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「家族は他人」という価値観で育ち…前田エマの文章に“個”が宿る背景

「家族は他人」という価値観で育ち…前田エマの文章に“個”が宿る背景

モデル、エッセイ、写真など多岐に渡って活動する前田エマが、自身の価値観を形成した出来事を振り返った。

前田が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『UR LIFESTYLE COLLEGE』(ナビゲーター:吉岡里帆)。5月23日(日)のオンエア内容をテキストで紹介する。

好奇心旺盛な幼少期を過ごす

前田エマはウィーン芸術アカデミーの留学経験を持ち、大学在学中からモデル、エッセイ、写真、ペインティング、朗読、ナレーションの分野で活躍。卒業後もモデルとして活動しながら、個展の開催やアート・カルチャーイベントへの参加、雑誌での連載などで幅広く活動している。そんな前田の幼少期は「とにかく喋ることが好きな子ども」だったそう。

前田:学校であった出来事とかを、夕飯のときに母親と2時間ぐらい話す子どもでした(笑)。
吉岡:(笑)。お母様がちゃんと話を聞いてくださる方なんですね。
前田:そうですね。小さい頃から、景色や人に「ときめき」を感じると誰かに話したくなる性格でした。
吉岡:なるほど。好奇心旺盛で、楽しいことをいろいろ発見できるお子さんだったのでしょうか。
前田:はい。母や周りの人たちが自分の性格をあたたかく受け入れてくれていたのも大きかったと思いますね。

「個」を重視する価値観を持つ

前田が自身の価値観を形成したのは、家族の存在が大きかったという。

前田:18歳のとき、父親から「今日からパパやお父さんと呼ばずに名前で呼びなさい」と言われて。私の家族はもともと「家族は他人」という価値観なんですよね。
吉岡:へええ!
前田:それは「個を大事にする」という考えがあったからだと思うんですけど、そういう背景があったので名前で呼ぶようになりました。今の私は文章を書く仕事が一番多いんですけど、心を込めるものっていい意味で孤独になるものだと思っていて。なので、この価値観はそういった部分に影響を与えている気がします。

前田は詩人・谷川俊太郎との対談によって、自身の価値観と改めて向き合うことができたそうだ。

前田:去年、谷川俊太郎さんと対談をさせていただいたんですね。文章を書くことって今までの価値観や経験から出てきますけど、私はいつも真っさらな気持ちでいたいんですよ。私は虫とか動物とか人とか、全部に対して「他人」という感覚があるんですけど、そういう話を俊太郎さんにしたんです。そうしたら俊太郎さんが「僕は『海が綺麗だな』と同じように、女の人に『綺麗だな』と感じているよ。だから、君もそういう感覚なんじゃない?」と言ってくださって。
吉岡:うんうん。
前田:俊太郎さんとは比べ物にならないけれど、そこに近づけるように生きていきたいなとすごく思いました。
吉岡:自分の視点なんだけど、客観的に読んだ人へ感動を届ける。すごく大事な感覚だと思います。
前田:なるべく感情は書かないで、風景とかそのとき経験したことを淡々と描写していきたいと思っています。

写真を撮られることで自身の“強さ”と向き合う

高校時代にふとしたきっかけでカメラを持ち、散歩に出かけてみたことから世界の見え方がガラッと変わったと話す前田。写真家・ホンマタカシと出会ったことで、写真に対する捉え方が変化したと語った。

前田:私はホンマタカシさんの作品に参加したことが、モデルとしての最初の経験だったんですね。ホンマさんって大きなカメラの前に立っていて、いつ写真を撮っているかがわからない方なんですよ。ただその場にいたら撮影が終わってしまった、みたいな体験でした。それから事務所に入ってモデルとして活動するようになったのですが、「どの角度で見られるといいのか」とか「誰がこういうものを望んでいるのか」とかがわかってきて。わかったことが楽しい反面、最初のモデル撮影をした自分と比べて「被写体としてつまらない人間になっているんじゃないか」という感覚がどんどん出てきたんです。

人を撮影したがらない前田だが、弟と高校時代の友人だけは撮り続けているそうだ。

前田:その2人は私がカメラを撮ろうとしても何のポージングもしないし、まるでそこに何もないかのように振る舞うんですよ。今の私って、カメラを向けられたときにそういう“強さ”を持てないんですよね。
吉岡:私も持てない。カメラってちょっと怖さもあるじゃないですか。撮る人の「いいものを撮りたい」っていう意識に応えなきゃいけないというか。私は写真を見るのが好きだし、(写真として)残っていることってすごく価値があるじゃないですか。だけど、撮られていた人のことを考えると、「いつも気持ちのいいときばかりじゃないだろうな」って思うんですよ。カメラって不思議なアイテムですよね。
前田:そうですね。

調理師免許を持っているのに料理が苦手!?

『UR LIFESTYLE COLLEG』では、前田のライフスタイルにも注目。調理師免許を持つ前田だが、料理の腕に悩んでいるのだという。

前田:調理師免許を持っているのに、料理に対する向上心がなくてすごく下手なんですよ。
吉岡:(笑)。
前田:調理師免許って料理の上手さじゃなくて、衛生面や器具名といった知識があるってことなんですよね。もちろん実技もありますけど。両親が共働きなので小さい頃から自分と弟の分の料理は作っていたのですが、いつも「この味付けはどうしたの?」って聞かれるんですよ。それってつまり、おいしくないってことで……。
吉岡:そうなんですかね? あまりにおいしいから「作り方を教えてほしい」ってことかもしれませんよ。
前田:違うと思います(笑)。私にとって料理は“栄養素”って感覚があるから、味に関しては突っ込まないでほしい気持ちがありますね(笑)。
吉岡:栄養素が揃っていたら、味覚の部分は曖昧でいいかなと思います。
前田:であってほしいです(笑)。小さい頃からおいしいものは食べさせてもらっていると思うから、舌の感覚はあるはずなんですね。なのに、全然料理がうまくならない。料理のレパートリーは多いですが、味付けは弟のほうが上手ですね。なので、料理はできますけれど下手って感じです。
吉岡:めっちゃ愛おしい要素だと思いますよ。1時間話してみて、すごく丁寧な人だなってことが伝わってきています。料理の下ごしらえもちゃんとするんだろうなって印象があります。
前田:全然です。3分間クッキングもいいところですよ(笑)。早さだけは誰にも負けない自信はあります。けっこう雑なんですよね。
吉岡:意外なギャップがあってかわいらしいです、とても。

さまざまな分野でこれからも活躍

前田は現在、さまざまな媒体で連載を抱えている。

前田:雑誌だと『OZmagazine』(スターツ出版株式会社)、『mina』(主婦の友社)でエッセイを連載しています。ウェブサイトだと「FUDGE」で「前田エマの東京ぐるり」という企画があり、私服でいろんなお店を取材しています。あとはYouTubeの連載もやっていて。毎回、いろんなクリエイターの方をゲストにお迎えして、その人のお気に入りの街についてお聞きしています。
吉岡:これからもいろんなところで前田エマさんの文章や写真に触れる機会があり、楽しみです。みなさんもぜひチェックしてみてください!

『UR LIFESTYLE COLLEGE』では、心地よい音楽とともに、より良いライフスタイルを考える。オンエアは毎週日曜18時から。

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