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ドラマ『カルテット』の撮影で教わったことは─吉岡里帆が土井裕泰監督に明かす

ドラマ『カルテット』の撮影で教わったことは─吉岡里帆が土井裕泰監督に明かす

映画監督の土井裕泰が、現在公開中の最新映画『平場の月』の制作を振り返り、ライフスタイルにまつわるエピソードを語った。

土井が登場したのは、11月9日(日)放送のJ-WAVE『UR LIFESTYLE COLLEGE』(ナビゲーター:吉岡里帆)。心地よい音楽とともに、よりよいライフスタイルを考えるプログラムだ。トークの模様は、Spotifyなどのポッドキャストでも聴くことができる。

・ポッドキャストページ

数々の名作を手がける土井裕泰監督が出演

土井裕泰は1964年生まれ。早稲田大学を卒業後、TBSに入社し、テレビドラマのディレクターとして『愛していると言ってくれ』や『GOOD LUCK!!』などを手がける。2004年には『いま、会いにゆきます』で映画監督としての活動も開始。それ以降、テレビドラマと映画の両分野で数多くの話題作を生み出している。

吉岡:ご無沙汰しております。まさかラジオで対談できる日がくるなんて思ってもみなかったので、めちゃくちゃうれしいです!

土井:この距離で向き合うのって初めてですよね。現場以外でこんな感じで話すことってないもんね。

吉岡:土井さんのお話を直接伺える機会はなかなかないので、今日はとても楽しみにしています。私たちの世代だと『涙そうそう〜この愛に生きて〜』や『ビリギャル』が印象的ですが、子どものころに「すごくいいドラマだな」と感じていた『ビューティフルライフ』や『愛していると言ってくれ』も土井さんが手がけられていたと知って、今回ラジオに来てくださるのをきっかけに初めて知りました!

土井:そうなんですか。

吉岡:レジェンド中のレジェンドだとわかってはいたのですが、より再認識できました。

土井:自分でも35年ぐらい(監督を)やっているっていう感覚がなくて。1個1個、「次はこれをやるんだ」と思ってたら、いつのまにか撮ってたので(笑)。

吉岡:すごいことですよね。数多くの名作を手がけられているということで、土井さんはどんなふうに作品づくりをされているのか、気になるところがたくさんあります。

『カルテット』の撮影をふたりが振り返り

吉岡と土井は、2017年のドラマ『カルテット』でともに仕事をしており、当時、土井はチーフプロデューサー兼演出を担当していた。

吉岡:8年前ということで、随分、昔に感じますね。あのときの作品の印象だったり、現場に対する想いを教えていただけますか?

土井:本当に脚本が面白くて、読むたびに楽しみでした。松たか子さん、満島ひかりさん、高橋一生さん、松田龍平さんのカルテットの4人の芝居を見ているだけでワクワクしました。

吉岡:楽しかったですね!

土井:そこに吉岡さんがガツンと(笑)。

吉岡:とても緊張しました(笑)。自分もカルテットのみなさまが大好きで、ずっと憧れていた俳優さんたちに毒づいていかないといけないっていうのが、まあ恐怖で。でも、土井さんの演出方法というか、接し方が温かくて優しくて。緊張しないよう、解きほぐしてくださっているのをすごく感じました。自分らしく伸び伸びやっていいんだよと、私は土井さんに教えてもらったなと思います。

土井:よかったです!

吉岡:本当にすばらしい作品で、土井さんにお会いできたことも私にとって宝物です。

50代のリアルな恋愛模様を描いた映画『平場の月』が公開

土井監督の最新作『平場の月』(現在公開中)。原作は、第32回山本周五郎賞を受賞した朝倉かすみの連載小説。主演は堺 雅人、共演に井川 遥を迎えて映画化された作品だ。

『平場の月』特報①【11月14日(金)公開】

土井:堺さんと井川さんが演じる主人公のふたりは、ともに50歳で中学の同級生という設定です。地元で再会するところから物語が始まりますが、どちらも離婚を経験していたり、配偶者を亡くしていたりする。そこから恋愛が始まるのか、始まらないのか。人生の後半にさしかかった人たちが抱える、家庭や健康などさまざまな悩みをリアルに描きながら、ふたりの関係の行方を描いた作品です。

吉岡:ひと足先に拝見しました。先日、試写室で観させていただいたのですが、ちょうど映画『正体』をプロデュースしてくださった水木(雄太)さんも同席されていて、上映後に劇場を出て一緒に話していたんです。すると水木さんが「50代の人たちの恋愛模様を、30代の方がどう見るのか気になります」と聞かれたんですね。自分でも意外だったんですけど、高校生の恋愛ものを観るよりよっぽどキュンとするなって思いました(笑)。

土井:そうかあ(笑)。

吉岡:そちら側に気持ちを馳せる年齢になってるんだなと自分でも思ったぐらい、妙なときめきがありました。それこそ、最近、恋愛ものを観ても、キュンときたり切なすぎるって思うことがなかったんですね。『平場の月』に関しては、大人の恋愛ものがそもそも少ないからか、すごく新鮮に入ってきて。特に、ふたりのキスシーンが好きでしたね。生々しいんだけど清潔感もあって、なぜか初々しくも見える感じが不思議で、どうやって撮られているんだろうと思うぐらい、好きなシーンでした。

土井:ありがとうございます!

