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本当の意味で「意見を自由に持つ」状態とは? SKY-HIと☆Taku Takahashiが対談

本当の意味で「意見を自由に持つ」状態とは? SKY-HIと☆Taku Takahashiが対談

J-WAVE(81.3FM)×「MUSIC FUN !」連動企画である、深夜の音楽座談プログラム『WOW MUSIC』。“すごい"音楽をつくるクリエイターが“WOW"と思ういい音楽とは? 毎月1人のクリエイターがマンスリープレゼンターとして登場し、ゲストとトークを繰り広げる。

9月のマンスリープレゼンターはm-floの☆Taku Takahashi。9月18日(金)のオンエアでは、SKY-HIがゲストに登場。SKY-HIのこれまでの作品や音楽活動について語り合った。

SKY-HIが見る今の日本…自由度が浅薄化している

☆Taku Takahashiは普段からSKY-HI(日高光啓)のことを「だっちゃん」と呼んでおり、愛称で呼びながらゆっくりと会話をスタートさせた。

☆Taku:ファンも「だっちゃん」って呼んでるでしょ?
SKY-HI:半分くらいはそうですね。でも多岐にわたります。
☆Taku:僕らはけっこう知り合って長いですよね。でも遊びに行ったことはないね。
SKY-HI:そうですね。
☆Taku:新幹線でバッタリ会ったり。
SKY-HI:それは僕も印象的でした。
☆Taku:だっちゃんのイメージは“アーティスト"です。
SKY-HI:あら、ありがとうございます。
☆Taku:自分で作品を作って、プロデューサー気質でもある。自分でトラックを作ってみようとしたり、自分で伝えたいものを伝えたり、しかもインディペンデントだし。あと、矛盾の塊です。
SKY-HI:そうなんですよね。

ここで話題はSKY-HIの4枚目のオリジナルアルバム『JAPRISON』に。アルバムタイトルは、「JAPAN」と「PRISON」および「JAPanese Rap IS ON」を意味する造語だ。

☆Taku Takahashiは、SKY-HIが今の日本をどのように見ているのかと問いかけた。

☆Taku:『JAPRISON』リリース後の日本は少し変わりました?
SKY-HI:どうでしょう。むしろ加速しているのかなという感じはしますけどね。
☆Taku:加速というと?
SKY-HI:加速と浮き彫りだと思うんです。自由度の消失まではいっていないと思うんですけど、自由度の浅薄化。ちょうど『JAPRISON』より前くらいに、同調圧力の話とか、差別問題の話とかを、韓国人ラッパーと歌ったりしていた時期がありました。たぶん2018年頃です。そこらへんで歌っていた曲を最近聴くと、より切実に聴こえてくるというか。そういう意味では、息苦しさみたいなものは風潮的に加速している気もしますし、それを息苦しいと感じるかどうかみたいな自分の精神との向き合いは、アルバム以降どんどんとラクになってきてはいます。

