音楽プロデューサーでアレンジャーの島田昌典さんが、自身の仕事や音楽のルーツについて語った。
島田さんが登場したのは、4月8日(土)放送のJ-WAVEの番組『ORIENT STAR TIME AND TIDE』(ナビゲーター:市川紗椰)。
市川:島田さんの最新ワークスのひとつと言えば、3月にリリースされたaikoさんのニューアルバム『今の二人をお互いが見てる』です。
島田:このあいだ出たばかりなんですが、このなかで6曲アレンジさせてもらっています。かなりバラエティに富んだ作品です。
【関連記事】aikoが『今の二人をお互いが見てる』を全曲解説
市川:aikoさんとはインディーズ時代から仕事をされていますね。
島田:今年でデビュー25年になるので、その前からだから27年ぐらいになります。
市川:近くで見てきた島田さんが感じるaikoさんの魅力は?
島田:全然変わらないというか、いまも元気なんですけど、そのときから本当に元気で、詞の世界がすばらしい。
市川:aikoさんの曲をアレンジするときは、どの段階でどういう風に?
島田:アレンジャーという仕事は、曲をいただくとき、ピアノやギターの弾き語りだったりして、それ以外の楽器がなにも入っていません。そこからアーティストとコミュニケーションをとって打ち合わせをして「こんな曲にしたい」「こんな感じの楽器を入れたい」という話を聞いて、そこからどんどん曲を膨らませて、イントロをつけたり間奏をつけたり、「この曲にはストリングスを入れよう」ということをやります。それでレコーディングをして完パケるところまでが仕事です。
市川:aikoさんの曲の場合は大体どのようなサウンドづくりを目指すことが多いんでしょうか。
島田:本人はピアノの弾き語りで曲を持ってきますので、基本的に楽器はピアノが中心にきて曲が成り立っているというか。アレンジャーはアーティストがやりたいことを具現化していく仕事なので、たとえば「このストリングスを入れてみたらどう?」とか僕が提案したり、いろいろなコミュニケーションをとりながら曲を作っていきます。
市川:アーティストさんによっては丸投げだったりもするんですか?
島田:「お任せで」というのもあります。
市川:アレンジャーとしての自分らしさというか、傾向はあったりしますか?
島田:昔は曲がFMとかでかかったときに耳に残るというか、フックであったり、印象に残るような楽器の使い方を目指してやっていたんですけど、最近はアレンジじゃなくてもその楽曲が音を含めて全部最初からあったような、ちょっと言い方があれですけど、「アレンジをきかせないような曲」にしたいなと思っています。最初からそのアレンジがあったみたいな。
市川:編曲されていることにも気づかないぐらい自然な感じなんですね。
島田:練習が嫌でしたね。メロディをちゃんと弾くのが嫌で崩しちゃったりとかね。自分なりに崩したほうが弾きやすいし、そういう癖がついちゃって。
市川:崩すと怒られるタイプの教室だったんですか?
島田:そうですね(笑)。
市川:先生次第では「この子すごい」と思うかもしれないですね。実際に苦手だったピアノや音楽が好きになったのはどのぐらいのタイミングですか?
島田:友だちの影響が大きいんですけど、ちょうど中学・高校ぐらいからザ・ビートルズを勧められて聴いて衝撃を受けて。「えっ! こんな音楽もあるんだ」と思って。ピアノもあるし、「みんなでなんかやろう」となって。その時代はリハスタとかはまったくなくて、自宅にみんなを呼んで、窓とカーテンを閉めて音が漏れないようにして。
市川:弱い防音ですね(笑)。
島田:そうなんですよ。そこにドラムとか入れてみんなで練習していました。たまたま親父は電気関係が好きだったので、オープンリールテープレコーダーという、アナログのね。そこに録音して、そこからまたカセットテープにダビングしたりして、自分なりに多重録音をやっていたんです。宅録ばかりしていました。だから今とあまり根底は変わってないですね(笑)。
市川:島田さんはいろいろな楽器や機材をお持ちですよね。
島田:アレンジやプロデュースをするうえで、いまはコンピューターがあってシミュレーションがかなりできるんですけど、メロトロンやオルガン、ピアノ、ギターとか、ギターでもストラトキャスターというタイプやリッケンバッカーという種類でキャラクターが全然違うんです。「この曲はリッケンバッカーがほしい」とか思うんです。そうしたら買うしかない。
島田さんは、所持している数々の機材のなかから、鍵盤を押すと磁気テープに録音された音が再生される音声再生楽器「メロトロン」を紹介。番組ではメロトロンによるチェロの音、ストリングスの音、フルートの音をオンエアした。
市川:島田さんはアレンジのときにこれをどう使っているんですか?
