J-WAVEで放送中の番組『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:玄理)のワンコーナー「WORLD CONNECTION」。10月27日(日)のオンエアでは、「東京国際映画祭」で作品選定ディレクターを担当する矢田部吉彦さんが登場。11月5日(火)まで開催されている「第32回東京国際映画祭」から注目の作品を紹介した。
■作品選定ディレクターが注目作品を紹介
「第32回東京国際映画祭」期間中は、およそ180本の作品が上映される。オープニング作品として、シリーズ50作目となる『男はつらいよ お帰り 寅さん』が上映された。新たに撮影した映像もあり、過去の名場面集ではなく完全な新作となっている。
矢田部:新しい物語があって、寅さんがビックリするようなカタチで復活します。
玄理:新撮された部分と4Kデジタル修復されたシリーズの映像が紡ぎ合って、新作になってるんですよね。
矢田部:そうなんです。
懐かしいキャストが勢揃いしている点にも注目の本作は、12月27日(金)公開予定だ。
その他、矢田部さんオススメの作品を挙げてもらった。
・『ディスコ』(コンペティション)
矢田部:キリスト教のカルトに傾倒してしまうような家族を描いています。主人公の高校生はディスコのダンス大会で優勝するほどの選手なんですが、不調に陥ると家族が宗教への傾倒を深めてしまいます。少し恐ろしい物語ですけど、見た目はとても明るくて生き生きとしている作品なだけに、その先を読もうとすると怖くなってしまうユニークな作品です。
玄理:宗教にはいい面もあるけど、傾倒しすぎることの怖さがありますよね。
矢田部:『ディスコ』は、カルトと正常の境目が見えなくなってくるところが非常にリアルだと思います。
「第32回東京国際映画祭」では『ディスコ』のように、世界の現状を知ることができる作品が多く上映される。
・『アトランティス』(コンペティション)
矢田部:今のロシアとウクライナの関係を描いています。舞台は2025年という非常に近い未来。SFではあるけれど、ロシアとウクライナの戦争が終わった直後という、少しディストピア的な世界を描いています。心が病んだ兵士の魂の回復を描いていて、テーマはヘビーですが映像は圧巻です。「ワンテイクでしか許されないだろう」というようなショットです。現代アートが好きな人や鋭い映像が観たい人にもオススメです。
・『チャクトゥとサルラ』(コンペティション)
玄理:モンゴル映画です。あんなに広大なモンゴルの土地に住んでいるのに、ここから抜け出せないという、広大な土地の感じと閉塞感が対照的だと思いました。
矢田部:草原の暮らしをしている夫婦の物語で、中国の内モンゴルが舞台です。旦那は都会で暮らしたいと思っており、妻は草原に残りたいと思っている夫婦のすれ違いを描いています。モンゴルに都会化の波が押し寄せている社会的な面も見えてきます。広大だけど閉塞感を抱えるような夫の心境もうまく描いています。
・『わたしの叔父さん』(コンペティション)
矢田部:デンマークの農村地域で小さな酪農を営んでいる叔父さんと姪御さんの話です。年老いて体の自由がきかなくなった叔父さんを、姪御さんが優しく面倒をみています。ふたりの関係を静かに淡々と描いており、その様子を観ているだけで幸せなんですが、姪御さんは自由になりたいという思いもあります。おじさんの面倒もみないといけないなかで、どんな選択をとるのか。本当に胸が締め付けられるような、感動的で美しい作品です。
・『i -新聞記者ドキュメント-』(日本映画スプラッシュ)
矢田部:今年、日本映画の『新聞記者』がヒットしました。ある新聞社の女性の記者をモデルにしたフィクション映画で、そのモデルになった東京新聞社会部記者・望月衣塑子さんに森 達也監督が密着したドキュメンタリーです。彼女が取材をする姿を通じて今の日本が見えてくる。さまざまな障害や壁に当たりながらも、取材を敢行していく望月さんの姿が面白いです。個性の強い新聞記者に監督自身がどのように向き合っていくか、という視点も面白いです。
■日本の女性監督の注目作品
今は、世界中で女性監督の作品を増やそうという動きがある。そこで、「第32回東京国際映画祭」で上映される、日本の女性の監督の作品を2本紹介した。
・『ミセス・ノイズィ』(日本映画スプラッシュ)
矢田部:天野千尋監督の作品です。隣人の音がうるさくてトラブルになってしまう、という作品ですが、途中で話にツイストが非常に効いています。サプライズがいくつもあるほか、SNSなどの現代の問題も切り取っています。
