提供:象印マホービン株式会社
「人はなぜ料理をするのか?」「おいしいとは何か?」普段、見逃してしまう物事の根本をじっくり考えて語り合う『土井善晴とクリス智子が料理を哲学するポッドキャスト supported by ZOJIRUSHI』が、好評配信中だ。
11月14日(木)に配信されたエピソードでは、「おにぎり」をテーマにトーク。料理研究家・土井善晴と、J-WAVEナビゲーターのクリス智子がおにぎりの魅力を語り合った。土井先生が、「惜しみながら食べるほどおいしい塩むすびの握り方」を教えてくれる場面もあった。
その一部をテキストで紹介しよう。ポッドキャストでは、ここでは紹介しきれなかったトークも含めて楽しめる。
今回はこのプロジェクトを起点として、ふたりがおにぎりの魅力を語り合った。
クリス:おにぎりって、世界中で人気なんですかね?
土井:日本のアニメでおむすびが登場すると、「あの丸い食べ物は何か」ということで、興味を持っていただいていたみたいで。この頃、海外からいらっしゃる人も多いから、世界に広まったのでしょう。何と言っても、手で持って食べられる気軽さがいいんでしょうね。
具材の豊富さも、おにぎりの魅力だ。土井先生は、もともとは携帯食であるため、水気の多い具材は避けられていたことを解説しながら、「なんでもできるっちゃできる」と料理としての懐の深さを語った。
土井:(おにぎりのバリエーションは)無限でしょう。ごはんの中に具を入れるだけじゃなく、炊き込みごはんを握る、というのもありでしょうし。いろんなことができますよね。違う料理を組み合わせた「天むす」もおむすびですから。
クリス:先生は、塩むすびがお好きですか?
土井:基本はね、私はごはんを食べたいんですよ。具は、少し塩気があったらという意味で入れているから、梅干しとか、あとは昔ながらの佃煮。大抵は梅干しですね。白いごはんの味を損ねないというか、ごはんとのコントラストがとてもいいというか、どちらもおいしく感じる。梅のまわりについている塩のおいしさがいいですよね。
トークをしながら、「ONIGIRI WOW!」のウェブサイトを閲覧するふたり。クリスはそのバリエーションに驚きながら、世界ではどんなおにぎりがあるのかを尋ねた。
土井:中国ではもち米みたいなものを固めて、中に油で揚げた麩を入れたものもありますよ。
クリス:へえ!おにぎりって、相性が悪いものがないのかな。お肉でも合うし。
土井:(「ONIGIRI WOW!」や、大阪・関西万博でのおにぎり屋出店の発表は)世界の人にしたら、日本から何が出てくるかという楽しみもあるでしょうね。おむすびの楽しみ方は本当にいろいろですから。
土井:その子はおむすびがとっても好きで、お母さんが毎日お弁当として、おかずの入ったおむすびを作ってくれていたんですって。ある夜、お母さんと口論になってしまったんだけど、それでも翌朝はおむすびを作ってくれていたと。お昼になっておむすびを食べようとしたら、その子がどうしても食べられない「めざし」(いわしを乾燥させたもの)が突き刺さっていたんだって(笑)。
クリス:ビジュアル的にも、想像するとおもしろい(笑)。
土井:その話を私はすごくいい話として受け取って。お昼になって、そのお弁当を見て、涙が止まらなくなったって。昨夜はお母さんに悪いことをした……という彼女の気持ちわかりますよね。お母さんの気持ちがめざしに表れていて、でもちゃんとおむすびを作ってくれた。大好きなおむすびに大嫌いなめざしが突き刺さっていたというのが……ジーンとなる。
クリス:いい話(笑)。エピソードとしての「WOW!」ですね。
土井:お弁当であれ、おむすびであれ、誰かが作って、それをいただくという、家族の関係が食べ物に表れていて、その話が好きで忘れられないんですよ。
土井先生は「人と人の間に食事がある。おむすびを味わうと、いろんなことを思い出します」と話す。
土井:奄美大島では、「ジャングルトレイル」というマラソン大会があって、それに出場したときに、地元の人たちがおむすびを出してくれました。奄美のおむすびは白いごはんを薄く焼いた卵で包んであるんです。おむすびには地方性がありますよね。
クリス:そうかもしれませんね。
