
(画像素材:PIXTA)
発生から30年を迎えた地下鉄サリン事件。その教訓を考え、風化させないための活動について、足立区長・近藤やよいさんに話を聞いた。
この内容をお届けしたのは、インターネットニュースメディア『The HEADLINE』編集長・石田 健がナビゲートした3月19日(水)放送のJ-WAVE『JAM THE PLANET』のコーナー「TODAY’S SPECIAL」。いま注目すべきニュース&トピックスを掘り下げる特集コーナーだ。
事件から30年が経過した現在もなお、サリンの後遺症に悩む被害者、事件をきっかけに変わった街の風景など、さまざまな影響が見られるなか、2025年2月、東京都足立区が「足立区地下鉄サリン事件風化防止啓発推進条例」を施行。石田は、足立区長・近藤やよいさんに「条例に盛り込まれている内容」を訊いた。
近藤:4条からなる小さい条例ですが、第1条では条例の目的として、足立区が風化防止のために区民に対して積極的に啓発を行い、区民のみなさんの認識を深めていくということを掲げています。そして、区として積極的に活動を行うとともに、国に対しても、地下鉄サリン事件の風化防止に関する積極的な働きかけを行っていくということを謳っています。
石田:なるほど。事件から30年が経過した現在、どういった背景で、なぜいま制定したのでしょうか?
近藤:サリン事件をご存じない世代が増えてきて、30年という節目の年であるにもかかわらず、どうしても風化を否めないという現実を前にして、区が「認識を深めていただく」ということを積極的に働きかけていく必要があると感じました。また、足立区には国内で2番目に大きい「Aleph(アレフ)」(※オウム真理教の後継団体)の施設がございます。施設がきて、今年でちょうど15年目になりますが、当初からその周辺の住民の方々が積極的に頑張って反対活動を繰り広げてきてくださいました。ただ、その団体もだいぶ高齢化が進んでいるということですので、その頑張っていただいたみなさんを孤立させないために、「区がしっかりと支援していきます」という姿勢をこの条例で示したかったということもあります。
石田:やはりそういった団体の高齢化などを経て、事件についての記憶や、過去のオウム真理教の事件に関してのさまざまな事柄が忘れられていると感じる機会は、多いのでしょうか?
近藤:そうですね。活動に出てくださる方の人数が徐々に減ってきていますし、世代もまったく変わっています。ただ、公安調査庁の立ち入り調査を行うなかではっきりとしているのは、いまなお“麻原彰晃”を教祖として崇め、教義自体は当時のサリン事件を起こしたときとまったく変わっていないということです。この本質を、ぜひ大勢の方に知っていただきたいです。
石田:区として条例で定めたことを踏まえて、どのようなかたちで啓発活動を行っていますか?
近藤:3月18日から27日まで、足立区庁舎でパネル展示を行っています。このパネル展で「オウム真理教や地下鉄サリン事件は、決して過去のものではない」ということを考えていただきたいですね。
石田:事件を知らない世代が増加し、教訓をどう伝えていくかも課題となっていますが、事件は過去のものではなく、いまも起こり得る可能性があります。私についてお話すると、事件当時は6歳でした。鮮明な記憶はないものの、父親が霞ヶ関周辺で働いていて、この地下鉄サリン事件の被害を受けた電車の1本か2本前に乗っていたということを、母親が話していたことをよく覚えています。そのあと、繰り返しテレビでも報道されていたことや、その内容も、はっきりと覚えています。
足立区の記載によると、オウム真理教は「陰謀論や世紀末思想などの、特異な主張展開が特徴の宗教法人」だという。同団体は1987年にオウム真理教に改称し、1989年に法人格を有した。
オウム真理教が社会的認知を高め、多くの構成信者を集めた背景には、メディアも大きく影響している。もともとは一部のオカルト雑誌などの企画で、麻原彰晃氏を取り上げたのが始まりで、現在の新興宗教でも見られるような「子どもが入信し、子どもを取り戻したい親が対決する」という構図ができ上がった。
その戦いの記録が雑誌や新聞などで取り上げられ始めるが、一方で、オウム真理教をワイドショー的に消費するといった動きは止まらなかった。なかには慎重な姿勢を示していたメディアや、「報道」として正面から取り上げていたメディアもあったが、テレビのワイドショー番組に麻原氏が出演し続けた結果、オウム真理教を知り、入信したという人も多かった。
