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レイ・ハラカミ没後10年─怖くなるほど心地よく、親しみやすいのに予測不能…楽曲の魅力を掘り下げる

レイ・ハラカミ没後10年─怖くなるほど心地よく、親しみやすいのに予測不能…楽曲の魅力を掘り下げる

この世を去って10年、国内外で愛された電子音楽家のレイ・ハラカミの魅力を、蓮沼執太とパソコン音楽クラブ・柴田が語り合った。

トークが繰り広げられたのは、J-WAVEで放送中の番組『MITSUBISHI JISHO MARUNOUCHI MUSICOLOGY』(ナビゲーター:グローバー)。毎週、1組の「レジェンド・ミュージシャン」について語り合う番組だ。レイ・ハラカミ特集は7月24日、7月31日(土)にオンエア。ここでは24日のオンエア内容を紹介する。

レイ・ハラカミの魅力とは

まず蓮沼に、レイ・ハラカミの楽曲との出会いを訊いた。

蓮沼:僕は学生だったんじゃないですかね。全然音楽なんてやってないときにハラカミさんの音楽を聴きました。好きだったミュージシャンのリミックスをハラカミさんがされていて、最後にまた全然違うテイストの音が流れ出して衝撃を受けましたね。
グローバー:どのような気持ちになったんでしょうか。
蓮沼:聞いたことのない音色が広がっていく感じ。自分のなかでは新しいんですけど、でもどこか懐かしい音色や響きもあって。当時学生だったのでどんどん新しいものを聴き漁っていた時期だったのですが、そのなかでもすごく刺激的な音でしたね。
グローバー:そこからレイ・ハラカミを掘っていったんですか?
蓮沼:そうですね。当時はあまりインターネットとかがなく、レコード屋で音源をチェックするみたいな感じでした。
グローバー:自分のど真ん中に来た曲はありましたか?
蓮沼:たくさんあります。ハラカミさんは期待を裏切らないけれど、いい意味で裏切ってくれるというか。「そうそう、この感じ。だけどちょっと違う」みたいなのがやっぱり巧みだな、と感じていました。
グローバー:どんなライブが印象に残っていますか?
蓮沼:ライブ「SonarSound Tokyo」ですかね。そのときアーティストグループ「ダムタイプ」の高谷史郎さんが映像を担当していたのですが、なんかクラブのVJみたいな感じじゃなく、すごく有機的にハラカミさんの音と映像が混じり合っていて。大げさじゃなく本当に映画を観てるような感じだったし、急にリズムが入ってくるとクラブっぽい感覚にもなって、「あ、こういうアプローチする人がいるんだ」と思って感動した記憶があります。

一方、DTMユニット・パソコン音楽クラブの柴田も、レイ・ハラカミとの出会いを「明確に覚えています。2008年です」と、こう語る。

柴田:僕は1995年生まれなので2008年は中学2年生で、YouTubeが出始めた頃だったんですね。その当時レイ・ハラカミさんのお名前はもちろん存じ上げていたんですけれども、お金がなくてCDレンタルもあまりできなくて。そこにYouTubeが現れたので、「レイ・ハラカミ」で検索して『にじぞう』を聴いたらめっちゃくらいました。

にじぞう

グローバー:名前が最初にインプットされたきっかけはなんだったんですか?
柴田:CD屋さんに行くとレイ・ハラカミさんの新しく出たアルバムとかのポスターが貼られていて、それで名前は覚えていました。でも当時はなにもない場所に住んでいたので。
グローバー:そんななか、流れてきた曲はどうでしたか?
柴田:これまでに聴いたことがないタイプの音楽だなと衝撃を受けました。なんの楽器がどういう働きをしているのかとか、次の展開とかが全く予想がつかなくて。どういった音の現象が起きてるのかわからないのに、すごく親しみやすい感じに衝撃をくらったというか。それまでの「聴いたことのない音楽」というのは、だいたい音色がすごくソリッドなものとか突飛な展開がある曲みたいなものが多かったんですけど、ハラカミさんは全然そうじゃないのに聴いたことがないし、よく聴くとけっこうバイオレンスな展開をしていて「あ、すごい! これまったく知らないやつだ」ってなりましたね。