玄理:主演の篠原ゆき子さんは、たまにお会いします。とても真面目な女優さんですよね。
・『タイトル、拒絶』(日本映画スプラッシュ)
矢田部:山田佳奈監督の作品です。セックスワーカーの人々の偶像劇です。
玄理:セックスワーカーがヒロインのインディーズ映画はこれまでもありましたが、男性監督だったことが多くて、女性が描くセックスワーカーが主人公の話ってどういう感じなんだろうっていうのは楽しみですね。
矢田部:「女性の目線から見るとこういうことだよな」と、私自身にも刺さる場面がありました。監督は演劇畑の出身で演出が非常にこなれている上、映画的な魅力もしっかり引き出しており、新人監督としては驚くようなクオリティです。
最後に、矢田部さんに「海外に紹介したい日本の作品」を挙げてもらった。
・『猿楽町で会いましょう』(日本映画スプラッシュ)
矢田部:若いふたりのオーソドックスな青春物語ですが、新しい日本のフレッシュな男女を描いています。ふたりの若手の俳優の魅力が非常に溢れているので、今後の日本のスター俳優を海外の皆さんにも発見してもらいたいと思っています。
玄理:読者モデルとフォトグラファーという設定も今っぽいですね!
【関連記事】金子大地×石川瑠華は「みずみずしく、自由で美しい」 映画『猿楽町で会いましょう』舞台挨拶をレポート
「第32回東京国際映画祭」では、コンペティション部門の審査委員長としてチャン・ツィイーも来日。話題の映画祭を、ぜひチェックしてみてほしい。
【「第32回東京国際映画祭」公式ホームページ】
J-WAVE『ACROSS THE SKY』は"世界と繋がるラジオ"をコンセプトに掲げている。今回、紹介したワンコーナー「WORLD CONNECTION」では、様々な国の最新カルチャーの今をお届けしている。ぜひチェックしてみてほしい。
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【番組情報】
番組名:『ACROSS THE SKY』
放送日時:毎週日曜 9時-12時
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/acrossthesky/
■作品選定ディレクターが注目作品を紹介
「第32回東京国際映画祭」期間中は、およそ180本の作品が上映される。オープニング作品として、シリーズ50作目となる『男はつらいよ お帰り 寅さん』が上映された。新たに撮影した映像もあり、過去の名場面集ではなく完全な新作となっている。
矢田部:新しい物語があって、寅さんがビックリするようなカタチで復活します。
玄理:新撮された部分と4Kデジタル修復されたシリーズの映像が紡ぎ合って、新作になってるんですよね。
矢田部:そうなんです。
懐かしいキャストが勢揃いしている点にも注目の本作は、12月27日(金)公開予定だ。
その他、矢田部さんオススメの作品を挙げてもらった。
・『ディスコ』(コンペティション)
矢田部:キリスト教のカルトに傾倒してしまうような家族を描いています。主人公の高校生はディスコのダンス大会で優勝するほどの選手なんですが、不調に陥ると家族が宗教への傾倒を深めてしまいます。少し恐ろしい物語ですけど、見た目はとても明るくて生き生きとしている作品なだけに、その先を読もうとすると怖くなってしまうユニークな作品です。
玄理:宗教にはいい面もあるけど、傾倒しすぎることの怖さがありますよね。
矢田部:『ディスコ』は、カルトと正常の境目が見えなくなってくるところが非常にリアルだと思います。
「第32回東京国際映画祭」では『ディスコ』のように、世界の現状を知ることができる作品が多く上映される。
・『アトランティス』(コンペティション)
矢田部:今のロシアとウクライナの関係を描いています。舞台は2025年という非常に近い未来。SFではあるけれど、ロシアとウクライナの戦争が終わった直後という、少しディストピア的な世界を描いています。心が病んだ兵士の魂の回復を描いていて、テーマはヘビーですが映像は圧巻です。「ワンテイクでしか許されないだろう」というようなショットです。現代アートが好きな人や鋭い映像が観たい人にもオススメです。
・『チャクトゥとサルラ』(コンペティション)
玄理:モンゴル映画です。あんなに広大なモンゴルの土地に住んでいるのに、ここから抜け出せないという、広大な土地の感じと閉塞感が対照的だと思いました。
