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どこからが“推し活”なのか? 市場規模3兆円を超え「推し活ビジネス」を専門家が解説

どこからが“推し活”なのか? 市場規模3兆円を超え「推し活ビジネス」を専門家が解説

市場規模3兆円を超える「推し活ビジネス」について専門家がマーケティングの視点も含めて解説した。

登場したのは、推し活アドバイザーの瀬町奈々美さん。オンエアは、10月29日(水)のJ-WAVE『STEP ONE』(ナビゲーター:サッシャ、ノイハウス萌菜)内、ニューノーマル時代のエッジにフォーカスするコーナー「ON THE EDGE」。

瀬町さんの職業である「推し活アドバイザー」とは

瀬町さんはまず「推し活アドバイザー」という自身の職業について説明した。

瀬町:大きく分けてふたつあります。ひとつは、いまここまで市場が盛り上がってきているので、推し活で新しい事業を立ち上げたい、という会社さんに対して、推し活文脈を生かした施策や、枠組みを提案させてもらっています。もうひとつは、推し活は全然関係ないのですが「自分の会社やブランドにファンを作りたいです」という人たち(向けのサービス)です。

サッシャ:会社を推してもらうということ?

瀬町:そうなったときに「どういうことができますかね」というアドバイスをさせてもらっています。ただ単に施策を打つだけではなくて、ものを買うまでのストーリーをどう作り上げるか。どのように、それをほかの人に話したくするようなものにするか。そういったことを視点として交えながら、お話をさせてもらっています。

ノイハウス:そう考えるとビジネス戦略としても、すごく有効な活動ですからね。推し活というのはここ最近、みんな使うようになっていますが、言葉として使われ始めたのはいつごろなんですか?

瀬町:最初は2000年代のAKB48といったグループアイドルが盛り上がっていったときに、「グループ全体好きだけれども、メンバーのなかで誰をひいきにするか」というような感じで「推し」というワードがキャッチーに、最初は広がっていきました。

サッシャ:「箱推し」という言葉もできましたよね。

瀬町:SNSなどで共有するときに、長すぎる文よりもキャッチーなワンワードで、となると「推し」という言葉が響きもいいんです。

ノイハウス:短く言えますよね。

サッシャ:それまでは「推し」という言い方はあまりしませんでしたよね。それがほかにも広がったということですか?

瀬町:コロナ禍のあとに、推し活の市場がぐんぐん伸びていったというデータがあります。日本人はみなさん忙しいじゃないですか。忙しくしていたところに(コロナで)一回、社会が止まったりして。自分を見つめ直す、というところで「自分の好きなものってなんだっけ?」とフォーカスしたときに、「推し」というワードが大きくなっていきました。

サッシャ:あとは、アイドルのライブが行われなくなったりして。だから、アクリルスタンドを買って画面越しに応援するとか、そういうのもあって広がったのかな。

瀬町:アクスタでいうと元々アニメなど、二次元のファン向けのものでしたが、コロナ禍になって「ライブに行けない」となったときに、アイドルのファンの方々が「ちょっと一緒にいる気分で」と(アクスタを通して)共体験する。いわゆる三次元にアクスタの文化が広まっていったのも、コロナ禍の影響が大きかったと思います。

サッシャ:たしかに。コラボカフェとかで商品を買って、そこにアクスタを立てて写真を撮るみたいなのってコロナ禍以降か。

瀬町:一般的になったのはコロナ禍以降ですかね。

「推し活」のポイントは能動的な行動

瀬町さんは「僕はファンです」から「僕の推しは〇〇です」になる、推し活の線引きについて解説した。

瀬町:大きいのは行動力です。私は「能動的行動量」と言っているのですが、公式が「コンサートをやります」と言ったときに「行きます」と言うだけではなくて、別に誰に頼まれているわけでもないのに、周りに「私の推し、めちゃくちゃいいからちょっと聴いてみて」と。

サッシャ:なるほど。宣伝部長になっちゃうと。

瀬町:それで仲間を集めて「何かイベントしようよ」と、自分たちでやってしまう。自分からどのくらい行動するかですね。

サッシャ:「推し」の誕生日にみんなで集まって、誕生日会をやるみたいなのもありますよね。これもかなり“ファン”とは違いますよね。

瀬町:自分から企画して、場所も借りて、ケーキも買って、花も準備して、写真を撮って。たぶん、誰からも頼まれてはいないんですけど、自分の好きがあふれて行動に出てきています。

