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ベースの進化は目覚ましい──WONK・井上幹が語る“これからのおもしろさ”

ベースの進化は目覚ましい──WONK・井上幹が語る“これからのおもしろさ”

11月11日の「ベースの日」にちなんで、WONKのベーシスト・井上 幹がベースの魅力を語った。

井上が登場したのは、11月11日(火)放送のJ-WAVE『MIDDAY LOUNGE』(ナビゲーター:市川紗椰)の「MUSIC EXPLORER」。世界の音楽シーンのムーブメントを“いま”の視点で考察するコーナーだ。

『MIDDAY LOUNGE』はグローバルなルーツを持つ国際色豊かなナビゲーターたちが、リスナーと一緒に「新しい自分、新しい世界と出会う」3時間のプログラム。ナビゲーターは、月曜 ハリー杉山、火曜 市川紗椰、水曜 クリス・ペプラー、木曜 ジョン・カビラが日替わりで担当している。

11年目の「ベースの日」をお祝い!

11月11日は「ベースの日」。2013年、音楽プロデューサー/ベーシストの亀田誠治がナビゲーターを務めるJ-WAVEの番組で、この日を記念日にしようと提案。これをきっかけに、クラウドファンディングで集まった226名による「ベースの日制定委員会」の有志が記念日として申請し、2014年に日本記念日協会により正式に制定された。

日付の由来は、ベースの一般的な弦の本数が4本であり、「11月11日」という数字が4本の弦が並んでいるように見えることから。ベースという楽器の魅力と素晴らしさを広めることを目的にしており、制定以降、毎年11月11日には「ベースの日制定委員会」を中心に、さまざまなイベントやキャンペーンが行われている。

この日の番組では「ベースの日」に合わせて、エクスペリメンタル・ソウルバンド、WONKのベーシストである井上 幹をゲストに招き、ベースの魅力について話を聞いた。

Endless Gray

市川:本日、スタジオにベースをお持ちいただきました! こちらは普段使っているものですか?

井上:そうですね。赤いボディのベースです。こういう音が出ます。

市川:カッコいいです! 「ベースの日」は4本の弦が語源とのことですが、5弦ベースなんですね!

井上:そうなんです(笑)。とはいえ、11年目の「ベースの日」ということで、今年は6弦までは許容範囲なんじゃないかなと思っています!

市川:たしかに! ちなみに5弦だと、どの音が増えるのでしょうか?

井上:低い音が増えるので、より腹にくる低音が鳴らせるようになります。

ベースはアンサンブルの土台を担う存在

まずは、井上にバンドミュージックにおけるベースの役割を聞いた。

市川:バンドのなかでベース音だけを聴くのは、低音なのでなかなか難しかったりするわけですが、実はものすごく大きな影響力をもたらしています。そちらのご説明をお願いできますか?

井上:おっしゃるとおり、ベースは低くて聴こえにくい側面もあるんですけど、やっている身からすると全体のハーモニーやリズムをコントロールしたりと、“場を支配する楽器”だなと感じています。

井上は、事前に制作してきたベースの音が入っていない音源と、入っている音源をそれぞれスタジオで再生した。井上が制作した音源を聴き比べている模様は、以下のradikoリンクから11月18日まで再生できる。

WONK・井上 幹が制作した、ベースの役割をわかりやすく伝える音源

【radikoで聴く】https://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20251111140307

まず、ベースが入っていない音源を聴いた市川の反応は……。

市川:これだけ聴いてもかっこいいですね。ドラムがあるから低音もリズムもあって。ここにベースが入ったらどうなるかですよね。

続いて、ベースが入った音源を再生する。

市川:ベースが入ることで体を左右に揺らしたくなるようなグルーヴが生まれましたね!

井上:ですよね。エイトビートの横にノれるような、ハーモニー的には小気味のよい明るい音だと思いますね。続いて、ベースの音をちょっと変えると全然違ったものになるのが次のサンプルです。

さらに、井上がベースのフレーズを変えた音源をオンエアすると……。

市川:先ほどの爽やかな音から、ドラマチックなものになりました!

