音楽、映画、エンタメ「ここだけの話」
坂東祐大×角野隼斗が音楽談議。「日本と海外のコンサートホールの違い」で盛り上がる

坂東祐大×角野隼斗が音楽談議。「日本と海外のコンサートホールの違い」で盛り上がる

ピアノニスト・角野隼斗が、音楽家・坂東祐大と現代音楽を中心とした音楽談議をおこなった。

この内容をお届けしたのは、J-WAVEで放送中の番組『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:小川紗良)のコーナー「TOKYO TATEMONO MUSIC OF THE SPHERES」。このコーナーでは、角野隼斗が、音楽を通したさまざまな“出会い”をもとに、楽曲とトークをお届けする。ここでは、6月9日(日)のオンエアをテキストで紹介する。

トークの音声は2024年6月16日(日)まで再生可能

坂東祐大の音楽を知ったきっかけ

ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』、映画『竜とそばかすの姫』などの音楽で話題を集め、米津玄師との共同編曲、宇多田ヒカルの編曲及び指揮なども手掛けている坂東祐大。1991年生まれの大阪府出身だ。東京藝術大学音楽学部作曲科を首席で卒業し、同修士課程作曲専攻修了。異化や脱構築による刺激と知覚の可能性などをテーマに、幅広い創作活動をおこない、作品はオーケストラ、室内楽から、立体音響を駆使したサウンドインスタレーション、シアター・パフォーマンスなど多岐に渡る。

坂東:(自分はこのコーナーの)初のゲストなんですか?

角野:はい。このコーナーは4月に始まったのですが、記念すべき1人目のゲストです。ありがとうございます。もともと坂東さんのことを初めて知ったのは米津玄師さんの『海の幽霊』でした。

坂東:たまたま呼んでくださって、「なんで僕が?」という感じでした(笑)。

角野:聴いて「なんだこの曲、めちゃくちゃカッコいいじゃん!」と思って調べたら坂東さんという方が編曲をやっているらしいと知ったんです。ストリングスの使い方とか、あまりJ-POPで聴かないような表現だなと思いました。

坂東:僕、あまりJ-POPがわからないんですよね(笑)。

角野:それが僕には面白かったです。本当にいろんなところでご活躍されていますね。

坂東:いえいえ。現代音楽をホールで細々とやっている感じです(笑)。

角野:J-POPとか映画音楽とかに行こうとは思っていなくて、たまたまって感じなんでしょうか?

坂東:呼んでくださるから拒むのもなあ、という気持ちもあったりして(笑)。やっぱり、呼んでくださると嬉しいじゃないですか。映像はやってみたいなと思っていました。というのも、コンサートホールで演奏するだけだと生活が成り立たないんですよね。それは昔からそういうもので、ちゃんと自分の作品は書くけどサブワークもちゃんとされているんですよ。なので、小さい頃からそういうものなんだろうなと思ってはいました。

角野:なるほど。

坂東:そのなかで何が一番(自分にとって)近いのかなと考えた結果、映像をやってみたいなという思いがありました。たとえば、アメリカだったら映画音楽の作曲をするコースがあったりするんですけど、僕はそういったところで学んだことはまったくないんです。作曲を藝大で勉強してきただけなんですよね。

現代音楽の今

続けて坂東から、現代音楽の変容について聞いた。

角野:クラシックを演奏するにあたって今の曲を演奏することもあるんですね。20世紀後半の曲に比べると、21世紀の曲って取っ付きやすさを感じるんですね。ある種のモダンさといいますか、それはおそらくクラシック以外のところからも影響を受けているのかなと思っているのですが、どういう風に現代音楽は変わっているのでしょうか?

