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野村訓市×長谷川ミラが政治を語る。日本はどこへ行くのか? 今、“国の幹になるもの”が見えない

野村訓市×長谷川ミラが政治を語る。日本はどこへ行くのか? 今、“国の幹になるもの”が見えない

エディター、ライター、デザイナーなど多方面で活躍し、J-WAVEの番組『TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING』(毎週日曜20:00~20:54)のナビゲーターも務める野村訓市が長谷川ミラと対談。社会や政治について語った。

野村が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『START LINE』(ナビゲーター:長谷川ミラ)のワンコーナー「AWESOME COLORS」。オンエアは8月30日(金)。

都知事選を振り返って―お金持ちでもそうじゃなくても「1票」は平等

「いつもは生放送のゲストにほとんど出演しない」という野村だが、長谷川が野村の東京都知事選の投稿にアクションしたことがきっかけで今回のゲスト出演が実現した。

長谷川:まずは都知事選を振り返ってみて、率直にいかがでしたか? 投稿の真意というか。

野村:僕はいつも「選挙に行きましょう」というのをやっていて。「そんなの変わらないよ」「誰に投票すればいいか、なんで言ってくれないんですか」と言われることがすごく多いんです。人が決めるものではないし「この人に入れるからダメだ」というのもないから、自分は基本的にはそういうことを言いません。でも自分が買い物に行って、20円でも、30円でも多くお金を取られたりしたら、みんな文句を言うし、節税もするじゃないですか。経費で使って余計なものは払いたくないとか。そんなに気にするのに、それを全部決める人たちの選挙になると、他人事になるのがすごく意味がわからなくて。それをとにかく微力ながら変えたいなというのが理由の1つです。

長谷川:秋に自民党の総裁選が控えていますよね。あれは我々国民には直接的に投票する権利はありません。ただ、この都知事選に関しては「直接、投票できるんだよ」という呼びかけをされていて、はっとさせられるというか、あの一文が印象的でした。

野村:よく「上級国民」「お金持ち」「自分はお金がない」という話があるし、実際にそういう貧富の差は生活していたらすごく感じると思います。でも、100億円稼いでいる人も、月に5、6万しか稼げないアルバイトの子も、持っている票の数は1つで一緒だということを、みんなわかっているのかな。それを平等に出せる機会は選挙以外であまりないと思います。普段は「どうせ僕の言う言葉なんて誰も聞かないよ」「意味がないよ」と思っていても、持っている票は平等です。それをなんで放棄するのだろう。「あの人に入れたらいいよ」と言ったらなんとなく入れるとか。もう少し考えることは、学生だろうが、誰だろうが等しくやるべきだ、というのが考えです。

都知事選が終わった今が一番大事

続いて野村は、都知事選が終わった今だからこそ都政に目を向けるべきだと語った。

長谷川:私として違和感なのが、選挙期間にならないと、こういうコミュニケーションをしないことです。発信者やメディアも含めてだと思います。今回、特に訓市さんにこのタイミングで来ていただきたかったんです。自民党総裁選はありますが、都知事選やそういう選挙がある意味関係ないときに、こういう議論をするのが大事なんじゃないか、という話をさせてもらって。でも、なかなか日本社会だと、そこが難しいという人たちもいるじゃないですか。

野村:難しいし、垂れ流しのメディアだけ見ていたら、そうなっちゃうというか。たとえば、都知事選も誰に入れようって、みんな気にし出すのは1カ月前で。そのときだけニュースに出てきて、1カ月でその人たちの何がわかるんだろう。今、都知事選が終わってもう2カ月近くかな?

長谷川:1カ月ちょっとですね。

野村:選挙のときまで、すごくいろいろな場所に行って演説していた現職の都知事とか、ニュースにもなっていましたが、選挙が終わった途端にほぼ表に姿を現さない。結局それがリアルな姿で、そういうことをちゃんと普段から見ないといけないし、気にさせるような機会を、情報を発信する立場の人たちは作らなければならないのではないのかなと思います。何かのときだけ急に持ち上げて……今が一番大事じゃないですか。新しい都政が始まって「どういう発信をするのだろう」と。でも、それが何もわからないというのは、やっぱりよくない。

長谷川:そこも考えたことがなかったかもしれないです。都知事選に対する盛り上がりをもっとつけたほうがいいんじゃないか、という意見。私もそうでしたが、選挙が終わったあとに「あれ、あの盛り上がりはどこ? 当選したあとちゃんとやっているの?」みたいな。

野村:それこそ所信表明みたいなのがあって、実際に「これからの都政をこう動かします」、「問題に上がった議題をこれからどういう風にするのか」というのは、まったく発信しなければ聞く機会もないし。だから毎回、何年か経って、選挙のときにそれを全部ファクトチェックしたり、言っていたことをどのくらい達成できたのかとか、突然通知表みたいに出回るけれども、それってなんでしょうね。日本の学校の成績表みたいな。アメリカって、出席もすごく大事で、毎日の活動点がすごく大きいでしょ? たとえば大学を受験するときも。変えていかなければいけないのは、そういうところじゃないのかなって。

長谷川:アメリカの大学で例えると、入学したあとの学校の勉強のほうが大変だとよく言われますよね。成績が足りていないと退学になるから。働き先も入社することが目的ではなくて、入社したあとにきちんと成績を残さないといつクビになってもおかしくない。日本は入学・入社してしまえば、あとは努力しなくても良いみたいな。

野村:終わり良ければ総て良し、みたいな言葉があって。帳尻合わせれば、間はあまり見ないというのは確かに多いのかなと思うし。そういう意味で、政治は一番抜け落ちちゃっている。何かのときにしか盛り上がらなくて、普段ちゃんと見ないというのは良くないのかなと思います。

自民党総裁選のポスターについて

コーナー後半では、自民党総裁選のポスターの話題に。

長谷川:コメンテーターなどで活動している私の友人が、自民党総裁選のポスターに関して「おじさんの詰め合わせ」という発言をして、物議をかもしました。「おじさん」というフレーズが差別用語だとの議論に派生していると思ったのですが、どう思われましたか?