事件が起こる強いきっかけとなったのは、選挙だ。オウム真理教から「真理党」という政党を設立して出馬したものの、ほぼ惨敗。しかし、これをきっかけに反社会的な思想を強め、武装化、サリンなどの製造により深く手を染め、松本サリン事件や地下鉄サリン事件といった、数々の凶悪事件につながった。
また、後継団体であるAlephは、オウム真理教の関連事件で甚大な被害を受けた被害者や遺族に対して、裁判所から10億円以上の賠償命令が下されているが、これに応じず滞納を続けている。
石田:事件後には、新興宗教、カルト集団の報道の仕方について、おもしろおかしくではなく正面から報道することはできなかったのかということや、「いかにオウムが異常な集団だったのか」という報道に終始してしまい、どのようなメカニズムでこの信者が増えてしまったのか、そしてそこから取り戻す術はなかったか、社会と適切な距離を保てなかったのかといった、建設的な議論は少なかったということも指摘されています。新興宗教は、いまでも続いています。信仰の自由もあるなか、我々が宗教とどう付き合っていくかは、いまも続く論点のひとつです。また、ソーシャルメディアなどでは、陰謀論や、信頼度が低い情報も多く飛び交っていますが、そういったことが問題とつながっている部分も、少なくないのではないでしょうか。
石田は、地下鉄サリン事件発生から30年が経過し、「事件は決して過去のものではないということを、あらためて思い起こしていきたい」と、締めくくった。
『JAM THE PLANET』内のコーナー「TODAY’S SPECIAL」では、いま注目すべきニュース&トピックスを掘り下げる。放送は月曜~木曜の19時38分ごろから。
この内容をお届けしたのは、インターネットニュースメディア『The HEADLINE』編集長・石田 健がナビゲートした3月19日(水)放送のJ-WAVE『JAM THE PLANET』のコーナー「TODAY’S SPECIAL」。いま注目すべきニュース&トピックスを掘り下げる特集コーナーだ。
事件の風化防止に向け、積極的な働きかけを
1995年3月20日、午前8時頃。地下鉄サリン事件は、通勤ラッシュのさなかに東京の中心部で起こった。当時の営団地下鉄(現:東京メトロ)の霞ヶ関に向かう3路線、5方面の車両内で、オウム真理教の構成員が化学兵器・サリンを撒き、14人が死亡、約6,300人が負傷したとされている。当時、阪神大震災発生から間もなく、日本で起こった未曽有の無差別テロ事件に、日本中が震撼した。事件から30年が経過した現在もなお、サリンの後遺症に悩む被害者、事件をきっかけに変わった街の風景など、さまざまな影響が見られるなか、2025年2月、東京都足立区が「足立区地下鉄サリン事件風化防止啓発推進条例」を施行。石田は、足立区長・近藤やよいさんに「条例に盛り込まれている内容」を訊いた。
近藤:4条からなる小さい条例ですが、第1条では条例の目的として、足立区が風化防止のために区民に対して積極的に啓発を行い、区民のみなさんの認識を深めていくということを掲げています。そして、区として積極的に活動を行うとともに、国に対しても、地下鉄サリン事件の風化防止に関する積極的な働きかけを行っていくということを謳っています。
石田:なるほど。事件から30年が経過した現在、どういった背景で、なぜいま制定したのでしょうか?
近藤:サリン事件をご存じない世代が増えてきて、30年という節目の年であるにもかかわらず、どうしても風化を否めないという現実を前にして、区が「認識を深めていただく」ということを積極的に働きかけていく必要があると感じました。また、足立区には国内で2番目に大きい「Aleph(アレフ)」(※オウム真理教の後継団体)の施設がございます。施設がきて、今年でちょうど15年目になりますが、当初からその周辺の住民の方々が積極的に頑張って反対活動を繰り広げてきてくださいました。ただ、その団体もだいぶ高齢化が進んでいるということですので、その頑張っていただいたみなさんを孤立させないために、「区がしっかりと支援していきます」という姿勢をこの条例で示したかったということもあります。
石田:やはりそういった団体の高齢化などを経て、事件についての記憶や、過去のオウム真理教の事件に関してのさまざまな事柄が忘れられていると感じる機会は、多いのでしょうか?