坂東:ざっくり言うと、今って完全にマルチバースといいますか、一人一言語って感じなんですよ。大きな潮流があるっちゃあるんだけれども、国、地域、学んだ環境といったいろんなシーンによって(変わる)。たとえば日本だと、現代音楽をやっている作曲家っていろんな国に留学に行くじゃないですか。そうなると、藝大を出たあとに同じ現代音楽をやったとしても、人によって全然やっていることが違うんですよ。これはそういうものだと思っていて、統合する必要もまったくないと思っています。(現代音楽は)それぞれの面白い作家性を楽しむ分野って感じですね。ハマるとすごくディグり(探り)甲斐があって面白いと思いますね。演奏するのはめちゃくちゃ大変だと思いますけども(笑)。

角野:基本的にそういう傾向がありますよね(笑)。

「日本のホールだとさせてくれない」こと

番組では、『花火 - ピアノとオーケストラのための協奏曲 Scene 1:Introduction(feat. 永野英樹、新日本フィルハーモニー交響楽団、杉山洋一) 』をオンエアした。



角野:この曲、すごく面白いですね。調律をあえて狂わせていますか?

坂東:そうなんですよね。ピアノって、たとえばドだとだいたい3本の弦が張っていますよね。そのうちの1本だけ狂わせると共鳴がズレちゃうんですけど、その調整を7つの音にしてあります。

角野:88鍵のうちの7つだけズラしているんですね。

坂東:本当はもともとプリペアド・ピアノ(弦にさまざまなものを挟んで音色を変えるピアノ)をやりたかったんですけど、日本のホールだとさせてくれないんですよね(笑)。

角野:そうなんですよ(笑)! それで僕はコンサートでプライベートのピアノを持っていってプリペアドっぽいことをやりました。

坂東:消しゴムとか挟むと怒られますからね。面白い奏法っていっぱいあるんですけど、それを組み合わせてたりするんですよ。消しゴムを挟んでここだけボルトを入れ、定規でガリっとする、みたいなことは絶対日本でさせてくれません(笑)。日本のホールだと調律師の方がすごくしっかり管理されているので、それはいいことだと思います。

角野:そうですね。海外のほうがちょっと緩いなと思ったことはあります。演出のスモークって、日本だとピアノに悪影響があるからととても厳しいんですよ。だけど、ヨーロッパの撮影で使わせてもらったとき、誰もそんなことを気にすらしなさそう雰囲気でした。

坂東:(笑)。いつか角野さんもこの曲を弾いてみてください。

角野:弾いてみたいですけど、譜読みするのにどれぐらいの時間がかかるだろう(笑)。

聴こえてきた着信音に即興で対応

角野は先日イギリスでおこなわれたコンサート中、観客席から聴こえてきた携帯音に即興で反応したことで話題を集めた。

坂東:ああいう音って聴こえるんですか?

角野:聴こえますね。僕しか弾いていなくて、かつ緩やかに演奏していたところだったというのもあります。ロイヤル・アルバート・ホールって6,000人ほど入って客席から見るとものすごく大きく感じるんですけど、舞台に立ってみるとそこまで大きく感じないんですよ。

坂東:そうなんですか!

角野:たぶん、囲まれて中心にいるからですね。なので、会場内で鳴っている音がすべて把握できるような気持ちで弾けます。『ラプソディ・イン・ブルー』を弾いていたときでしたけども、鳴った音に反応しようってモードでしたので、それで咄嗟に着信音に反応しました。

坂東:コンチェルトをやっているなかで他の音が聴こえるのってどんな感じなのかなとすごく気になっていました(笑)。

角野:聴こえますし、ピアノリサイタルとかやっていても客席のノイズは耳に入りますね。作曲するときはピアノですか?

坂東:ピアノを使うときもありますし、使わなくてもできますね。半々ぐらいかな? とはいえ、とっかかりで何かを書くときにピアノをとりあえず弾いてみる、というのはよくあります。なかには、まったくピアノを使わず、譜面だけで書く人もいるんですよ。自分は小さい頃からピアノをやらされていたから、弾くことが日常のなかにありますね。

坂東祐大は、6月16日(日)の同番組にも引き続きゲスト出演。オンエアは11時30分頃から。放送後の一週間はradikoのタイムフリー機能でも再生可能。

再生は2024年6月23日(日)28時ごろまで

この記事の続きを読むには、
以下から登録/ログインをしてください。

  • 新規登録簡単30
  • J-meアカウントでログイン
  • メールアドレスでログイン
radikoで聴く
2024年6月16日28時59分まで

PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

番組情報
ACROSS THE SKY
毎週日曜
9:00-12:00