音楽、映画、エンタメ「ここだけの話」
AIが創作する世界で、アーティストはどうなっていくだろう? ものづくりの未来を考える

AIが創作する世界で、アーティストはどうなっていくだろう? ものづくりの未来を考える

現在、革新的と言われる画像生成AI。音楽・動画などのエンタメ分野、アートやデザインの領域でも、そのようなAIは生まれるのか?

そんなテーマについて語り合う、メディアアーティストの真鍋大度氏と徳井直生氏による「TOPPAN INNOVATION WORLD ERA SPECIAL TALK SESSION AIとアート、エンターテインメントの未来」と題したトークセッションの事前収録映像が10月22日、日本最大級のデジタル・クリエイティブフェス「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2022」(イノフェス)にて配信された。

画像生成AIは「進化のスピードが速過ぎる」

今注目を集める画像生成AI。長年AIの研究やAIを用いた音楽活動を続けてきた徳井氏によれば、ここ数年の画像生成AIは「進化のスピードが速過ぎる」という。そう感じる理由は何だろうか。

「2年前のクオリティと全然違います。2年前はたとえば、『黒い鳥』と入力すると、黒い鳥が生成されて喜んでいました。でも去年ぐらいから急に『ジブリ風の家』などと入力すると、生成できるようになったりしています。この進化のスピードは予想していませんでした」

真鍋氏が「来年はどうなってると思います?」と進化の未来予想を尋ねると、徳井氏は次のように続ける。

「既に今、AIで動画の生成ができるようになっています。現状再生時間も短いし、解像度も低いですが、来年ぐらいには解像度もフレームレートも、かなり上がるはずです。あとは、UI周りが進歩すると見ています。例を挙げると、『こういう絵が欲しい』という時に『いらすとや』などで検索するのではなく、テキストを入力して画像を生成してパワポで使う……といったことが当たり前になっていくのかなと。画像の検索と画像の生成の境目が曖昧になっていくように思います」
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今や質の高い画像が自動生成される時代。近い将来、そのほかの芸術領域においても、高度化したAIが導入され、人間顔負けの高いクオリティを発揮してもなんら不思議ではない。

イラストを描くことがないという徳井氏は、高性能な画像生成AI「Stable Diffusion」や「ダリ」(DALL-E)の出現に対し「危機感を感じたりはしなかった」とする一方、仮に音楽の領域で高度なAIが登場した場合「『将来どうなるんだろう』『今後どうなっていくんだろう』と思います」と多少の不安を覗かせる。

また徳井氏によれば、音楽領域においてドラムのキックを大量に生成する、クリックする度に新しいキックを生成する、キックとスネアをミックスした音を作るといった作業は既にAIで可能なのだという。「いずれAIが小節単位、曲単位で生成する未来が来るかもしれない」と示唆しつつも、「前の展開を活かして次の展開に繋げていくという起承転結を作るところとは、まだ距離がある気がします」と、AI×音楽の現在地について自説を述べる。

AIを用いた創作活動で発生する「倫理的な問題」とは

画像生成AIを利用した創作活動において、無視できないのが著作権の問題だろう。徳井氏は「難しいですよね」と言い、「たとえば『Stable Diffusion』や『ダリ』で、新海誠風の絵を生成したとしたら、アーティストがすごい時間と努力をかけて築いたスタイル・画風みたいなものを、無断で商用利用していいのかという倫理的な問題が出てきますよね」と問題提起する。

真鍋氏は、従来の画像生成AIについて「エラーっぽいものや狙って作れないもの、人間が考え付かないようなアウトプットが出てくることが面白いと思っていた」とし、「人間が努力して作るものをAIにより簡単・短時間で生成できるようになると、クリエイティビティという観点だと難しい。ネームバリューのある人は生き残れるけど、敷居も下がり、絵を描いていた人たちは淘汰されていくと思います」と私見を述べた。

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その意見に同意しつつ、徳井氏は「漫画の背景の街並みを描くみたいなところにAIを使えば、創造的に使える気がするんだけど、新しい表現を作っていくときに、ただ『Stable Diffusion』を使っているだけだと、差別化をするのは難しいと思います」と主張した。

人がAIアートの“何に”感動するか?

「AIと人間のこの先の共存についてどう思います?」

そんな真鍋氏のややアバウトな質問に対し、徳井氏は「難しいですね(笑)」と苦笑いを浮かべつつ、「AIができないことって新しいジャンルを作ることだと思うんですよ」と切り出し、以下のように持論を展開する。

「AIのアウトプットで『ちょっと違和感があるな』というポイントを、逆に面白がって表現の中に取り込んでいく姿勢が大事だと思います。AIの精度がどんどん高くなって、違和感のあるものが生まれにくくなってきている現状を踏まえた上で、AIを使った新しい表現を考えていく必要があるのではないかと。正直、こんなに早くこういった問題が出てくるとは思っていませんでしたが」

アート領域におけるAIの技術革新は著しい。それこそ、作り手である徳井氏が戸惑うほどのスピード感で進化を続けている。では、受け手の視座に立った場合、AIを使ったアート作品への“感動”とはいったいどんなところにあるのか――。真鍋氏が尋ねると、徳井氏からは次の答えが返ってきた。

「その作品を作ったアーティストの意図やメッセージ性、コンテクストに依存すると思います。AIの出力そのものに感動するかと言われれば……たしかに、技術的にはすごいと思うんですけど、それ以上の何かは感じません。自分でAIを使って作品を作っている身としては矛盾していますが、AIはあくまでアーティストや僕自身の表現を拡張するツールであって、アーティストそのものをAIに置き換えたいとは考えていません」

あくまでも中心にあるのは、アーティスト自身の作家性……。そんな自説を踏まえたうえで、徳井氏は最後にこう結ぶ。

「写真の登場で絵画が写実性から解放されてアップデートされたように、AI技術が進歩することでアーティストは新しい絵筆を得て、新しい表現の方法を考えるようになるのではないかと思います」

(構成=小島浩平)

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