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ミュージカル、2020年の傑作&来年の期待作は? 高畑充希、宮野真守ら出演の『ウェイトレス』の魅力

ミュージカル、2020年の傑作&来年の期待作は? 高畑充希、宮野真守ら出演の『ウェイトレス』の魅力

J-WAVEの番組『STAGE PIA WE/LIVE/MUSICAL』(ナビゲーター:中井智彦)。12月18日(金)の放送では、演劇ライターの三浦真妃が登場。2020年のミュージカルシーンを振り返るとともに、2021年のオススメ作品を紹介した。

2020年、世界中の演劇界が苦境に。印象的だった作品は…

新型コロナウイルスが全世界で猛威をふるった2020年。三浦は「世界中の演劇界が苦境に陥った1年だった」と振り返る。海外では劇場封鎖が続く一方で、日本では今年3月までと秋以降でさまざまな作品が上演された。三浦が印象的だと思った作品は何だろうか。

三浦:中井さんも参加されたミュージカル『ビリー・エリオット』です。
中井:ありがとうございます!
三浦:この作品は最高ですね。練りに練られた、ミュージカルの完成形だと思います。

ミュージカル『ビリー・エリオット』2020版PV

【ミュージカル『ビリー・エリオット』のあらすじ】
1984年、炭鉱労働者たちのストライキに揺れる、イングランド北部の炭鉱町イージントン。主人公ビリーは、炭鉱労働者の父と兄、祖母の4人暮らし。幼い頃に母親は他界してしまい、父と兄はより良い労働条件を勝ち得ようとストライキに参加しているため、収入がなく生活は厳しい。父はビリーに逞しく育って欲しいと、乏しい家計からお金を工面し、ビリーにボクシングを習わせるが、ある日、バレエ教室のレッスンを偶然目にし、戸惑いながらも、少女達と共にレッスンに参加するようになる。ボクシングの月謝で家族に内緒でバレエ教室に通っていたが、その事を父親が知り大激怒。バレエを辞めさせられてしまう。しかし、踊っているときだけはツライことも忘れて夢中になれるビリーは、バレエをあきらめることができない。そんなビリーの才能を見出したウィルキンソン夫人は、無料でバレエの特訓をし、イギリスの名門「ロイヤル・バレエスクール」の受験を一緒に目指す。一方、男手一つで息子を育ててきた父は、男は逞しく育つべきだとバレエを強く反対していたが、ある晩ビリーが一人踊っている姿を見る。それは今まで見たことの無い息子の姿だった。ビリーの溢れる情熱と才能、そして”バレエダンサーになる”という強い思いを知り、父として何とか夢を叶えてやりたい、自分とは違う世界を見せてやりたい、と決心する。
11歳の少年が夢に向かって突き進む姿、家族との軋轢、亡き母親への想い、祖母の温かい応援。度重なる苦難を乗り越えながら、ビリーの夢は家族全員の夢となり、やがて街全体の夢となっていく・・・
(ミュージカル「ビリー・エリオット」公式サイトより)

三浦:この作品の柱はビリー少年です。(クワトロキャストの)ビリーたちが、リアルに成長していく過程がみられます。中井さんは兄・トニー役を演じられてどうでしたか?
中井:兄としてビリーたちに教えられることがけっこうありました。当たり前のように、彼らはやればやるほど変わっていくんです。僕ら大人のキャストがリアリティーを追求すればするほど、彼らのファンタジー感というか、“想像できる素晴らしさ”がミュージカルとマッチしていく舞台だと思っていました。ですので、しっかり芝居を支えようという思いから、ちょっと意識感覚が固まってきます。でも、彼らはその場で感じたことで動くので、「あっ、ちょっと固まっているな」と気付かされましたね。
三浦:反応がビビッドですよね。
中井:芝居の生感は、ロングランだからこそ彼らから刺激を受けていた感じでしたね。