ノイハウス:「〇〇さんの誕生日」という広告も見ます。あれもお金を出し合ったりとか、広めていくための活動のひとつではありますよね。

瀬町:「応援広告」と言うんですが、それをビジネスとして立ち上げている会社もあります。

ノイハウス:そういういろいろな要素があってこその推し活の市場規模で、いま3兆円を超えています。実態としてさらに詳細を教えてください。

瀬町:全体像というところで言うと、2025年のデータですが日本人の3人に1人が「推しがいます」と回答しているんです。

サッシャ:3分の1。

瀬町:10代、20代のイメージが強いと思いますが、ここ数年は30代から上の世代の推し活が広まってきているのが特徴です。

サッシャ:ただ10代、20代の割合は多いんですか?

瀬町:10代だと80パーセントになっています。

ノイハウス:みんな推してるんだ。

瀬町:60代、70代まで含めると3分の1ぐらいになります。(推しがいるのが)当たり前のようになってきています。

ノイハウス:推し活だとグッズを買ったり、コンサートに行くとかあると思います。推し活をしているということは、お金も使っているということなんですか?

瀬町:平均で言うと、年間25万円です。学生さんだけではなくて全世代を含めた平均値ですが、そういうデータも出てきています。

実は、推し活は「自己投資」

瀬町さんは、自身の著書『推し活経済 新しいマーケティングのかたち』(リチェンジ)のなかで、推し活とビジネスの密接な関わりについて解説してる。

瀬町:いま広がっている推し活という市場がどういうものなのか、ということをざっくり解説しています。いまの時代、ビジネスの主役が企業から、熱量の高い消費者へと移ってきていますよね。そこを生かす仕組みというのはなんなのかを解説する本になっています。

サッシャ:広くクラウドファンディング的な発想もあるのかな、みんなで支えるみたいな。

瀬町:その仕組みをどう企業側が作ることができるのか、ということです。

ノイハウス:いままでだと企業が「こういうのをやっています」というのをずっと、片方から語ってきました。ですが、推し活みたいなかたちになるとマーケティングバジェットもちょっと下がるというか。ほかの人も語ってくれる、といった効果もあるのでしょうか。

瀬町:最初に企業から何かを売るというときには、どうしても投入できる人や資源といったリソースが限られてしまいます。ただ、推してくれる人というのは、宣伝部長みたいに自分から動いてくれるので。その波及効果が広がっていって、最終的には費用対効果がすごく高くなってきています。それが強い経済圏を目指すうえで大切なのかなと思います。

サッシャ:口コミですね。友だちに「これ、いいよ」と勧められると、ウェブとかで見るよりも説得力があります。

瀬町:やはり若い世代は生まれたときからSNSがあって、情報の渦のなかにいます。なので、情報に触れても記憶に残っていないとあまり意味がなかったり、情報だけでは説得力がなかったりします。それを誰からもらったらいちばん説得力が高いか、というと意外と身近な人だったりします。

ノイハウス:アイドルの分野から始まりましたが、いまだとブランドの推しやスポーツ選手の推しなど増えてきていると思います。そのなかで、自分の推し活をサポートするためという「推し活副業」「推し活転職」という言葉も注目されているそうです。

瀬町:推し活はお金や時間がかかると思いますが、より自分の生活を豊かにするために副業や転職を考えるんです。「どうしてこんなに推しにお金を使うんだろう」というのがポイントで、いままでは「推しへの愛情表現や、推しに成長してもらうためじゃないんですか?」と言われることが多かったんです。ですが、調査を見ていると「推しにお金を使うのは、自分の生活をより生き生きさせるための自己投資です」と答える方が多くなりました。

サッシャ:モチベーションとかにもつながる?

瀬町:ライフワークバランスという言葉がありますが、精神的なリチャージのために推し活があるからこそ、(推し活は)自分のためにお金を使っているという感覚が強いのかなと思います。

J-WAVE『STEP ONE』のコーナー「ON THE EDGE」では、ニューノーマル時代のエッジにフォーカス。放送は月曜~木曜の10時10分ごろから。

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