作家の沢木耕太郎がナビゲーターを務めるJ-WAVE、クリスマス・イブ深夜の恒例特番『J-WAVE CHRISTMAS SPECIAL 沢木耕太郎~ミッドナイト・エクスプレス 天涯へ 2023~』(以下、ミッドナイト・エクスプレス)が、12月24日(日)24:00-27:00に生放送となる。沢木耕太郎がその年に訪れた旅先の思い出などを語りつつ、リスナーとメールやはがき、電話などでコミュニケーションを取る3時間の生放送だ。
1997年よりスタートし、今年で27年目を迎える本番組。四半世紀以上にわたってリスナーから愛される理由は何なのか? 番組立ち上げ期からスタッフとして参加する、今井栄一さんと松浦紀子さんに話を聞いた。
【radikoで聴く】https://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20231225000000
(オンエア開始後、2023年12月31日28時ごろまで再生可能)
今井:毎年、企画書を作るにあたって、編成から「今年のテーマは?」と聞かれたりするのですが、特にテーマというテーマがなくて。『ミッドナイト・エクスプレス』は、沢木さん次第の番組。なので、その年に発売された著書やこれから出版予定の新刊などあれば「生放送中にこんな話をするかもしれない」という情報を共有するくらいで、あとは沢木さんにしゃべっていただくだけ……というスタンスなんです。
松浦:この番組は打ち合わせをしないんですよ。一般的に3時間の生放送であれば打ち合わせをするんでしょうけど、『ミッドナイト・エクスプレス』に関しては、沢木さんがその日何をしゃべるのか、ご本人以外誰もわかりません。私たちも、リスナーさんと一緒に初めて聴けるのを楽しみにしているという感覚なんです。
――そもそも、どのような経緯から番組は開始されたのでしょうか?
今井:J-WAVEの当時の編成部長がもともと沢木さんのファンだったんです。おそらく沢木さんが若い頃にパーソナリティーを務めていたAMラジオの番組も聴いていて、「沢木さんで番組をやったら面白いんじゃないか」と考え、実現に至ったと記憶しています。
今井:特に思い出深いのは、1997年に放送された第一回目のオープニングトークです。沢木さんはAMラジオの経験はありましたが、J-WAVEのナビゲーターとして3時間の生放送ができるのかは未知数でした。そのため、当時のオンエア直前、スタッフ含めた関係者全員、沢木さんが一言目に何をしゃべるのか固唾をのんで見守っていました。そしたら番組開始と同時に、表参道のイルミネーションを横目にクリスマスの雰囲気を感じつつ、歩いて西麻布のスタジオまで来たというお話をされていたんですよ。その風景描写にものすごく引き込まれて。まるでそこに、東京都心、今日24日の西麻布・表参道界隈の夜の風景を鮮明に写した写真があるかのように感じました。今思えば、このオープニングで番組の方向性が固定されたのかもしれません。
松浦:この第一回目では、同年に放送されたテレビドラマ『劇的紀行 深夜特急』で沢木さんの役を演じた大沢たかおさんをゲストに招き、また、事前に収録した沢木さんによる写真集『天涯』に掲載された文章の朗読音声を随所で使用するなど、現在とは異なる構成になっていました。
今井:僕らも微妙に不安があったのかもしれません。「3時間の生放送を、沢木さんが一人でできるのか」という思いもあり、ゲストを呼び、録音パートが設けられたわけで。しかし、かなり早い段階で「一人で任せたほうがいい(一人でとても面白い!)」と気付き、そういったプラスアルファの要素がどんどん消えていった。そんな26年間でした。
――なるほど。ほかにも思い出深いエピソードがあれば、聞かせてほしいです。
今井:沢木さんは井上陽水さんと仲が良いんですよ。それで昔、「陽水さんと電話で話すか、あるいは遊びに来てもらったら面白いですよね」という話をしたことがあって。沢木さんも昔はやんちゃなところがあったから、その話に乗ってくれて、番組の中で「陽水、もし今暇があったら来るか、電話して」と呼びかけたんです。そしたら、井上陽水さんが聴いていたらしくて、番組宛てに「沢木さん、こんな時間に遊び以外で誘わないでください」と直筆のファックスが届いたことがありました(笑)。
