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藤巻亮太が「苦悩」から離れられた30代の経験。40歳の今、目指すことは

藤巻亮太が「苦悩」から離れられた30代の経験。40歳の今、目指すことは

J-WAVEで放送中の番組『TRUME TIME AND TIDE』(ナビゲーター:市川紗椰)。12月5日(土)のオンエアでは、シンガーソングライターの藤巻亮太を迎えて開催した公開収録の模様をお届け。中島美嘉とのコラボレーション楽曲『真冬のハーモニー』や、ソロ活動での迷い、人生観を変えた登山との出会いなどを語った。

「冬だからこそ気づけるお互いの思い」を大切にした曲

藤巻は11月に中島美嘉とのコラボレーション楽曲『真冬のハーモニー』を配信リリースした。この楽曲は12月2日にリリースした中島のデビュー20周年企画アルバム『WITH』のリード曲だ。

中島美嘉 with 藤巻亮太 『真冬のハーモニー』

藤巻:(中島)美嘉さんと歌番組でお互い冬の曲を歌ったときに、美嘉さんの中でビビッときたものがあったのか、そこで「コラボレーションを」とお話をいただきました。
市川:冬つながりだったんですね。
藤巻:美嘉さんの『雪の華』と僕の『粉雪』の2曲を経て、2人はどんな曲を歌ったら多くの人に喜んでもらえるかを真剣に考えて作りました。『雪の華』とか『粉雪』の主人公たちが、10年、20年とときが経っても、すごくすてきに現在を生きている2人であってほしいなと思いました。今、僕は40歳ですが、30歳、40歳になって「あの頃はよかった」という生き方じゃなくて、未来に向かって今を一生懸命に生きている主人公たちを描きたかった。そんな曲に仕上がっていると思います。

藤巻はどのようなことを意識して冬の曲を制作したのだろう。

藤巻:冬って、「冬の時期」とかちょっとつらいイメージもあるけど、そんな中でも、たとえばファッションを楽しんでいたり、寒いから家に帰ってきて暖かいねってことだったり、人のぬくもりに出会えたり、冬だからこそ気づけるお互いの思いみたいなものを大事にしたいと思いましたね。
市川:『真冬のハーモニー』を聴くと、歌詞を抜いても冬の曲だってわかるような気がしたんです。
藤巻:今年って新型コロナで本当に大変だったじゃないですか。ずっとみんな我慢していたから、ある意味で冬の年だったような気がしていて。そんなときに、しっとりしたバラードもいいんですけど、どこか冬にジワッと暖かくて、明かりがともるような曲にしたいと思ったので、曲調はバラードよりもトーンが明るめの曲にして、しっとりとし過ぎないように意識しました。

音楽の「人を肯定する力」に気づいた19歳

藤巻は小学生時代の仲間とバンド、レミオロメンを結成。結成当初は大きな目標を立てたわけではなく、「メジャーデビューしたいね」くらいの意識で始めたというが……。

藤巻:19歳で初めて曲を作ったとき、音楽の力に出会ったんです。先生とか親とかは「ああしなさい」「こうしたほうがいいよ」とか、正しいことを言ってくれるんですけど、なかなか正しいことって守れないじゃないですか。寝坊しちゃったり、約束を破っちゃったり、人間ってそういうところはありますから。そういう劣等感がある時期もあったんだけど、音楽を一曲作ったときに、「人間ってそういうときもあるよね」って人を肯定する力があるなって思ったんです。そのときに、雷に打たれたくらいの衝撃を受けて、そこから音楽が好きで好きでしょうがなくなりました。いろんな方のご縁でバンドが大きくなる中で、目の前のことを一つひとつ一生懸命に越えていく、そんな20代でした。

藤巻は2012年からソロ活動を開始。バンドからソロになるときに、どんなことを感じていたのだろうか。

藤巻:10年間バンドで走ってきて、いいこともたくさんあったけど、バンド像と自分がズレるみたいなことを経験して、そのズレを吐き出すような曲をやりたいなと思いました。ワッと吐き出して、もう一回バンドに戻ろうかなと思ったけど、そんなに自分の都合では戻れなくて。そうなったらソロを続けるしかなくなり、30代にソロ1作目を出したんですけど、2作目から本当に深い悩みに入ってしまいましたね。

疲弊して「悩みの正体」もわからなくなる。そんなときに出会ったのは?

