J-WAVEで放送中の番組『~JK RADIO~ TOKYO UNITED』(ナビゲーター:ジョン・カビラ)のワンコーナー「THE HIDDEN STORY」。12月20日(金)のオンエアでは、同日に公開されたアニメーション映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の片渕須直監督が登場。制作秘話や音楽に込めた思いを語った。
■前作に新たな場面を追加して主人公・すずを立体的に描く
こうの史代の同名漫画を原作に、2016年に公開され大ヒットを記録したアニメ映画『この世界の片隅に』。戦前から戦中、戦後にかけての広島県を舞台に、激しい空襲を受ける呉市に嫁いだ主人公・北條すずの暮らしや失ったものなどを繊細に描いている。その前作に、新たなエピソードを追加した長尺版『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が新たに公開。すずの声は、女優ののんが演じている。
本作では、呉の遊郭で働くリンとテルという二人の女性を通して見えてくる、すずの新たな一面が見所だ。
片渕:本当は原作のマンガを全部映像化したいと思ったのですが、前作では2時間にまとめました。その時に、今度の映画でも重要な役どころのリンさんやテルちゃんは顔出し程度に出ていたんですが、その出し方は彼女たちに失礼な気がしました。リンさんやテルちゃんにきちんと出てもらおうと思ったのが本作です。彼女たちはすずさんの中にある別のものを見つけていきます。彼女たちと触れ合うことで、すずさんは看板のような一面的なキャラではなく、立体的な人柄や側面が見えてくる。そんな映画を作れるんじゃないかと思ったんです。
片渕監督が前作と本作を通して描きたかったのは、すずであり人間そのものだと言う。
片渕:すずさんは本性や本当の気持ちを秘めて生きています。好きな人がいても「嫁に来てくれ」と言われたら嫁に行き、絵が好きで得意なのに「絵なんか描けなくてもいい」と言い、自分が意味のない人間だと思うことで生きてきた人です。しかしリンさんから「私のために絵を描いて」と頼まれたことから、すずさんの自分に対する認識が揺らいでいく。でも前作も本作も、どちらも本当のすずさんです。誰がどんな目で見ているかで違ってくる。でも人間ってそういうものですよね。人間そのものを、すずさんを通して描きたいと思いました。
■コトリンゴの音楽は、すずの絵を描く右手のよう
片渕監督は製作開始から9年間にもわたり、すずと向き合ってきた。監督から見たすずは「心の奥深くに感情や衝動がある人」だと語る。
片渕:すずさんはつらくても「私はそういう人ですから」とニコニコ笑って、何かが通り過ぎるのをただ待っている人です。自分の心の奥に、なにか違うものがあることを自分自身で気がつかない。でも、すずさんの心の中にある地下室には、もっといろんな気持ちや感情、絵を描きたい衝動がため込まれているんじゃないかと思いました。そしてその絵を描きたい衝動はときどき出てきて、すずさんの右手を動かして絵になって現れる。やっぱり待っているだけの人ではなかったし、心の奥深くにあるんですよね。
本作でも、前作同様にコトリンゴが音楽を担当。4曲の新曲とエンディングテーマ「たんぽぽ」の新バージョンを制作した。コトリンゴが表現する音楽は作品にとってなくてはならない存在だ。
片渕:すずさんには(自分を表現する)声に代わって絵を描く右手という存在があります。すずさんとは別人格で、地下室の気持ちを発揮する右手はすずさんとは別の声でしゃべるかもしれないし、歌うようにしゃべるかもしれない。その歌声を考えたときに、コトリンゴさんが浮かんだのが2010年でした。今回の映画で作曲した曲は、すずさんの心の中から漏れ聞こえているもの。すずさんの気持ちを、絵を描く右手のようにコトリンゴさんの音楽が表現してくれています。
本作を「伏せられたカードが開けられるのを待っている物語」だと評し、物語の先は観客や原作の読者に委ねたいとも語った片渕監督。発売中のサウンドトラック『「この世界の片隅に」さらにいくつものサウンドトラック』と合わせて、ぜひチェックしてほしい。
映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』は全国公開中。
J-WAVE『~JK RADIO~ TOKYO UNITED』のワンコーナー「THE HIDDEN STORY」では、さまざまなフィールドで活躍する人物の裏側に迫る。放送は毎週金曜の10時40分頃から。お楽しみに。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年12月27日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『~JK RADIO~TOKYO UNITED』
放送日時:毎週金曜 6時-11時30分
