女王蜂のアヴちゃんがUNISON SQUARE GARDENの田淵智也(Ba)と、音楽をテーマに語りあった。
2人がトークを展開したのは、J-WAVE(81.3FM)×「MUSIC FUN !」連動企画である、深夜の音楽座談プログラム『WOW MUSIC』。“すごい”音楽をつくるクリエイターが“WOW”と思ういい音楽とは? 毎月1人のクリエイターがマンスリープレゼンターとして登場し、ゲストとトークを繰り広げる番組だ。2月は、アヴちゃんがマンスリープレゼンターを務めている。ここでは2月25日(土)のオンエアを一部テキストで紹介する。
そんな田淵はプロデューサーとしても活躍しており、ふたりはプロデュース業をするうえで役に立った「インプット」について語った。
田淵:プロデュースをやってみると、何気なく昔から読んでいた本、たとえばマーケティングとかマネジメントの本とか「これは全部に通じる」と思って。
アヴちゃん:読んでたんだ。
田淵:まあ軽い感じの本で専門的なものじゃないんだけど、そういうのを読むのが好きで。勉強しようと思ってしたというよりは、単純にそういうのを読んでみたら面白かったからちょこちょこ読んでいて。そのなかで、それがバンドプロデュースだけじゃなくて、自分がステージに立たない、アーティストのプロデュースを考えてみたときにも使えることが多いなと思って。他人の考え方って、当然自分の考え方と一致するわけがないし。
アヴちゃん:そうやね。
田淵:でも、じゃあ俺の考え方を全部叩き込めばいいのかというと、それはたぶんクリエイティブじゃない。じゃあ他人は一体なにを考えて、なにをどうしたら成長する生き物なんでしょうと考えたときに、意外とマーケティングやマネジメントの本にヒントがいっぱいあって面白いなっていう。昔は「自分とそれ以外」みたいに考えていたけど。
アヴちゃん:わかるわ。
田淵:そういうわけではなくて、本当に幅広く自分以外にもいろいろなタイプがいて、当然俺が考えていることは必ずしも正解ではない。そういうのが歳をとるたびにより柔軟になってきたのもあって、そのへんの知識が反映できたりするなと思ってる。
アヴちゃん:私はしゃべることがインプットになると最近すごく思う。歳を重ねていくと、いろいろな人と話せるようになってくるやんか。同じ言語ということがすごくうれしくなるし、その奥までしゃべれるというか。逆に「これを守りたいから今こういう言葉を使ってるんだな」とか、その心象風景というか、立場とかもなんとなくわかってきたうえでね。
アヴちゃん:バンドって最初はよくわからないよね。「ギターのコードってどうなってるの?」とか練習するまでわからないけど、やってみるとこんなに両手の中に宇宙があるんだなってすごく楽しくて。それは楽器でもなんでもそうだけど、バンドはアティチュードとしてバンと出せるし、うまくやれば自分のスタンスを貫ける。
田淵:スタンスを貫くというのは大きいテーマの気がしていて。世の中の一等賞をとるためにやっている感覚は、僕はあんまりないんだけど、バンドって自分が持っているスタンスと自分が持っている数少ない手札だけですごいことができる。そしてそれを好きな“もの好き”と出会える。あと僕とアヴちゃんの原体験だと思うけど、バンドを始めた瞬間に勝っちゃった感じがした。
アヴちゃん:わかる!