ソロ活動で深い悩みに入ってしまった藤巻。そのときに出会った登山に衝撃を受けたと振り返る。

藤巻:20代って一生懸命に走っているから、走れる体力もあるし、勢いもあるけど、30歳くらいでだんだん疲れてくるんです。その疲れたときに、何に疲れていて、何に悩んでいるのかがわからなくなったんです。そういうときに登山と出会いました。人間って何に悩んでいるかわからないときが一番つらいんですよね。
市川:わかります。
藤巻:悩みの正体がわからないじゃないですか。
市川:それが悩みになってくる。悩むことないのに、悩んでしまうというね。
藤巻:2週間くらいかけて登山をして非日常を味わったときに、本当にその悩みが自分から離れていって、「こういうことで悩んでいるんだ」って初めて悩みを俯瞰で見れたんです。20代ではできなかった経験でした。そこから、「こんなに自分が自由になれるんだ」とある意味で救われたことで、登山にハマって。最近はそんなに多く登山をするわけではないですけど、そういった理由で登山を好きになりましたね。

2週間の登山中、藤巻はさだまさし『防人の詩』を聴いて、海や山が死ぬという表現に感銘を受けたという。

さだまさし『防人の詩』ライブ映像

藤巻:東京で普通に暮らしているときに聴いていたら、「海が死ぬとか山が死ぬとかそんなことないじゃん」と思っていたけど、山に登って聴いたときに、山だって命があると思ったんです。たとえば、ヒマラヤ山脈は、インドがユーラシア大陸に向かってグッと南から北へ上がっていって、ぶつかったときにせり上がってできたと言われています。だから地上7000メートルとか8000メートルのところに貝の化石とかがあるんですよ。
市川:おもしろい。
藤巻:つまり、その海は消えたわけじゃないですか。人間は100年くらいで物事を見ているからわからないけど、主観だけじゃなく人間を越えたタイム感が存在するし、そういうものに目を向けなって言われているような気がして。『防人の詩』を聴きながら「自分の尺度だけで世界を見ていたらわからないことってたくさんあるな」って思いました。

謙虚に、そして変わることを恐れずに

40歳になった藤巻。これからの人生を、どんな姿勢で生きていくのか。

藤巻:40歳くらいって頑固にもなるから、けっこう危ないというか。それって自分が変われなくなってしまうと思うんです。やっぱり自分が積み上げてきたものを壊しづらい。でも、自分が頼ったりすがったりしているものを謙虚に受けとめて、それを手放しながら変わることを恐れずに、とにかくいろんなものを勉強していきたいと思います。新しいものを勉強して、これから新しくつかむものと手放すもの。それは一番難しいことかもしれないけど、手放したらまた新しいものをキャッチできますからね。
市川:そうですよね。
藤巻:しっかりと学びながら手放すこともできる10年であれば、いろんなものが吸収できるんじゃないかなと。その姿勢は大事にしたいと思います。
市川:再来年はソロ10周年となります。これからの目標を教えてください。
藤巻:大きな目標だと、ずっと変わらず人の心に残る曲を一曲でも多く作りたいと思っています。

コロナ禍において、いろいろな活動が制限されてしまった藤巻は、地元でブドウや桃の生産をする父の仕事を手伝い、これからの夢ができたと語る。

藤巻:今、父親が69歳くらいで、まだまだ現役なんですよね。そこまでは歌っていたいなと思いました。
市川:なるほど。
藤巻:親が現役の歳までは、ちゃんと歌っていたいということが夢ですね。父親がこれから歳を重ねたら、夢となる年齢も上がっていくんですけどね(笑)。でも、そういう気概は持っていたいと思います。

番組では藤巻が『粉雪』と『3月9日』を弾き語りで披露した。

【radikoで聴く】https://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20201205213702(2020年12月12日28時59分まで)

藤巻亮太の最新情報は公式サイト、またはオフィシャルTwitterまで。

『TRUME TIME AND TIDE』では、革新的な活動によって各界を牽引する人をゲストに迎え、現在の活動についてはもちろん、これまでどのような時を歩んできたのか、そしてこれから先はどのようなビジョンに向かって時を進めていくのかに迫る。放送は毎週土曜の21時から。

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2020年12月12日28時59分まで

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番組情報
TIME AND TIDE
毎週土曜
21:00-21:54