島田:隠し味にも使えるし、フルートもビートルズがやっていたようにしたりね。それだけでも切なくなるし。さっきのストリングスも本物のストリングスじゃなくて哀愁があるので、あえてメロトロンのストリングスでやったりします。back numberの曲とかでやっていますね。
島田:プライベートというのはあまり考えたことがなくて(笑)。息抜きも音楽を聴いているというか。リラックスできますよね。
市川:リフレッシュで聴く音楽とインプットで聴く音楽は違ったりしますか?
島田:違いますね。いまはサブスクでいろいろあるので。最近はTikTokやInstagramなどのSNS系がすごくて。みんな踊りながら曲の1フレーズを使ったりしていて。
市川:しかも「あの曲で?」というのがよくありますよね。
島田:それがヒットになったりするので観ていて、「Shazam」で「この曲はなんだ?」とやったりしていますね。
市川:まさかTikTokのダンス動画を観てらっしゃるとは。注目しているものはほかにありますか?
島田:Penthouseの鍵盤の角野隼斗さんが、昔の日本のシティポップというジャンルをいま風に落とし込んでいて、めちゃくちゃかっこいいなと思って注目しています。
市川:角野くんってやっぱりすごいですよね。
島田:クラシックからジャズ、なにからなにまで。
市川:そういうのはストリーミングで出会うことが多いんですか?
島田:子どもがいて今度大学生になるので、「今は何がはやってるの?」と訊いたりします。
市川:今後伝えていきたいことや音楽を通してやっていきたいことは?
島田:いま作っている音楽は、60年代・70年代の先人たちが最初に発明したんですね。それをどんどん進化させて、いま作ったり、演奏したり、聴いたりしています。その先人たちが作った音楽もちゃんとリスペクトして勉強する。その人たちのアイデアをいただいて演奏しているわけですから、それをちゃんとわかったうえで次の新しい音楽を作ってもらいたいなと感じます。たとえば好きになったアーティストを深掘りしていって、好きなアーティストはなにを聴いていたのか、なにがルーツなのか。そこまで入っていただくと、その人にはアメリカのブルースやイギリスのブリティッシュロック、なにかしらのルーツがあると思うんです。そこから新しい音楽が見つかるかなと思います。
市川:最近は横に聴けちゃうからこそ、そうやってさかのぼっていくのがすごく大事だなと思いました。毎回みなさんに夢を訊いていますが、島田さんはやはりこのままお仕事を?
島田:そうですね。自分がワクワクできるような仕事や出会い、セッションとか、人とやることが、いいときもあれば悪いときもあるんですけど、それが自分の経験になるし。そういうことを未来にむかってやっていきたいですね。
ゲストの過去・現在・未来に市川紗椰が迫る、J-WAVEの番組『ORIENT STAR TIME AND TIDE』。放送は毎週土曜日の21時から。
島田さんが登場したのは、4月8日(土)放送のJ-WAVEの番組『ORIENT STAR TIME AND TIDE』(ナビゲーター:市川紗椰)。
aikoとのサウンド作りはどう進む?