近藤:そうですね。活動に出てくださる方の人数が徐々に減ってきていますし、世代もまったく変わっています。ただ、公安調査庁の立ち入り調査を行うなかではっきりとしているのは、いまなお“麻原彰晃”を教祖として崇め、教義自体は当時のサリン事件を起こしたときとまったく変わっていないということです。この本質を、ぜひ大勢の方に知っていただきたいです。
石田:区として条例で定めたことを踏まえて、どのようなかたちで啓発活動を行っていますか?
近藤:3月18日から27日まで、足立区庁舎でパネル展示を行っています。このパネル展で「オウム真理教や地下鉄サリン事件は、決して過去のものではない」ということを考えていただきたいですね。
凶悪な事件は「決して過去のものではない」
近藤さんの話を聞き、石田は「事件を風化させないこと」「新興宗教やカルト集団とどのように向き合うか」「社会全体がこの事件とどう向き合い、次の時代に残していくか」が大切であると語る。石田:事件を知らない世代が増加し、教訓をどう伝えていくかも課題となっていますが、事件は過去のものではなく、いまも起こり得る可能性があります。私についてお話すると、事件当時は6歳でした。鮮明な記憶はないものの、父親が霞ヶ関周辺で働いていて、この地下鉄サリン事件の被害を受けた電車の1本か2本前に乗っていたということを、母親が話していたことをよく覚えています。そのあと、繰り返しテレビでも報道されていたことや、その内容も、はっきりと覚えています。
足立区の記載によると、オウム真理教は「陰謀論や世紀末思想などの、特異な主張展開が特徴の宗教法人」だという。同団体は1987年にオウム真理教に改称し、1989年に法人格を有した。
オウム真理教が社会的認知を高め、多くの構成信者を集めた背景には、メディアも大きく影響している。もともとは一部のオカルト雑誌などの企画で、麻原彰晃氏を取り上げたのが始まりで、現在の新興宗教でも見られるような「子どもが入信し、子どもを取り戻したい親が対決する」という構図ができ上がった。
その戦いの記録が雑誌や新聞などで取り上げられ始めるが、一方で、オウム真理教をワイドショー的に消費するといった動きは止まらなかった。なかには慎重な姿勢を示していたメディアや、「報道」として正面から取り上げていたメディアもあったが、テレビのワイドショー番組に麻原氏が出演し続けた結果、オウム真理教を知り、入信したという人も多かった。
事件が起こる強いきっかけとなったのは、選挙だ。オウム真理教から「真理党」という政党を設立して出馬したものの、ほぼ惨敗。しかし、これをきっかけに反社会的な思想を強め、武装化、サリンなどの製造により深く手を染め、松本サリン事件や地下鉄サリン事件といった、数々の凶悪事件につながった。
また、後継団体であるAlephは、オウム真理教の関連事件で甚大な被害を受けた被害者や遺族に対して、裁判所から10億円以上の賠償命令が下されているが、これに応じず滞納を続けている。
石田:事件後には、新興宗教、カルト集団の報道の仕方について、おもしろおかしくではなく正面から報道することはできなかったのかということや、「いかにオウムが異常な集団だったのか」という報道に終始してしまい、どのようなメカニズムでこの信者が増えてしまったのか、そしてそこから取り戻す術はなかったか、社会と適切な距離を保てなかったのかといった、建設的な議論は少なかったということも指摘されています。新興宗教は、いまでも続いています。信仰の自由もあるなか、我々が宗教とどう付き合っていくかは、いまも続く論点のひとつです。また、ソーシャルメディアなどでは、陰謀論や、信頼度が低い情報も多く飛び交っていますが、そういったことが問題とつながっている部分も、少なくないのではないでしょうか。
石田は、地下鉄サリン事件発生から30年が経過し、「事件は決して過去のものではないということを、あらためて思い起こしていきたい」と、締めくくった。
『JAM THE PLANET』内のコーナー「TODAY’S SPECIAL」では、いま注目すべきニュース&トピックスを掘り下げる。放送は月曜~木曜の19時38分ごろから。
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