5月6日(月・祝)にオンエアされたJ-WAVEの特番『J-WAVE GOLDEN WEEK SPECIAL EXCITED BY INNOVATION』(ナビゲーター:サッシャ、川田十夢)。「最高にワクワクする未来にタッチ!」をテーマに、さまざまな分野のゲストを招いて、それぞれのシーンの未来について訊きました。
14時台には、ゲームAI開発者・三宅陽一郎さんが登場。AI(人工知能)がもたらすゲームの未来について訊きました。
■ゲームAI第一人者が語る進化
最近のゲームAIは登場人物だけではなく、ゲームを監督するAIなどが存在しているそうです。
三宅:キャクラターやモンスターにはそれぞれの知能が入っていますが、彼らは勝手に動いて判断するので収集がつかなくなります。ゲームはエンターテインメントなのでユーザーを楽しませなければならない。それを監督するメタ視点のAIが「プレイヤーをイジメすぎ」「戦うにしても逃げ道を作ってあげて」と演出します。それを「メタAI」と呼んでいます。楽しい場を作るためのゲームデザイナーの知能を、そのまま人工知能にしてゲームに埋め込んだものです。
昔の小さなゲームは、ゲームデザイナーが把握できていたためルールを積み重ねていました。しかし、現在の大規模なゲームではそれが不可能になり、監督するAIを実装することでバランスをとるようになりました。
また、20年前に発表されて一世を風靡した育成シミュレーションゲーム『シーマン ~禁断のペット~』の会話技術が、今になって改めて人工知能学会で注目されていると三宅さんは話します。
三宅:今のビッグデータで学習させても自然な会話ができないのに、『シーマン』が20年前になぜできていたのか、と話題になっています。会話をうまく見せるテクニックが『シーマン』にはあったんです。
サッシャ:何がすごかったんですか?
三宅:開発者の斎藤由多加さんに訊いた話では、『シーマン』はプレイヤーの声が聞こえないと、「大きい声で言ってください」と言っていたのをやめて「あ?」って言わせたそうです。会話の主導権を全てシーマン側に持ってくる。受け身だとそれほど賢くないので、今の人工知能もできないんです。先に主導権を取っちゃうようにしたんです。
サッシャ:あの高圧的な感じは技術の限界を逆に利用したからなんですね。
三宅:そこがゲームデザイン上の天才的なところですね。
川田:斎藤さんは今、日本語AIの研究をされてますよね。
三宅:「シーマン人工知能研究所」というのを作られていて、英語がペラペラな方なんですけど、あえて日本語の面白さを追求して、日本語会話の研究を九州大学とやられていますね。
■日本も世界に追いついた?
ゲームが進化していくなかで、日本のゲームAIは現在どのような状況なのでしょうか。
三宅:日本は5年前までは大きく遅れていましたが、欧米のゲームAIの発展の行き詰まり、ゲームのスケールを大きくする「オープンワールド」のなかで、ゲームAIの技術がストップしてしまったんですね。その間に日本がキャッチアップしました。また、ゲームエンジンが無償化されて、プロでなくてもゲームエンジンをダウンロードできるので、ある意味、AI技術が民主化したという感じです。
現在はディープラーニングなどの学習進化アルゴリズムをゲーム業界に持ち込んでいるところで、この技術がもたらす進化について三宅さんは以下のように解説します。
三宅:ゲームAIは、今はデザイナーが手でグラフを作ったりスクリプトを書いている段階ですが、ディープラーニングの場合は、信号だけを与えることでゲームデザイナーがよいと思う行動を学習していく方法に変わっていくと思います。
川田:たとえば、プレイヤーとしての習熟を敵キャラクターに与えちゃうということですか?