初演と千秋楽で「少年たちがいい意味で変わっていた」と中井は振り返る一方で、少し切ない思いもあると言う。

中井:(この芝居って)あの歳の彼らでしか出せない魅力なんです。
三浦:分かります。
中井:変な話、賞味期限があるというか。だから、彼らが成長したらビリーじゃない。
三浦:ちょうど思春期の狭間なんですよね。絶妙な年齢設定だと思います。

三浦は「ビリーの素晴らしさはもちろん、周囲の人たちも素晴らしい」と絶賛する。

中井:炭鉱夫の団結力は、ビリーの父や兄はもちろん、アンサンブルの方たちにものり移っているというか……1人でも欠けたら炭鉱夫じゃないんですよね。そんなリアリティーが最終的に出来上がっていました。みんなが本気で僕らのけんかを止めるし、みんなが本気で炭鉱を盛り上げようと思って打ちのめされていくというのが「いい芝居だったな」「楽しかったな」と感じますね。
三浦:特に今年はコロナウイルスの蔓延で、みんなが思い悩んだと思うんです。そういう思いが炭鉱夫に重なりますよね。炭鉱をどうにか続けていきたいけど、国の政権に打ちのめされてしまうという彼らの葛藤と見事に重なって「頑張れ!」みたいになる。そんな中で、ビリー少年が希望の星を見出すのが本当に素晴らしくてダダ泣きでした。

2021年、見逃せないミュージカル4選

オンエアでは、三浦が2021年のオススメ公演を4本紹介した。

・ミュージカル『イリュージョニスト』
http://illusionist-musical.jp/

・ミュージカル『アリージャンス~忠誠~』
https://horipro-stage.jp/stage/allegiance2021/

・日生劇場 ミュージカル『ウェイトレス』
https://www.tohostage.com/waitress/

・劇団四季『アナと雪の女王』ディズニーミュージカル
https://www.shiki.jp/applause/anayuki/

三浦が挙げた4本のうち、中井が気になった作品は『イリュージョニスト』。世界初演、日英共同制作のオリジナルミュージカルだ。

三浦:『イリュージョニスト』の原作は、スティーヴン・ミルハウザーの短編小説『幻影師、アイゼンハイム』です。映画化やドラマ化もされていて、シンプルだけどサスペンスと恋愛が織り成す、時代もクラシックでみんなが好きだろうなっていう内容です。

【『イリュージョニスト』のあらすじ】
舞台は19世紀末、ウィーン。栄華を極めたハプスブルク帝国の斜陽。
イリュージョニスト・アイゼンハイム(海宝直人)は、興行主ジーガ(濱田めぐみ)と共に世界中を巡業していた。ウィーンでの公演中、偶然にもアイゼンハイムは幼い頃恋心を寄せ合った公爵令嬢、ソフィ(愛希れいか)と再会する。
だが、ソフィはオーストリア皇太子レオポルド(成河)の婚約者となっていた。
傾国の危機を救うために、過激な思想に傾倒する皇太子。ソフィはそんな皇太子の熾烈な正義感に疑念を抱いていた。ひそかに逢瀬を重ね、変わらぬ愛を確かめ合うアイゼンハイムとソフィ。だが、二人の密会を知った皇太子は、怒りのあまり剣を手にソフィの後を追う。その夜、ソフィは死体となって発見される。事件の真相を探るウール警部(栗原英雄)は、様々な証言から徐々にソフィ殺害の深層に近づいて行く…。目の前に見えているものは果たして真実か?それとも虚偽なのか?
(『イリュージョニスト』公式サイトより)

三浦:恋愛とサスペンスでちょっとドキドキさせて、『イリュージョニスト』ですから、あっと言う仕掛けを見せてくれるんじゃないかと期待しています。演出は、イギリス人のトム・サザーランドです。日本だとミュージカル『タイタニック』や『グランドホテル』を担当しました。彼の演出ということで、とても期待の高まる作品です。

