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【のん×大人計画主宰・松尾スズキ】無観客公演で感じたさみしさ…ウィズコロナ時代の演劇を考える

【のん×大人計画主宰・松尾スズキ】無観客公演で感じたさみしさ…ウィズコロナ時代の演劇を考える

女優・創作あーちすと、のんが、作家・演出家・俳優で大人計画主宰の松尾スズキとコロナ禍における演劇のあり方についてリモートでトークを繰り広げた。

のんと松尾が対談したのは、10月17日(土)に行われた「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2020 supported by CHINTAI」でのトークセッションにて。10月18日(日)放送の『INNOVATION WORLD ERA』では、この日の模様をいち早く紹介した。のんは同番組の第3週目のマンスリーナビゲーターを務める。

2年前には大人計画のイベントにも出演

過去に共演経験のある、のんと松尾。2018年には、のんが大人計画が開催した30周年記念コンサート『30祭(SANJUSSAI)』にも参加した。2人はまず思い出話に花を咲かせた。

のん:大人計画の30周年記念コンサートに“末っ子”でお邪魔をさせていただりとかしました。
松尾:よくライブとかで一緒になることがあったじゃない? 主に清水ミチコさんのライブとかで急に隣り合わせになることが多くて(笑)。それでしゃべっているうちに、のんちゃんがけっこう音楽活動を活発にやっていることがわかって、LINEのブログとかも読むようになったんです。
のん:えー! うれしい、ありがとうございます。恥ずかしいな、そうだったんだ。
松尾:それで大人計画の30周年記念の音楽祭みたいなことをやったときに、来て歌ってもらったんですよね。
のん:ありがとうございました。めっちゃ楽しかったです。
松尾:(笑)。
のん:一緒に松尾さんとステージに立って踊りました。
松尾:のんちゃんの横で踊りました。
のん:面白かったです。

マスクをしたままでは“出会えない”

松尾は今年、Bunkamura シアターコクーンの芸術監督に就任。「さあ、やろう」と思った矢先、新型コロナウイルスの流行で第一弾、第二弾、第三弾の計画が次々と中止になったと話す。

松尾:その報告をこういうZoomで受けるというね。
のん:心が通っていない感じがしますよね。
松尾:でも、Zoomだから受け入れられたのかな、みたいなところもあるんです。
のん:画面越しだからこそ。
松尾:はい。各々のスタッフの悲痛な思いというのはそれぞれあるわけで、それを九分割とか十分割のZoomの画面で「松尾さん、これがなくなりました」「この企画もなくなりました」「この企画も危ういです」「この企画は半分にしますか? どうしますか?」みたいな。僕は2月ぐらいまで舞台をやってたんです。『キレイ―神様と待ち合わせした女―』というミュージカルなんですけど。
のん:観に行かせていただきました。
松尾:ありがとう。その大阪公演がフェスティバルホールという2700人ぐらいのキャパでやっている、とてつもなくどでかいホールなんです。そこでやっているときにダイヤモンド・プリンセス号が横浜について、感染者がわーっと出てきたというニュースを聞いていたんですけど、聞いているときは他人事みたいで。それがまさかここまでの広がりをみせるとは思わないから。
のん:そうですよね。
松尾:客席がどんどんとマスクの姿になっていくのが異様で。「気をつけなきゃ」という意識はそのころすでに出来上がっていたんでしょうけど、でもそれで宮藤(官九郎)くんの『もうがまんできない』という、うちが主宰で本多劇場でやる予定だったお芝居が、稽古を全部やって「さあ本多劇場に入るよ」という前に潰れちゃって。
のん:そうでしたね……。
松尾:実態が全然つかめてないじゃない? 国によってもバラバラだから、一番ひどい状況みたいなものに人間は合わせて考えるから、すごく怯えていたよね。前は「マスクして挨拶するやつは失礼だな」とか思っていたけど。
のん:本当ですよね、それがまるで変わってしまって。
松尾:今は新しい人に会ってもマスクをしたまま挨拶するみたいなことになるから、出会えないんですよ。顔が全部出ないと出会ったことにならない感じが僕はしていて。出会えないまま出会って、出会えないまま別れるみたいな。特にスタッフさんとかライターさんとか編集者さんとか、数か月でいろいろな人に会いましたけど、出会えてないんだよね。しゃべってはいるんだけど。

