉岡:東京に来たとき、あまりにも音が違いすぎて、怖くて不安を感じた経験があります。私は京都の山の近くで生まれ育ったのもあって、それこそ震えているような音を聞きましたけども、あれって何なんですかね? 自然の音?

綿矢:めっちゃ不思議ですよね(笑)。

吉岡:『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送)で取り上げてほしいぐらい気になります。

綿矢:以前、ネットで調べたら、遠くでやっているライブの音が伝わってきてるとか、給湯器などの機械音だとか、いろんなことが書かれていたんですけど、どれもピンとこなくて。すごく独特な音ですし、家族も聞こえていたので、本当に『探偵!ナイトスクープ』で調べてもらいたいです(笑)。

吉岡:私は居心地のよさと不安感の両方がある感覚がありました。

綿矢:謎は解けないけれど、京都の思い出のひとつですね。素敵な音です。

吉岡:京都の持つ底知れなさとか、ミステリアスさを象徴する場面として書かれているそうです。

同性の恋愛で描写したいことは「共感」

『激しく煌めく短い命』だけでなく、女性同士の恋愛を題材にすることが多い綿矢。その理由や、異性愛を描くときとの違いを吉岡が掘り下げていった。そして話題は、「小説家と俳優という異なる立場から、自分とは異なる存在を生み出し、演じること」へと移っていった。

吉岡:綿矢さんの描く登場人物は、綿谷さん自身が生んでいるはずなのにしっかり他人として存在していますけども、そういう距離感って毎回そうですか?

綿矢:そうですね。自分は主人公たちのメッセージを伝える役割、翻訳機みたいな感じになっているんです。なので、自分の個を消し去って、出てくる人たちの声を聞くというか、自分とは切り離した人格で書いている感じがしています。

吉岡:すごい!

綿矢:吉岡さんはいろんな方になりきられていますが、演じられるときはどうなっているんですか?

吉岡:演者によって違うと思うんですけど、通じ合える部分もあるかもしれません。体とか声を“貸している”という感覚に近いですね。私の個人的なことではなくて、そのセリフを言うためにはそういう状態の人になっていないといけないと、(役に)入る前に逆算します。だけど、入っちゃうと全部取られることもあります。

綿矢:役に乗っ取られる!?

吉岡:そうとしか動けなくなる、みたいな状態です。私自身は「こういうふうにしたら面白くなるかも」と思っているけど、言葉とかト書き(登場人物の動作や行動を指示する部分)はそうさせてくれない。不思議な感じですね。

綿矢:演じているあいだは自分を俯瞰している感じですか?

吉岡:ある尊敬している女優さんから、「70パーセントは奔放で自由で感性だけで心のままにやったほうが素敵だけど、30パーセントぐらいは俯瞰したほうがいいよ」と言われたことがありまして。なかなか俯瞰できないタイプなんですけど、できるだけそうしたいと思っています。

綿矢:そうなんですね! 貴重な話が聞けました!

『UR LIFESTYLE COLLEGE』では、心地よい音楽とともに、より良いライフスタイルを考える。オンエアは毎週日曜18時から。

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