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Billie Eilishの「歌詞に注目な楽曲」と「ベースラインに惹かれる楽曲」は?

Billie Eilishの「歌詞に注目な楽曲」と「ベースラインに惹かれる楽曲」は?

音楽プロデューサーの田中隼人と映画/音楽のMCである奥浜レイラがBillie Eilishとの出会いや魅力について語った。

2人が登場したのは6月11日(土)に放送されたJ-WAVEの番組『MITSUBISHI JISHO MARUNOUCHI MUSICOLOGY』(ナビゲーター:グローバー)。番組ではBillie Eilishを特集した。

Billie Eilishとの出会い

まず田中と奥浜はBillie Eilishとの出会いについて語ることに。田中が最初に聴いた曲はKhalidとのコラボ曲『lovely』だったそう。

田中:仕事柄、普段SpotifyとかでUSチャートとかバイラルチャートとかを頭から何時間もかけて流し聴きするみたいな習慣があるんです。

グローバー:その聴き方はおそらく僕ら音楽好きが聴くのとはちょっと違う訳ですよね?

田中:ただ音楽聴いてるっていうよりは「今日はこういうのを探してみよう」みたいなテーマをある程度決めて聴いていくということをしてます。

グローバー:自分の作りたい音楽になにか新しくて良いヒントないかなと。

田中:まさにそういう聴き方をしていたときに『lovely』を聴いて、こんなに薄いオケで歌だけで表現するような楽曲があるんだなと思ってびっくりして調べたら「あれ? もしかしてこの子のアルバム聴いたことあるかもな?」と思って。おそらく最初のEPを聴いたことはあったけど、そのときはまったく刺さらずにスルーしてったものがこの『lovely』で初めて引っかかって、きちんと聴き始めました。

グローバー:奥浜さんは出会ったときのインパクト覚えてますか?

奥浜:多分田中さんと同じようにチャートに入ってきてたの聴いたんですけど、私の場合は『Ocean Eyes』でした。シンプルではあるんですけど「これだけイノセントで胸の奥のほうに刺さってくるみたいなこの魅力は一体何だろう?」と思って。あとあと知ったんですけど『Ocean Eyes』はBillieが音楽よりずっとダンスに夢中だったころにダンススタジオの先生が「踊るためになんか曲作ってくれない?」って、お兄ちゃんのFINNEASとBillieにお願いをして、それを先生に共有するのに「クラウドに上げた方が先生聴きやすくない?」ってサウンドクラウドに上げたらそれがめっちゃバズってしまった。1日ですごくヒットしてしまい「あれ? 先生に聴かせるはずだったのにおかしいな」みたいな(笑)。

ウィスパーボイスの魅力

続いてはBillie Eilishの歌声に関する話題に。奥浜はいちばん惹かれるポイントについて「隣に座って歌っているような、耳元で囁くようなこのウィスパーボイス」だと語った。

奥浜:これがやっぱり彼女の歌いたい内容、心の内とすごくリンクしているっていうところなんじゃないかなあと思いますね。そこで最近だとちょっと張ったりとかシャウトまでいかないんですけど少しいつもよりは張り目で歌ったりするんですが、ドキュメンタリー映画のなかで彼女が声を張ることに対してちょっと抵抗があるそぶりを見せるんですね。張ったことによってファンから叩かれるみたいな言い方をしてたんですよ。自分の歌の持ち味からなかなか抜け出せない。ウィスパーボイスで戦ってきたところを張るっていうことに対して一つ壁があるみたいなところを見せてたんですけど、でも今回の『Happier Than Ever』っていうアルバムではそこを突破するような曲も出てきてるのでそこがまた新境地なのかなと聴いてました。

田中:僕はちょっと前のアルバムの『i love you』っていう曲なんですけど、楽曲自体ものすごくよくて、ちょっとThe Smashing Pumpkinsの暗い曲のニュアンスを感じたんです。ウィスパーから入って本当に彼女の声を一番感じられるなと思ったのは、だいたい歌って最終的なトラックで作業するときにリバーブと言われるカラオケのエコーみたいな声を少しぼかすエフェクト処理をするんですけど、それがゼロで本当に耳元でBillieが囁いてるような歌い方をしているんです。いちばん彼女のウィスパーボイスの魅力的な部分を聴けるいわゆるASMR的な曲で、しかもこのサビになったときに歌が2本になって左右の耳から聞こえる仕掛けになってるんです。

