
SILENT POETSの下田法晴が最新アルバム『HOPE』の制作エピソードや、人気ゲーム『DEATH STRANDING』(デス・ストランディング、通称デススト)への楽曲提供の経緯などを語った。
下田が登場したのは、6月26日(木)放送のJ-WAVE『GRAND MARQUEE』(ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann〈セレイナ・アン〉)のコーナー「RADIO ENSEMBLE」だ。
タカノ:92年にデビューということで、もともとはバンドだったんですよね。
下田:美大に行っていまして、そこでレゲエバンドを組んでいて。その大所帯のメンバーのなかでダブとかインストのレゲエをやりたいという人が少し集まって、始めたのがSILENT POETSの原型みたいなものです。
タカノ:下田さんがダブに魅せられたのはどんな点ですか?
下田:最初のきっかけはパンクが好きで、パンクで音楽に目覚めました。そのなかで、ザ・クラッシュが取り入れていたレゲエやダブのエッセンスとサウンドから興味を持って、そこからオリジナルのキング・タビーやジャマイカのダブをいろいろ聴き始めて。それですごくハマってしまってという感じです。
タカノ:ディレイだったりリバーブだったりというエフェクトの雰囲気、サウンド感とか。
下田:そうですね。バンドの演奏だけじゃなくて、演奏して録音したものに手を加えて新しいものを作るみたいな。そういうところに興味を持って。すごく自由で実験的ですごくアートだなと思って、それでハマっちゃったというか自分もやりたいなと。
タカノ:いま思えば、独特なジャンルでもありますね。
下田:もともとは録音物をエンジニアが作ったものなので。
タカノ:下田さんは映画音楽にも強い影響を受けていると聞きました。
下田:映画自体にすごく。映画が好きで、年間100本ぐらい観ます。音楽を作るときのインスピレーションとかも映画からいただいたりしています。音的にいったらストリングスとかを使い始めたのは、映画音楽の影響です。(エンニオ・)モリコーネとか、坂本龍一さんとか、そういうのからストリングスのすばらしさを感じて使うようになったというか、自分のサウンドに取り入れるようになりました。
タカノ:昨日(6月25日)ゲストで来てくださった奥浜レイラさんは下田さんとお友だちです。これは映画つながりですか?
下田:彼女とは映画の話とか、僕のほうが訊くほうというか「そうなんだ」というのを教えてくれます。このあいだも『ラ・コシーナ/厨房』という映画の初日でお会いして、少しだけお話しました。
タカノ:このつながりがうれしいですよね。
下田:前作をリリースしたあとにパンデミックが始まって。そのあとウクライナの紛争やパレスチナのジェノサイド、民主主義を破壊するような出来事が社会に蔓延して。希望を失うようなことが続きましたよね。そんななかで、自分たちというか、個人個人もいろいろな問題を抱えて。僕も個人的に病気になったり、いろいろなことがありまして。本当にへこんだんですけど、そういうときこそ希望を失っちゃいけないというか、あきらめちゃいけないな、という想いが沸き上がってきて。自分に対しても社会に対しても「あきらめちゃいけない」とか「希望を持って生きよう」みたいな。そういうところからこのアルバムができたというか。
セレイナ:私は3曲目の『Sending Rockets to (tha) Moons… feat. Ursula Rucker』の歌詞、同じ言葉を繰り返しているんですが、初めて聴かせていただいたときにメッセージが胸を抜けていきました。たとえば、この曲の制作はボーカリストさんも入っていますが、歌詞づくりのところから下田さんも入られているのでしょうか。
下田:具体的な歌詞は彼女に委ねましたが、どういうものをやってほしいというのは僕からいろいろなメッセージを送りました。「こういう曲だから、これをテーマでやってほしい」というのは伝えて、そこから出てきたものがこれでした。
タカノ:本当にいま、世の中がぐちゃぐちゃというか大変なことがいろいろなところで起こっていて。すごく悲しい想いをしている方もたくさんいると思います。そういう方々に聴いていただいて、ちょっとでも希望を感じてほしいです。
セレイナ:そして我々も、この作品を通して心を寄せる、感じるところから始めるというか。共感から始まる的なところなのかな、と思ったりします。
下田:そういうふうに聴いてもらったらうれしいですね。
タカノ:こちら、アルバムの収益の一部が寄付されるということで。
下田:国境なき医師団というところに寄付しようと思っています。アルバムのなかでも、いまのパレスチナの問題をテーマにしている曲もあります。僕もSNSを通じてガザの人と直接連絡を取ったり、直接話をしたり、微力ながら寄付をしたりとか、いまもずっと続けているんです。みなさん、本当に切実な想いで助けを必要としていまして、僕も表現者のひとりとしてこういう問題に向き合うことが大事だなと思って。音楽を通じて少しでもこの問題をみなさんと考えたり、協力できたらいいなと思って。それであえて寄付をするということを表明して、みなさんが共鳴してもらったらいいなと思って。僕だけじゃなにもできないので。
セレイナ:小島秀夫さんの最新作です。
タカノ:これはどういったきっかけで?