今井:そうですね。とはいえ、第一回目の放送前まで、沢木さんが電話で一般の方とうまくしゃべれるのか、誰もわかりませんでした。でも、一人目と電話を繋いだときに「君の部屋には窓があるの?」「あります」「窓の外には何が見えるの?」という流れから、リスナーさんに自宅の窓の外に広がる12月24日の夜の風景を語ってもらったんです。当たり前なのですが、すごいインタビュー能力! ラジオを作っている僕らからすると「この人すごいな」と感心しましたし、聴いている人たちも「この話はどうなっていくんだろう」と聴き入ったはずです。
松浦:沢木さんは、リスナーさんが緊張していたとしても、うまくほぐしてくれるんですよ。その結果、自然と気が付いたら話しているというか。「しゃべっちゃった、色々」みたいなことを、電話を繋いだ人はよく言っていますね。
今井:12月24日の深夜に『ミッドナイト・エクスプレス』を聴いている人の多くは、きっと少なからず寂しさを抱えていると思うんですよ。そのセンチメンタルな感情に寄り添いながら、沢木さんは毎年変わらず、一人でJ-WAVEのスタジオに訪れ、東京タワーを見ながらしゃべっている。だから、「自分も部屋で、一人でラジオを聴いていていいんだ」と安心感を感じさせてくれますよね。
松浦:私は第1回目のエンディングトークが印象に残っています。沢木さんは「今日みんなはどんなクリスマスを過ごしたのかな? 一人ですごく寂しい日だったかもしれないけど……」と語り始め、最終的に「僕は今日、ここで話をして楽しかった」というメッセージで締めくくっていて。すごくいい話だなと思ったことを覚えています。
今井:一方で沢木さんご自身も、12月24日のイブの日の約束を守り続けている、自分のことを案外気に入っていると思うんですよね。あるとき、「この番組をやることが、僕にとっての年に最後の行事になってきちゃってるんだよね」「12月24日に予定を入れられないことにしちゃったんだよ。僕は」と笑いながらおっしゃっていましたし。
――番組が沢木さんにとっての暮れの恒例行事になっていたと。
今井:そうかもしれません。恒例行事でいうと、いつからか、沢木さん担当の各出版社の編集者さんが菓子折りを持って番組の放送当日、J-WAVEに来るということが習慣化したことがありました。24時の生放送に合わせて来訪するから、当然のように、皆さん酔っぱらっていて。賑やかなので、スタジオ内ではなく別室で生放送を聴いてもらい、終了後に打ち上げを一緒に行うということが一時期ルーティン化していたんです。
この慣習は今思えば、沢木さんにとって重要な忘年会だったんですよね。だって、各社の担当編集者と個々に会って食事するのって大変じゃないですか。だけど、ここに来るなら一気に済むわけで(笑)。それで朝まで飲むんですよ。沢木さんにとって年の最後を締めくくる重要な場になっていた気がします。ただ、コロナ禍で集まれなくなってからは、その流れは途絶えてしまいました。もしかしたら、編集者の方々は、もう呼んでくれないことに、ぶーぶー言っているかもしれませんね(笑)。
松浦:おっしゃる通り、可能であればリアルタイムで聴いてほしいですね。今はradikoで後から聴く人が増えていますが、この番組のリスナーさんの中には、radikoではなく生放送で聴くと宣言される方も多くいらっしゃいます。やはり、オンタイムで放送を共有する特別感みたいなものがあって。それに、クリスマス・イブということも相まって、年に一回この3時間だけはみんなで一緒にそこに集まるというムードがこの番組にはあるんですよね。
今井:『ミッドナイト・エクスプレス』という番組名は、沢木さんの代表作『深夜特急』から取っていますが、「3時間だけ駆け抜ける深夜特急に一緒に乗車しませんか?」という意味も込められているんです。だから、聴いている人たちは深夜特急「沢木号」に乗っているお客さんでもあるんです。radikoだとそこに乗っていないことになってしまうかも(笑)。ずっと聴いている人たちにとって、生で聴くことが一つの“約束”としてあるのではないでしょうか。
――最後の質問です。改めて、作家ではなく「ナビゲーター・沢木耕太郎」の魅力はどんなところにあると思いますか?
