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年功序列が「地方創生」を阻む いま必要なのは“応援”と“寛容性”だ

年功序列が「地方創生」を阻む いま必要なのは“応援”と“寛容性”だ

クリエイティブディレクター・小橋賢児が、日本の地域の課題解決をサポートするコミュニティデザイナーの山崎 亮さんと対談。地方創生に見る地方の課題や、移住者を受け入れる寛容性の重要さなど語り合った。

小橋と山崎さんがトークを展開したのは、11月22日(日)放送のJ-WAVEのPodcast連動プログラム『INNOVATION WORLD ERA』のワンコーナー「FROM THE NEXT ERA」。小橋は同番組の第4週目のマンスリーナビゲーターを務める。

地域の未来を地域の人と一緒にデザインしていく

山崎さんの職業「コミュニティデザイナー」とは、どんな仕事なのか。

山崎:コミュニティデザインと言うと「山崎がコミュニティをデザインしているのか?」とよく言われるのですが、コミュニティは誰かが人為的にデザインできるものではないと思うんです。その意味で我々がやっているのは、むしろコミュニティの方々と一緒に何かをデザインする行為です。地域にいる方が、その地域の課題は何なのかを見つけ出してきて、みんなで話し合いながらどうやったらその課題を解決できるのか、そういう未来を一緒にデザインしていく仕事です。だから、デザイナーと言っていますが、結局は地域の方にデザインの方法を伝えたり、みんなで力を合わせるような状況を作っていくような仕事で、「地域づくり」や「街づくり」と言うような仕事に近い仕事だと思っています。
小橋:地域の人たちが各々課題に気付いていって、自発的に動いていく。そのきっかけ作りをしているということですか?
山崎:その通りです。なので、我々は、地域の人が驚くような解決策を提示することはあまりしません。むしろ自分たちがちょっと頑張れば「これ、できそうだな」と思えるようなことをみんなで話し合い、「どうやって実現させていく?」と試行錯誤する。その成功体験を何度か繰り返していくと、「自分たちでもうまくいくかもしれない」という風に思えて、我々が関わった5年、10年後に、けっこう面白いところまでプロジェクトが進んでいるね、なんてことがあります。こういう経験をすると、僕もこの仕事がやめられないなって気持ちになります。

地域創生に大切なのは、地域の人たちの意識改革

地方創生という言葉を多方面から耳にするようになってきた今、山崎さんは地方にどんな課題があると考えているのだろうか。

山崎:まず「地域で求められている産業は何か?」ということが見えなくなっていたことが、地方創生の前の大きな課題だったと思います。これからの世の中は一体何を求めているのか。それが全然見えなくなってきてしまっていた。だから、これまでの世の中で求められていたものを続けるしか策がなく、「どうしたらいいんだろう」と大人たちが迷っていた。若い人たちに意見を聞いてみればよかったんですけど、地域の序列はそうはなっていないことが多く、やはり年配の方々を敬うことが美徳だという印象がまだ残っていた。あまり地域に情報が入ってこなかった時代の名残で、江戸時代くらいから地域の年配の方々だけにのみ情報を共有する仕組みがあったりして、若い衆は「お前らは何にも知らないな」って言える状況があったために、年上が敬われるというような構造になっていました。

一方で、時代の変化とともに若い人たちが多くの情報にアクセスできるようになった。「これからどういうことをすれば社会の役に立つのか」「地域の産業になるのか」ということは、スマートフォンで即座に何かを調べることができるような若い人たちのほうがさまざまな可能性を探ることができる。山崎さんは「地域の人たちの意識を変えることが地域創生に大切だ」と続ける。

山崎:どんな仕事を新しく生み出すべきか。それについては、先輩方が若い人たちを全面的に応援していくことが大切なのかもしれないと思っています。地方創生でうまくいっている地域は、そこがけっこうできていて、なかなかうまくいかなかったところは、まだ年上の人たちの許可を得ながらではないと、新しいことができない地域だったのかもしれないです。
小橋:山崎さんは若い世代と昔からいるおじいちゃんおばあちゃんの間に入って、コミュニティデザインをするときもあるってことですかね?
山崎:ありますね。ほとんどがそうだと思います。その間に情報の断絶があったりするので、独立した立場である外部の人間が、ある意味で知らん顔をして「ちょっと一緒にやってみたらどうですか?」と声を掛けることが役立つのかもしれません。

これからの地域は寛容性が重要になる

新型コロナウイルスによって多くの人の環境や価値観が変化し、都市部から地域への移住を考える人も増えている。その流れのなか、小橋は「ちょっと意地悪な質問かもしれない」と前置きしつつ、こんな質問を投げかけた。

小橋:地域にいる人からすると、移住者はうれしい反面、よくわからない文化がいきなり来たり、よくわからない集団が集まったり、と抵抗感を持つ部分もあるじゃないですか。コロナ禍において、そういう動きは始まっていますか?
山崎:始まっていますね。都市部から移住した人たちは常識が違うということで、地域で困ることもすでに出てきています。ただ、一方で地域側は今まで喉から手が出るほど若い人に来てもらいたかった。一生懸命に補助金を設定してみたり、いろんな支援策を講じたりして「都市部の方々、ぜひこの地域に引っ越してきてください」と言ってきました。今、そのチャンスが到来したわけなので、まず地域側が寛容性、つまりいろんなことを許していくような気持ちを高める努力をする必要があるだろうなと思います。

山崎さんは「新しいことを何か取り組みたいと思って地域に来る人に『地域のみんなが応援したいという気持ちを持っている』とちゃんと表明することが大切だ」と付け加える。

山崎:たとえば「海があって、山があって、美味しい野菜がある」とアピールする地域がありますけど、(それは)日本全国言えることで、それが故に選ばれる地域になることはなかなか難しいんです。だけど、どの地域に行っても、なかなか勝手なことはさせてもらえないだろうなという風に思っているなかで、「あなたがやりたいことを地域で応援しますよ」と表明する地域があれば、そこは選ばれる地域になる可能性が高い。補助金を出すより、そういう形で移住者を応援する態度自体が、選ばれる地域のかなりのファクターを占めることになると思います。

また、山崎さんは「アーティストが先に移住していた地域は寛容性が高い」と紹介。「東京の一極集中がコロナをきっかけに是正されたと言えるかどうかは、実は東京の問題ではなく、それを受け入れようとする地域の寛容性の問題だ」と語った。

高齢化社会のコミュニティデザイン

今後、山崎さんがコミュニティデザインを通して解決していきたいテーマに、高齢化問題をあげた。

山崎:団塊の世代と団塊ジュニアの世代がこれからどんどん高齢者になっていくので、そうなったときに病院や介護施設だけに頼らなくても地域で豊かに暮らしていけるような街づくりを進めなくてはいけないと思っています。その意味で、安心して徘徊できるような街をどうやって作っていくのか。そういうことはコミュニティデザインに携わる人間としても、ちょっと見ていかないといけない分野かなと思っています。

番組では他にも、山崎さんがコロナによって変化する価値や生活について話す場面もあった。番組は、J-WAVEのポッドキャストサービス「SPINEAR」でも聴くことができる。

・SPINEAR
https://spinear.com/shows/innovation-world-era/

『INNOVATION WORLD ERA』では、各界のイノベーターが週替りでナビゲート。第1週目はライゾマティクスの真鍋大度、第2週目はASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文、第3週目は女優で創作あーちすとの「のん」、第4週目はクリエイティブディレクター・小橋賢児。放送は毎週日曜日23時から。

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2020年11月29日28時59分まで

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番組情報
INNOVATION WORLD ERA
毎週日曜
23:00-23:54