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神保町が「世界でもっともクールな街1位」に。今、本の街に外国人観光客が集まる理由とは?

神保町が「世界でもっともクールな街1位」に。今、本の街に外国人観光客が集まる理由とは?

洋書専門の古書店「北澤書店」の店主・北澤里佳さんが、日本文学のインバウンド需要や、古書を守る新たな取り組みについて語った。

北澤さんが登場したのは、11月27日放送のJ-WAVEの番組『MIDDAY LOUNGE』(ナビゲーター:ジョン・カビラ)の「MORI BUILDING TOKYO FINDS」。多様性あふれる東京の楽しみ方を 独自の視点で紹介するコーナーだ。

『MIDDAY LOUNGE』はグローバルなルーツを持つ国際色豊かなナビゲーターたちが、リスナーと一緒に「新しい自分、新しい世界と出会う」3時間の生放送プログラムだ。ナビゲーターは、月曜 ハリー杉山、火曜 市川紗椰、水曜 クリス・ペプラー、木曜 ジョン・カビラが担当している。

神保町を訪れる外国人観光客が増加中

27年ぶりに芥川賞と直木賞の該当作がなしという結果となり、王谷 晶の『ババヤガの夜』(河出書房新社)が日本人として史上初めて英国推理作家協会賞(ダガー賞)翻訳小説部門を受賞するなど、2025年の文学界は話題に事欠かない。

日本文学はいま、世界から大きな注目を集めている。柚木麻子の小説『BUTTER』(新潮社)は世界累計100万部を突破し、37カ国での翻訳出版を控えている。受賞こそ逃したものの、世界的に権威のある文学賞のひとつである国際ブッカー賞では、川上弘美の『大きな鳥にさらわれないよう』(講談社)が最終候補にノミネートされた。

ジョン:イギリスでは2024年、翻訳小説の売り上げ上位40作のうち、日本の作品が43パーセントでした。現地の書店では日本文学の特設コーナーが設けられるほど、日本文学が注目されています。そして、本の街、神保町にも海外から多くの観光客が訪れているんですね。洋古書専門の北澤書店の4代目店主・北澤里佳さんにいまの状況を伺いました。

北澤:毎日のように夏目漱石や村上春樹さんの本などのお問い合わせがあり、日本文学に興味のある方が非常に多いと感じています。日本文学だけではなく、海外のお客様がご自身の国で出版された本を、私たちのお店で探されることがとても多いです。さらに、「こんないい本があった」と古典の作品をご自身の国に持って帰られるという、そういった逆転現象が起きています。

ジョン:北澤書店は明治35年、1902年に創業。当時は国文学を扱っていたのですが、戦後は世界の思想を広めるべく、洋書も扱うようになりました。3代目店主である北澤さんのお父様が洋書専門店に変えたんですね。その後、「本を未来に受け渡す場所」をコンセプトに、いまの洋古書専門店のかたちとなりました。

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古書を生かし・守る新たな取り組みがスタート

2025年に、イギリスのタイムアウト誌が選ぶ「世界でもっともクールな街」で1位に選出された神保町。海外では古書店そのものが珍しく、年代物のヘミングウェイやヴァージニア・ウルフの作品を求めて来店する海外客が多いという。一方で、昨今の活字離れやインターネットの普及により、閉店する古書店があとを絶たないのが現状である。

続いて、北澤さんに紙の本のよさを次の世代へ伝えるために、北澤書店が進めている新たな取り組み「KITAZAWA DISPLAY BOOKS」について話を聞いた。

北澤:こういう文化、お店があるんだよと知っていただきたいという想いから、バーゲンブックを「ただ読むだけでなく、いろんなかたちで活用してください」という提案をしています。こういったことは古書店では異例なんですけども、新しいビジネスラインを考えました。

バーゲン価格となった洋古書は、本来“読み物である”という前提があるため、ディスプレイ向けとして提案することに対しては厳しい意見もあったという。しかし、セール対象となった書籍をさまざまなかたちで活用することで、書店を知ってもらう可能性を広げ、また通常書籍の価値の維持にもつながっていると北澤さんは語る。

北澤:北澤書店はこの取り組みでなんとか踏ん張って、いい本をちゃんと次世代につなげていきたいと思っています。

ジョン:ユニークで面白いですね。バーゲン価格となった洋古書をインテリアやディスプレイ向けに提案・販売する取り組みだそうです。要するに、背表紙がそのままアートワークになっているということですよね。服飾業界で10年ほど空間デザインのお仕事をされていた北澤さんだからこその発想であり、取り組みだと感じました。

本が風景や壁の一部としてディスプレイされている場合でも、そこに触れることで「こんな本があるのか」と気づく場面を提供できる可能性がある。また、本との出会いの入口が広がることで、これまであまり足を運ばなかった層が店を訪れるようになることも期待できる。

ジョン:紙の本には、手に取って読んでこそ生まれる特別な体験があります。厚みがあり、インクの見え方が角度によって変化したりと、電子の画面にはない物質的な手触りがありますよね。そして、古書ならではの独特な匂いも魅力的です。今回は、世界が注目する街・神保町から、日本文学の楽しみ方を教わりました。

北澤書店の詳細は公式ホームページまで。

J-WAVE『MIDDAY LOUNGE』のコーナー「MORI BUILDING TOKYO FINDS」は、いま「知りたい・行きたい・感じたい」東京を見つける。放送は月曜~木曜の14時30分ごろから。

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2025年12月4日28時59分まで

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月・火・水・木曜
13:30-16:30