松浦:もちろん、26年間やられてスキルアップされているわけですが、うまいナビゲーターということでもないというか……。沢木さんが沢木さんのまま話していることがすべてで、私たちはそれを聴きたい。職業ナビゲーターの人でトークがうまい人はたくさんいますが、沢木さんはプロの話し手ではなく、プロのナビゲーターとしてスキルを磨く必要もありません。うまくなり過ぎてほしくないという気持ちもあるんですけど、そのへんの塩梅が絶妙だと思います。一年に一回だからということもあってか、うまいけど、慣れ過ぎている感じはしないんですよね。
今井:「実際に会ったらイメージと違う」という著名人の方って少なからずいると思うんですけど、僕が知る限り、沢木さんは“沢木耕太郎”のままなんですよ。そういう人って稀で。おそらく多くの読者、多くのリスナーさんたちはそれに気付いている気がするんです。沢木さんに会ったことない人がほとんどですが、会わなくても絶対「思った通りの人」だと信じているんです。で、実際に、イメージ通りの人なんです。だから、僕らスタッフは、嘘がなく番組を作れる。沢木さんは番組の中で演出に付き合ったことがありません。だからウソがないんです。それって、テレビやラジオの世界では珍しく、まさしく“約束通りの人”なんですよね。
――著名な作家さんなのに、奢らず自然体な方なんですね。
今井:そうなんですよね。過去に遠方で沢木さんと会ったこともあるのですが、そのときも一人で来るわけですよ。大物作家さんであれば、マネージャーさんや編集者さん、スタッフらと東京駅で待ち合わせをし、一緒に現地へ発つ。でも、沢木さんは東京から遠く離れた場所なのに、着の身着のまま一人で来て、予定が終わると「それじゃ!」と言って帰っちゃう。そんなベテラン作家さん、他に思いつきません。バックパック背負って深夜特急をやっていた青年、そのままなんですよね。
松浦:今でも飛行機はエコノミーに乗るしね(笑)。でも、それが沢木さん。そこに嘘がない。
今井:ほんとに。約束通りの人が約束通りの番組をやっている……という感じですね。
(取材・文:小島浩平)
放送局:J-WAVE(81.3FM)
番組タイトル:J-WAVE CHRISTMAS SPECIAL 沢木耕太郎~ミッドナイト・エクスプレス 天涯へ 2023~
放送日時:12月24日 (日) 24:00~27:00
radikoリンク: https://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20231225000000
番組ホームページ: https://www.j-wave.co.jp/special/sawaki2023/
番組X(旧Twitter): https://twitter.com/MIDNIGHT_EXP813
番組Instagram: https://www.instagram.com/midnight_exp813/
1997年よりスタートし、今年で27年目を迎える本番組。四半世紀以上にわたってリスナーから愛される理由は何なのか? 番組立ち上げ期からスタッフとして参加する、今井栄一さんと松浦紀子さんに話を聞いた。
【radikoで聴く】https://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20231225000000
(オンエア開始後、2023年12月31日28時ごろまで再生可能)
3時間の生放送でも「打ち合わせはしない」
――1997年にスタートした『ミッドナイト・エクスプレス』が今年で27回目の放送を迎えます。はじめに、今年の同番組のテーマを教えてください。今井:毎年、企画書を作るにあたって、編成から「今年のテーマは?」と聞かれたりするのですが、特にテーマというテーマがなくて。『ミッドナイト・エクスプレス』は、沢木さん次第の番組。なので、その年に発売された著書やこれから出版予定の新刊などあれば「生放送中にこんな話をするかもしれない」という情報を共有するくらいで、あとは沢木さんにしゃべっていただくだけ……というスタンスなんです。
松浦:この番組は打ち合わせをしないんですよ。一般的に3時間の生放送であれば打ち合わせをするんでしょうけど、『ミッドナイト・エクスプレス』に関しては、沢木さんがその日何をしゃべるのか、ご本人以外誰もわかりません。私たちも、リスナーさんと一緒に初めて聴けるのを楽しみにしているという感覚なんです。
――そもそも、どのような経緯から番組は開始されたのでしょうか?