下田:これがちょっと面白くて。僕のパートナーがケータリングの仕事をしているんです。それであるとき、コジプロ(コジマプロダクション)さんにケータリングを頼まれまして、そのときに人手が足りなくて僕も運んでいって盛り付けしたりとか手伝いまして(笑)。いちおう小島さんもいらっしゃったので、前作のCDを持って行って「よかったら聴いてください」という感じでお渡ししたら、すごく気に入っていただいて。ケータリング屋さんの音楽みたいな(笑)。それで「使いたいんだけど」と連絡があったのがきっかけです。
セレイナ:すごいですね。
タカノ:それが前作の?
下田:そのCDから選んでもらいました。それで「もう1曲、エンディング曲を新たに作ってくれないか」ということを頼まれまして。それも急遽作ってという感じです。その曲が今回のアルバムにバージョン違いで入っています。
タカノ:なにがつながるかというのはわからないものですね。
セレイナ:CDを渡すって大事ですね。
タカノ:俺も持っておこうかな(笑)。
下田:名刺代わりに。持って行ってよかったなと思いました。
セレイナ:デスストに楽曲が使われたことによって、海外のデスストのファンからもSILENT POETSに接続して音楽を聴いてくれた方も増えているんですよね。
下田:すごく増えまして、いろいろな国の方からメッセージももらいます。いろいろな配信サイトのどこの国が多いかとかも調べられるじゃないですか。あれを見たら、日本より全然海外の方が多かったりして。
タカノ:どの国の方が多いですか?
下田:僕が見たときはアメリカ、イギリス、フランスで、(次が)日本みたいな感じでした。
セレイナ:アメリカ、イギリス、フランスも音楽界の主要国という感じです。
タカノ:海外ツアーとかやってほしいです。みなさん待ってそうな感じがします。『HOPE』はYouTubeでオフィシャルビジュアライザー、アニメーションの映像もアップされています。これもすごく美しい映像です。
下田:これもInstagramで彼女の作品を偶然見つけて、すごく気に入ってずっと観ていたんです。この曲やアルバムのプロモーションを考えているときに「そういえば」と思って。この曲にも合うなと思って、思い切ってオファーしてみました。音楽を聴いてくれて、気に入ってくれて「やります」みたいな感じで。
タカノ:このアニメーションを担当されているのはGaia Alariさんです。
下田:すごく忙しい方なんですが、合間を縫ってやっていただいて。
タカノ:手描き風の。
下田:そうです。全部、手描きで何百枚かを1枚ずつ撮っていってアニメーションにしています。
セレイナ:すごい。お話を伺っていると、下田さんの行動力と言いますか。DMするのもそうですし、CDを小島さんに渡すのもそうですし、届けていくことは大事ですね。
下田:今回はInstagramのDMでいろいろな人にオファーしたりとか、けっこうできるものだなと思いました。
SILENT POETSの最新情報は、公式サイトまで。
アーティストがスタジオに生出演し、トークと音楽をお届けするコーナー「RADIO ENSEMBLE」は、月曜~木曜の17時10分ごろからオンエア。
下田が登場したのは、6月26日(木)放送のJ-WAVE『GRAND MARQUEE』(ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann〈セレイナ・アン〉)のコーナー「RADIO ENSEMBLE」だ。
SILENT POETSのルーツ
SILENT POETSはプロデューサーである下田によるソロユニット。1992年のデビュー以来、メランコリックでエモーショナルなダブサウンドを育み、これまでにアメリカ、フランス、ドイツなどの海外レーベルからも作品をリリース。また、世界各国で大ヒットを記録したゲーム『DEATH STRANDING』のトレーラーとエンディングテーマを手がけたことも大きな話題となった。タカノ:92年にデビューということで、もともとはバンドだったんですよね。
下田:美大に行っていまして、そこでレゲエバンドを組んでいて。その大所帯のメンバーのなかでダブとかインストのレゲエをやりたいという人が少し集まって、始めたのがSILENT POETSの原型みたいなものです。
タカノ:下田さんがダブに魅せられたのはどんな点ですか?
