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斎藤工「心あたりしかない」 浅野いにおが描く、年齢を重ねた人の“零落という感覚”に共感

斎藤工「心あたりしかない」 浅野いにおが描く、年齢を重ねた人の“零落という感覚”に共感

青春漫画の金字塔『ソラニン』を放ったカリスマ漫画家・浅野いにおの新境地にして衝撃の問題作を実写映画化した『零落』(3月17日公開)がついに完成! 2月8日にはテアトル新宿で完成披露プレミア上映会が実施され、主演の斎藤工、共演の趣里、玉城ティナ、竹中直人監督、原作の浅野いにおが参加した。

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スランプに陥る漫画家・深澤薫役の斎藤は、5、6年前に原作漫画に出会い心を掴まれたという。「自分に心あたりしかなくて……。ミドルエイジ・シンドロームという中年のもがきみたいな言葉があるらしく、まさにそれだと思った」と強い共感を寄せて「深澤薫の気持ちは痛いほどわかる。もはや自分のことではないかと思うくらいで、漫画家と俳優という立場は違えども、零落という感覚は大いに共感しかない。現在進行形の出来事と思うくらい共鳴しました」と運命的出会いと確信していた。

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深澤薫の前に現れる風俗嬢・ちふゆ役の趣里は、浅野漫画のファンといい「ちふゆを演じられるのは光栄だと思うと同時に、プレッシャーでした」と好きだからゆえの心境吐露。撮影時には竹中から作品をイメージした楽曲などが送られてきたそうで「そのお陰で内側からちふゆができた気がしました」と竹中監督の“演出”に感謝していた。

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深澤薫に深い印象を残す猫顔の少女を演じた玉城。斎藤演じる深澤薫について「才能があるからこその残酷さは感じ取っていただろうし、猫顔の少女もちふゆも一方通行で関係の終わりも残酷」と分析しつつ「身勝手を自分で許しているところが可愛いと思った」と人間味を感じていた。

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映画『無能の人』から数えて監督作10本目の竹中監督。原作漫画を手に取った途端に映画化を決意したそうで「私小説的であり純文学を読んでいるかのように思った。浅野いにおさんは漫画界の芥川龍之介。ご本人に会って痺れて映画化に突き進んだ。この映画ができるまで、いにおさんに向かって生きてきた感じ。浅野いにおという一人の観客に向かって作りました」と感無量の表情を浮かべていた。その浅野は、今回の映画化について「みんなが面白いと思うような性格の漫画ではないので、誰に向けて描いているのかと思うときもあったけれど、巡り巡って竹中さんに辿り着いた」としみじみ。完成作には「竹中さんのフィルターは通しているものの本質は失わず。竹中さんがいなければ映画化もされなかったと思うし、とても満足しています」と太鼓判を押していた。

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また作品の内容にちなんで<もうやってらんねえよ、うんざりだよ>と思ったエピソードを聞かれた斎藤は「タクシーを捕まえようとして空車だと思っていたら、迎車だったという……。意味の違う言葉なのになぜ文字が同じ色で表示されているのか?どうにかして文字の色を変えてほしい」とタクシーあるあるに苦笑い。一方の趣里は「掃除をしてもしても、何故か床に髪の毛が落ちている。あれ? さっき? なぜ? となる」と掃除の苦労を口にして「皆さんもわかりますよね? ほら頷いている!」と観客を巻き込んで共感を集めていた。

(取材=石井隼人)

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