土井監督は、原作である朝倉かすみの小説を読んだ際の印象について、「恋愛小説だけど、恋愛に特化しているというよりは、人生の後半戦、残りの人生どうなっていくんだろうっていう人たちが再会して出会う。生活の延長線上に恋愛があるというか、人生の物語として描けるなと思った」と語る。

土井:大人だからいろんな経験もして、酸いも甘いも噛み分けるって言葉もありますけども、恋愛になるとそれが初期化されるというか(笑)。いろんなことをわかっているからこそ、逆に踏み込めないことってありますよね。

吉岡:ありますね。相手のことを考え過ぎたり、その先を読み過ぎたり。

土井:自分が経験しているからこそ踏み込めないことってあるんですよね。若いときの恋愛とはまた違うもどかしさがあったり、逆に純粋なものがときどき見える瞬間があって。そういうのが面白いなって思いましたし、日本の作品でこれぐらいの年代のそういう部分を描いたものがあまりないんですよね。

恋愛作品の主演に堺 雅人を起用した理由

堺 雅人は8年ぶりに映画で主演を務める。現代劇でラブストーリーの主演を務めるのは、『平場の月』が初めてとなる。

吉岡:意外でした。

土井:堺さんとお仕事するのは初めてだったので、途中で撮影しながら恋愛みたいなシーンがあったときに、「こういうのってどういうふうにやってました?」と聞いたんですよ。そうしたら「僕、ラブストーリー初めてなんですよ」と言われて「そうなの!?」となりました(笑)。

吉岡:堺さんといえば『半沢直樹』や、続編が始まる『VIVANT』など、理不尽な目に遭いながらも絶対に負けない屈強な、でも一見弱い男というイメージがすごくあるんですよね。誰かを抱擁しているような、あの優しい堺さんの、だけど男性的な感じにギャップを感じました。

土井:最近は、どうしてもあのようなキャラクターの印象が強い堺さんですが、そもそも幅広い役をこなせる俳優さんです。ですので、「堺さんがこの役を演じたらどうなるのだろう」という興味がすごくありました。出演をお願いするときに原作をお渡ししていたのですが、脚本がある程度かたちになるまで少し時間がありました。ところが、撮影前にお会いしたら、原作本にびっしりと書き込みをされていたんですね。

吉岡:わああ!

土井:いわゆる、歴史上の人物の場合、時代背景や史実を確認されるっていうのはすごくわかるんですけど、本当にいろんなことを調べているので、本当にすごいなって思いました(笑)。

吉岡:堺さんが普通の人、青砥健将を演じているのに対して、井川 遥さんが演じる須藤葉子は、普段の井川さんのお芝居とはまったく違っていて、とても新鮮に映りました。美しさや華やかさはもちろん感じるのですが、それ以上に「これはあくまで須藤なんだ」ということが強く伝わってきました。「自分ってこういう人間だよな」と自分を俯瞰するような感覚や、自分で選んだ生き方を貫く姿勢が、とても伝わってきました。普通の女性だったらここで泣いたり弱音を吐く場面で、絶対そうはならない強さが、同性から見ても憧れちゃいましたね。

土井:原作は基本的に青砥の一人称で描かれているんですよね。なので、須藤自身の気持ちが描かれていることは青砥の目線なんです。映画にしたときに、須藤という存在を探っていくというか、青砥が須藤の心を開いてなかに入っていきたい話でもあるんですけど、僕らも須藤の心に入っていきたいという想いで撮影していくような感じでしたね。まるで「須藤を探す旅」みたいな(笑)。

吉岡:井川さんの須藤、すごく素敵でした。

山に登ると「いろんなことを忘れられる」

番組では、ゲストのライフスタイルに注目。土井の自宅での暮らしについて話を聞いた。

土井:家が斜面に建っているので、空がわりと大きく見えるんですよ。それがすごく気持ちがいいです。

吉岡:いいですねえ。

土井:家には和室がないんですけど、ときどき畳に寝っ転がりたいなと思うときがあります。

吉岡:畳の部屋って憧れますよね。私もマンション暮らしなのでわかります。今後、引っ越す可能性はありますか?

土井:いま住んでいる家は建築家の方に作ってもらったんですけど、25年ぐらい建っていて。とっても大好きな家ですけど、家を作るのって本当に面白いんですよね。当時は若かったし、こだわれなかったこともいっぱいあるので、人生のなかでもう一度家を作るチャンスがあったらやってみたいけど、どうかな(笑)。余力があるかどうかわからないですね。

吉岡:やってみたらすっごくハマっちゃうかもしれないですね。

土井:古いマンションをリフォームするのもいいのかなって思いますね。

吉岡:最後に、最近のお休みの日の過ごし方を教えてください。

土井:5年ぐらい前、情報に押しつぶされそうになって参ってしまったことがあったんですね。なので、それを全部忘れたいと思って、山に登るようになったんですよ。

吉岡:へええ!

土井:山に登っているときはしんどいんですけど、そういうことを考えないんですよね。

吉岡:たしかに! 「まず、この山を登りきらねば」って思いますもんね(笑)。

土井:登山のアプリを使っているので完全なデジタルデトックスというわけではないんですけど、いろんなことを1日忘れられるというか、ときどき山登りをしていますね。いつか機会があればご一緒しましょう。

吉岡:そんな機会があれば最高すぎます。いつか一緒に登ってください!

『UR LIFESTYLE COLLEGE』では、心地よい音楽とともに、より良いライフスタイルを考える。オンエアは毎週日曜18時から。

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