今井:J-WAVEの当時の編成部長がもともと沢木さんのファンだったんです。おそらく沢木さんが若い頃にパーソナリティーを務めていたAMラジオの番組も聴いていて、「沢木さんで番組をやったら面白いんじゃないか」と考え、実現に至ったと記憶しています。
井上陽水に「電話して」と呼びかけるも…
――では、四半世紀以上に及ぶ歴史の中で、特に印象的な思い出は何でしょうか。今井:特に思い出深いのは、1997年に放送された第一回目のオープニングトークです。沢木さんはAMラジオの経験はありましたが、J-WAVEのナビゲーターとして3時間の生放送ができるのかは未知数でした。そのため、当時のオンエア直前、スタッフ含めた関係者全員、沢木さんが一言目に何をしゃべるのか固唾をのんで見守っていました。そしたら番組開始と同時に、表参道のイルミネーションを横目にクリスマスの雰囲気を感じつつ、歩いて西麻布のスタジオまで来たというお話をされていたんですよ。その風景描写にものすごく引き込まれて。まるでそこに、東京都心、今日24日の西麻布・表参道界隈の夜の風景を鮮明に写した写真があるかのように感じました。今思えば、このオープニングで番組の方向性が固定されたのかもしれません。
松浦:この第一回目では、同年に放送されたテレビドラマ『劇的紀行 深夜特急』で沢木さんの役を演じた大沢たかおさんをゲストに招き、また、事前に収録した沢木さんによる写真集『天涯』に掲載された文章の朗読音声を随所で使用するなど、現在とは異なる構成になっていました。
今井:僕らも微妙に不安があったのかもしれません。「3時間の生放送を、沢木さんが一人でできるのか」という思いもあり、ゲストを呼び、録音パートが設けられたわけで。しかし、かなり早い段階で「一人で任せたほうがいい(一人でとても面白い!)」と気付き、そういったプラスアルファの要素がどんどん消えていった。そんな26年間でした。
――なるほど。ほかにも思い出深いエピソードがあれば、聞かせてほしいです。
今井:沢木さんは井上陽水さんと仲が良いんですよ。それで昔、「陽水さんと電話で話すか、あるいは遊びに来てもらったら面白いですよね」という話をしたことがあって。沢木さんも昔はやんちゃなところがあったから、その話に乗ってくれて、番組の中で「陽水、もし今暇があったら来るか、電話して」と呼びかけたんです。そしたら、井上陽水さんが聴いていたらしくて、番組宛てに「沢木さん、こんな時間に遊び以外で誘わないでください」と直筆のファックスが届いたことがありました(笑)。
リスナーの言葉を引き出す、沢木耕太郎の質問力
――そんな生放送ならではの出来事があったとは(笑)。一方で、沢木さんとリスナーさんの電話でのやり取りも、番組の聴きどころの一つに挙げられるかと思います。今井:そうですね。とはいえ、第一回目の放送前まで、沢木さんが電話で一般の方とうまくしゃべれるのか、誰もわかりませんでした。でも、一人目と電話を繋いだときに「君の部屋には窓があるの?」「あります」「窓の外には何が見えるの?」という流れから、リスナーさんに自宅の窓の外に広がる12月24日の夜の風景を語ってもらったんです。当たり前なのですが、すごいインタビュー能力! ラジオを作っている僕らからすると「この人すごいな」と感心しましたし、聴いている人たちも「この話はどうなっていくんだろう」と聴き入ったはずです。
松浦:沢木さんは、リスナーさんが緊張していたとしても、うまくほぐしてくれるんですよ。その結果、自然と気が付いたら話しているというか。「しゃべっちゃった、色々」みたいなことを、電話を繋いだ人はよく言っていますね。
クリスマス・イブに生放送をする意義
――『ミッドナイト・エクスプレス』は毎年、12月24日に生放送されますが、クリスマス・イブにオンエアする意義についてはどのようにお考えでしょうか。今井:12月24日の深夜に『ミッドナイト・エクスプレス』を聴いている人の多くは、きっと少なからず寂しさを抱えていると思うんですよ。そのセンチメンタルな感情に寄り添いながら、沢木さんは毎年変わらず、一人でJ-WAVEのスタジオに訪れ、東京タワーを見ながらしゃべっている。だから、「自分も部屋で、一人でラジオを聴いていていいんだ」と安心感を感じさせてくれますよね。
松浦:私は第1回目のエンディングトークが印象に残っています。沢木さんは「今日みんなはどんなクリスマスを過ごしたのかな? 一人ですごく寂しい日だったかもしれないけど……」と語り始め、最終的に「僕は今日、ここで話をして楽しかった」というメッセージで締めくくっていて。すごくいい話だなと思ったことを覚えています。
今井:一方で沢木さんご自身も、12月24日のイブの日の約束を守り続けている、自分のことを案外気に入っていると思うんですよね。あるとき、「この番組をやることが、僕にとっての年に最後の行事になってきちゃってるんだよね」「12月24日に予定を入れられないことにしちゃったんだよ。僕は」と笑いながらおっしゃっていましたし。
――番組が沢木さんにとっての暮れの恒例行事になっていたと。
今井:そうかもしれません。恒例行事でいうと、いつからか、沢木さん担当の各出版社の編集者さんが菓子折りを持って番組の放送当日、J-WAVEに来るということが習慣化したことがありました。24時の生放送に合わせて来訪するから、当然のように、皆さん酔っぱらっていて。賑やかなので、スタジオ内ではなく別室で生放送を聴いてもらい、終了後に打ち上げを一緒に行うということが一時期ルーティン化していたんです。