井上:ハーモニーはダークになって、ベースが伸びることでドラムのリズムと合わさって、かっこいい印象になりましたね。

市川:しかも、ゆったり揺れていたのが、今回は跳ねたくなるというか踊りたくなる感じでした。

井上:これをさらに変えることができます。

最後に、ベースのフレーズをさらにアレンジした音源を再生すると……。

市川:すごい! 全部同じトラックなんですよね?

井上:そうなんです。今回、音色も構成楽器もすべて同じで、変えたのはベースのフレーズだけなんですよ。

市川:リズムはもちろん、ハーモニーまで違って聴こえてきます。

井上:そこがポイントでして、ベースの弾くリズムによってリズムを支配することもあれば、弾く音でハーモニーを支配することもあります。ピアノやギターで弾いた音に対して、ベースがアプローチするとガラッと印象が変わることは往々にしてあるんですね。

市川:ベースはバンドにおける陰の支配者なんですね!

ベースの可能性が広がった楽曲を紹介

続いて、井上はおすすめのベース楽曲として、もっとも影響を受けたアーティスト、ディアンジェロのアルバム『Voodoo』収録の1曲目『Playa Playa』を紹介し、オンエアした。

Playa Playa

市川:ベースが印象的な楽曲ですが、どういった影響を受けたのでしょうか?

井上:ベースが前ノリじゃなく、後ろノリ過ぎるところです。ベースはピノ・パラディーノというベーシストなんですけども、もともとはこういうプレイスタイルじゃないんですよ。よくよくインタビューを読んだところ、「『後ろに弾け』というディレクションがあった」みたいな話がありまして、これは革命だなって思いましたね。

市川:ベーシスト側からすると、後ろに弾くのって難しいんですか?

井上:そうですね。それこそジャズにおいてはベースは前に引っ張っていく存在だったりするので、それをあえて後ろにっていうのは、この時代だと珍しかったのかなって思いました。

市川:そもそも、井上さんはなぜベースを始められたのでしょうか?

井上:ベーシストあるあるなんですけど、自分はもともとギターを弾いていまして。だけど、バンドを組むときにメンバー内にいないってことでベースになった経緯です(笑)。

市川:そこからベースがおもしろいって思った瞬間はどんなときですか?

井上:やればやるほど、ベースの支配力を実感するんですよね。でも、前に出て「キャー!」って言われるような存在ではないんです。だけど、実際のアンサンブルではちゃんと支配している。その感じが、自分の性にめちゃくちゃ合ってるなと思いました(笑)。

「ベースの進化」は目覚ましい

ミキシングエンジニアとしても活動する井上は、ベースの音が全体のバランスのなかでどのように聴こえるかを意識していると語る。そのため、ベーシストとしての感覚とは異なる視点で音を捉えているという。

井上:もちろん、ベースが主役のときはガッツリ出す、そういう意識でやっていますね。

市川:打ち込み音やアップライトのコントラバスもあったりと、いろんなベースがあると思いますが、いまのベースのパートはどんなかたちで進化していますか?

井上:ベースの進化って目覚ましいんですよ。低音を担う役割からベースという楽器が生まれて、そこからメロディーを弾くベーシストも現れて、和音を弾くベーシストも登場しました。ベースという楽器で何ができるかってところが進化して、いまは役割も奏法もかなり飽和して、「できることはなんでもやった」時代がいまかなと思っています。なので、今後はベースの重低音をどう体で感じ取るか、その部分が進化していくのがおもしろいなと思っています。

市川:どうやって体が感じるか。

井上:たとえば、ライブハウスでベースを聴くと体が振動するんですけど、イヤホンだとしないんですよね。なので、体で振動を感じられるデバイスが登場するみたいな、そういう進化はおもしろいんじゃないかなって思います。

市川:音響面でベースの可能性を拡張するってことですね。新しい音楽とテクノロジーの方向性として、非常に気になるところです。

WONKの最新情報は公式サイトまで。

J-WAVE『MIDDAY LOUNGE』のコーナー「MUSIC EXPLORER」では、世界の音楽シーンのムーブメントを“いま”の視点で考察する。放送は月曜~木曜の14時ごろから。

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2025年11月18日28時59分まで

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番組情報
MIDDAY LOUNGE
月・火・水・木曜
13:30-16:30