土井:鹿児島では、青い葉っぱで巻かれた高菜おむすびがあります。高菜をお酢にピタピタとつけると塩が抜けて、酸味が入るでしょう。そうすることで、時間を置いても安心して食べられる。その高菜の水気をきれいに拭き取ってから、ごはんに巻いて「高菜のおにぎり」にします。
土井:中に梅干しが入ったおむすびと、あとは漬物か卵焼きか、椎茸を炊いたんをつけるか、くらいなんですけどね。まだあたたかいおすむびも、蓋がついた竹籠にポンと入れて持っていけば、夏の間でも安心して食べられます。それと、大勢で食事するとき……例えば料理の撮影なんかをするときも、スタッフが大勢いたら、味噌汁とおむすびを朝のうちに作っておいて。できたお料理を少しつつくこともあるけれど、おむすびと味噌汁でだいたい大丈夫。みんな大きいおむすびを、ひとり2つずつくらい食べますね。
クリス:先生のおにぎりは、本当においしそうですものね。
土井:はい おいしそうなものは、おいしいんです(笑)。まずくしないようにするのが、おいしいおむすびのコツなんです。おいしくしようとすると、人は味付けのこととかを考えるでしょう。おむすびはまず、おいしいごはんを炊くことから始まる。私の場合、きちんと吸水させて洗い米にして、きれいな水で水加減をして、早炊きモードですぐに、炊き始める。あとは炊き立てを握ることが何より重要です。炊き立てのごはんはすごく熱いですから、かたく絞ったさらし布巾を左手(右利きの場合)にかぶせてお茶碗をもち、ごはんをよそって、茶碗のごはんをさらしの布巾に開けて、一度握ってザルの上に転がす。その間に、おむすびの蒸気が外に出るから、ちょっと崩れかけるんですけど、湿らせてしっとりした手に塩を削いて握る。
クリス:先生の握り方は、“ギュッギュ”ではなく、“トットット”という感じですもんね。
土井:そうですね。あまり力を入れない。そうすると、外側に塩の壁ができて、内側に雑菌が入りにくくなります。中はしっとりしているけど、熱々で握ったから外側は乾くという、理にかなった握り方なんです。それだけでじゅうぶん。惜しみ惜しみ食べるほどおいしいんです。2個持っていっても、「もう1つは残しておいて、帰りに食べよう」と思うくらい。
クリス:シンプルな分、手順が大事なんですね。まず手をきれいに洗う、とか。炊けたらすぐ握るんですね。
土井:炊き立てのごはんは、熱くて握れないです。だから寿司桶みたいなものに移して冷まして……と言う人もいますけど、残念ながらそうすると携帯食としての安心、安全がなくなります。作ってすぐ食べるならいいですが、お弁当にはなりません。
小さなお子さんだと、おかずなしでごはんを食べることが苦手という場合もあるだろう。そんなときに試してみたい、炊く前の一工夫も伝授してくれた。
土井:ごはんを炊くときにお醤油を入れて味付けするのもいいと思います。2カップでしたら、大さじ2杯〜3杯くらいのお醤油を入れる。そうしたら茶色いごはんができあがります。それをおにぎりにするだけで、絶対においしいです。
食事というと、おかずを主役として考えがちな人も多いだろう。しかし、ごはんをおいしく炊ければ、しっかりと主役になってくれる。ポッドキャストの終盤では、食べ合わせのこだわりなどの話題で盛り上がり、最後には土井先生のお米への思いが語られた。
土井:私には縄文時代の心みたいなものがあるんだと思います。鳥も熊も狼も、小さな豆粒も、私にとっては自然は神様なんです。日本人なら誰でも、忘れているかもしれないけど必ずあるものです。だから混ぜこぜにせず、ひとつをきちんと味わいたいんです。外国ではマリアージュを楽しんだりするけれど、日本の食文化が外国と違うのはそこです。
クリス:本質が見えなくなるよ、ってことですよね。
土井:そうですね。何が主役かってこと。料理にはコンセプトがあるんです。ごはんが主役でしたら、ちょっと塩気のあるものをそばに置くことで、お互いが引き立っていく。お米一粒一粒の味わいとか、水加減、炊き加減、の違いを繊細に感じるためには、シンプルにいただくことですね。でないと何をしたいのかわからないんです。それぞれ工夫したのなら、理由があるはずです。理由がないなら、工夫する意味がないじゃないですか。おむすびは、まずごはんです。ごはんのおいしさを忘れないというのが、日本食文化の本質です。