島田さんは小学校のときにピアノを始め、その後、地元・関西を中心にキーボーディストとして活動。さまざまなアーティストとのセッションでスキルを磨き、オーディションでの優勝を機に上京し、キャリアを築いていく。1997年からaikoの作品にプロデューサーとして携わる。以降、秦 基博、YUKI、いきものがかりなど数多くの楽曲でプロデュースやアレンジを担当している。市川:島田さんの最新ワークスのひとつと言えば、3月にリリースされたaikoさんのニューアルバム『今の二人をお互いが見てる』です。
島田:このあいだ出たばかりなんですが、このなかで6曲アレンジさせてもらっています。かなりバラエティに富んだ作品です。
【関連記事】aikoが『今の二人をお互いが見てる』を全曲解説
市川:aikoさんとはインディーズ時代から仕事をされていますね。
島田:今年でデビュー25年になるので、その前からだから27年ぐらいになります。
市川:近くで見てきた島田さんが感じるaikoさんの魅力は?
島田:全然変わらないというか、いまも元気なんですけど、そのときから本当に元気で、詞の世界がすばらしい。
市川:aikoさんの曲をアレンジするときは、どの段階でどういう風に?
島田:アレンジャーという仕事は、曲をいただくとき、ピアノやギターの弾き語りだったりして、それ以外の楽器がなにも入っていません。そこからアーティストとコミュニケーションをとって打ち合わせをして「こんな曲にしたい」「こんな感じの楽器を入れたい」という話を聞いて、そこからどんどん曲を膨らませて、イントロをつけたり間奏をつけたり、「この曲にはストリングスを入れよう」ということをやります。それでレコーディングをして完パケるところまでが仕事です。
市川:aikoさんの曲の場合は大体どのようなサウンドづくりを目指すことが多いんでしょうか。
島田:本人はピアノの弾き語りで曲を持ってきますので、基本的に楽器はピアノが中心にきて曲が成り立っているというか。アレンジャーはアーティストがやりたいことを具現化していく仕事なので、たとえば「このストリングスを入れてみたらどう?」とか僕が提案したり、いろいろなコミュニケーションをとりながら曲を作っていきます。
市川:アーティストさんによっては丸投げだったりもするんですか?
島田:「お任せで」というのもあります。
市川:アレンジャーとしての自分らしさというか、傾向はあったりしますか?
島田:昔は曲がFMとかでかかったときに耳に残るというか、フックであったり、印象に残るような楽器の使い方を目指してやっていたんですけど、最近はアレンジじゃなくてもその楽曲が音を含めて全部最初からあったような、ちょっと言い方があれですけど、「アレンジをきかせないような曲」にしたいなと思っています。最初からそのアレンジがあったみたいな。
市川:編曲されていることにも気づかないぐらい自然な感じなんですね。
中高生のころから宅録
続いては時をさかのぼり、島田さんの「過去」について尋ねることに。島田さんは小学校1年生頃からピアノ教室に通っていたものの、当時は嫌々だったという。島田:練習が嫌でしたね。メロディをちゃんと弾くのが嫌で崩しちゃったりとかね。自分なりに崩したほうが弾きやすいし、そういう癖がついちゃって。
市川:崩すと怒られるタイプの教室だったんですか?
島田:そうですね(笑)。
市川:先生次第では「この子すごい」と思うかもしれないですね。実際に苦手だったピアノや音楽が好きになったのはどのぐらいのタイミングですか?
