クリス・ペプラーが1980〜1990年代の楽曲に注目し、音楽が持つクロスジャンルな融合性と、現代のアーティストに与えた影響について語った。
この内容をお届けしたのは、12月10日(水)放送のJ-WAVE『MIDDAY LOUNGE』(ナビゲーター:クリス・ペプラー)の「MUSIC EXPLORER」。世界の音楽シーンのムーブメントを“いま”の視点で考察するコーナーだ。
『MIDDAY LOUNGE』はグローバルなルーツを持つ国際色豊かなナビゲーターたちが、リスナーと一緒に「新しい自分、新しい世界と出会う」3時間のプログラム。ナビゲーターは、月曜 ハリー杉山、火曜 市川紗椰、水曜 クリス・ペプラー、木曜 ジョン・カビラが日替わりで担当している。
「MUSIC EXPLORER」のコーナーでは、80〜90年代の楽曲を特集し、懐かしさと新しさが交わるサウンドを紹介した。
クリス:80年代後半から90年代といえば、J-WAVEが誕生して成長した時期です。この時期に注目されたのが「クロスジャンル」という考え方でした。いろんな音楽が時代をクロスして融け合い、原点進化しました。音楽の楽しみ方が一段と豊かになった時代だったと言えるでしょう。
クロスジャンル化が進むなか、J-WAVEでは開局当時からアシッドジャズ、スムースジャズ、グラウンドビート、ニューエイジ、ニューソウル、ヒップホップソウル、ブリットポップ、グランジ、ミクスチャーロック、ワールドミュージックなど、多様な音楽が放送されていた。当時の音楽が体現した「データベース的な考え方」は、異なる価値観が混ざり合う独自の文化を生み出し、現在の音楽にも大きな影響を与えている。
クリス:その影響は、最近のミュージシャンたちの音楽の作り方からもうかがえます。インタビューすると、「ビートから始める」と答える方が非常に多いんですね。これはかなり的を射ていて、ソウル、ファンク、ヒップホップなどはまずビートからなんですよ。
ヒップホップやラップにブレイクビーツを用いるように、ロックやポップスならエイトビート、プログレなら16ビートといった具合に、ビートによって音楽の方向性は大きく決まってくる。また、音色にも時代性が表れる。打ち込みやシンセベースが多用されるなど、時代ごとに特徴的なサウンドが生まれてきた。
クリス:そういったコンビネーションのなかで、過去の音楽がヒントやエッセンスとなって、新しい作品が生まれていると言えるのではないでしょうか。先ほども番組でサンダーキャット、ブルーノ・マーズ、アンダーソン・パーク、シルク・ソニックの楽曲をオンエアしましたが、過去のモチーフを使っていまに蘇らせていると感じました。インターネットのおかげで、過去100年間分は録音された音楽、曲を見つけることがほぼできると思います。
現在の音楽は、オールドからニューへと進む縦軸ではなく、膨大なアーカイブが横並びになっている状況にある。聴き手が常に「新しい音楽」に出会える時代になったのだと、クリスは語る。
クリス:音楽が持つクロスジャンルな融合性、いまの時代のアーティストが与えた影響を感じ取っていただきたいと思います。
どちらも1992年リリースの2曲について、クリスは解説する。
クリス:メンズ中心のヒップホップに風穴を開け、新たな時代を切り拓くゲームチェンジャーとなった曲『REAL LOVE』。「クイーン・オブ・ヒップホップ・ソウル」と称されるように、その後に続く女性ソウル、R&Bシンガーのデフォルト的存在と言っても過言ではないと思います。そして、『Rebirth of Slick(Cool Like Dat)』はジャズ・ラップのパイオニアである3人組、DIGABLE PLANETSがアート・ブレイキーをサンプリングしたトラックでラップしたこの曲は、一般リスナーにも広く届き、大きな成果を上げた。第36回グラミー賞最優秀ラップ・パフォーマンスを受賞し、MTVでもヘビーローテーション。ビルボードのトップ10入りも果たしました。それまでのラップにありがちな、いわゆるストリート的なリリックではなく、非常に文学的な表現にこだわっているラップです。
当時は、ジャズとヒップホップの融合がとりわけ顕著であった。1993年には、ラッパーのグールーが両ジャンルの融合をテーマに掲げたプロジェクト「JAZZMATAZZ(ジャズマタズ)」をスタートさせている。さらに、マイルス・デイヴィスの遺作『Doo-Bop』がヒップホップを取り入れた作品であったことも、時代の転換点を象徴する出来事であった。
クリス:最近の話ですと、ケンドリック・ラマーは自らを「ラッパーの服を着たジャズミュージシャン」と表現し、ジャズとラップをさらに別次元へと開拓していると言ってもいいのかもしれません。
クリス:1994年の曲ですが、A Tribe Called Questのアリ・シャヒード・モハマッドが手がけた、ジャズ×ヒップホップのトラックが土台になっています。そこにマーヴィン・ゲイを思わせる多重コーラスを重ね、さらにクワイエット・ストームの要素も取り入れることで、より進化したサウンドに仕上がっています。また、それまでキラキラだったR&Bサウンドのイメージを、オーガニックな雰囲気に落とし込んだ曲でもあります。
