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咲き誇る桜に“没入”する展覧会。美と生と死を表現する「ダミアン・ハースト 桜」展の奥深さ

<「ダミアン・ハースト 桜」展示風景 2022年 国立新美術館>

咲き誇る桜に“没入”する展覧会。美と生と死を表現する「ダミアン・ハースト 桜」展の奥深さ

六本木・国立新美術館の中に “桜の回廊”が出現した。イギリスを代表する現代作家、ダミアン・ハーストの最新アート作品<桜>シリーズ。国立新美術館とカルティエ現代美術財団による日本初大規模個展「ダミアン・ハースト 桜」だ。死んだサメや牛をホルマリン漬けにした作品や、薬の錠剤をモチーフにした作品など、生と死をテーマにセンセーショナルな作品をアートシーンに投下してきた。そんなハースト、巨大なキャンバスに咲き誇る桜にも死を忍ばせているそうで──。
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<ダミアン・ハースト 《神聖な日の桜》 2018年 油彩 カンヴァス 二連画 各305×244cm カルティエ現代美術財団コレクション>

美と生と死についての作品─<桜>の美しさ

24点の<桜>のキャンバスは、大きいもので縦5メートル、横7メートルを超える。桜を象徴する色彩で一面に花びらや枝がダイナミックに描かれている。
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<「ダミアン・ハースト 桜」展示風景 2022年 国立新美術館>

作品への没入感を重んじているハーストは「観客には作品によって身体的な反応を体験して欲しい」と、<桜>シリーズにも眼前に迫るような勢いを表したという。時折、大きな絵筆で絵具をキャンバスに投げつけるように描いていることから、近くで見ると多層的で立体的。植物の荒々しいエネルギーまでも表現しているようだ。
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<スタジオでのダミアン・ハースト 2019年>

ハーストは<桜>のシリーズについて「美と生と死についての作品」と説明する。一年のうち長くても2週間程度しか咲かない桜。しかし散るまでに一気に満開になり、人々を幻想的な世界にいざなう。ハーストの<桜>の前に立つと、植物の摩訶不思議な生命力をも受け取れる。

美の世界を観察する

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<「ダミアン・ハースト 桜」展示風景 2022年 国立新美術館>

30年以上のアーティスト活動の中で、絵画、彫刻、インスタレーションなど多岐にわたる表現にトライしてきたハースト。1990年代の英国で頭角を現わしたアーティスト群「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト」の中心人物で、冒頭でご紹介したような前衛的な作品を手掛け国際的に注目されてきた。
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<ダミアン・ハースト 2019年>

<桜>シリーズは、芸術、宗教、科学、生と死という人間にとって普遍的な思索のテーマを作品に投影してきたハーストの最新作にあたる。107点ある<桜>作品のうち、ハースト自身によって、24点が慎重に選ばれた。
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<ダミアン・ハースト 《漢字桜》 2018年 油彩 カンヴァス 366×274cm 個人蔵>

明るい空間の中、白い壁を背景にあえてシンプルな展示にしているのは、観客が絵画に浸り、美の世界を観察するため。桜という植物の美しさを享受するためだけの作品ではないところに、この展示の奥行きがある。
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<「ダミアン・ハースト 桜」展示風景 2022年 国立新美術館>

美しく儚く散る桜の命の短さは、日本人の死生観に大きな影響を与えてきた。同時に寒い冬を乗り越え、暖かい春を待ち望む心に明るさを灯してくれる存在でもある。<桜>シリーズは、コロナ禍で塞ぎがちな心をほぐしてくれる、そんな作品だ。

春への想い高まるプレイリストをラジオで

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<スタジオでのダミアン・ハースト、2019年>

J-WAVEでは、時代、国境、ジャンルを飛び越えXROSS=クロスしていく番組『XROSS.POINT』で、プロのミュージックセレクターたちによる「ダミアン・ハースト 桜」展の世界観を表現するため、桜をイメージした幻想的なプレイリストを披露。期間は3月7日(月)~3月10日(木)。番組詳細はこちら(https://news.j-wave.co.jp/2022/03/post-9235.html)。

(取材・文=末吉陽子)

■画像クレジット
展示風景 Photographed by Masaya Yoshimura © Damien Hirst and Science Ltd. All rights reserved, DACS 2022
展示風景以外 Photographed by Prudence Cuming Associates Ltd © Damien Hirst and Science Ltd. All rights reserved, DACS 2022

【ダミアン・ハースト 桜】
会期: 2022年3月2日(水)—5月23日(月)
毎週火曜日休館 ※ただし5月3日(火・祝)は開館
開館時間: 10:00—18:00 ※毎週金・土曜日は20:00まで / 入場は閉館の30分前まで
会場: 国立新美術館 企画展示室2E(東京・六本木)

お問合せ: 050-5541-8600(ハローダイヤル)
展覧会HP: https://www.nact.jp/exhibition_special/2022/damienhirst/
観覧料(税込) 一般1,500円、大学生1,200円、高校生600円

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