野村:(物議をかもしたのは)若い子が言っているからでしょ。僕が言ってあげるよ、おじさんだから。あれは「おじさん祭り」ですよ。

長谷川:別におじさんを標的にした発言ではなくて、未来を決める自民党総裁選のポスターに、過去の写真をたくさん……。

野村:昔人気があったとか、今の保守が好きな人たちを散りばめて、同格に今の候補者を見せたいというのもあると思うんですよ。だけど、それはみんな脛に傷のある人たちだから。もちろん素晴らしいこともしたし、まずいこともしたし。国として色んなことを成し遂げた人たちと同格にするのもどうかと思うし。昭和と今って全く違うじゃないですか。だから、一緒に混ぜて見せちゃうところが、旧態依然のやり方が変わらないのかなと思ってします。僕は日本とか自民党とかって、言い方が失礼ですけど、昔の家電メーカーみたいな。

長谷川:というと?

野村:日本ってすごかったじゃないですか。僕はバックパッカーとして世界中をまわって、どんな田舎に行っても日本メーカーの広告があって、「日本の会社ってすごいな」って。でも今は家電メーカーとかは他国に追い抜かれて。昔は世界で1~2位で、まだ「昔はすごかった」というのを言い続けていてやっている。昔はすごかったけど、変えなきゃいけないじゃない。伝統がどうだって言っている場合じゃなくて。今世界で資産価値が一番大きい会社は、創業何年なの? 株価の総額がすべてではないけれども、それぐらい新興の会社が、例えば日本の東証一部の株を全部買えるぐらいのお金を持っていたり。そうやって変わっていくときに、対抗できるのかな。その知見があるのかなと思うと、すごく不安ですよね。

「日本の国の幹になるもの」が見えない

長谷川は、過去に固執してしまう理由はどこにあると思うかを野村に訊ねた。

長谷川:なぜ日本はスイッチを切り替えて前に進むことができないんでしょう。そして、私たち一人ひとりにできることは何だとお考えですか。

野村:何だろう。うまくいったことってアップデートしていくじゃないですか。車とかもアップデートを重ねて重ねて、しばらくするとモデルチェンジしてゼロから作り直すでしょ。日本ってそれができづらいのかなって。国がこれからどういう指針をもって成り立たせようとしているのか、すごく見えづらいなと。

野村は、「僕が学生のときは、ものづくりの国として輸出もたくさんしていて」と、当時の日本を振り返る。そうした中にいたおかげで、自分も好きなことができるのだと感じていたそうだ。しかし今は、「これが日本の国の幹になるんだ」ということがわからなくなったと語る。

野村:これからの50年、日本はソフト大国、IT大国になるのか。ものづくりにするのでも、大量生産品をたくさん作るんじゃなくて、高級品だけつくるのか。もしくは、実際にモノを作るための機械を作る大国になるのか。「これが日本の国の幹になるんだ」というのが傍から見えなくなっていて。観光大国だとか、インバウンドをもっと増やすといっても、何がインバウンドに喜んで、何に魅力を感じて日本に来ているのかわかっていない人たちが色々決めて、お金をもって、どんどん壊している気がするんですよね。だって、例えばミラちゃんがニューヨークに憧れて、最初はデパートやいろんなところに行ったとして、毎回ショッピングモールに行きたいと思う?

長谷川:思わないですよね。

野村:思わないじゃない。向こうに行って、そこでしか食べられない、地元の人が「おいしい」というところで定食を食べたいとか、ニューヨーカーが「本当においしい」というコーヒーショップに行ってみたいとか。日本はそういうものをどう残すかを考えないで、箱だけ作って「ここはカルチャーが生まれる街です」みたいな。でも、それを決めるのは人で、箱じゃないから。日本を観光大国にすると言って、どういう風にしようと思っているのかも見えないし。そういう意味ではすごく不安。今はオーバーツーリズムになっていて、儲かるのはいいけど、商売をしてそこに住んでいる人たちが幸せなのが第一じゃない。ツーリズムのために住んでいる人たちが幸せじゃないというのも随分違った話だと思うんだけどね。

長谷川:話していて色々悲しくなっちゃったと同時に、どの国にもさまざまな問題がありますが、特に最近の日本は今まで課題に感じなかったような部分が浮き彫りになっていると思っていて。インバウンドもそうだし、経済も少子化も……まだまだ挙げ切れていないと思うんです。この総裁選で大きく国が変わるかと言ったら、もしかしたらアメリカの大統領選ほどではないのかもしれない。けれど、一歩でもいいから良い方向へ向かうためには、やっぱりひとりひとりの関心を高めていくところと、政治家・メディアに求めるのはもちろんだけども、国民である我々がこの国に生きている人間という意識をもって、色々な情報を精査して取り入れていく必要があると思います。

社会について、政治について熱く語り合ったふたり。惜しくも時間切れとなってしまったが、長谷川は「話しきれないので、ぜひ訓市さんと政治について語る番組を作りたい」と意気込んだ。
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『START LINE』のワンコーナー「AWESOME COLORS」では、「自分らしく輝くあの人のストーリー」にフォーカス。放送は毎週金曜の18時10分ごろから。

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