北の離島で最愛の人の帰りを「待つ女」たちの人生が交差する『千夜、一夜』。その公開記念舞台挨拶が8日都内で行われ、主演の田中裕子、共演の尾野真千子、安藤政信、そして久保田直監督が参加した。
コロナ禍での撮影延期などを乗り越えての念願の封切り。田中は「諦めずに今日という日を迎えられたこと、スタッフの方々やキャストのみなさんに感謝しています」と喜びを噛みしめた。
本作の脚本は主演の田中を当て書きしたもの。突然姿を消した夫を30年にわたり待つ女性・登美子を演じた田中は、脚本を読んだ印象について「脚本の青木さんとは『いつか読書する日』でご一緒したことがあり、セリフは多くないけれど、セリフとセリフの間にまるで“風”のようにいろんなことを感じられる印象があります」と明かし「でもその“風”のようなものをうまく演技で伝えるのがなかなか難しくて。今までもなかなかできなかったと思うし、今回もできなかったかなあ?」と微笑みながら謙遜した。
2年前に失踪した夫を探す女性・奈美を演じた尾野。「近年エンタメに特化した作品が多い中で、いい意味で地味な映画。本作は観た人も私たちも、何かを考えさせられる映画だと思っています。田中さんと前回共演したときに個人的にやり残したことがあり、本作で面と向かってしっかりとお芝居するシーンがあるので、ぜひ出演したいと思いました」と出演の経緯を紹介した。
奈美の夫・洋司を演じたのは安藤。事務所に所属せずフリーランスで活動していることから「“役者としての所在地”を考えているところだったので、脚本を読んだときに今の自分とリンクするところがあると感じました」としみじみ。田中との共演には「田中さんと演技していると、まるで魔法にかかったように、全てを見透かされているような、動けなくなるような感覚になりました。思わず“旦那さん”というセリフを嚙んでしまって……」と照れ笑いだった。
本作品は佐渡島でロケを敢行。田中は「撮影終わりの帰り道、道で虫を採っている女の子がいるなあと思ってよく見たら……真千子ちゃんでした」と野生児的尾野の姿を目撃したという。これに尾野はチャーミングなポーズを取りながら「虫じゃなくて、花を摘んでいました」とすぐさま弁解していた。
(取材=石井隼人)
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