(構成=中山洋平)
■「ONIGIRI WOW!」ウェブサイト
「人はなぜ料理をするのか?」「おいしいとは何か?」普段、見逃してしまう物事の根本をじっくり考えて語り合う『土井善晴とクリス智子が料理を哲学するポッドキャスト supported by ZOJIRUSHI』が、好評配信中だ。
11月14日(木)に配信されたエピソードでは、「おにぎり」をテーマにトーク。料理研究家・土井善晴と、J-WAVEナビゲーターのクリス智子がおにぎりの魅力を語り合った。土井先生が、「惜しみながら食べるほどおいしい塩むすびの握り方」を教えてくれる場面もあった。
その一部をテキストで紹介しよう。ポッドキャストでは、ここでは紹介しきれなかったトークも含めて楽しめる。
おにぎりのバリエーションは無限
日本人にとって最も身近な料理と言える「おにぎり」。そのすごさや魅力を世界に広めるプロジェクト「ONIGIRI WOW!」を、家庭日用品メーカー「ZOJIRUSHI(象印)」が展開中だ。食に関わるさまざまな人や団体との共創で、楽しさと発見が詰まったコンテンツを発信している。活動の総仕上げとして、2025年4月に開幕する大阪・関西万博の会場でおにぎり屋を出店し、国内外の食材とコラボしたおにぎりを販売する予定だという。今回はこのプロジェクトを起点として、ふたりがおにぎりの魅力を語り合った。
<ポッドキャストの収録風景>
土井:日本のアニメでおむすびが登場すると、「あの丸い食べ物は何か」ということで、興味を持っていただいていたみたいで。この頃、海外からいらっしゃる人も多いから、世界に広まったのでしょう。何と言っても、手で持って食べられる気軽さがいいんでしょうね。
具材の豊富さも、おにぎりの魅力だ。土井先生は、もともとは携帯食であるため、水気の多い具材は避けられていたことを解説しながら、「なんでもできるっちゃできる」と料理としての懐の深さを語った。
土井:(おにぎりのバリエーションは)無限でしょう。ごはんの中に具を入れるだけじゃなく、炊き込みごはんを握る、というのもありでしょうし。いろんなことができますよね。違う料理を組み合わせた「天むす」もおむすびですから。
クリス:先生は、塩むすびがお好きですか?
土井:基本はね、私はごはんを食べたいんですよ。具は、少し塩気があったらという意味で入れているから、梅干しとか、あとは昔ながらの佃煮。大抵は梅干しですね。白いごはんの味を損ねないというか、ごはんとのコントラストがとてもいいというか、どちらもおいしく感じる。梅のまわりについている塩のおいしさがいいですよね。
土井:中国ではもち米みたいなものを固めて、中に油で揚げた麩を入れたものもありますよ。
クリス:へえ!おにぎりって、相性が悪いものがないのかな。お肉でも合うし。
土井:(「ONIGIRI WOW!」や、大阪・関西万博でのおにぎり屋出店の発表は)世界の人にしたら、日本から何が出てくるかという楽しみもあるでしょうね。おむすびの楽しみ方は本当にいろいろですから。
人間同士・家族同士の関係が食べ物に表れる
クリスが「おにぎりにびっくりしたことはありますか?」と問うと、仕事で出会った女性から聞いたという、おにぎりにまつわるエピソードを語った。土井:その子はおむすびがとっても好きで、お母さんが毎日お弁当として、おかずの入ったおむすびを作ってくれていたんですって。ある夜、お母さんと口論になってしまったんだけど、それでも翌朝はおむすびを作ってくれていたと。お昼になっておむすびを食べようとしたら、その子がどうしても食べられない「めざし」(いわしを乾燥させたもの)が突き刺さっていたんだって(笑)。
クリス:ビジュアル的にも、想像するとおもしろい(笑)。
土井:その話を私はすごくいい話として受け取って。お昼になって、そのお弁当を見て、涙が止まらなくなったって。昨夜はお母さんに悪いことをした……という彼女の気持ちわかりますよね。お母さんの気持ちがめざしに表れていて、でもちゃんとおむすびを作ってくれた。大好きなおむすびに大嫌いなめざしが突き刺さっていたというのが……ジーンとなる。
クリス:いい話(笑)。エピソードとしての「WOW!」ですね。