ベースラインに惹かれる楽曲TOP3

田中は『ベースラインに惹かれる』をテーマに、Billie Eilishの楽曲を3曲ピックアップした。

3位:『xanny』
田中:Billie Eilish以降、ベースラインというよりはベースの音像というか、低音の音像の作り方が少しずつ変わってきているというのがあります。低いところから高いところまで人間が聞き取れる可聴領域ってのがあるんですけど、その比較的真ん中から下、もちろん低い所にいるんですけど、でもそれってあくまでもキックとの兼ね合いで他の楽器を邪魔しないように、そしてベースラインがある程度聞き取れるようにみたいなバランスよく作られることが多かったんです。だけど特にこの『xanny』という曲はベースの音デカすぎて「家のスピーカーが壊れるんじゃないか」ぐらいのベースの音量なんですよ。これはもう僕ら音楽の仕事してる人の発想からするとまずやらないというかアンバランス過ぎる。ただこれはこの曲のテーマとしてこれぐらいこのベースだけが出てるような空間を作りたいというかきちんとこういう風に聴かせるっていうメッセージがきちんと理由があるなと思うんです。ただとにかく歌よりデカイし、本当サビだけなんですけどサビの前はなんかカントリー調のすごい穏やかな本当にリンゴスターが叩いてるみたいなフィルが入るんですけど、その後のこの極悪ベースが出てきて歌も聴こえなくなるという。これはびっくりしました。

2位:『Oxytocin』
田中:これは初めて聴いたときは「昔のマドンナだな」と思ったんです。この楽曲自体ワンコード、ずっと同じコード進行なんです。ということはベースラインもずっと一緒なんです。いわゆるテックハウスみたいな。クラブミュージック用に作ったハウスと全く同じ構造をしているんだけど、Billie Eilishがきちんと歌をのせることでこんなにもちゃんと展開を作れるし、ずっと聴いてられる曲になるんだなっていうのがすごいなと思いました。

1位:『bad guy』
田中:これも本当にシンプルなオケでもう前半はベースとドラムと歌だけ。途中ドロップの部分はちょっとシンセが出てくるっていうだけの構成なんですけど、本当にこれはもうベースラインだけで楽曲を持ってくような曲で、この曲は唯一俺が作ったことして欲しいと思った楽曲ですね(笑)。多分日本のレコード会社だったりとかみんなが衝撃を受けて「これをやってみたい!」と思わせるぐらいのパワーを持った楽曲だったんじゃないかなと思います。

「飛躍」を感じる歌詞の楽曲は

奥浜は「歌詞に注目して欲しい」をテーマに楽曲を3曲セレクトした。

3位:『Your Power』
奥浜:Billieがいろいろな力について話すときに『Your Power』の話をするんですよ。たとえば政治の話であるとか社会のなかで暴力的な事件が起きたときに「あなたのパワーを正しい方向に使えば世の中ってもっと違うほうに動くんだよ」っていうところにも、この『Your Power』を用いて語ったりしてるので、個人的な出来事が社会を歌っているという意味にも通じるのかなと思って選びました。

2位:『Therefore I AM』
奥浜:タイトルは「我思うゆえに我あり」という哲学者のデカルトの言葉を引用してるんですけど「自分のままで生きたい」という、当たり前のことなんだけど意外と社会の中でそれを実現するのは難しいよねっていうのは彼女が常々言っていることで。たとえば体型のことを人からジャッジされたり、彼女が太っているとか痩せているとか見たこともないのに憶測が飛んだり、そういうところをもう全部突っぱねるような曲なんです。MV の中でも自分の思うままにいろんなものを食べたり「それの何がいけないの? あなたに何の関係もないでしょう?」というところもなんかこの曲には詰まっている気がして。彼女の最近の体型に関する発言であるとか近年個人的に発信していることともつながるタイトルであり内容かなと思いました。

1位:『my future』
奥浜:Billie EilishってZ世代、ティーンエイジャーを中心として若い世代の人たちが今抱えている例えば「孤独」であるとか銃乱射のこともありますけど、事件の恐怖であるとか、たとえば自分のメンタルヘルスとの向き合い方であるとか、地球温暖化とか気候危機とかこの先の未来を見ると結構絶望感、不安がありますよね。また身近なところで言うと恋愛だったり人間関係の複雑さとか煩わしさみたいなものをまた一から経験していく世代でもあって、そのことを大人たちはとても幼いとか若い人たちのこと軽視しがちなんです。だけどそこをBillieが歌うことによって同じ悩みだったりダークな部分を抱えてる人と橋をかけてつながっていくみたいな役割をもう間違いなくBillieは体現している。そのダークなところを歌ってきた、心の闇を歌ってきた彼女が「それでも私は自分の未来に恋してる」と歌うところが、やっぱり飛躍したポイントかなと思います。『my future』はコロナでロックダウンが始まったばっかりのときに彼女が書いた曲なんですけど、そのときに「あなたたちの手のなかに私たちの未来ってちゃんとあるんだよ、だから自分たちで選ぶ権利であるとか自分で表現していく権利だったり、そういうものを自分の手でつかみ取っていこうね」みたいなメッセージも発言していて。コロナ禍やロックダウンで人種的な分断もありましたけど、そこにもこの『my future』は繋がっていた。彼女の個人的な思いであり社会だったというところが1位に選んだポイントです。

J-WAVE『MITSUBISHI JISHO MARUNOUCHI MUSICOLOGY』では、ゲストを迎え、1組の「レジェンド・ミュージシャン」をテーマに音楽談義を展開。放送時間は土曜の17時から。

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2022年6月18日28時59分まで

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毎週土曜
17:00-17:54