この慣習は今思えば、沢木さんにとって重要な忘年会だったんですよね。だって、各社の担当編集者と個々に会って食事するのって大変じゃないですか。だけど、ここに来るなら一気に済むわけで(笑)。それで朝まで飲むんですよ。沢木さんにとって年の最後を締めくくる重要な場になっていた気がします。ただ、コロナ禍で集まれなくなってからは、その流れは途絶えてしまいました。もしかしたら、編集者の方々は、もう呼んでくれないことに、ぶーぶー言っているかもしれませんね(笑)。
沢木耕太郎は、今も「深夜特急をやっていた青年」のまま
――現在、ポッドキャストやradikoなどで自分の好きな時間にラジオを聴取する楽しみ方が主流となりつつありますが、作り手として『ミッドナイト・エクスプレス』に関してはリアルタイムで聴いてほしいという想いはありますか?松浦:おっしゃる通り、可能であればリアルタイムで聴いてほしいですね。今はradikoで後から聴く人が増えていますが、この番組のリスナーさんの中には、radikoではなく生放送で聴くと宣言される方も多くいらっしゃいます。やはり、オンタイムで放送を共有する特別感みたいなものがあって。それに、クリスマス・イブということも相まって、年に一回この3時間だけはみんなで一緒にそこに集まるというムードがこの番組にはあるんですよね。
今井:『ミッドナイト・エクスプレス』という番組名は、沢木さんの代表作『深夜特急』から取っていますが、「3時間だけ駆け抜ける深夜特急に一緒に乗車しませんか?」という意味も込められているんです。だから、聴いている人たちは深夜特急「沢木号」に乗っているお客さんでもあるんです。radikoだとそこに乗っていないことになってしまうかも(笑)。ずっと聴いている人たちにとって、生で聴くことが一つの“約束”としてあるのではないでしょうか。
――最後の質問です。改めて、作家ではなく「ナビゲーター・沢木耕太郎」の魅力はどんなところにあると思いますか?
松浦:もちろん、26年間やられてスキルアップされているわけですが、うまいナビゲーターということでもないというか……。沢木さんが沢木さんのまま話していることがすべてで、私たちはそれを聴きたい。職業ナビゲーターの人でトークがうまい人はたくさんいますが、沢木さんはプロの話し手ではなく、プロのナビゲーターとしてスキルを磨く必要もありません。うまくなり過ぎてほしくないという気持ちもあるんですけど、そのへんの塩梅が絶妙だと思います。一年に一回だからということもあってか、うまいけど、慣れ過ぎている感じはしないんですよね。
今井:「実際に会ったらイメージと違う」という著名人の方って少なからずいると思うんですけど、僕が知る限り、沢木さんは“沢木耕太郎”のままなんですよ。そういう人って稀で。おそらく多くの読者、多くのリスナーさんたちはそれに気付いている気がするんです。沢木さんに会ったことない人がほとんどですが、会わなくても絶対「思った通りの人」だと信じているんです。で、実際に、イメージ通りの人なんです。だから、僕らスタッフは、嘘がなく番組を作れる。沢木さんは番組の中で演出に付き合ったことがありません。だからウソがないんです。それって、テレビやラジオの世界では珍しく、まさしく“約束通りの人”なんですよね。
――著名な作家さんなのに、奢らず自然体な方なんですね。
今井:そうなんですよね。過去に遠方で沢木さんと会ったこともあるのですが、そのときも一人で来るわけですよ。大物作家さんであれば、マネージャーさんや編集者さん、スタッフらと東京駅で待ち合わせをし、一緒に現地へ発つ。でも、沢木さんは東京から遠く離れた場所なのに、着の身着のまま一人で来て、予定が終わると「それじゃ!」と言って帰っちゃう。そんなベテラン作家さん、他に思いつきません。バックパック背負って深夜特急をやっていた青年、そのままなんですよね。
松浦:今でも飛行機はエコノミーに乗るしね(笑)。でも、それが沢木さん。そこに嘘がない。
今井:ほんとに。約束通りの人が約束通りの番組をやっている……という感じですね。
(取材・文:小島浩平)
番組情報
オンエア開始後、2023年12月31日28時ごろまで再生可能
番組タイトル:J-WAVE CHRISTMAS SPECIAL 沢木耕太郎~ミッドナイト・エクスプレス 天涯へ 2023~
放送日時:12月24日 (日) 24:00~27:00
radikoリンク: https://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20231225000000
番組ホームページ: https://www.j-wave.co.jp/special/sawaki2023/
番組X(旧Twitter): https://twitter.com/MIDNIGHT_EXP813
番組Instagram: https://www.instagram.com/midnight_exp813/
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