坂本龍一さんとの旅の思い出。遠くにある緑を見て…アーティスト・高谷史郎が振り返る

アーティスト・高谷史郎さんが、創作活動においてさまざまなコラボレーションを行ってきた坂本龍一さんとの旅の思い出を明かした。

高谷さんが登場したのは、ゲストに様々な国での旅の思い出を聞く、J-WAVEで放送中の番組『ANA WORLD AIR CURRENT』（ナビゲーター：葉加瀬太郎）。オンエアは4月29日（土）。

「坂本さんと一緒に作った」16都市の音を収めたレコード

高谷さんは1963年生まれ。1984年からアーティストグループ・ダムタイプに参加し、世界各地の劇場や美術館、アートセンターで公演やインスタレーション展示を行い国際的な評価を確立した。

5月14日（日）まで、東京・京橋のアーティゾン美術館にて、ダムタイプの世界が味わえる体感型の展覧会「第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展　ダムタイプ｜2022: remap」が開催中だ。

高谷さんはこの展覧会について、「情報がそこに提示されていて、その情報を元に世界を感じとってもらえるような空間」と説明。「（地球という）球の上に立っているのに、我々があまりに小さいために、球だと思わないんですよね。でも本当は球にいるんだと。破片のような球の部分を繋ぎ合わせていけば、もしかしたら、宇宙から見た地球じゃなくて、“平面から張り付いた球”みたいなものを感じられるんじゃないかと考えて、作り始めたんです」と語る。

その中には「坂本（龍一）さんと一緒に作った16枚のフィールドレコーディングのレコードがある」と高谷さん。世界の16都市の、坂本さんの友人による「都市の朝昼晩のようなイメージ」を録音したレコードで、「音だけで、世界のいろいろなところのノイズが時間に沿って流れていく」のだそうだ。

坂本龍一さんとモンゴルで話したこと

かねてより坂本さんとのコラボレーションを行ってきた高谷さん。1998年には、坂本さんとモンゴルに訪れたという。坂本さんがオペラを担当し、高谷さんは映像を担当した。

「（そのオペラ作品は）共生ということがテーマだったんですけども、いろんな人に共生ということを質問して言葉をもらうという。『モンゴルのシャーマンに共生について質問したい』ということでモンゴルに行った」のだそう。

モンゴルでは、坂本さんとどのような話をしたのか。

「モンゴルに着いてから、小さな飛行機でいろんなところを見て回ったんですね。そのときに感じたのが（景色が）本当に、土漠なんですよ。もっと（モンゴルの景色は）緑のイメージだったんですね。本当に薄いところに草がちょこちょこっと生えているだけで、飛行機から見たら、土漠の上を延々飛んでいて進んでるのかどうかもわからないぐらい何も目標物がないんです。そういうときに、遠くに緑が見えると、本当に遠くにあっても発見できるんです」

自分が必要としているものは、遠くても発見できる──「人間ってやっぱりそういう風にできているのかな」という話を、坂本さんとしていたそうだ。

【関連記事】坂本龍一が生前に語った、「日本では珍しく言葉とメロディーが一体化している」アーティストは

ナビゲーター・葉加瀬太郎も坂本龍一さんへの想いを明かす

今回の放送では、葉加瀬も坂本さんの思い出を語った。

「実は高谷さんとのお話を収録をしたのが、坂本さんの訃報が発表された直後だったんです。高谷さんにこのタイミングでお話ができるというのは何か運命なのかな、なんて思っていました」

坂本さんの大ファンだったという葉加瀬。今後も坂本さんの遺した音楽を聴き続けることはできるが、もう会えないことはやはり寂しいと、その死を悼んだ。

また、坂本さんが、この『ANA WORLD AIR CURRENT』に出演した際に、「スタジオに入ってきた瞬間に僕の顔を見て、『あ、本物だ』って言って笑ったのをとても覚えています」と振り返った。

さらに葉加瀬は「僕が坂本さんのコンサートに初めて行ったのがね、1987年の7月15日です。『NEO GEO』というアルバムがあって、それのツアーの初日だったんです。15日に神奈川県に行って、19日にNHKホールにまた行って。それからですよ、僕は坂本さんの音楽にずっとついていこうと決めたのは。ちょうど今、この収録で喋っている2日後に、また神奈川県でコンサートをします。いつもね、神奈川県民ホールでコンサートするときはね、『少しでも坂本さんに近づくことができてるでしょうか』と自分に問いかけています」と心境を明かした。

葉加瀬太郎がお届けする『ANA WORLD AIR CURRENT』は、J-WAVEで毎週土曜の19:00-19:54オンエア。