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よく歌のモチーフになる「風」、ルーツはボブ・ディラン? 佐藤竹善×尾崎裕哉がスゴさを語る!

よく歌のモチーフになる「風」、ルーツはボブ・ディラン? 佐藤竹善×尾崎裕哉がスゴさを語る!

J-WAVEで放送中の番組『MITSUBISHI JISHO MARUNOUCHI MUSICOLOGY』(ナビゲーター:グローバー)。7月21日(土)のオンエアでは、「FUJI ROCK FESTIVAL '18」に7月29日(日)のヘッドライナーとして出演するボブ・ディランを特集。14日(土)オンエアの前編に続き、後編の今回もSING LIKE TALKINGの佐藤竹善さん、尾崎裕哉さんにボブ・ディランの魅力を伺いました。

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■「サビがくるまで何の曲かわからない」

今回はゲストのおふたりに、ディランのライブ体験について訊きました。尾崎さんは、2014年の来日公演をZepp DiverCityで観たそうです。

尾崎:味しかなかったです。
佐藤:観に行った人みんな言ってましたよ。サビがくるまで何の曲かわからないって(笑)。
尾崎:ゴニョゴニョしてるんですよね。『Like a Rolling Stone』って言ったのかな?とか。
グローバー:すぐにわからないのがいいんですよね。今のボブ・ディランしか歌えない歌が連発だったという。
尾崎:間違いないですね、それは。
グローバー:ライブで、どういうところに魅力を感じましたか?
尾崎:佇まいがきれいなんですよ。スラーッと、そのときは白いセットアップで、ハットを斜めにかぶって、右足前に立ってずっと45度で、ずっとそのままなんですよ、ライブ中。たまに足を左に変えるかなくらいで。佇まいで勝負して、踊らなくていいという、“エンターテイメントさせようとしない、エンターテイメントをしない、聴かせる音楽”ってこういうことなんだと。めちゃめちゃカッコよかったです。

ディランがライブで何を歌っているのか、曲がわからなかったと続けます。

尾崎:予習した上で、大友博さんというボブ・ディランのライナーノーツとかも書いてる音楽ライターと一緒に観てたんですけど、セットリスト見るまで何の曲かわからなかったんですよ。でも、大友さんが「こういうもんなんだよ」と。アンコールの『All Along The Watchtower』をやってようやく「あ、これ!」となったと。そこで「ディランのライブ来た!」みたいな(笑)。
佐藤:ここにいる「今」を捕まえるしかない。ブルース・リーと一緒ですよ、「Don’t think. Feel!」(笑)。あと生の佇まいを感じたというのは、のちのちわかることが多いんじゃないですか。ボブ・ディランが生きているときの時代を生きたというのは、すごいことですよ。僕たちモーツァルトとかベートーヴェンとかバッハとは、時代が重なっていないですから。彼らのことを絵でしか知らないように、もし50年遅く生まれていたらボブ・ディランはYouTubeの中の人ですよ。だから「なにか」だけを受け取って自分の今後の人生で「あれは何だったんだろう?」っていう、答えが出ていくんでしょうね。


■100人いたら100の解釈がある、歌詞の世界

続いて、ボブ・ディランの好きな歌詞について尾崎さんに訊きました。

尾崎:『Don't Think Twice, It's All Right』の2番だったかな。「I gave her my heart but she wanted my soul」(心を捧げたが おまえは魂を欲しがった)っていうフレーズ。意味はわからないんですよ、何を言いたかったのか。でもなんかグッとくるみたいな。解説者がいると思うし、それぞれの解釈はあると思うんですけど。でもボブ・ディランも、「美しい」とか「いい」と思えば、それで良いんだって言ってたんですよ。だから意味は100%理解してないけど、このフレーズ、グッっとくるな、なんか深そう……みたいな感じを受けてますね。
佐藤:100人いたら100の解釈だと思うんですよね。ボブ・ディランに限らないんですけども、特にボブ・ディランはそういうのが顕著というか、元祖のひとりというか。それまで音楽は普通にわかりやすくて、書いてるままで楽しくて、その奥に映画のような舞台のような、「これは何を言わんとしてこのカットなんだろう」とか、「これは何を言わんとしてこの間合いなんだろう」っていうのを言葉で表現するようになっていく時代の筆頭としていますよね。

さらに尾崎さんは、ディランが多くの曲に与えた影響についても話しました。

尾崎:「風」っていうモチーフが曲に使われるようになったのは、たぶんボブ・ディランの影響なんじゃないかと思ってて。自分も、新宿の街でホームレスがハンバーガーショップのサイネージを見ながら歩いているの見て、風をモチーフにして書いた曲があるんです。そこに新宿の風が流れてた。その「風」って、曲にしやすいんです。今思えばボブ・ディランがルーツなんだろうなって思いますね。
佐藤:『風に吹かれて』という曲をボブ・ディランが出していなかったら、「ただ風が強い街なんだろうな」ってなっちゃうと思うんですよ。でもボブ・ディランとか、いろんな繋がりがあるから諸行無常な感じが出るんですよね。

改めて、ボブ・ディランの魅力について佐藤さんに訊くと、「シンプルさの美学」だと話しました。

佐藤:極めてシンプルなメロディだけで成立してるんですよね。だからこそ、同じコードなのにメロディの音が一カ所だけ上がったり下がったりするところが、ものすごく美しく響いてきたりする。それは“わかったフリ”でやっちゃうと、陳腐なものになってしまう。ボブ・ディランは、心から自分の中に言葉とメロディを感じて表現していたから、美しくなるのでしょう。メロディが最後に1回だけ下がることの必要性が、音楽的にも言葉的にもある……ということを、大人になって感じるようになりました。でも、子どものときに感じたり、意味がわからなくてもその両方が満たされているのが非常に理想的ですよね。あと85万回生まれ変わったら『風に吹かれて』の「か」ぐらい書けるくらいになればいいなという、そういう世界ですね。


■ボブ・ディランのキャッチコピーは…

最後におふたりに、番組恒例のボブ・ディランのキャッチコピーを考えていただきました。

佐藤竹善:「ボブ・ディランとは『くさや』だ」

佐藤:尾崎くんも「いいんじゃないですか」と言ってくれました。先輩の傲慢さじゃないですよ。八丈島の人も大喜びですよ。
尾崎:この番組の前にも聴き込んできて、ちょっと拒絶感みたいなのが生まれていたんですけど、今日お話したら「くさやだ。くさやでいいんだ」と安堵感が……。フジロックに行って聴く人もこの安堵感を感じてほしい。

尾崎裕哉:「ボブ・ディランとは『感じるもの』」

尾崎:やっぱりボブ・ディランの影響は、エド・シーランやジェイク・バグだったりトム・オデールだったり、今もいろいろ生きていると思うんですよ。エド・シーランも、ボブ・ディランから感じたものがあって、今のエド・シーランになったのだと思う。自分も見たものを感じて、自分の中にボブ・ディランを入れていかなければいけないという意味では、感じること。難しく考えすぎると理屈ばかりになってしまうので、それってもったいないと思うんですよね。

まもなく「ジロックフェスティバル '18」に登場するボブ・ディラン。ライブに行く人は、彼のパフォーマンスを肌で感じてみてはいかがでしょうか?

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【番組情報】
番組名:『MITSUBISHI JISHO MARUNOUCHI MUSICOLOGY』
放送日時:土曜 17時-17時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/musicology/

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