ディアンジェロはジャンルをクロスし、シームレスに融合させ、新しい音楽の世界観「ネオ・ソウル」を生み出した象徴的な存在だ。
クリス:90年代後半から2000年代初頭にかけて、ディアンジェロを中心にアーティストたちが集まり、「Soulquarians」というコレクティブを結成しました。ディアンジェロはもちろんですけど、ルーツのクエストラヴ、J・ディラ、エリカ・バドゥ、コモン、モス・デフ、ラファエル・サディーク、タリブ・クウェリ、ピノ・パラディーノなどなど、名義作品を出すのではなく、それぞれの楽曲に関わり合いながら、ネオ・ソウルやジャズ、ヒップホップのスタイルを日々探求していたわけですね。
ディアンジェロに影響を受けた若手アーティストは非常に多い。クリスがナビゲートを務める J-WAVE『SAISON CARD TOKIO HOT 100』(毎週日曜 13:00-16:54)でも、ゲストとして登場する若手日本人R&Bアーティストの多くが「ディアンジェロから影響を受けている」と語るという。
クリス:自分たちが生まれる前に活躍した、ディアンジェロの音楽が響いているわけです。ディアンジェロは惜しくも今年10月に亡くなってしまいましたけども、彼のDNAは確実に継承されていると思います。
クリスはその後、UKのアシッドジャズとして、ブラン・ニュー・ヘヴィーズの『Dream On Dreamer』とガリアーノの『Prince Of Peace』をセレクトした。
J-WAVE『MIDDAY LOUNGE』のコーナー「MUSIC EXPLORER」では、世界の音楽シーンのムーブメントを“いま”の視点で考察する。放送は月曜~木曜の14時ごろから。
この内容をお届けしたのは、12月10日(水)放送のJ-WAVE『MIDDAY LOUNGE』(ナビゲーター:クリス・ペプラー)の「MUSIC EXPLORER」。世界の音楽シーンのムーブメントを“いま”の視点で考察するコーナーだ。
『MIDDAY LOUNGE』はグローバルなルーツを持つ国際色豊かなナビゲーターたちが、リスナーと一緒に「新しい自分、新しい世界と出会う」3時間のプログラム。ナビゲーターは、月曜 ハリー杉山、火曜 市川紗椰、水曜 クリス・ペプラー、木曜 ジョン・カビラが日替わりで担当している。
楽しみ方が広がった80〜90年代サウンドに注目
12月8日~11日にオンエアした『MIDDAY LOUNGE』のキーワードは「New Vintage Music Week」。J-WAVEが掲げる「原点進化」と、番組が提案する「新しい世界との出会い」を、音楽を通して体験できる1週間だ。「MUSIC EXPLORER」のコーナーでは、時代を超えて、「今」もVIVIDに響く、80年代後半〜90年代の楽曲を特集した。「MUSIC EXPLORER」のコーナーでは、80〜90年代の楽曲を特集し、懐かしさと新しさが交わるサウンドを紹介した。
クリス:80年代後半から90年代といえば、J-WAVEが誕生して成長した時期です。この時期に注目されたのが「クロスジャンル」という考え方でした。いろんな音楽が時代をクロスして融け合い、原点進化しました。音楽の楽しみ方が一段と豊かになった時代だったと言えるでしょう。
クロスジャンル化が進むなか、J-WAVEでは開局当時からアシッドジャズ、スムースジャズ、グラウンドビート、ニューエイジ、ニューソウル、ヒップホップソウル、ブリットポップ、グランジ、ミクスチャーロック、ワールドミュージックなど、多様な音楽が放送されていた。当時の音楽が体現した「データベース的な考え方」は、異なる価値観が混ざり合う独自の文化を生み出し、現在の音楽にも大きな影響を与えている。
クリス:その影響は、最近のミュージシャンたちの音楽の作り方からもうかがえます。インタビューすると、「ビートから始める」と答える方が非常に多いんですね。これはかなり的を射ていて、ソウル、ファンク、ヒップホップなどはまずビートからなんですよ。
ヒップホップやラップにブレイクビーツを用いるように、ロックやポップスならエイトビート、プログレなら16ビートといった具合に、ビートによって音楽の方向性は大きく決まってくる。また、音色にも時代性が表れる。打ち込みやシンセベースが多用されるなど、時代ごとに特徴的なサウンドが生まれてきた。
クリス:そういったコンビネーションのなかで、過去の音楽がヒントやエッセンスとなって、新しい作品が生まれていると言えるのではないでしょうか。先ほども番組でサンダーキャット、ブルーノ・マーズ、アンダーソン・パーク、シルク・ソニックの楽曲をオンエアしましたが、過去のモチーフを使っていまに蘇らせていると感じました。インターネットのおかげで、過去100年間分は録音された音楽、曲を見つけることがほぼできると思います。
現在の音楽は、オールドからニューへと進む縦軸ではなく、膨大なアーカイブが横並びになっている状況にある。聴き手が常に「新しい音楽」に出会える時代になったのだと、クリスは語る。
クリス:音楽が持つクロスジャンルな融合性、いまの時代のアーティストが与えた影響を感じ取っていただきたいと思います。
ジャズとヒップホップの融合が音楽シーンに与えた影響は?