三宅:そうですね。敵キャラクターは時代劇でいうやられ役なので、うまくプレイヤーにやられてあげたり、格闘ゲームではなるべく体力差が少ない状態で負けてあげたり、そういう形のゲームならではの学習の仕方が探求されています。
川田:「やっと倒せた」という感覚がマイニングされている。
三宅:絶妙な調整ができる可能性が高くなる反面、チューニングが求められます。あと、ユーザーの強さやプレイスタイルに合わせてゲームAIが違う学習をする可能性もあるので、ユーザーごとに少しずつゲームが変わってくる可能性があります。
三宅さんは番組発のデジタル・クリエイティブフェス「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2019」(イノフェス)に出演予定です。詳しくは公式ホームページをチェックしてみてください。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『J-WAVE GOLDEN WEEK SPECIAL EXCITED BY INNOVATION』
放送日時:5月6日(月・祝)9時-17時55分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/holiday/20190506/
14時台には、ゲームAI開発者・三宅陽一郎さんが登場。AI(人工知能)がもたらすゲームの未来について訊きました。
■ゲームAI第一人者が語る進化
最近のゲームAIは登場人物だけではなく、ゲームを監督するAIなどが存在しているそうです。
三宅:キャクラターやモンスターにはそれぞれの知能が入っていますが、彼らは勝手に動いて判断するので収集がつかなくなります。ゲームはエンターテインメントなのでユーザーを楽しませなければならない。それを監督するメタ視点のAIが「プレイヤーをイジメすぎ」「戦うにしても逃げ道を作ってあげて」と演出します。それを「メタAI」と呼んでいます。楽しい場を作るためのゲームデザイナーの知能を、そのまま人工知能にしてゲームに埋め込んだものです。
昔の小さなゲームは、ゲームデザイナーが把握できていたためルールを積み重ねていました。しかし、現在の大規模なゲームではそれが不可能になり、監督するAIを実装することでバランスをとるようになりました。
また、20年前に発表されて一世を風靡した育成シミュレーションゲーム『シーマン ~禁断のペット~』の会話技術が、今になって改めて人工知能学会で注目されていると三宅さんは話します。
三宅:今のビッグデータで学習させても自然な会話ができないのに、『シーマン』が20年前になぜできていたのか、と話題になっています。会話をうまく見せるテクニックが『シーマン』にはあったんです。
サッシャ:何がすごかったんですか?
三宅:開発者の斎藤由多加さんに訊いた話では、『シーマン』はプレイヤーの声が聞こえないと、「大きい声で言ってください」と言っていたのをやめて「あ?」って言わせたそうです。会話の主導権を全てシーマン側に持ってくる。受け身だとそれほど賢くないので、今の人工知能もできないんです。先に主導権を取っちゃうようにしたんです。
サッシャ:あの高圧的な感じは技術の限界を逆に利用したからなんですね。
三宅:そこがゲームデザイン上の天才的なところですね。
川田:斎藤さんは今、日本語AIの研究をされてますよね。
三宅:「シーマン人工知能研究所」というのを作られていて、英語がペラペラな方なんですけど、あえて日本語の面白さを追求して、日本語会話の研究を九州大学とやられていますね。
■日本も世界に追いついた?
ゲームが進化していくなかで、日本のゲームAIは現在どのような状況なのでしょうか。
三宅:日本は5年前までは大きく遅れていましたが、欧米のゲームAIの発展の行き詰まり、ゲームのスケールを大きくする「オープンワールド」のなかで、ゲームAIの技術がストップしてしまったんですね。その間に日本がキャッチアップしました。また、ゲームエンジンが無償化されて、プロでなくてもゲームエンジンをダウンロードできるので、ある意味、AI技術が民主化したという感じです。
現在はディープラーニングなどの学習進化アルゴリズムをゲーム業界に持ち込んでいるところで、この技術がもたらす進化について三宅さんは以下のように解説します。
三宅:ゲームAIは、今はデザイナーが手でグラフを作ったりスクリプトを書いている段階ですが、ディープラーニングの場合は、信号だけを与えることでゲームデザイナーがよいと思う行動を学習していく方法に変わっていくと思います。
川田:たとえば、プレイヤーとしての習熟を敵キャラクターに与えちゃうということですか?
三宅:そうですね。敵キャラクターは時代劇でいうやられ役なので、うまくプレイヤーにやられてあげたり、格闘ゲームではなるべく体力差が少ない状態で負けてあげたり、そういう形のゲームならではの学習の仕方が探求されています。
川田:「やっと倒せた」という感覚がマイニングされている。
三宅:絶妙な調整ができる可能性が高くなる反面、チューニングが求められます。あと、ユーザーの強さやプレイスタイルに合わせてゲームAIが違う学習をする可能性もあるので、ユーザーごとに少しずつゲームが変わってくる可能性があります。
三宅さんは番組発のデジタル・クリエイティブフェス「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2019」(イノフェス)に出演予定です。詳しくは公式ホームページをチェックしてみてください。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『J-WAVE GOLDEN WEEK SPECIAL EXCITED BY INNOVATION』
放送日時:5月6日(月・祝)9時-17時55分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/holiday/20190506/
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