田淵:スタジオで音を出したときかもしれないし、ライブハウスで音楽を聴いたときかもしれないし、ライブでステージに立ったときかもしれない。なんか人生変わっちゃった感じみたいなのが、「勝っちゃった俺」みたいな。この感じが俺たちにとって原体験だったから、バンドじゃない形で人生を変えられた人も当然いると思うんだけど、たぶん俺たちはそこのような気がしていて。結局、女王蜂がやっていることもユニゾンがやっていることも、日本だったら「1億全員を巻き込んでやろう」というよりかは「自分が超すごいことをやっている、以上」というところで、とりあえず1回ゴールになれちゃうぐらいの無敵さみたいなものがあって。そこから先の「反応してくれる奴がいた」とか「意外と10年20年できた」みたいなのは、もうオマケみたいなもの。
アヴちゃん:なるほどね。
田淵:「その存在になれた俺」という、自分のスタンスを曲げないままやり続けられるというのがバンドのいいところなのかなと思ったりする。
アヴちゃん:今『0年0組』をやっていて心から思うけど、素直って最強やなと。そして人を素直にすることが私の特殊能力だと思っていて。人を素直にすることができれば、もうそれでよくて。素直になれる環境を死に物狂いで用意できれば。
田淵:その環境を用意するのがたぶんプロデュースで一番大事なんだと思う。それをどう作ったのかはメチャクチャ興味があって。「プロデュースとは」って自分がやっていることを書き出してみたんだけど「率先して動く」「考えさせる」「育て方を常に勉強する」「怒りと不機嫌を持ち込まない」「とにかく試す、失敗したら謝る」。『0年0組』を観ていてアヴちゃんがやっていることって、私がいま言ったこととそんなに変わらないなって思って、うれしかったの。
『0年0組』第6話では、誰かへのメッセージを140文字以内で綴る「ポエム試験」を実施し、失格者が続出する事態が発生した。田淵は番組を観る前にアヴちゃんから「6話は私がブチ切れている」と聞いていたが、番組を観た田淵はアヴちゃんが口にした言葉に驚いたという。
田淵:アヴちゃんは「悲しい」と言ったのね。よくあの瞬間にその言葉が出てきたなと思って。怒りで人をコントロールするというのは、僕はプロデュースではあまりいいことないと思って。これはマネジメントの本とか今までの統計から見てもはっきりしているって僕のなかでは持論があって。ブチ切れるとそれでスッキリするかもしれないし、「はい、わかりました」って言って聞くかもしれないけど、たぶん「自分で考える人」は育たないと僕は思う。だから「アヴちゃんブチ切れてるんだ」と思って観たときに「悲しいです」と言っていて、あの言葉よく出てきたなと思って。
アヴちゃん:あの回は10分で終わると思ってたんだけど、あそこまで脱落者が出ると思わなかったの。ほぼ半分ぐらいが「あちゃー」という結果になったときに、これをよしとした瞬間にすべて瓦解するなと思って。
田淵:自分が思っている方向にいかなかったときに、なにをもって「私が思っていることと違う」と表現するかが、すごく詰まっている回だったと思う。
アヴちゃん:『0年0組』が一番面白いなと思うのは、熱量としてはドラマなのよ。だけど圧倒的に異常なほどドキュメンタリーで、仕込みという仕込みはないから。
田淵:僕は6話を観て「いや、『140文字で書け』つってんだから書けよ」って最初は思うのさ。でもそのあとの生徒のインタビューで「アヴちゃんとあまり話せてないから伝えたかった」と言っていた生徒がいたのよ。「あ、俺はたぶんここを聞き逃しちゃいけないんだろうな」とすごく思ったの。やっぱりディスコミュニケーションが発生すると、それはそれでプロデュースとしてはマイナスになる。でもベタベタくっついて話を聞けばいいわけでもない。「じゃあどの距離感がいいんだっけ」というときに「あまり話せないからこの瞬間に全部言わなきゃ」と選択した生徒って本当に間違っていたんだっけってちょっと思ったのよ。ただ、あのときは「140字というルールがあるよね? 私が決めたルールはこれだよ?」って言うにとどめたじゃん。そこで脱落させるわけでもないし、メチャクチャ叱るわけでもない。ただ「悲しい」という一言でとどめたんだよね。それで「私は伝えたかった」と言っている子の気持ちもちゃんと汲めている。先生が言っていることに対して「俺のやり方が間違っていたんだ。じゃあ次はやり方を考えよう」ってたぶんなったはずなので、すごくいいシーンだなと思ったよ。
