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アカデミー賞最有力『ミナリ』 韓国移民の物語がアメリカ人の心を掴んだ理由

アカデミー賞最有力『ミナリ』 韓国移民の物語がアメリカ人の心を掴んだ理由

J-WAVEで放送中の番組『STEP ONE』のワンコーナー「BEHIND THE SCENE」(ナビゲーター:サッシャ・増井なぎさ)。3月16日(火)のオンエアでは、アカデミー賞の最有力候補と言われている映画『ミナリ』を紹介した。

今年のアカデミー賞、注目は『ミナリ』と『ノマドランド』

日本時間4月26日(月)に授賞式が行われる、第93回アカデミー賞。3月19日(金)から公開中の映画『ミナリ』は、作品賞を含め6部門にノミネートを果たした。この日のオンエアでは、映画ジャーナリスト・立田敦子がゲストに登場。『ミナリ』が注目を集めている理由を解説した。

【あらすじ】
1980年代、農業で成功することを夢みる韓国系移民のジェイコブは、アメリカはアーカンソー州の高原に、家族と共に引っ越してきた。荒れた土地とボロボロのトレーラーハウスを見た妻のモニカは、 いつまでも心は少年の夫の冒険に危険な匂いを感じるが、しっかり者の長女アンと好奇心旺盛な弟のデビッドは、新しい土地に希望を見つけていく。まもなく毒舌で破天荒な祖母も加わり、デビッドと一風変わった絆を結ぶ。だが、水が干上がり、作物は売れず、追い詰められた一家に、思いもしない事態が立ち上がる──。
公式サイトより)

サッシャ:アカデミー賞の最有力候補として話題になっているそうですね。どのような状況なのでしょうか。
立田:今まではクロエ・ジャオ監督の『ノマドランド』が賞レースを牽引しており、そちらも6部門にノミネートされています。アカデミー賞の終盤に来て、『ミナリ』がどこまで『ノマドランド』を追撃するかというところに注目が集まっています。
サッシャ:『ミナリ』はこれまでにも、他の賞を獲ってきているのでしょうか?
立田:もともと『ミナリ』が注目されたのは2020年に開催されたサンダンス映画祭なんですね。そこで観客賞と審査員特別賞をダブル受賞して、大変注目されました。これまでのアカデミー賞はカンヌ国際映画祭などでも期待された作品などが出てきていたのですが、コロナ禍によっていろんな映画祭が開催中止になったりオンラインになったりしたんですね。ですので、サンダンスの勢いをそのままに賞レースに入っていった感じです。
サッシャ:なるほど。
立田:『ノマドランド』に関しては、なんとか開催できたベネチア国際映画祭で金獅子賞を獲っています。ですので、『ノマドランド』と『ミナリ』の2作品がアカデミー賞の注目作となっています。

「移民」がテーマの映画がアメリカ人の心を掴んだ

『ミナリ』のメガホンを取ったリー・アイザック・チョン監督は、『君の名は。』のハリウッドリメイク版の監督に抜擢されるなど、アメリカで注目される新進気鋭のクリエイター。『ミナリ』は、自身も移民二世であるチョン監督の幼少期の体験をもとにした半自伝的要素を持つ。

立田:チョン監督はアメリカ生まれの移民二世なんですね。その監督が、親世代に感謝の気持ちを込めて作ったのが『ミナリ』です。物語に登場する家族には息子と娘がいるのですが、実は息子は監督の分身なんです。息子から見た親がどれだけ苦労をしているか、そして祖母とはどういった関係だったのか。そういったところがすごくリアルに描かれています。

韓国移民がテーマにも関わらずアメリカで高い評価を得ている『ミナリ』だが、その理由としてアメリカ人が「移民」を自身の問題として捉えている点が大きいと立田さんは語る。

