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災害時に活躍! 数時間で建てられる簡易住宅「インスタントハウス」とは?

災害時に活躍! 数時間で建てられる簡易住宅「インスタントハウス」とは?

被災地でも簡単に建てられる「インスタントハウス」の開発秘話や、これまでの活用事例について、名古屋工業大学の北川啓介教授が語った。

この内容をお届けしたのは、3月11日(火)放送のJ-WAVE『JAM THE PLANET』(ナビゲーター:吉田まゆ、グローバー)のコーナー「TODAY’S SPECIAL」。

インタビューは、「インスタントハウス」の中から応じてもらった。ここではテキストで紹介する。

「なんで仮設住宅ができるまで、3カ月から6カ月もかかるの?」

東日本大震災から14年となった2025年3月11日。この日の『JAM THE PLANET』では、防災についてさまざまな観点から役立つ情報をあらためてお届けした。そのひとつとして取り上げられたのが、簡単、快適、プライバシーも守れる「インスタントハウス」だ。

発災後、被災者たちは避難所での生活を余儀なくされる。取材で何度も避難所を訪れたというナビゲーターの吉田は、「大変な生活をされている方が、本当に多かった」と振り返る。

そんな被災地の居住環境を画期的に改善してくれるのが、名古屋工業大学・北川啓介教授が開発した「インスタントハウス」。気球のように膨らませて屋根と壁を作り、内側に断熱材を吹き付けることで、わずか数時間で建てられる簡易住宅だ。建築コストも大幅に抑えられ、台風の影響も受けないほど風や雨にも強く、屋内用の「インスタントハウス」を使用すれば、体育館内でもそれぞれの部屋を確保できる。

まずは北川教授に、「インスタントハウス」開発のきっかけとなった、東日本大震災での話を訊いた。

北川:新聞記者さんに同行して、石巻市の避難所を訪ねたことがあるのですが、中は人が生活するような空間とはかけ離れていて、胸を打たれました。その後、避難所を見せていただいているときに、小学3年生と4年生の男の子たちが声をかけてきて、私をグラウンドのほうに連れて行ったんです。そこで、外に指を向けながら「なんで仮設住宅ができるまで、3カ月から6カ月もかかるの?」「大学の先生だったら、来週、建ててよ」と言ってくれたんですね。それがきっかけで、そのあと約5年半かけて開発を進めてきました。(開発するうえで)大切にしていたのは、“ダウンジャケット”です。(ダウンジャケットは)空気を多分に含んでいて断熱性が高いので、それをちょっと硬くして丈夫な形状、構造にすることで、家ができないかなと思い、実験を繰り返しておりました。そうしたら、いまの「インスタントハウス」の原型として、先がちょっととがったフランスパンのようなものができあがりました。

能登半島地震の活用事例

吉田:北川先生が5年半かけて開発を進めてきた「インスタントハウス」は、2024年の能登半島地震でも大活躍したそうです。北川先生は能登半島地震の発生を聞くと、すぐに「インスタントハウス」を車に積み込んで準備をし、能登に向かったといいます。

北川:(能登半島地震発生)翌日には被災地に入っておりました。いろいろな避難所を回っているなかで、「輪島中学校の避難所がすごく寒くて人も多いので、何かできることをしていただければ」というお話をいただきすぐに向かい、1月3日の昼間くらいから、屋内用の「インスタントハウス」を体育館の中に造り始めました。そうしたら、最初のふたつの建物ができたときに、子どもたちが集まってきて「一緒に作ろう」と言ってくれたんですよ。そして、小学校3年生、1年生、年長さん、年少さん、3歳の女の子が一緒に作ってくれて、だいたい2時間くらいで6棟のハウスができました。そのとき、3歳の女の子が「おうちができた!」と、にこっとしながら大きい声で叫んでくれて。私は石巻の3年生、4年生のあの男の子たちのことを想い、「少しでも返せたな」と感じて、外に出て20分くらい涙を流しておりました。

吉田:先生が東日本大震災で感じた、非常に悔しい想い。それが開発への熱意、時間にも関わったと思います。一報を聞いてすぐに準備をし、積み込むことができ、なおかつ子どもたちも手伝えるくらい造りやすいハウスを開発されたということが、いまのコメントでおわかりいただけたかと思います。さらに能登半島地震では、仮設住宅としてだけではない、北川先生も予期していなかった使われ方をされ始めたといいます。

北川:数週間から数カ月って経ってくると、街のなかも少しずつ変容してくるんですね。たとえば、能登半島のほうでは解体が進んで、いままで愛着を持っていたおうちが減ってきて、「自分がいま、どこに立っているかがわからなくなっちゃう」とおっしゃる方もいらっしゃいました。そういったなかでお話をいただいて、白い屋外用の「インスタントハウス」をお建てする。そうすると、若い人からご高齢の方までが夜な夜な集まってきて、ちょっとお酒を飲んだりしながら、未来の街のことをもう一度語り合う場になっていたりするんですよ。

吉田:災害が起きたあとも、コミュニケーションを取りたくなると思います。「インスタントハウス」は、もともと避難所としての用途を目指していたかと思いますが、それがだんだんコミュニティとなっていく、そんな素敵な発見があったということです。

トルコ・シリア地震でも活躍

被災地で「インスタントハウス」を建てるなかで、北川教授はおもしろい発見をしたという。それは、白い「インスタントハウス」の外側に、高確率で絵が描かれるということだ。

北川:幼稚園の子どもたちが描いてくれたり、ボランティアのみなさんがいろいろ描いてくださったり。建物を通して、そういう“お気持ち”をお届けできています。(「インスタントハウス」は)全国のみなさんからの温かいご寄付を募って活動しているので、そういったお気持ちとともにみんなでおうちを造って、住んで、使いこなしていくといったことは、すごく大事だなと思います。

吉田:私もいろいろな災害現場を取材しましたが、災害後の街は色がなくなってしまうんですね。ですから、ちょっとグランピングっぽい見た目で、その外側に子どもたちが描いてくれる絵がある「インスタントハウス」は、本当に素敵な復興の第一歩になるのではないかなと思いました。実はこの「インスタントハウス」は、日本だけではなく2023年2月に発生したトルコ・シリア地震でも活躍しました。北川先生によると、2000年の段階で、世界中でそもそも家に住めない人は10人にひとりだったのが、紛争や気候変動などもあり、最近は8人にひとりに近づいてきてしまっているそうです。そうなると「防災を考える」ということは、いま世界中で起きている戦争と地続きと言えるかもしれません。

「インスタントハウス」に関しての詳しい情報は、北川啓介研究室の公式サイトまで。

『JAM THE PLANET』内のコーナー「TODAY’S SPECIAL」では、いま注目すべきニュース&トピックスを掘り下げる。放送は月曜~木曜の19時38分ごろから。

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