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フランスは「哲学」が必修科目、義務教育は3歳から…現地在住の女性に聞く教育の形

画像素材:PIXTA

フランスは「哲学」が必修科目、義務教育は3歳から…現地在住の女性に聞く教育の形

フランス・パリで子育てをする建築家・森 弘子さんが、日本とフランスにおける教育制度の違いを紹介した。

この内容をお届けしたのは、J-WAVEで放送中の番組『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:小川紗良)のワンコーナー「WORLD CONNECTION」。1月15日(日)のオンエアをテキストで紹介。

格差を生み出さないフランスの教育制度

WEB版『Hanakoママ』に掲載された、フランスで初等&中等教育で新しく「ケンカ仲裁法」プロジェクトがスタートしたという記事が話題を集めた。今回の「WORLD CONNECTION」では、フランスの教育について注目。フランス・パリで子育てをしている建築家・森 弘子さんから、フランスと日本の教育の違いについて聞いた。

小川:フランスで子育てをすることになり、まずどのような印象を感じましたか?

森:私個人の印象なんですけども、フランスの方は子どもに対してすごく寛容な気がします。子どもを連れて歩いていると、知らないおじちゃんおばちゃんにすごく話しかけてくれます。保護者に対してもすごく協力的で、レストランでもランチであればメニューに載っていない子ども用のメニューを出してくれたり、子ども用の椅子をサッと持ってきてくれたりしますね。

小川:街行く人たちが見守ってくれているというか、温かい目線を向けてそのうえで手助けもしてくれる感じなのでしょうか?

森:そうですね。子どもを社会の構成する一員として見て、社会全体で見守って子育てをしている感覚がすごくあります。

現在、森さんは4歳の子どもを育てているが、子どもはすでにフランスの学校に通っているという。

森:フランスでは、入学するタイミングが日本とはちょっと異なっています。日本は4月からですけども、フランスは9月から。そして、3歳になる年の9月から入学します。学校はエコール・マテルネルと呼ばれ、日本語だと「保育学校」と訳せます。

小川:保育園というよりかは学校なのでしょうか?

森:はい。学んでいるという印象が強いです。日本で言う年少・年中・年長の3学年を経て、そのあとは小学校に入学します。フランスは2019年9月から3歳から義務教育になったので、エコール・マテルネルから義務教育です。

小川:小学校にあがる前にみんなが平等に教育を受けることで、スムーズにあがっていける意味もあるのでしょうか?

森:そうですね。なぜ3歳から義務教育になったかというと、フランスは地域によって格差が大きいんですね。そこの差をなくしていきたいと政府が考えて、このような制度にしたようです。

教育者のライフワークバランスを尊重

森さんが感じる、日本の幼児教育との違いは何だろう?

森:日本とフランスは同じ先進国なので、大きな違いというのはないと思うんですね。ただ、息子が保育学校に通うようになって驚いたのが、1年の終わりに成績表がもらえるんですよ。数字で評価がつくものではなくて、言語とコミュニケーションや身体能力などの複数のカテゴリにわかれていて、各項目がどの程度できるか先生が書いてくれます。成績表は数十ぺージにおよぶ冊子みたいになっているんですよ。

小川:読み応えがありますね。

森:3年間通うなかで同じ成績表を使っていて、カテゴリで学年ごとにできることが増えていきます。

小川:基本的な発達状況や能力が目で見てわかるようになっているんですね。

森:はい。評価というよりも子どもの発達がどれくらいかを保護者に伝えるという印象が強いですね。(成績表は)以前は義務化されていたものだったらしいんですが、今でも比較的残っているんじゃないかなと思います。

教師の労働時間に対する価値観も、日本とは異なるそうだ。

森:年に何回かストがあり、学校が閉まって大慌てになります(笑)。あと曜日によって違うんですけど、保育学校の授業が終わってからも子どもを預けることはできるんですけども、先生は授業が終わったらサっと帰るんです。

小川:きっちりしているんですね。日本の学校の先生ってとにかくやることの範囲がとても広くって、教えるだけじゃなくて部活動とか保護者とのやり取りがあったりして、すごく残業も多いイメージがあります。フランスでは子どもだけじゃなくて、子どもに関わる大人も心地よく働ける風土があるのでしょうね。もちろん、急に学校がないってなったら親は大変だと思うんですけども、労働者の権利を大切にしているのかなと思いました。

森:フランスに住んでいて、権利を主張するのは誰でもしていると感じますね。

個人主義と連帯性は切り離せない関係

続けて森さんは、日本でも取組んでほしいフランスの教育として「哲学の必修化」を挙げた。

森:個人の意見ですけども、フランスでは中等教育のあとに哲学を必修科目で学ぶんですね。それもあってか、自分を批評する“軸”を持っているように感じます。芸術家に対しても理解が深いですし、映画、演劇、絵画などを見たときに自分の視点を持っていて意見が言えます。ほかには社会制度とか政治とかいろんなことに範囲がおよぶんですけども、哲学を学んでいるから自分の考えをしっかり言語化できるんじゃないかなと感じます。

小川:なるほど。数字とか文字を覚える以前に、考える力は生きることに直結する大事なことですね。

森:フランスの個人主義というバックグラウンドもあると思うんですけども、ちょっと喋っているだけでもディスカッションみたいになるんですね。本当にすごいなって思います。

小川:私の友達から聞いたんですけど、フランスでは「solidarité=連帯」という言葉もよく使われるそうですね。今日聞いた子育ての話もそうですけど、社会のなかで連帯感というか、街中で子どもを思いやる見えない繋がりみたいなものもあって、それがあるからこそ個人主義が成り立っているのかなと思いました。

森:個人主義と連帯は切り離せないというか、一体になっている部分だと感じます。

小川:日本だと保育の無償化や福祉が充実しているところもありますけども、一方で保育士さんや先生がすごく大変な思いをされていて。自己責任論というか、個人主義とはまた違う、誰かに負担が寄りかかるなと感じます。フランスだと社会全体で個人を尊重しながら、軽やかでいらえるようなイメージがお話を聞いて湧きました。

『ACROSS THE SKY』のワンコーナー「WORLD CONNECTION」では、ゲストを招き世界の最新カルチャーに迫る。オンエアは9時20分頃から。

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