下田:最初のきっかけはパンクが好きで、パンクで音楽に目覚めました。そのなかで、ザ・クラッシュが取り入れていたレゲエやダブのエッセンスとサウンドから興味を持って、そこからオリジナルのキング・タビーやジャマイカのダブをいろいろ聴き始めて。それですごくハマってしまってという感じです。
タカノ:ディレイだったりリバーブだったりというエフェクトの雰囲気、サウンド感とか。
下田:そうですね。バンドの演奏だけじゃなくて、演奏して録音したものに手を加えて新しいものを作るみたいな。そういうところに興味を持って。すごく自由で実験的ですごくアートだなと思って、それでハマっちゃったというか自分もやりたいなと。
タカノ:いま思えば、独特なジャンルでもありますね。
下田:もともとは録音物をエンジニアが作ったものなので。
タカノ:下田さんは映画音楽にも強い影響を受けていると聞きました。
下田:映画自体にすごく。映画が好きで、年間100本ぐらい観ます。音楽を作るときのインスピレーションとかも映画からいただいたりしています。音的にいったらストリングスとかを使い始めたのは、映画音楽の影響です。(エンニオ・)モリコーネとか、坂本龍一さんとか、そういうのからストリングスのすばらしさを感じて使うようになったというか、自分のサウンドに取り入れるようになりました。
タカノ:昨日(6月25日)ゲストで来てくださった奥浜レイラさんは下田さんとお友だちです。これは映画つながりですか?
下田:彼女とは映画の話とか、僕のほうが訊くほうというか「そうなんだ」というのを教えてくれます。このあいだも『ラ・コシーナ/厨房』という映画の初日でお会いして、少しだけお話しました。
タカノ:このつながりがうれしいですよね。
自分に対しても社会に対してもあきらめちゃいけない
SILENT POETSは6月25日(水)に前作『dawn』以来、7年ぶりのフルアルバム『HOPE』をリリース。下田はアルバムへの想いを語った。SILENT POETS - Hope feat. Denise Sherwood (Official Visualizer: Animated by Gaia Alari)
セレイナ:私は3曲目の『Sending Rockets to (tha) Moons… feat. Ursula Rucker』の歌詞、同じ言葉を繰り返しているんですが、初めて聴かせていただいたときにメッセージが胸を抜けていきました。たとえば、この曲の制作はボーカリストさんも入っていますが、歌詞づくりのところから下田さんも入られているのでしょうか。
下田:具体的な歌詞は彼女に委ねましたが、どういうものをやってほしいというのは僕からいろいろなメッセージを送りました。「こういう曲だから、これをテーマでやってほしい」というのは伝えて、そこから出てきたものがこれでした。
タカノ:本当にいま、世の中がぐちゃぐちゃというか大変なことがいろいろなところで起こっていて。すごく悲しい想いをしている方もたくさんいると思います。そういう方々に聴いていただいて、ちょっとでも希望を感じてほしいです。
セレイナ:そして我々も、この作品を通して心を寄せる、感じるところから始めるというか。共感から始まる的なところなのかな、と思ったりします。
下田:そういうふうに聴いてもらったらうれしいですね。
タカノ:こちら、アルバムの収益の一部が寄付されるということで。
下田:国境なき医師団というところに寄付しようと思っています。アルバムのなかでも、いまのパレスチナの問題をテーマにしている曲もあります。僕もSNSを通じてガザの人と直接連絡を取ったり、直接話をしたり、微力ながら寄付をしたりとか、いまもずっと続けているんです。みなさん、本当に切実な想いで助けを必要としていまして、僕も表現者のひとりとしてこういう問題に向き合うことが大事だなと思って。音楽を通じて少しでもこの問題をみなさんと考えたり、協力できたらいいなと思って。それであえて寄付をするということを表明して、みなさんが共鳴してもらったらいいなと思って。僕だけじゃなにもできないので。
デスストとのつながりはCDを手渡したのがきっかけ
『HOPE』収録曲の『HOPE』と『Chariot I Plead feat. Tim Smith』は6月26日(木)に発売されたゲーム『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』の挿入歌で使用されている。SILENT POETSとしては同シリーズの1作目から楽曲提供をしており、下田はその経緯を明かした。SILENT POETS - Chariot I Plead feat. Tim Smith (Official Audio)
タカノ:これはどういったきっかけで?