無観客公演で感じたさみしさ

WOWOWが公演の延期や中止が相次いだ劇場とコラボを組んで開催した『劇場の灯を消すな! Bunkamuraシアターコクーン編 松尾スズキプレゼンツ アクリル演劇祭』。松尾が総合演出を担当した。

新型コロナウイルスの対策としてアクリル板で演者を囲み、アクリル剣劇、アクリル演劇、アクリルダンスというバラエティに富んだ内容の番組で、松尾は制作の際の苦悩を振り返る。

松尾:シアターコクーンがガッサリ開いちゃったので、借りた劇場をどうにかしようというので、うちの社長とWOWOWさんで「空いた劇場で感染をしないまま最善の手段をもって表現をするにはどうするか?」みたいなことで知恵を絞ったんです。
のん:いつぐらいに「舞台をやろう」という気持ちになられましたか?
松尾:そのときは本当に、みんながみんなやることがなくなっちゃって。でもこのままだと、特に舞台俳優の存在が忘れられちゃうなみたいな思いがあった。テレビの俳優さんはZoomドラマとかやってましたけどね。
のん:映像で出られていましたね。
松尾:だから舞台俳優たちもあがいてZoom演劇とかをやっていたけど、僕はそれよりもダイレクトな感じで客とコンタクトをしたいというか。それで俳優をアクリル板で囲って飛沫が飛ぶのゼロという状態でやってみようかなと思ったんです。でもやっていて思ったのは、やっぱりお客さんがいないことのさみしさだよね。
のん:無観客と言われ始めたときに、周りの人が「無観客という言葉に全然慣れない」と言ってて。
松尾:そうですよね。僕らは実演の世界の人間なので、観客がいないまま演じるというのが稽古とどう違うんだ?みたいなところもあってさ。お客さんのリアクションがあるというのが実演とそうでないものの最大の違いだと思うんですけど、僕らは笑いをやっているじゃないですか。「笑いとはなんだろう?」というクイズがあって、俺はそこに演技で切り込むんですけれども、それが成功をしたときに客が笑うじゃないですか。その笑いを浴びるということが至上の喜びだったりするわけです。それがないというのがね。
のん:キツいですよね。
松尾:アクリル演劇をやっていたときもかなりつらかったし、つらかったから自分で笑い声が起きるボタンを作って、それを押すと会場に笑いが響くっていう(笑)。むなしいような、ばかばかしいようなことをやってましたけど。
のん:そういうこともやられていたんですね。大人計画さんの舞台って「誰が一番笑いをとっているんだ?」みたいな戦いのようなものを客席で観ていて楽しむところがあるので、確かにそのお客さんがいて……というのが一番重要なことだったんですよね。
松尾:みんな、普通の演技をすることに興味がないですからね。
のん:そうなんですか(笑)。
松尾:作品の主題より、その場の笑いをとりにいきたい人たちばかりなので(笑)。

この日のトーク映像のアーカイブを配信中。チケット販売は2020年10月25日(日)18:00まで、視聴は同日23:59まで。

【チケット購入・アーカイブ視聴はこちら】 (360°VR映像はアーカイブ配信がございません)

『INNOVATION WORLD ERA』では、各界のイノベーターが週替りでナビゲート。第1週目はライゾマティクスの真鍋大度、第2週目はASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文、第3週目は女優で創作あーちすとの「のん」、第4週目はクリエイティブディレクター・小橋賢児。放送は毎週日曜日23時から。

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2020年10月25日28時59分まで

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番組情報
INNOVATION WORLD ERA
日曜 23:00-23:54/SPINEAR、Spotify、YouTubeでも配信
23:00-23:54