
(画像素材:PIXTA)
J-WAVE『JAM THE PLANET』ナビゲーター・吉田まゆが、ユニセフのガイドラインや自身の家庭での経験をもとに「子どもに戦争のニュースをどう話すか」を語った。
この内容をお届けしたのは、7月1日(火)放送のJ-WAVE『JAM THE PLANET』(ナビゲーター:吉田まゆ、グローバー)のコーナー「TODAY’S SPECIAL」だ。
吉田:まず、「子どもがいま知っていること、感じていることを確認する」。いろいろな手段で子どもたちが情報を入手できてしまう時代なので、まずは現状を確認しましょう。ユニセフは、たとえば家族での食事中や日常会話の延長で、子どもが知っていること、どのように感じるのかを尋ねることが大事だとしています。もし、ご自身で判断できる誤解やフェイクニュース、ミスインフォメーションがあれば訂正する機会にもなります。ほかにも、何を心配しているのか聞き出して「あなたの周りは、いまは大丈夫だよ」と安心させることも大切だとしています。
続いてのポイントは「年齢に適切な対応を取ること」。子どもにも知る権利がある一方で、大人は子どもを不安から守る必要がある。幼い子どもには絵で示したり、わかりやすい言葉を使ったりするなど、年齢に応じた方法で説明をすることも大切だという。
3つ目のポイントは「支え合う行動に注目すること」。英語では“ヘルパー”に焦点を当てるとあるが、具体的にはどのようにすればよいのだろうか。
吉田:平和教育をするためには、戦争の話は避けられないと思います。しかし、子どもと話をするうえで、暗い話ばかりはしたくない。そこで、救急隊員やボランティア、ジャーナリストといった“ヘルパー”の活動から、若者が平和を呼びかけたくなるような事例を探して、「いろいろな人が、戦争で困っている人たちを助けるために手伝っているんだよ」というところに焦点を当てることで、偏見ではなくて共感を広める。子どもと話すときには「どちらかが悪い」という表現は避け、たとえば「家族と離れて住む子どもたちがいるよね。つらいよね」という共感ベースで話をすることが大事だと、ユニセフも説いています。
吉田:シリアスな話は子どもが不安な状態で終わらないように、ポジティブな話題やトーンで終わること。たとえば、先ほどのヘルパーについて話すのもよいかもしれません。子どもはストレスを受けたときに、大人とは違う反応が出ます。幼い子どもは普段と違う反応を示したり、甘える傾向が強くなったりすることもあります。思春期の子どもの場合は、不安を感じたときに激しい悲しみや怒りとして示すことがあるので、継続的に子どもの状態を確認して、ケアし続けることが大事になります。
最後に紹介したポイントは「ニュースの過剰な露出を制限すること」だ。
吉田:CNNで推奨されている「大人のニュース接触時間」は1日30分以内で、これ以上触れると、メンタルヘルスに影響が出る可能性があります。そのため、幼い子どもの周りではなるべくニュースを消してもよくて、子どもがある程度の年齢に達したら「いま、何が起きているんだろう」「どのニュースソースが信頼できるんだろう」「どんな情報があるのかな」と、話す機会に持っていくのもよいでしょう。いま、ガザのことなど本当にいろいろあるなかで「世間の関心をいかに長く向けるのか」という点が重視されていますが、短い時間で(多くの)情報を収集するとバーンアウトしてしまいます。それを避けながら、問題に継続的に関心を向けるためには「ニュースをたまに切ってもいい」ということを、ユニセフは推奨しています。
3年ほど前から、家庭で「日常会話の延長で平和教育の話をする」という取り組みを実践している吉田は、最近、小学生になった長男との会話のなかで「こちらの意図が伝わっていた」と感じる瞬間があったと語る。