『イリュージョニスト』は20201年1月18日(月)〜29日(金)まで東京・日生劇場で上演予定。

クリエイティブチームが女性だからこそ実現する『ウェイトレス』の魅力

三浦は続けて、ミュージカル『ウェイトレス』を紹介。中井は今年2月に本作をロンドンで鑑賞している。

中井:楽しい作品でした。曲もポップでかわいくて。
三浦:セットや衣装に加えて、パイがたくさん出てくるなど、とても夢見がちな作品ですが、内容は女性の生き様を描いています。

『ウェイトレス』速報PV

【ミュージカル『ウェイトレス』のあらすじ】
アメリカ南部の田舎町。そこにとびきりのパイを出すと評判のレストランがある。ウェイトレスのジェナ(高畑充希)はダメ男の夫・アール(渡辺大輔)の束縛で辛い生活から現実逃避するかのように、自分の頭にひらめくパイを作り続ける。そんなある日、アールの子を妊娠していることに気付く。訪れた産婦人科の若いポマター医師(宮野真守)に、「妊娠は嬉しくないけど産む」と正直に身の上を打ち明ける。ジェナのウェイトレス仲間も、それぞれ自分のことで悩む日々。ドーン(宮澤エマ)は、オタクの自分を受け入れてくれる男性がこの世にいるのかと恋愛に臆病だが、出会いを求め投稿したプロフィール欄にオギー(おばたのお兄さん)からメッセージが届き困惑する。また、姉御肌のベッキー(Wキャスト:LiLiCo/浦嶋りんこ)は、料理人のカル(勝矢)と毎日のように言い争っている。ベッキーは病気の夫の看病と仕事を両立しているのだった。

ある日、店のオーナーのジョー(村井國夫)が、ジェナに「全国パイづくりコンテストに出場し、賞金を稼いだらどうか?」と提案する。その言葉をきっかけに、ジェナは優勝して賞金を獲得できたら、アールと別れようと強く決心する。診察を受け、身の上話を語るうちに、ポマター医師に惹かれはじめるジェナ。ポマター医師もまた、ジェナへの想いを抑えられず、二人はお互いが既婚者と知りながら、一線を越えてしまうのだった。

そして、ジェナの出産の日は、刻一刻と近づいていく……。
(ミュージカル『ウェイトレス』公式サイトより)

中井:僕がロンドンでこの作品を観たとき、お客さんが若い女性ばっかりだったんです。いわゆる恋愛状況とか、男性に虐げられてしまう女性を見て応援している感じでした。みんながキャーキャー言って楽しんでいて、圧倒的に女性に支持されている作品だと思いました。
三浦:音楽と歌詞を担当したのはサラ・バレリスで、作曲・演出・振り付けと主なクリエイティブチームは全員女性です。
中井:すごいことですよね。

高畑充希や宮野真守、宮澤エマに加え、LiLiCoやおばたのお兄さんなど、バラエティー豊かなキャスト陣も見どころのひとつ。ミュージカル『ウェイトレス』は、2021年3月9日(火)から東京・日生劇場を皮切りに上演開始だ。来年は三浦おすすめの公演に足を運んでみては。

中井は、2020年1月3日(日)から東京渋谷・JZ Brat SOUND OF TOKYOで上演されるソングサイクル・ミュージカル「Closer Than Ever~もっとそばに~」に出演。5月には東京・新国立劇場で上演のブロードウェイミュージカル『メリリー・ウィー・ロール・アロング』にも出演予定だ。その他、中井智彦の最新情報は、公式サイトまで。

『STAGE PIA WE/LIVE/MUSICAL』では、ミュージカル俳優の中井がゲストを迎えて、ミュージカルの話や作品の解説など、さまざまな形でミュージカルの魅力をお届けする。放送は毎週金曜の22時30分から。

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2020年12月25日28時59分まで

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番組情報
STAGE PIA WE/LIVE/MUSICAL
毎週金曜
22:30-23:00