クリスは、90年代に黄金期を迎えたヒップホップがソウル、ジャズ、R&Bと融合し、進化していった視点から楽曲をセレクトした。最初にオンエアしたのは、メアリー・J.ブライジの『REAL LOVE』と、DIGABLE PLANETSの『Rebirth of Slick(Cool Like Dat)』である。Real Love
Digable Planets - Rebirth of Slick (Cool Like Dat) (Official Music Video)
クリス:メンズ中心のヒップホップに風穴を開け、新たな時代を切り拓くゲームチェンジャーとなった曲『REAL LOVE』。「クイーン・オブ・ヒップホップ・ソウル」と称されるように、その後に続く女性ソウル、R&Bシンガーのデフォルト的存在と言っても過言ではないと思います。そして、『Rebirth of Slick(Cool Like Dat)』はジャズ・ラップのパイオニアである3人組、DIGABLE PLANETSがアート・ブレイキーをサンプリングしたトラックでラップしたこの曲は、一般リスナーにも広く届き、大きな成果を上げた。第36回グラミー賞最優秀ラップ・パフォーマンスを受賞し、MTVでもヘビーローテーション。ビルボードのトップ10入りも果たしました。それまでのラップにありがちな、いわゆるストリート的なリリックではなく、非常に文学的な表現にこだわっているラップです。
当時は、ジャズとヒップホップの融合がとりわけ顕著であった。1993年には、ラッパーのグールーが両ジャンルの融合をテーマに掲げたプロジェクト「JAZZMATAZZ(ジャズマタズ)」をスタートさせている。さらに、マイルス・デイヴィスの遺作『Doo-Bop』がヒップホップを取り入れた作品であったことも、時代の転換点を象徴する出来事であった。
クリス:最近の話ですと、ケンドリック・ラマーは自らを「ラッパーの服を着たジャズミュージシャン」と表現し、ジャズとラップをさらに別次元へと開拓していると言ってもいいのかもしれません。
ディアンジェロの音楽性は若手アーティストにも引き継がれている
続いてクリスは、ヒップホップとジャズの融合が進むなかで、さらにその流れを発展させ、ネオ・ソウルというジャンルを生み出したディアンジェロの『Brown Sugar』を選曲した。D'Angelo - Brown Sugar
ディアンジェロはジャンルをクロスし、シームレスに融合させ、新しい音楽の世界観「ネオ・ソウル」を生み出した象徴的な存在だ。
クリス:90年代後半から2000年代初頭にかけて、ディアンジェロを中心にアーティストたちが集まり、「Soulquarians」というコレクティブを結成しました。ディアンジェロはもちろんですけど、ルーツのクエストラヴ、J・ディラ、エリカ・バドゥ、コモン、モス・デフ、ラファエル・サディーク、タリブ・クウェリ、ピノ・パラディーノなどなど、名義作品を出すのではなく、それぞれの楽曲に関わり合いながら、ネオ・ソウルやジャズ、ヒップホップのスタイルを日々探求していたわけですね。
ディアンジェロに影響を受けた若手アーティストは非常に多い。クリスがナビゲートを務める J-WAVE『SAISON CARD TOKIO HOT 100』(毎週日曜 13:00-16:54)でも、ゲストとして登場する若手日本人R&Bアーティストの多くが「ディアンジェロから影響を受けている」と語るという。
クリス:自分たちが生まれる前に活躍した、ディアンジェロの音楽が響いているわけです。ディアンジェロは惜しくも今年10月に亡くなってしまいましたけども、彼のDNAは確実に継承されていると思います。
クリスはその後、UKのアシッドジャズとして、ブラン・ニュー・ヘヴィーズの『Dream On Dreamer』とガリアーノの『Prince Of Peace』をセレクトした。
Dream On Dreamer
Prince Of Peace
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