吉田:長男に「ママ、青空教室って知っている?」と急に訊かれて。校長先生のお話に出てきたようなのですが、そこから「なぜ人は戦争をするんだろう」「戦争とは何か」「平和って何だろう」と、いろいろな話をしていきました。なるべく重くならないように話していたのですが、「なぜ人は戦争をするのか」という質問に対する長男の答えは、「嫌いな国を倒したいんじゃない? あと、パワーを示したいんじゃない?」でした。続けて長男は「でもパワーや権力は、人を殺したり、傷つけたりしなくてもちゃんと見せられるよね?」と言ってきたのですが、家庭でずっと教え続けていたことが伝わっていたようで、彼の言葉に感心しました。また、私が「平和は守っていかなければ崩れちゃうけど、どうやって守るんだろうね?」と言ったときに、長男がサラっと「『平和が大事』『戦争はダメ』だと、いろいろな人にずっと言えばいいんだよ」と答えたことがあり、育児で蒔いた種がポっと出たような気がした瞬間でした。
吉田:いちばん大切なのは、「国単位の悪者は作らない」ということです。「偏見ではなく、共感を広めましょう」というユニセフによる対話のヒントもご紹介しましたが、我が家では平和教育をするにあたって「将来、差別をしない子どもにしたいな」という想いをもっとも重視しました。人種やジェンダーを超えた、多様な時代を生き抜く現代の子どもたちだからこそ、非常に必要なマインドセットだと思っています。
そのためには、戦争について話すときに、国単位ではなく主語を小さくして会話をすることが重要だと吉田は語る。
吉田:わかりやすく言うと、たとえば「イスラエルが悪いんだ、ひどい」ではなく、「イスラエルのネタニヤフ首相が何をしている」、「ロシア」ではなく「ロシアのプーチン大統領という人が」、「テロリスト」ではなく「ハマス」というように、なるべく主語を小さくして、何をやっているかを具体的に落とし込みます。私は、主語を大きくして国単位で説明をしてしまうと、「悪い国」や「いじめられている国」という構造になってしまい、将来、その国の人たちに対して「悪い国から来た人たち」という差別をする人になりかねないなと思っています。もし子どもが「誰が悪いのか」と繰り返し聞いてくる場合は、なるべく個人レベルまで落とし込んで話し、さらに「ママはこのおじさんが悪い人だと思うけど、あなたはどう思う?」「なぜ、この人たちは攻撃したんだろうね?」と、個人的な意見を付け足したり、ひとつの視点に固執しすぎないようにしたりすることも、意識しています。
子どもたちが幼いころから、少しずつ平和教育を実践している吉田。“戦争”や“平和”の概念を教えるにあたり、「身近な状況や人物に置き換えること」も日々意識しているという。
吉田:2022年3月のウクライナとロシアの戦争に関する記事にも書いたのですが、「ビジュアライズしやすいよう動画・身近なものや人を使う」ということも大切だと思います。当時は、いまほど戦争の映像は飛び交っていなかったので、海外メディアのSNSアカウントにある短い動画レポートなど、いろいろな動画を使いました。ただ、この数年で戦争がちょっとずつ身近になってきているのも事実なので、必要以上の動画はいまは不要かもしれません。
言葉で説明する場合は「なるべく“自分事”に置きかえる」と吉田は話す。
吉田:「戦争が起きたら、あなたの学校が穴だらけになるかも」「いま、ごはんを食べているおうちも燃えてしまうかも」「パパやおじいちゃんのような、大人の男の人が戦争に行くことになるから、会えなくなってしまうよ」と説明をする。長男が4歳くらいのときに話したら、目に涙を溜めながら「戦争になったらパパに会えないんだ」「ママと弟も見つからないまま、ひとりでおうちを探すかもしれないんだ」「学校が攻撃されるのもいやだな」という言葉が自然に出てきたので、幼児にもこういった話は消化してもらえるのだと、個人的には実感しています。
家庭での平和教育のなかで「平和を維持するためには、“戦争”の話は避けて通れない」と痛感するという吉田は「子どもに何を学んでほしいかを、大人が明確に意識することが大切。まずは無理なく、根気強く、身近に感じさせるものや人を用いて、平和を伝えていってほしい」と、リスナーに呼びかけた。
今回、番組で紹介した、ユニセフによる子どもと戦争に関して話す際のガイドラインは、ユニセフの公式ホームページから詳しく知ることができる。
『JAM THE PLANET』内のコーナー「TODAY’S SPECIAL」では、いま注目すべきニュース&トピックスを掘り下げる。放送は月曜~木曜の19時38分ごろから。
戦争のニュースで子どもが感じる不安、どう取り除く?
