日常生活で、当たり前のように使っている水。しかしもちろん、「あって当然」なものではない。世界の現状や、2050年の予想とは。水道のない場所での水利用を実現する、ポータブル水再生処理プラント「WOTA BOX」などを展開する、株式会社WOTA代表の前田瑶介さんが「水の未来」について語った。
前田さんが登場したのは、J-WAVEで7月22日(木・祝)に放送した特別番組『J-WAVE SPECIAL TSUCHIYA EARTHOLOGY』(ナビゲーター:小山薫堂・高島 彩)。EARTHOLOGY=「地球学」をテーマに、ゲストを交え地球から日常の環境を考える時間。今回は、オンエア日が「海の日」でもあることから、「水」をテーマに番組をお届けした。ここではその一部をテキストで紹介する。
番組ではその他、「水の歴史」や「水が作り出す食の多様性」などのテーマでトーク。さらに、小山薫堂と押尾コータローが“日本のベネチア”とも言われる京都府「伊根町」に取材した模様もお届けした。ポッドキャストで配信中だ。公式サイトには、現地の写真もアップされている。
高島:WOTAのどのような技術が世界で注目されているのでしょうか?
前田:使った排水の98パーセントを再生して循環利用する水のリサイクル技術です。
高島:98パーセントも再生できるんですね。
前田:宇宙ステーションとかではすでにいろんなやり方をやっていて、それを地上に合うやり方で我々がやっています。
WOTAは水道のない場所での水利用を実現する、ポータブル水再生処理プラント「WOTA BOX」を開発。エアコンの室外機くらいの大きさで、いつでもどこでも安心で安全な水を使用することができる。
前田:浄水場や下水処理場を10万分の1サイズくらいにして、今まで人がやっていたことを自動化し、持ち運べる浄水場のようなものになります。一家に一台はエアコンがあるのに、一家に一台の浄水場はないじゃないですか。それを作ろうと考えました。
持ち運べる浄水器の開発のきっかけは、前田さんが体験したある出来事だった。
前田:私のふるさとには浄水場がなくて、わき水を蛇口につないでいました。東京に出てきた次の日に東日本大震災に起きて。東京は進んだところだと思っていたんですけど、いろいろな都市インフラが止まってしまい、大きいインフラがあるところでそれが止まるとどうしようもないなと感じました。逆にふるさとは小さいところだったので、小さいインフラがあると災害が起きてもみんなが使いこなせるのではないかと思いました。
小山:災害が起きたときに、だいたいの人は「不便だ」とか「復旧しないかな」としか考えないけど、前田さんが「だったら自分でこういうものを作ればいい」という発想をすることがすばらしいですね。
前田:震災で断水になったんですけど、その辺の川で水が流れていたんです。なぜその水を使わないのかなって思ったんです。
小山:田舎だと川で流れる水も飲めるのに、なぜ都会の人はそれを飲まないんだろうって思ったわけですね。
前田:都会に住む人はそもそも水があることすら頭の外にあるというか。
小山:でも、それは飲めない。だから前田さんは、それを飲む機械を作ればみんな困らないのにって考えたと。
前田:そうですね。
前田:水の安全の問題はふたつあります。ひとつは水の量が足りないこと。もうひとつは水の質が低いこと。日本のように蛇口をひねると飲み水が出てくること自体、世界から見ると限られていますし、今アメリカの西海岸やメキシコ、中国などでは、人が増えて水の絶対量が足りなくなっている地域があります。現状、20を超える都市で水がなくなるのではないかと危惧されています。
メキシコで水が使えなくなった地域があるそうで、そこに暮らす人々は水がある場所まで取りに行く生活を余儀なくされているという。
小山:日本のように当たり前に水道の水が飲める国は、どのくらいあるんですか?
前田:国の中でも地域ごとに違うのですが、私が知る限りでは片手で数えるくらいですね。
前田さんは「2050年には、水ストレス人口が世界人口の40パーセントを超えると言われている」と解説。その頃には10人に4人は何かしら水に困る状態がやってくるという。
前田:それまでに何とかしないといけないかなと思っていますし、まわりにもそう思っている方が多いと思います。
高島:でも、それに多くの人が気づいたときには、手遅れってことですよね。だから今からそういった問題の解決を目指していると。
前田:そうですね。水道を引こうとすると何十年かかかります。今、2021年なので、何十年もかかっていたらもう間に合わない。だから、今から水道での対策をしても間に合わないところもあります。
高島:私たちがきれいな水を未来に残すために今できることって何がありますか?