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/tokyounited/
■前作に新たな場面を追加して主人公・すずを立体的に描く
こうの史代の同名漫画を原作に、2016年に公開され大ヒットを記録したアニメ映画『この世界の片隅に』。戦前から戦中、戦後にかけての広島県を舞台に、激しい空襲を受ける呉市に嫁いだ主人公・北條すずの暮らしや失ったものなどを繊細に描いている。その前作に、新たなエピソードを追加した長尺版『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が新たに公開。すずの声は、女優ののんが演じている。
本作では、呉の遊郭で働くリンとテルという二人の女性を通して見えてくる、すずの新たな一面が見所だ。
片渕:本当は原作のマンガを全部映像化したいと思ったのですが、前作では2時間にまとめました。その時に、今度の映画でも重要な役どころのリンさんやテルちゃんは顔出し程度に出ていたんですが、その出し方は彼女たちに失礼な気がしました。リンさんやテルちゃんにきちんと出てもらおうと思ったのが本作です。彼女たちはすずさんの中にある別のものを見つけていきます。彼女たちと触れ合うことで、すずさんは看板のような一面的なキャラではなく、立体的な人柄や側面が見えてくる。そんな映画を作れるんじゃないかと思ったんです。
片渕監督が前作と本作を通して描きたかったのは、すずであり人間そのものだと言う。
片渕:すずさんは本性や本当の気持ちを秘めて生きています。好きな人がいても「嫁に来てくれ」と言われたら嫁に行き、絵が好きで得意なのに「絵なんか描けなくてもいい」と言い、自分が意味のない人間だと思うことで生きてきた人です。しかしリンさんから「私のために絵を描いて」と頼まれたことから、すずさんの自分に対する認識が揺らいでいく。でも前作も本作も、どちらも本当のすずさんです。誰がどんな目で見ているかで違ってくる。でも人間ってそういうものですよね。人間そのものを、すずさんを通して描きたいと思いました。
■コトリンゴの音楽は、すずの絵を描く右手のよう
片渕監督は製作開始から9年間にもわたり、すずと向き合ってきた。監督から見たすずは「心の奥深くに感情や衝動がある人」だと語る。
片渕:すずさんはつらくても「私はそういう人ですから」とニコニコ笑って、何かが通り過ぎるのをただ待っている人です。自分の心の奥に、なにか違うものがあることを自分自身で気がつかない。でも、すずさんの心の中にある地下室には、もっといろんな気持ちや感情、絵を描きたい衝動がため込まれているんじゃないかと思いました。そしてその絵を描きたい衝動はときどき出てきて、すずさんの右手を動かして絵になって現れる。やっぱり待っているだけの人ではなかったし、心の奥深くにあるんですよね。
本作でも、前作同様にコトリンゴが音楽を担当。4曲の新曲とエンディングテーマ「たんぽぽ」の新バージョンを制作した。コトリンゴが表現する音楽は作品にとってなくてはならない存在だ。
片渕:すずさんには(自分を表現する)声に代わって絵を描く右手という存在があります。すずさんとは別人格で、地下室の気持ちを発揮する右手はすずさんとは別の声でしゃべるかもしれないし、歌うようにしゃべるかもしれない。その歌声を考えたときに、コトリンゴさんが浮かんだのが2010年でした。今回の映画で作曲した曲は、すずさんの心の中から漏れ聞こえているもの。すずさんの気持ちを、絵を描く右手のようにコトリンゴさんの音楽が表現してくれています。
本作を「伏せられたカードが開けられるのを待っている物語」だと評し、物語の先は観客や原作の読者に委ねたいとも語った片渕監督。発売中のサウンドトラック『「この世界の片隅に」さらにいくつものサウンドトラック』と合わせて、ぜひチェックしてほしい。
映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』は全国公開中。
J-WAVE『~JK RADIO~ TOKYO UNITED』のワンコーナー「THE HIDDEN STORY」では、さまざまなフィールドで活躍する人物の裏側に迫る。放送は毎週金曜の10時40分頃から。お楽しみに。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年12月27日28時59分まで)
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【番組情報】
番組名:『~JK RADIO~TOKYO UNITED』
放送日時:毎週金曜 6時-11時30分
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/tokyounited/
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