ウクライナ侵攻やパレスチナ問題など、“戦争”が身近に迫る昨今、テレビや新聞だけでなく、YouTubeやSNSなどから、子どもたちにもさまざまなかたちで情報が届いている。このような状況を踏まえ、ユニセフは、子どもと戦争について話す際の「対話のヒント」を示している。ナビゲーターの吉田まゆが、その内容を紹介した。吉田:まず、「子どもがいま知っていること、感じていることを確認する」。いろいろな手段で子どもたちが情報を入手できてしまう時代なので、まずは現状を確認しましょう。ユニセフは、たとえば家族での食事中や日常会話の延長で、子どもが知っていること、どのように感じるのかを尋ねることが大事だとしています。もし、ご自身で判断できる誤解やフェイクニュース、ミスインフォメーションがあれば訂正する機会にもなります。ほかにも、何を心配しているのか聞き出して「あなたの周りは、いまは大丈夫だよ」と安心させることも大切だとしています。
続いてのポイントは「年齢に適切な対応を取ること」。子どもにも知る権利がある一方で、大人は子どもを不安から守る必要がある。幼い子どもには絵で示したり、わかりやすい言葉を使ったりするなど、年齢に応じた方法で説明をすることも大切だという。
3つ目のポイントは「支え合う行動に注目すること」。英語では“ヘルパー”に焦点を当てるとあるが、具体的にはどのようにすればよいのだろうか。
吉田:平和教育をするためには、戦争の話は避けられないと思います。しかし、子どもと話をするうえで、暗い話ばかりはしたくない。そこで、救急隊員やボランティア、ジャーナリストといった“ヘルパー”の活動から、若者が平和を呼びかけたくなるような事例を探して、「いろいろな人が、戦争で困っている人たちを助けるために手伝っているんだよ」というところに焦点を当てることで、偏見ではなくて共感を広める。子どもと話すときには「どちらかが悪い」という表現は避け、たとえば「家族と離れて住む子どもたちがいるよね。つらいよね」という共感ベースで話をすることが大事だと、ユニセフも説いています。
子どもを見守り、様子や気持ちの変化を汲み取って
吉田も「常に意識している」と語る4つ目のポイントは「会話の終わらせ方や継続的なケアを大切にすること」だという。吉田:シリアスな話は子どもが不安な状態で終わらないように、ポジティブな話題やトーンで終わること。たとえば、先ほどのヘルパーについて話すのもよいかもしれません。子どもはストレスを受けたときに、大人とは違う反応が出ます。幼い子どもは普段と違う反応を示したり、甘える傾向が強くなったりすることもあります。思春期の子どもの場合は、不安を感じたときに激しい悲しみや怒りとして示すことがあるので、継続的に子どもの状態を確認して、ケアし続けることが大事になります。
最後に紹介したポイントは「ニュースの過剰な露出を制限すること」だ。
吉田:CNNで推奨されている「大人のニュース接触時間」は1日30分以内で、これ以上触れると、メンタルヘルスに影響が出る可能性があります。そのため、幼い子どもの周りではなるべくニュースを消してもよくて、子どもがある程度の年齢に達したら「いま、何が起きているんだろう」「どのニュースソースが信頼できるんだろう」「どんな情報があるのかな」と、話す機会に持っていくのもよいでしょう。いま、ガザのことなど本当にいろいろあるなかで「世間の関心をいかに長く向けるのか」という点が重視されていますが、短い時間で(多くの)情報を収集するとバーンアウトしてしまいます。それを避けながら、問題に継続的に関心を向けるためには「ニュースをたまに切ってもいい」ということを、ユニセフは推奨しています。
3年ほど前から、家庭で「日常会話の延長で平和教育の話をする」という取り組みを実践している吉田は、最近、小学生になった長男との会話のなかで「こちらの意図が伝わっていた」と感じる瞬間があったと語る。
吉田:長男に「ママ、青空教室って知っている?」と急に訊かれて。校長先生のお話に出てきたようなのですが、そこから「なぜ人は戦争をするんだろう」「戦争とは何か」「平和って何だろう」と、いろいろな話をしていきました。なるべく重くならないように話していたのですが、「なぜ人は戦争をするのか」という質問に対する長男の答えは、「嫌いな国を倒したいんじゃない? あと、パワーを示したいんじゃない?」でした。続けて長男は「でもパワーや権力は、人を殺したり、傷つけたりしなくてもちゃんと見せられるよね?」と言ってきたのですが、家庭でずっと教え続けていたことが伝わっていたようで、彼の言葉に感心しました。また、私が「平和は守っていかなければ崩れちゃうけど、どうやって守るんだろうね?」と言ったときに、長男がサラっと「『平和が大事』『戦争はダメ』だと、いろいろな人にずっと言えばいいんだよ」と答えたことがあり、育児で蒔いた種がポっと出たような気がした瞬間でした。