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2人がトークを展開したのは、J-WAVE(81.3FM)×「MUSIC FUN !」連動企画である、深夜の音楽座談プログラム『WOW MUSIC』。“すごい”音楽をつくるクリエイターが“WOW”と思ういい音楽とは? 毎月1人のクリエイターがマンスリープレゼンターとして登場し、ゲストとトークを繰り広げる番組だ。2月は、アヴちゃんがマンスリープレゼンターを務めている。ここでは2月25日(土)のオンエアを一部テキストで紹介する。
マーケティング本から得たヒント
アヴちゃんは田淵を「腹を割って話せる人」であると話し、アヴちゃんの自宅にて女王蜂メンバープラス田淵で餃子パーティやおでんパーティをするほどの仲なのだと紹介した。そんな田淵はプロデューサーとしても活躍しており、ふたりはプロデュース業をするうえで役に立った「インプット」について語った。
田淵:プロデュースをやってみると、何気なく昔から読んでいた本、たとえばマーケティングとかマネジメントの本とか「これは全部に通じる」と思って。
アヴちゃん:読んでたんだ。
田淵:まあ軽い感じの本で専門的なものじゃないんだけど、そういうのを読むのが好きで。勉強しようと思ってしたというよりは、単純にそういうのを読んでみたら面白かったからちょこちょこ読んでいて。そのなかで、それがバンドプロデュースだけじゃなくて、自分がステージに立たない、アーティストのプロデュースを考えてみたときにも使えることが多いなと思って。他人の考え方って、当然自分の考え方と一致するわけがないし。
アヴちゃん:そうやね。
田淵:でも、じゃあ俺の考え方を全部叩き込めばいいのかというと、それはたぶんクリエイティブじゃない。じゃあ他人は一体なにを考えて、なにをどうしたら成長する生き物なんでしょうと考えたときに、意外とマーケティングやマネジメントの本にヒントがいっぱいあって面白いなっていう。昔は「自分とそれ以外」みたいに考えていたけど。
アヴちゃん:わかるわ。
田淵:そういうわけではなくて、本当に幅広く自分以外にもいろいろなタイプがいて、当然俺が考えていることは必ずしも正解ではない。そういうのが歳をとるたびにより柔軟になってきたのもあって、そのへんの知識が反映できたりするなと思ってる。
アヴちゃん:私はしゃべることがインプットになると最近すごく思う。歳を重ねていくと、いろいろな人と話せるようになってくるやんか。同じ言語ということがすごくうれしくなるし、その奥までしゃべれるというか。逆に「これを守りたいから今こういう言葉を使ってるんだな」とか、その心象風景というか、立場とかもなんとなくわかってきたうえでね。
「バンドは最高」原体験は
「バンドは最高」と同じ想いを持つふたりは、バンドのよさについて深掘りした。アヴちゃん:バンドって最初はよくわからないよね。「ギターのコードってどうなってるの?」とか練習するまでわからないけど、やってみるとこんなに両手の中に宇宙があるんだなってすごく楽しくて。それは楽器でもなんでもそうだけど、バンドはアティチュードとしてバンと出せるし、うまくやれば自分のスタンスを貫ける。
田淵:スタンスを貫くというのは大きいテーマの気がしていて。世の中の一等賞をとるためにやっている感覚は、僕はあんまりないんだけど、バンドって自分が持っているスタンスと自分が持っている数少ない手札だけですごいことができる。そしてそれを好きな“もの好き”と出会える。あと僕とアヴちゃんの原体験だと思うけど、バンドを始めた瞬間に勝っちゃった感じがした。
アヴちゃん:わかる!