前田:たとえば、水って排水溝の向こうはブラックボックスというか、その先がどうなっているかはあまり意識していないと思うのですが、生産の現場を見るとそこに対して少し後ろめたさが生まれるというか。今はそこの距離が離れすぎているので、下水処理場などで頑張っている方がいることや、自分が出した排水がそこまで届いて誰かが処理してくれていることを日常でイメージすることかなと思います。
前田さんはWOTAを通じて「究極の循環型社会」を思い描いていると言う。
前田:それは人間が自然と共に生きるということだと思うんですけど、自然にある資源を使ったその場で後始末することができるようになると、今みたいに使いすぎた結果、振り返ると環境破壊が起こっていたことが、起きないというか。その場で循環が行われる世の中にしたいと思っています。
高島は、前田に「子どもに水を出しっぱなしにするともったいない」と伝えても、それがなかなか伝わらないと相談。その解決のひとつを前田さんはこう話す。
前田:たとえば、キャンプで飲める水がないとか、お風呂に入れなくて気持ち悪いとか、そういう状況になったときに、その場でどういうところにきれいな水があるのか考えるたり、自分で水を濾過したりしてみたりすることかなと思います。
小山:断水ごっことかやったらいいんじゃないですか。水が出なくなったという設定で。以前、断水になったときに、水をくんできてバケツでトイレを流したんです。毎回こんなに水を使っていたんだって思って。あれからトイレを流すことにも気を使うようになりましたからね。
高島:やっぱり経験に勝るものはないんですね。
前田:そうですよね。
WATAについては公式サイトまで。
前田さんが登場したのは、J-WAVEで7月22日(木・祝)に放送した特別番組『J-WAVE SPECIAL TSUCHIYA EARTHOLOGY』(ナビゲーター:小山薫堂・高島 彩)。EARTHOLOGY=「地球学」をテーマに、ゲストを交え地球から日常の環境を考える時間。今回は、オンエア日が「海の日」でもあることから、「水」をテーマに番組をお届けした。ここではその一部をテキストで紹介する。
番組ではその他、「水の歴史」や「水が作り出す食の多様性」などのテーマでトーク。さらに、小山薫堂と押尾コータローが“日本のベネチア”とも言われる京都府「伊根町」に取材した模様もお届けした。ポッドキャストで配信中だ。公式サイトには、現地の写真もアップされている。
水道がなくても水が使える「ポータブル水再生処理プラント」とは
WOTAについて、前田さんは「人がデザインする水、もしくは今までの水インフラに対して、新しい水インフラであるという意味を持っている」と説明する。高島:WOTAのどのような技術が世界で注目されているのでしょうか?
前田:使った排水の98パーセントを再生して循環利用する水のリサイクル技術です。
高島:98パーセントも再生できるんですね。
前田:宇宙ステーションとかではすでにいろんなやり方をやっていて、それを地上に合うやり方で我々がやっています。
WOTAは水道のない場所での水利用を実現する、ポータブル水再生処理プラント「WOTA BOX」を開発。エアコンの室外機くらいの大きさで、いつでもどこでも安心で安全な水を使用することができる。
前田:浄水場や下水処理場を10万分の1サイズくらいにして、今まで人がやっていたことを自動化し、持ち運べる浄水場のようなものになります。一家に一台はエアコンがあるのに、一家に一台の浄水場はないじゃないですか。それを作ろうと考えました。
持ち運べる浄水器の開発のきっかけは、前田さんが体験したある出来事だった。
前田:私のふるさとには浄水場がなくて、わき水を蛇口につないでいました。東京に出てきた次の日に東日本大震災に起きて。東京は進んだところだと思っていたんですけど、いろいろな都市インフラが止まってしまい、大きいインフラがあるところでそれが止まるとどうしようもないなと感じました。逆にふるさとは小さいところだったので、小さいインフラがあると災害が起きてもみんなが使いこなせるのではないかと思いました。
小山:災害が起きたときに、だいたいの人は「不便だ」とか「復旧しないかな」としか考えないけど、前田さんが「だったら自分でこういうものを作ればいい」という発想をすることがすばらしいですね。
前田:震災で断水になったんですけど、その辺の川で水が流れていたんです。なぜその水を使わないのかなって思ったんです。
小山:田舎だと川で流れる水も飲めるのに、なぜ都会の人はそれを飲まないんだろうって思ったわけですね。
前田:都会に住む人はそもそも水があることすら頭の外にあるというか。
小山:でも、それは飲めない。だから前田さんは、それを飲む機械を作ればみんな困らないのにって考えたと。
前田:そうですね。
30年後、水ストレス人口が世界人口の40パーセントに?