“自分事”への置き換えが、平和を理解するヒントに
3児の母でもあるナビゲーターの吉田は「戦争や平和について、子どもたちに話すのは大変だ」と明かす。インターネットの発達により、子どもたちにも大量の情報が届く時代に母として、元ジャーナリストとして、家庭で“戦争”を説明する方法や注意点を伝えた。吉田:いちばん大切なのは、「国単位の悪者は作らない」ということです。「偏見ではなく、共感を広めましょう」というユニセフによる対話のヒントもご紹介しましたが、我が家では平和教育をするにあたって「将来、差別をしない子どもにしたいな」という想いをもっとも重視しました。人種やジェンダーを超えた、多様な時代を生き抜く現代の子どもたちだからこそ、非常に必要なマインドセットだと思っています。
そのためには、戦争について話すときに、国単位ではなく主語を小さくして会話をすることが重要だと吉田は語る。
吉田:わかりやすく言うと、たとえば「イスラエルが悪いんだ、ひどい」ではなく、「イスラエルのネタニヤフ首相が何をしている」、「ロシア」ではなく「ロシアのプーチン大統領という人が」、「テロリスト」ではなく「ハマス」というように、なるべく主語を小さくして、何をやっているかを具体的に落とし込みます。私は、主語を大きくして国単位で説明をしてしまうと、「悪い国」や「いじめられている国」という構造になってしまい、将来、その国の人たちに対して「悪い国から来た人たち」という差別をする人になりかねないなと思っています。もし子どもが「誰が悪いのか」と繰り返し聞いてくる場合は、なるべく個人レベルまで落とし込んで話し、さらに「ママはこのおじさんが悪い人だと思うけど、あなたはどう思う?」「なぜ、この人たちは攻撃したんだろうね?」と、個人的な意見を付け足したり、ひとつの視点に固執しすぎないようにしたりすることも、意識しています。
子どもたちが幼いころから、少しずつ平和教育を実践している吉田。“戦争”や“平和”の概念を教えるにあたり、「身近な状況や人物に置き換えること」も日々意識しているという。
吉田:2022年3月のウクライナとロシアの戦争に関する記事にも書いたのですが、「ビジュアライズしやすいよう動画・身近なものや人を使う」ということも大切だと思います。当時は、いまほど戦争の映像は飛び交っていなかったので、海外メディアのSNSアカウントにある短い動画レポートなど、いろいろな動画を使いました。ただ、この数年で戦争がちょっとずつ身近になってきているのも事実なので、必要以上の動画はいまは不要かもしれません。
言葉で説明する場合は「なるべく“自分事”に置きかえる」と吉田は話す。
吉田:「戦争が起きたら、あなたの学校が穴だらけになるかも」「いま、ごはんを食べているおうちも燃えてしまうかも」「パパやおじいちゃんのような、大人の男の人が戦争に行くことになるから、会えなくなってしまうよ」と説明をする。長男が4歳くらいのときに話したら、目に涙を溜めながら「戦争になったらパパに会えないんだ」「ママと弟も見つからないまま、ひとりでおうちを探すかもしれないんだ」「学校が攻撃されるのもいやだな」という言葉が自然に出てきたので、幼児にもこういった話は消化してもらえるのだと、個人的には実感しています。
家庭での平和教育のなかで「平和を維持するためには、“戦争”の話は避けて通れない」と痛感するという吉田は「子どもに何を学んでほしいかを、大人が明確に意識することが大切。まずは無理なく、根気強く、身近に感じさせるものや人を用いて、平和を伝えていってほしい」と、リスナーに呼びかけた。
今回、番組で紹介した、ユニセフによる子どもと戦争に関して話す際のガイドラインは、ユニセフの公式ホームページから詳しく知ることができる。
『JAM THE PLANET』内のコーナー「TODAY’S SPECIAL」では、いま注目すべきニュース&トピックスを掘り下げる。放送は月曜~木曜の19時38分ごろから。
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