『Joy』から受けた衝撃

番組の事前アンケートで「衝撃を受けた曲」に、2人は『Joy』をあげていた。

joy

グローバー:どこに一番衝撃を受けましたか?
蓮沼:とにかくポップ。すごく複雑な色を持っていて奥行きもあるんだけど、聴き心地はとにかくポップなところに人柄が出ています。「いよいよハラカミさん、ものすごい曲を作ったな」とスナーとしても嫉妬しちゃうみたいな。
グローバー:それはすごいですね(笑)。ファンも嫉妬しちゃう。
柴田:この曲って確か10分ぐらいあって。
蓮沼:ちょうど10分。
柴田:怖すぎませんか? なんかポップなんですけど怖っ!って思って。
グローバー:あはは(笑)。何が怖いんですか?
柴田:ハラカミさんの曲って、ループに聴こえるんですけど、ずっと変化し続けていて、かつ10分それをやるって「快楽追求しすぎでしょ」みたいな。自身の気持ちいいフレーズやリズムがあって、理屈では作っていない感じじゃないですか。それを10分やり続けるって「怖いな、この人」と思って。蓮沼さんもおっしゃってたんですけど、すごくポップな聴き心地がずっと続くのは「なんだ、これ」みたいな(笑)。
蓮沼:ある種、淡々とやっていて、そこが恐怖。
柴田:でもポップっていう。
グローバー:『Joy』を解体して聴いてみたときに、思うところはありますか?
柴田:『Joy』に限らずで、ハラカミさん自身もおっしゃってたんですが、「真ん中に人がいない」というか、主旋律がない曲が多いのがすごい。聴き心地のよさであそこまでポップになるのは本当にすごいと思います。
蓮沼:「この曲の想いはこうなんだ!」と思うと、それこそみんなが主旋律、メロディーを考えると思うんです。「強いメロディーをみんなのイメージにつけよう」と思うんですけど、そうじゃないんですよね。そこがガッポリと空洞になって、その他のもので全部の世界を作り上げていくんです。リズムも言ってみれば、そこにはピッチも音階もあるので、全部でグルーヴやハーモニーを作っている印象があります。

レイ・ハラカミ、珠玉のリミックス曲TOP3

柴田がレイ・ハラカミの「珠玉のリミックス曲」を3曲セレクトした。

3位:『Art Farmer / SOFT(2001)』

柴田:ハラカミさんの曲で生のギターが鳴ったらどうなるんだろう、と想像つかなかったんですけど、このリミックスでやられているんです。まあ、ほかでもやられているんですが、相性がバシッとハマっててすごく面白いなと印象に残っていたので3位に選びました。

2位:『Curved Flow / Ken Ishii(1996)』

柴田:たぶん、この曲がハラカミさんのキャリアで最初の曲ですよね? ハラカミさんがまだダンスミュージックに接近しているころというか、キックが4つ打ってる感じがすごく面白くて。アルバム『lust』からのイメージで聴くとまた全然違っている感じが面白くて、2位に選びました。

1位:『ばらの花 / くるり(2002)』

柴田:ハラカミさんの曲は全部ポップだけど怖いなあと、いつも聴きながら思っているんです。これは音楽をやってる方だとわかると思うんですけど、頭の歌の入りがめちゃくちゃ怖くないですか? 「そこで入るんだ!?」みたいな。人によるかもしれませんが、僕はそれにまず超ビックリしました。『ばらの花』のサビはまだ旅に出ていない感じじゃないですか。その心境の不安じゃないですけど、暗い部分をさらに内側から持ってきたみたいなコードワークとかも施されていてすごいなと。こんなリミックスを聴いたら自分が誰かのリミックスとかをやるときにハードル高すぎやろ、みたいな(笑)。おそろしいリミックスだなと思いました。
蓮沼:音だけだと言葉が乗っていないので意味がないじゃないですか。だけど、なんか巧みに詩的なニュアンスが音色に入っているんだなと、僕も怖くなってきました(笑)。

J-WAVE『MITSUBISHI JISHO MARUNOUCHI MUSICOLOGY』では、ゲストを迎え、1組の「レジェンド・ミュージシャン」をテーマに音楽談義を展開。7/31の放送回も引き続きレイ・ハラカミ特集をお届けする。

【radikoで聞く 2021/07/31(土)17:00以降に再生可能】
https://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20210731170000

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2021年7月31日28時59分まで

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番組情報
MITSUBISHI JISHO MARUNOUCHI MUSICOLOGY
毎週土曜
17:00-17:54