日本とは違い、海外では蛇口から出る水であっても、飲んではいけない水な場合も少なくないという。前田:水の安全の問題はふたつあります。ひとつは水の量が足りないこと。もうひとつは水の質が低いこと。日本のように蛇口をひねると飲み水が出てくること自体、世界から見ると限られていますし、今アメリカの西海岸やメキシコ、中国などでは、人が増えて水の絶対量が足りなくなっている地域があります。現状、20を超える都市で水がなくなるのではないかと危惧されています。
メキシコで水が使えなくなった地域があるそうで、そこに暮らす人々は水がある場所まで取りに行く生活を余儀なくされているという。
小山:日本のように当たり前に水道の水が飲める国は、どのくらいあるんですか?
前田:国の中でも地域ごとに違うのですが、私が知る限りでは片手で数えるくらいですね。
前田さんは「2050年には、水ストレス人口が世界人口の40パーセントを超えると言われている」と解説。その頃には10人に4人は何かしら水に困る状態がやってくるという。
前田:それまでに何とかしないといけないかなと思っていますし、まわりにもそう思っている方が多いと思います。
高島:でも、それに多くの人が気づいたときには、手遅れってことですよね。だから今からそういった問題の解決を目指していると。
前田:そうですね。水道を引こうとすると何十年かかかります。今、2021年なので、何十年もかかっていたらもう間に合わない。だから、今から水道での対策をしても間に合わないところもあります。
究極の循環型社会を目指す
前田さんは「10年後くらいには水は循環型で使うことが当たり前な世の中にしたい」と目標を語る。高島:私たちがきれいな水を未来に残すために今できることって何がありますか?
前田:たとえば、水って排水溝の向こうはブラックボックスというか、その先がどうなっているかはあまり意識していないと思うのですが、生産の現場を見るとそこに対して少し後ろめたさが生まれるというか。今はそこの距離が離れすぎているので、下水処理場などで頑張っている方がいることや、自分が出した排水がそこまで届いて誰かが処理してくれていることを日常でイメージすることかなと思います。
前田さんはWOTAを通じて「究極の循環型社会」を思い描いていると言う。
前田:それは人間が自然と共に生きるということだと思うんですけど、自然にある資源を使ったその場で後始末することができるようになると、今みたいに使いすぎた結果、振り返ると環境破壊が起こっていたことが、起きないというか。その場で循環が行われる世の中にしたいと思っています。
高島は、前田に「子どもに水を出しっぱなしにするともったいない」と伝えても、それがなかなか伝わらないと相談。その解決のひとつを前田さんはこう話す。
前田:たとえば、キャンプで飲める水がないとか、お風呂に入れなくて気持ち悪いとか、そういう状況になったときに、その場でどういうところにきれいな水があるのか考えるたり、自分で水を濾過したりしてみたりすることかなと思います。
小山:断水ごっことかやったらいいんじゃないですか。水が出なくなったという設定で。以前、断水になったときに、水をくんできてバケツでトイレを流したんです。毎回こんなに水を使っていたんだって思って。あれからトイレを流すことにも気を使うようになりましたからね。
高島:やっぱり経験に勝るものはないんですね。
前田:そうですよね。
WATAについては公式サイトまで。
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2021年7月22日(木・祝)18:00-19:55
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