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武田双雲、会社員から書道家へ。きっかけは、名前を書いてあげた同僚の涙

武田双雲、会社員から書道家へ。きっかけは、名前を書いてあげた同僚の涙

クリエイティブディレクター・小橋賢児が、書道家で現代アーティストの武田双雲と対談。会社員を経て書道家へ転身したビハインドストーリーから、書道家としての活躍に繋がったターニングポイントに迫った。

小橋と武田がトークを展開したのは、9月27日(日)放送のJ-WAVEのPodcast連動プログラム『INNOVATION WORLD ERA』のワンコーナー「FROM THE NEXT ERA」。小橋は同番組の第4週目のマンスリーナビゲーターを務める。

「筆で人の名前を書くとすごいことになる」という気づき

母が書道の先生をしていたことがきっかけで、武田は3歳から筆で遊ぶようになったと当時を振り返る。

武田:小学校に入るころには、けっこう立派な字を書くようになっていました。母親の字と、学校の担任の先生の字と、友だちの字の乖離がすごすぎて、同じひらがなでも「こんなに違うのか!」ってくらい驚きました。昆虫採集のように変な字を集めたり、人の字をモノマネしたりしていると、筆跡心理学ではないけど、字でみんなの性格がわかるようになってきました。友だちがいない時間も多かったから、相対性理論とか量子力学を学んだり、書道をしたりして時間を潰していましたね。

その後、武田は理系の道に進み、東京理科大学理工学部を卒業。NTTに入社した。

武田:大学は情報科学科でした。コンピューターサイエンスに感動して、インターネットがヤバいってことはわかっていました。このビッグウェーブがもうすぐ日本に来て、これはすごいことになるぞ、と。それでNTTに入って、ITコンサルタントみたいなことをやっているときに、「ITと書道って掛け合わせたらヤバくないか」と思った瞬間がありました。

武田が仕事中に筆でメモ書きをしていることが社内でうわさになり、女性の先輩社員たちから「私の名前を書いて」とリクエストをもらうようになったという。

武田:初めてモテた瞬間で「これはいいぞと」思いました。いろんな人の名前を書いていると、ある女性が泣いて喜んでくれました。「自分の名前が嫌いだったけど、好きになれたかもしれない」と。それで、俺も泣き出しちゃって。

その勢いで、武田は退職届を書いてしまったのだという。

小橋:えー! 書いちゃったの(笑)。
武田:人の涙を見て、「筆で人の名前を書いていくとすごいことになるぞ」と感じて、なぜかその場で会社を辞める決意しか頭になくなって、その場で上司に持っていき辞めました。そこからストリートで書道を書くようになりました。もう大成功するとしか思ってなかったですね。
小橋:そういう思い込みって大事ですよね。
武田:上手くいくとかいかないとかではなくて、ひたすら創意工夫を重ねていたから、不安になる時間がなかったのかもしれない。「俺が、俺が」をやめて相手の立場に立ったり共感するようになったりと、相手に興味を持ち始めたら突然感動してくれて1000円くれたりして、それってアインシュタインの「E=mc2」がめちゃくちゃ現実に現れた感じなんです。物質の変化って出会いの変化にも変わるんだと思い、そのときに「一期一会」とブワッっと書いて「ヤベえ!」って感じて。それがすごく大きかったかな。

人類がより楽しくなるために―日本文化に詰まったヒント

その後、武田は書道家として活躍する一方で、最近では現代アーティストとしても活動している。

武田:恥ずかしい話ですが、ゲーム依存症になってしまいまして(笑)。なんとかしてゲームをしない時間で埋めなくてはいけないときに、娘から借りた色鉛筆で自分の作品を塗ってみてSNSに投稿したら、ものすごく評判になりました。その頃、色とりどりの世界がエロすぎて「行っちゃダメだ」と思っていた画材屋さんに行ったら、画材を爆買いしてしまいました。いろんな絵の具を使って作品を書くようになったら、めちゃくちゃ売れたんです(笑)。アートのことはよくわからないけど、色の世界と書の世界を合体させて天国のような毎日を送っています。

武田は新型コロナウイルスの影響がなければ、今秋、活動拠点をアメリカ・カリフォルニアに移す予定だったという。

小橋:日本の伝統的な文化である書道を用いて、海外でどう勝負しようと考えられていますか。
武田:文字や書道、中国から来た道(タオ)や禅、華道、茶道も含めて、自分も学びながら、書道の先生として生徒さんにもそういった歴史も教えてきました。でも、日本文化ってあまりに深すぎるんです。千利休や葛飾北斎もそうですけど、抽象的な概念のなかにアート的なことや人間の生活、大自然などがシームレスな連携を行い茶道や能などに落とし込む。そのすごさにビックリするわけです。世界にこれほどのものはないんですよね。たとえば千利休がお茶を飲むときに、碗を3度回しながらよく観察して味わう。そこにおもてなしやコミュニケーションを含める感覚を体感することで、この人間社会独特のノイズや不安から解放される、かなりの手がかりになると思っています。

武田は「僕自身も書道によってかなり解放することができた」と話し、「人類がもっと楽しくなる、ラクになる、大自然と繋がれるヒントが日本文化にたくさん詰まっているので、それを世界中に伝えたいなという思いで、これから海外に行こうと思っている」と決意を口にした。

現在、武田双雲現代アート展「愛」が開催中だ。今後は9月30日(水)~10月6日(火)に京都・大丸京都店「美術画廊」で、10月8日(木)~10月14日(水)に東京・GINZA SIX 「Artglorieux GALLERY OF TOKYO」でそれぞれ開催される。

小橋:今展のタイトルは「愛」と、直球できましたね。
武田:アインシュタインも「宇宙のベースは“愛”でできている」というような話をしたというエピソードもありますし。
小橋:そこからきたんですね。
武田:僕も書道家として作品を制作しながら日々人間的になってしまいそうな自分を一度やめて、道具に感謝したり絵の具を使わせてもらえることに感謝したり、瞬間、瞬間で自分が制作するいろんなものに愛を感じながら作品を制作する。「ありがたいな」という感謝の気持ちを持って制作をすることに戻ろうという、自分の戒めでもあるんです。「売れなきゃ」とか「すごいアーティストになるぞ」とか、そういう人間だけの「俺はトップになるぞ」みたいな小さなノイズのようなエネルギーをなくして、もっと宇宙と繋がれる時間を大事にしながら制作した作品を展示しています。

武田が表現した「愛」を展覧会場でぜひ体感してほしい。武田双雲の最新情報は、公式サイト、またはオフィシャルTwitterまで。

番組では他にも、武田がコロナ禍で気づいたことや、自分の心のあり方について語る場面も合った。番組は、J-WAVEのポッドキャストサービス「SPINEAR」でも聴くことができる。

・SPINEAR
https://spinear.com/shows/innovation-world-era/episodes/from-the-next-era-2020-09-27/

『INNOVATION WORLD ERA』では、各界のイノベーターが週替りでナビゲート。第1週目はライゾマティクスの真鍋大度、第2週目はASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文、第3週目は女優で創作あーちすとの「のん」、第4週目はクリエイティブディレクター・小橋賢児。放送は毎週日曜日23時から。

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2020年10月04日28時59分まで

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番組情報
INNOVATION WORLD ERA
毎週日曜/SPINEAR、Spotify、YouTubeでも配信
23:00-23:54