土井先生は「人と人の間に食事がある。おむすびを味わうと、いろんなことを思い出します」と話す。
土井:奄美大島では、「ジャングルトレイル」というマラソン大会があって、それに出場したときに、地元の人たちがおむすびを出してくれました。奄美のおむすびは白いごはんを薄く焼いた卵で包んであるんです。おむすびには地方性がありますよね。
クリス:そうかもしれませんね。
土井:鹿児島では、青い葉っぱで巻かれた高菜おむすびがあります。高菜をお酢にピタピタとつけると塩が抜けて、酸味が入るでしょう。そうすることで、時間を置いても安心して食べられる。その高菜の水気をきれいに拭き取ってから、ごはんに巻いて「高菜のおにぎり」にします。
惜しみながら食べるほどおいしい「塩むすび」の作り方
土井先生は仕事をする際、おにぎりを作って持参することが多いのだそう。おいしい塩むすびを作るコツを教えてくれた。<土井先生が実際に握ったおにぎり>
クリス:先生のおにぎりは、本当においしそうですものね。
土井:はい おいしそうなものは、おいしいんです(笑)。まずくしないようにするのが、おいしいおむすびのコツなんです。おいしくしようとすると、人は味付けのこととかを考えるでしょう。おむすびはまず、おいしいごはんを炊くことから始まる。私の場合、きちんと吸水させて洗い米にして、きれいな水で水加減をして、早炊きモードですぐに、炊き始める。あとは炊き立てを握ることが何より重要です。炊き立てのごはんはすごく熱いですから、かたく絞ったさらし布巾を左手(右利きの場合)にかぶせてお茶碗をもち、ごはんをよそって、茶碗のごはんをさらしの布巾に開けて、一度握ってザルの上に転がす。その間に、おむすびの蒸気が外に出るから、ちょっと崩れかけるんですけど、湿らせてしっとりした手に塩を削いて握る。
<さらしも持参してくれた>
土井:そうですね。あまり力を入れない。そうすると、外側に塩の壁ができて、内側に雑菌が入りにくくなります。中はしっとりしているけど、熱々で握ったから外側は乾くという、理にかなった握り方なんです。それだけでじゅうぶん。惜しみ惜しみ食べるほどおいしいんです。2個持っていっても、「もう1つは残しておいて、帰りに食べよう」と思うくらい。
<見るだけでも、ふっくらと握られていることがわかる>
土井:炊き立てのごはんは、熱くて握れないです。だから寿司桶みたいなものに移して冷まして……と言う人もいますけど、残念ながらそうすると携帯食としての安心、安全がなくなります。作ってすぐ食べるならいいですが、お弁当にはなりません。
小さなお子さんだと、おかずなしでごはんを食べることが苦手という場合もあるだろう。そんなときに試してみたい、炊く前の一工夫も伝授してくれた。
土井:ごはんを炊くときにお醤油を入れて味付けするのもいいと思います。2カップでしたら、大さじ2杯〜3杯くらいのお醤油を入れる。そうしたら茶色いごはんができあがります。それをおにぎりにするだけで、絶対においしいです。
ごはんは食卓の主役になる
土井:私には縄文時代の心みたいなものがあるんだと思います。鳥も熊も狼も、小さな豆粒も、私にとっては自然は神様なんです。日本人なら誰でも、忘れているかもしれないけど必ずあるものです。だから混ぜこぜにせず、ひとつをきちんと味わいたいんです。外国ではマリアージュを楽しんだりするけれど、日本の食文化が外国と違うのはそこです。
クリス:本質が見えなくなるよ、ってことですよね。
土井:そうですね。何が主役かってこと。料理にはコンセプトがあるんです。ごはんが主役でしたら、ちょっと塩気のあるものをそばに置くことで、お互いが引き立っていく。お米一粒一粒の味わいとか、水加減、炊き加減、の違いを繊細に感じるためには、シンプルにいただくことですね。でないと何をしたいのかわからないんです。それぞれ工夫したのなら、理由があるはずです。理由がないなら、工夫する意味がないじゃないですか。おむすびは、まずごはんです。ごはんのおいしさを忘れないというのが、日本食文化の本質です。
(構成=中山洋平)
■「ONIGIRI WOW!」ウェブサイト
この記事の続きを読むには、
以下から登録/ログインをしてください。