立田:なぜ韓国の移民の話にアメリカ人が感情移入するのか、疑問に思いますよね。みなさんがご存知のとおり、アメリカは古くはヨーロッパの移民から生まれた国です。いわば移民で成り立っている国なんですよね。遡れば、みんな知らない土地にやってきた移民として苦労したファミリーヒストリーがあるわけです。ですので、多くの人々が「これは韓国人だけの話ではない。私たちの物語でもある」と感じているんですね。トランプ政権下によって移民が排斥され、悲しいニュースがここ1、2年のあいだで伝わってきたと思います。そういうことに疑問を持っている多くのアメリカ人が、『ミナリ』を観て感動したのだと思われます。
サッシャ:なるほど。
増井:『パラサイト』と同様、韓国映画だと思いがちですけど、アメリカ映画なんですよね?
立田:そうですね。監督自身が二世のアメリカ人ですし、『ミナリ』はブラッド・ピットが経営する映画製作会社「プランBエンターテインメント」の作品です。また、配給元は映画『ムーンライト』で有名な「A24」です。2社は『ムーンライト』をアカデミー賞受賞に導いたゴールデンコンビなんですよ。なので、『ミナリ』に登場する言語はほとんどが韓国語ですが、アメリカ映画です。

実力派キャストたちの名演に注目

『ミナリ』には実力派キャストが勢揃いしており、今回のアカデミー賞でスティーヴン・ユァンが主演男優賞、ユン・ヨジョンが助演女優賞にノミネートを果たした。

立田:父役を演じるスティーヴン・ユァンさんはソウル出身で、小さい頃にご家族でアメリカに移住されたそうです。アメリカの人気テレビドラマシリーズ『ウォーキング・デッド』でブレイクした俳優さんです。また、村上春樹さんの作品をイ・チャンドン監督が長編映画化した『バーニング 劇場版』にも出演しておりまして、助演俳優としても高い評価を得ています。
サッシャ:もう1人はどなたでしょうか。
立田:祖母役を演じたユン・ヨジョンさんです。
サッシャ:作品を観ましたが、なかなかの怪演でしたね。
立田:いわゆる「いいおばあちゃん」とは異なる演技でしたよね。今作で、アカデミー賞の助演女優賞にノミネートされています。

立田はユン・ヨジョンにインタビューをおこなった際に、なぜ『ミナリ』に出演することを望んだのか質問したという。

立田:彼女が20歳ぐらいのときに、旦那さんがアメリカに留学することになったんですね。そのときに一緒についていって、アメリカで暮らしていた経験があったそうです。
サッシャ:そうだったんですか!
立田:現在ヨジョンさんは74歳なんですが、英語がとてもお上手です。なぜこの作品に出演したのか質問しましたところ、脚本を途中まで読んだ段階で「これは私の物語だ」と感じられたそうなんですね。アメリカで暮らしているとき、まさに映画で登場するような移民の家族をたくさん見てきたわけですね。ご自身も、いくら留学とは言っても苦労はされていますしね。70年代、80年代の、自分もよく知っている移民の話でしたから「ぜひ映画化すべきだし、作品に関わりたい」と返事をされたそうです。
増井:キャストのなかでも、移民に関わる方たちが多いんですね。

『ミナリ』を楽しむためのポイント

立田が『ミナリ』を楽しむために注目すべきポイントを語った。

立田:「子どもから見た親の苦労」に注目してほしいです。親たちが子どものために一生懸命働き、考えてくれていたことを、映画を観ているときに思い出したんですよね。そして、そういった感情というのは世界中どこにでもあることだと思うんです。
サッシャ:普遍的なテーマだと思います。
立田:国も言語も民族も超えて、みなさんの心に響く映画だと思います。そして、『ミナリ』というタイトルなんですけども、韓国語で「セリ」を意味する言葉なんですね。セリって、二作目がおいしいそうなんです。一度育てて食べて、次に出てくるセリのほうがおいしくなる。つまり移民の人たちは、子どもたちの世代によりよい生活を送れるように頑張っているというメッセージがタイトルに込められているんです。いわゆる親心というものですね。
増井:深い意味が込められたタイトルなんですね。

J-WAVE『STEP ONE』のワンコーナー「BEHIND THE SCENE」では、気になるニュースをその裏側から光を当て、様々な視点から紹介する。放送は月曜~木曜の10時10分頃から。

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