反論=ダメなことではない。自由に意見を持つ状態とは

☆Taku TakahashiはSKY-HIの書く歌詞にも注目。ほかのヒップホップアーティストとは一線を画したものになっていると評する。

☆Taku:とにかく自分との闘いを描いている印象があるんです。普通、ヒップホップは「ヒップホップであるべき形」というリリックがあって。「俺はランボルギーニに乗るんだ」とか「メイクマネーして大きくなるんだ」ということを書くのが“ヒップホップ成り上がりスピリット"のかっこよさで、それは嫌いじゃないはず。
SKY-HI:好きです。
☆Taku:だけど、真っ向から正反対のリリックを書いてるよね。
SKY-HI:そうですね(笑)。見ている分には好きなんですけど、「そういう物質主義みたいなものに心がとらわれると、自由じゃなくなる自分が嫌だ」という感じかな。たぶん。難しいんですけどね。持つと失いたくなくなるし、持つともっとほしくなるし、精神的な充足感とか幸せとか、そういったものはどこにあるんだろう、と探し続けていましたし、まだ探している気もします。
☆Taku:『JAPRISON』って日本の窮屈な部分がテーマだと僕は感じているんだけど、それは合ってますか?
SKY-HI:合ってます。
☆Taku:自由な国のはずなのに「日本は監獄だ」っていう言い方。それは日本全体の、たとえば「不倫問題がありました」「誰々が捕まりました」「こいつは悪です」とか、人のことだから別に放っておけばいいのに、というもの。そういう過剰コンプライアンス社会の話や「こうしなきゃいけない」という話。ヒップホップシーンでそういうものを感じたことはあった?
SKY-HI:ヒップホップはもともとアンダーグラウンド志向が強いものですし、ある種、健康的だとも思っているんです。昔の言葉で言えば「リアルかフェイクか」という。そういう話が出るのは健康的だと思っているし、それをたとえば「フェイクだ」と言われたときにブチ切れたり反論したりするのも自由。強い主義を持った人と「そんなもん関係ねえよ」という人が同居するのは自由だとは思うんです。だけど、日本人の国民性との食い合わせが一番悪いなと思ったのは、正義とか正論みたいなもので誰かが「こういうものだから」と言ったとして、それに同意していく風潮みたいなものができると「そう思わなくてはいけない」となってしまう。「ヒップホップはこうあるべきだ」と言う人がいるのはいいんですけど……。
☆Taku:それを否定しているわけじゃないんだよね。
SKY-HI:そうです。それはいいことだと思うし、俺にもたぶんあるから。「ヒップホップはこうあるべきだ」という人に対して、「『ヒップホップはこうあるべきだ』と思わないといけない」という人が付いちゃうんですよね。
☆Taku:フォロワーたちがね。
SKY-HI:それがものすごく不健康だし、その人が持っている主義と、「そう思わなきゃいけない」という人には大きな差があって、「そう思わなきゃいけない」と思う人は面倒くさいことになることが多いですよね。
☆Taku:「あなたたちが自由に思っているように、俺だって自由に思っていいんだよ」というのはあるよね。
SKY-HI:ありますね。

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「縛られたくない」と思うことが、いちばん縛られている

☆Taku Takahashiが「ヒップホップは本来、予定調和を崩して生まれたもの」と意見を述べると、SKY-HIはこれに同意した。

SKY-HI:ヒップホップは、わざわざ回っているターンテーブルを止めてこすったり、間奏をつなぎあわせてしゃべったりして「俺の曲だ」と言うような文化で、「ヒップホップはこうでなきゃいけない」というやつが一番ヒップホップじゃないみたいな話が、L-VOKALのリリックにあって。詳細には覚えてないけど、それはすごく好きでしたね。
☆Taku:それも共感するな。SKY-HIというアーティストは「リアルかフェイクか」との闘いだったと思うんです。『JAPRISON』で一番共感したのは『New Verse -Remix- feat. eill』。あのリリックにグッと思いがこもっているような気がして。
SKY-HI:ありがとうございます。

☆Taku:あれはやっぱり自分の心の中を書いた曲なんですか?
SKY-HI:そうですね。近しい友人とたくさん話をして、出たものをそのままぶつけた形だったんです。あれを作った1、2年後にじわじわと自分の中で腑に落ちてきたのは「なんで俺はこういうことを切に思ったんだろうな」と。振り返って思うのは、たぶん「縛られたくない」と思うことがいちばん縛られているし、「自由になりたい」と思うことがものすごく自由じゃないということに気がついたきっかけの曲です。 ☆Taku:それが詰まった曲だよね。すごく共感した曲のひとつです。
SKY-HI:ありがとうございます。

『WOW MUSIC』では、9月のナビゲーターをm-floの☆Taku Takahashiが担当。来週はR-指定と音楽談義を繰り広げる。放送は金曜日の24時30分から。

また、『MUSIC FUN !』のYouTubeページには、同番組のトーク動画のほか、ミュージシャンやプロデューサーによる音楽の話が数多く配信されている。

・『MUSIC FUN !』のYouTubeページ
https://www.youtube.com/c/musicfun_jp

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2020年9月25日28時59分まで

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WOW MUSIC
毎週金曜
24:30-25:00