下田:これがちょっと面白くて。僕のパートナーがケータリングの仕事をしているんです。それであるとき、コジプロ(コジマプロダクション)さんにケータリングを頼まれまして、そのときに人手が足りなくて僕も運んでいって盛り付けしたりとか手伝いまして(笑)。いちおう小島さんもいらっしゃったので、前作のCDを持って行って「よかったら聴いてください」という感じでお渡ししたら、すごく気に入っていただいて。ケータリング屋さんの音楽みたいな(笑)。それで「使いたいんだけど」と連絡があったのがきっかけです。
セレイナ:すごいですね。
タカノ:それが前作の?
下田:そのCDから選んでもらいました。それで「もう1曲、エンディング曲を新たに作ってくれないか」ということを頼まれまして。それも急遽作ってという感じです。その曲が今回のアルバムにバージョン違いで入っています。
タカノ:なにがつながるかというのはわからないものですね。
セレイナ:CDを渡すって大事ですね。
タカノ:俺も持っておこうかな(笑)。
下田:名刺代わりに。持って行ってよかったなと思いました。
セレイナ:デスストに楽曲が使われたことによって、海外のデスストのファンからもSILENT POETSに接続して音楽を聴いてくれた方も増えているんですよね。
下田:すごく増えまして、いろいろな国の方からメッセージももらいます。いろいろな配信サイトのどこの国が多いかとかも調べられるじゃないですか。あれを見たら、日本より全然海外の方が多かったりして。
タカノ:どの国の方が多いですか?
下田:僕が見たときはアメリカ、イギリス、フランスで、(次が)日本みたいな感じでした。
セレイナ:アメリカ、イギリス、フランスも音楽界の主要国という感じです。
タカノ:海外ツアーとかやってほしいです。みなさん待ってそうな感じがします。『HOPE』はYouTubeでオフィシャルビジュアライザー、アニメーションの映像もアップされています。これもすごく美しい映像です。
下田:これもInstagramで彼女の作品を偶然見つけて、すごく気に入ってずっと観ていたんです。この曲やアルバムのプロモーションを考えているときに「そういえば」と思って。この曲にも合うなと思って、思い切ってオファーしてみました。音楽を聴いてくれて、気に入ってくれて「やります」みたいな感じで。
タカノ:このアニメーションを担当されているのはGaia Alariさんです。
下田:すごく忙しい方なんですが、合間を縫ってやっていただいて。
タカノ:手描き風の。
下田:そうです。全部、手描きで何百枚かを1枚ずつ撮っていってアニメーションにしています。
セレイナ:すごい。お話を伺っていると、下田さんの行動力と言いますか。DMするのもそうですし、CDを小島さんに渡すのもそうですし、届けていくことは大事ですね。
下田:今回はInstagramのDMでいろいろな人にオファーしたりとか、けっこうできるものだなと思いました。
SILENT POETSの最新情報は、公式サイトまで。
アーティストがスタジオに生出演し、トークと音楽をお届けするコーナー「RADIO ENSEMBLE」は、月曜~木曜の17時10分ごろからオンエア。
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番組情報
- GRAND MARQUEE
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月・火・水・木曜16:00-18:50
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