田淵:スタジオで音を出したときかもしれないし、ライブハウスで音楽を聴いたときかもしれないし、ライブでステージに立ったときかもしれない。なんか人生変わっちゃった感じみたいなのが、「勝っちゃった俺」みたいな。この感じが俺たちにとって原体験だったから、バンドじゃない形で人生を変えられた人も当然いると思うんだけど、たぶん俺たちはそこのような気がしていて。結局、女王蜂がやっていることもユニゾンがやっていることも、日本だったら「1億全員を巻き込んでやろう」というよりかは「自分が超すごいことをやっている、以上」というところで、とりあえず1回ゴールになれちゃうぐらいの無敵さみたいなものがあって。そこから先の「反応してくれる奴がいた」とか「意外と10年20年できた」みたいなのは、もうオマケみたいなもの。
アヴちゃん:なるほどね。
田淵:「その存在になれた俺」という、自分のスタンスを曲げないままやり続けられるというのがバンドのいいところなのかなと思ったりする。
「悲しい」という言葉
アヴちゃんは現在、日テレプラスで放送中の番組『0年0組‐アヴちゃんの教室‐』に出演している。アヴちゃんが学校のクラス担任に扮し、事前オーディションを経て選ばれた16人の少年たちにさまざまな課題を出して気づきなどを与えながら、新たなグループを生み出していく企画だ。アヴちゃん:今『0年0組』をやっていて心から思うけど、素直って最強やなと。そして人を素直にすることが私の特殊能力だと思っていて。人を素直にすることができれば、もうそれでよくて。素直になれる環境を死に物狂いで用意できれば。
田淵:その環境を用意するのがたぶんプロデュースで一番大事なんだと思う。それをどう作ったのかはメチャクチャ興味があって。「プロデュースとは」って自分がやっていることを書き出してみたんだけど「率先して動く」「考えさせる」「育て方を常に勉強する」「怒りと不機嫌を持ち込まない」「とにかく試す、失敗したら謝る」。『0年0組』を観ていてアヴちゃんがやっていることって、私がいま言ったこととそんなに変わらないなって思って、うれしかったの。
『0年0組』第6話では、誰かへのメッセージを140文字以内で綴る「ポエム試験」を実施し、失格者が続出する事態が発生した。田淵は番組を観る前にアヴちゃんから「6話は私がブチ切れている」と聞いていたが、番組を観た田淵はアヴちゃんが口にした言葉に驚いたという。
【アヴちゃん先生】第6話「戦慄のポエム試験」
アヴちゃん:あの回は10分で終わると思ってたんだけど、あそこまで脱落者が出ると思わなかったの。ほぼ半分ぐらいが「あちゃー」という結果になったときに、これをよしとした瞬間にすべて瓦解するなと思って。
田淵:自分が思っている方向にいかなかったときに、なにをもって「私が思っていることと違う」と表現するかが、すごく詰まっている回だったと思う。
アヴちゃん:『0年0組』が一番面白いなと思うのは、熱量としてはドラマなのよ。だけど圧倒的に異常なほどドキュメンタリーで、仕込みという仕込みはないから。
田淵:僕は6話を観て「いや、『140文字で書け』つってんだから書けよ」って最初は思うのさ。でもそのあとの生徒のインタビューで「アヴちゃんとあまり話せてないから伝えたかった」と言っていた生徒がいたのよ。「あ、俺はたぶんここを聞き逃しちゃいけないんだろうな」とすごく思ったの。やっぱりディスコミュニケーションが発生すると、それはそれでプロデュースとしてはマイナスになる。でもベタベタくっついて話を聞けばいいわけでもない。「じゃあどの距離感がいいんだっけ」というときに「あまり話せないからこの瞬間に全部言わなきゃ」と選択した生徒って本当に間違っていたんだっけってちょっと思ったのよ。ただ、あのときは「140字というルールがあるよね? 私が決めたルールはこれだよ?」って言うにとどめたじゃん。そこで脱落させるわけでもないし、メチャクチャ叱るわけでもない。ただ「悲しい」という一言でとどめたんだよね。それで「私は伝えたかった」と言っている子の気持ちもちゃんと汲めている。先生が言っていることに対して「俺のやり方が間違っていたんだ。じゃあ次はやり方を考えよう」ってたぶんなったはずなので、すごくいいシーンだなと思ったよ。
UNISON SQUARE GARDENの最新情報は、公式サイトまたは、Twitterまで。
マンスリープレゼンターとゲストとの音楽談義をお届け。音楽の「すごい!」が見つかる『WOW MUSIC』の放送は毎週土曜日の24時から。
・『MUSIC FUN !』のYouTubeページ
https://www.youtube.com/c/musicfun_jp
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番組情報
- WOW MUSIC
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毎週土曜24:00-25:00
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アヴちゃん(2月マンスリープレゼンター)