島田:友だちの影響が大きいんですけど、ちょうど中学・高校ぐらいからザ・ビートルズを勧められて聴いて衝撃を受けて。「えっ! こんな音楽もあるんだ」と思って。ピアノもあるし、「みんなでなんかやろう」となって。その時代はリハスタとかはまったくなくて、自宅にみんなを呼んで、窓とカーテンを閉めて音が漏れないようにして。
市川:弱い防音ですね(笑)。
島田:そうなんですよ。そこにドラムとか入れてみんなで練習していました。たまたま親父は電気関係が好きだったので、オープンリールテープレコーダーという、アナログのね。そこに録音して、そこからまたカセットテープにダビングしたりして、自分なりに多重録音をやっていたんです。宅録ばかりしていました。だから今とあまり根底は変わってないですね(笑)。
市川:島田さんはいろいろな楽器や機材をお持ちですよね。
島田:アレンジやプロデュースをするうえで、いまはコンピューターがあってシミュレーションがかなりできるんですけど、メロトロンやオルガン、ピアノ、ギターとか、ギターでもストラトキャスターというタイプやリッケンバッカーという種類でキャラクターが全然違うんです。「この曲はリッケンバッカーがほしい」とか思うんです。そうしたら買うしかない。
島田さんは、所持している数々の機材のなかから、鍵盤を押すと磁気テープに録音された音が再生される音声再生楽器「メロトロン」を紹介。番組ではメロトロンによるチェロの音、ストリングスの音、フルートの音をオンエアした。
市川:島田さんはアレンジのときにこれをどう使っているんですか?
島田:隠し味にも使えるし、フルートもビートルズがやっていたようにしたりね。それだけでも切なくなるし。さっきのストリングスも本物のストリングスじゃなくて哀愁があるので、あえてメロトロンのストリングスでやったりします。back numberの曲とかでやっていますね。
いま注目している音楽は?
島田さんのプライベートな時間について尋ねる。島田さんによればプライベートも音楽漬けなのだという。島田:プライベートというのはあまり考えたことがなくて(笑)。息抜きも音楽を聴いているというか。リラックスできますよね。
市川:リフレッシュで聴く音楽とインプットで聴く音楽は違ったりしますか?
島田:違いますね。いまはサブスクでいろいろあるので。最近はTikTokやInstagramなどのSNS系がすごくて。みんな踊りながら曲の1フレーズを使ったりしていて。
市川:しかも「あの曲で?」というのがよくありますよね。
島田:それがヒットになったりするので観ていて、「Shazam」で「この曲はなんだ?」とやったりしていますね。
市川:まさかTikTokのダンス動画を観てらっしゃるとは。注目しているものはほかにありますか?
島田:Penthouseの鍵盤の角野隼斗さんが、昔の日本のシティポップというジャンルをいま風に落とし込んでいて、めちゃくちゃかっこいいなと思って注目しています。
市川:角野くんってやっぱりすごいですよね。
島田:クラシックからジャズ、なにからなにまで。
市川:そういうのはストリーミングで出会うことが多いんですか?
島田:子どもがいて今度大学生になるので、「今は何がはやってるの?」と訊いたりします。
これからもすばらしい音楽を
島田さんに今後の「未来」について尋ねると、音楽の先駆者たちへのリスペクトを込めた答えが返ってきた。市川:今後伝えていきたいことや音楽を通してやっていきたいことは?
島田:いま作っている音楽は、60年代・70年代の先人たちが最初に発明したんですね。それをどんどん進化させて、いま作ったり、演奏したり、聴いたりしています。その先人たちが作った音楽もちゃんとリスペクトして勉強する。その人たちのアイデアをいただいて演奏しているわけですから、それをちゃんとわかったうえで次の新しい音楽を作ってもらいたいなと感じます。たとえば好きになったアーティストを深掘りしていって、好きなアーティストはなにを聴いていたのか、なにがルーツなのか。そこまで入っていただくと、その人にはアメリカのブルースやイギリスのブリティッシュロック、なにかしらのルーツがあると思うんです。そこから新しい音楽が見つかるかなと思います。
市川:最近は横に聴けちゃうからこそ、そうやってさかのぼっていくのがすごく大事だなと思いました。毎回みなさんに夢を訊いていますが、島田さんはやはりこのままお仕事を?
島田:そうですね。自分がワクワクできるような仕事や出会い、セッションとか、人とやることが、いいときもあれば悪いときもあるんですけど、それが自分の経験になるし。そういうことを未来にむかってやっていきたいですね。
ゲストの過去・現在・未来に市川紗椰が迫る、J-WAVEの番組『ORIENT STAR TIME AND TIDE』。放送は毎週土曜日の21時から。
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2023年4月15日28時59分まで
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市川紗椰