矢田部:草原の暮らしをしている夫婦の物語で、中国の内モンゴルが舞台です。旦那は都会で暮らしたいと思っており、妻は草原に残りたいと思っている夫婦のすれ違いを描いています。モンゴルに都会化の波が押し寄せている社会的な面も見えてきます。広大だけど閉塞感を抱えるような夫の心境もうまく描いています。
・『わたしの叔父さん』(コンペティション)
矢田部:デンマークの農村地域で小さな酪農を営んでいる叔父さんと姪御さんの話です。年老いて体の自由がきかなくなった叔父さんを、姪御さんが優しく面倒をみています。ふたりの関係を静かに淡々と描いており、その様子を観ているだけで幸せなんですが、姪御さんは自由になりたいという思いもあります。おじさんの面倒もみないといけないなかで、どんな選択をとるのか。本当に胸が締め付けられるような、感動的で美しい作品です。
・『i -新聞記者ドキュメント-』(日本映画スプラッシュ)
矢田部:今年、日本映画の『新聞記者』がヒットしました。ある新聞社の女性の記者をモデルにしたフィクション映画で、そのモデルになった東京新聞社会部記者・望月衣塑子さんに森 達也監督が密着したドキュメンタリーです。彼女が取材をする姿を通じて今の日本が見えてくる。さまざまな障害や壁に当たりながらも、取材を敢行していく望月さんの姿が面白いです。個性の強い新聞記者に監督自身がどのように向き合っていくか、という視点も面白いです。
■日本の女性監督の注目作品
今は、世界中で女性監督の作品を増やそうという動きがある。そこで、「第32回東京国際映画祭」で上映される、日本の女性の監督の作品を2本紹介した。
・『ミセス・ノイズィ』(日本映画スプラッシュ)
矢田部:天野千尋監督の作品です。隣人の音がうるさくてトラブルになってしまう、という作品ですが、途中で話にツイストが非常に効いています。サプライズがいくつもあるほか、SNSなどの現代の問題も切り取っています。
玄理:主演の篠原ゆき子さんは、たまにお会いします。とても真面目な女優さんですよね。
・『タイトル、拒絶』(日本映画スプラッシュ)
矢田部:山田佳奈監督の作品です。セックスワーカーの人々の偶像劇です。
玄理:セックスワーカーがヒロインのインディーズ映画はこれまでもありましたが、男性監督だったことが多くて、女性が描くセックスワーカーが主人公の話ってどういう感じなんだろうっていうのは楽しみですね。
矢田部:「女性の目線から見るとこういうことだよな」と、私自身にも刺さる場面がありました。監督は演劇畑の出身で演出が非常にこなれている上、映画的な魅力もしっかり引き出しており、新人監督としては驚くようなクオリティです。
最後に、矢田部さんに「海外に紹介したい日本の作品」を挙げてもらった。
・『猿楽町で会いましょう』(日本映画スプラッシュ)
矢田部:若いふたりのオーソドックスな青春物語ですが、新しい日本のフレッシュな男女を描いています。ふたりの若手の俳優の魅力が非常に溢れているので、今後の日本のスター俳優を海外の皆さんにも発見してもらいたいと思っています。
玄理:読者モデルとフォトグラファーという設定も今っぽいですね!
【関連記事】金子大地×石川瑠華は「みずみずしく、自由で美しい」 映画『猿楽町で会いましょう』舞台挨拶をレポート
「第32回東京国際映画祭」では、コンペティション部門の審査委員長としてチャン・ツィイーも来日。話題の映画祭を、ぜひチェックしてみてほしい。
【「第32回東京国際映画祭」公式ホームページ】
J-WAVE『ACROSS THE SKY』は"世界と繋がるラジオ"をコンセプトに掲げている。今回、紹介したワンコーナー「WORLD CONNECTION」では、様々な国の最新カルチャーの今をお届けしている。ぜひチェックしてみてほしい。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
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【番組情報】
番組名:『ACROSS THE SKY』
放送日時:毎週日曜 9時-12時
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/acrossthesky/
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