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落合陽一が思う「Web3時代」を楽しく生きる方法とは? AIの現状や向き合い方も考える

落合陽一が思う「Web3時代」を楽しく生きる方法とは? AIの現状や向き合い方も考える

J-WAVEが2022年10月21日(金)からの3日間で開催した、テクノロジーと音楽の祭典「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2022」(通称イノフェス)。

講演の一つである「TOPPAN INNOVATION WORLD ERA SPECIAL TALK SESSION Web3の真実~WELCOME TO NEW ERA~」と題したトークを、ここではテキストで紹介。メディアアーティスト落合陽一、クリエティブディレクター小橋賢児、PIVOT代表 佐々木紀彦が、「Web3時代」=「新時代」と捉えて、経済、社会、テクノロジーの近未来図を描く。

(J-WAVE NEWS編集部)
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ゲームはWeb3・メタバースの入口

小橋:いまWeb3などテクノロジーの黎明期を迎えているわけですけど、おふたりはWeb 3をポジティブに捉えているという前提でよいのでしょうか?

落合:超ポジティブですよ。2018年のビットコイン・バブルがはじけた直後ぐらいに僕たちが書いたWeb 3に関する論文があるんですけど、「ミックスリアリティのメタバースをブロックチェーン管理するのが普通になるから、とりあえずペーパーに書いておくか」っていうノリで書きました。バズワードを入れよう!と思って書いたわけではないんですけど、メタバース、ブロックチェーン、ミックスリアリティって、今言われているバズワードしか入っていない(笑)。

小橋:ということは、落合さんは2018年時点で、メタバース、ブロックチェーンが来ると思っていたってことですよね。

落合:それはそうです、研究者ですから。

佐々木:僕は、正直メタバースはあまり詳しくないんですけど、オンラインゲームをやっている友人に聞いても、メタバースを推している人はまだそんなにいないって聞くんですけど……そのあたり、どうなんですか?
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小橋:どこまでがメタバースなのかって言えば、ゲームの中は、結構メタバースなんじゃないですか?

佐々木:確かに。

小橋:ゲームの「フォートナイト」ってご存じです?若者に人気のゲームってことで、僕もちょっとやってみたんです。今までのゲームって、自分のタイミングでゲームをクリアして、自分次第でゴールに辿り着けたじゃないですか。でもフォートナイトは、オンラインとリアルの掛け合わせなので、定刻にならないとフェスが始まらないという超リアルな部分もあったりして、すごく新鮮でした。

Web 3は原始仏教で、メタバースは極楽浄土

落合:皆さん、この方ご存じですか? 空也上人です。
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落合:空也上人が南無阿弥陀仏を唱えると、「口から念仏が形を作って出てくる」ということに気を取られすぎなんですけど、この人は、左手に鹿の角、そして右手に銅鑼を叩くバチを持っていることに気づいてないですよね。空也上人は、基本的には DJです。南無阿弥陀仏って言いながら、ガンガン銅鑼を鳴らしながら歩いて、「これやるとメタバースに行ける」って言っていたので、基本的にWeb 3ですよね。極楽浄土はある意味メタバースです(笑)。

小橋:テクノロジーが追いついてなかったから分からなかったけれど、昔からWeb 3ってものはあったと。

落合:ええ、ほぼそうです。原始仏教はWeb 3で、ものすごくプリミティブなんです。

テクノロジーで誰でもクリエイターになれる時代

落合:これは、さっきAIに作らせた動画です。ディープラーニング・ディフュージョンモデルでコードを入れるだけで、AIがこんな動画を1秒でつくってくれるんです。昔は、プログラミングでコードが書けないとできなかったことが、最近はコードが書けなくても実行できるマシンを自分のドライブに入れて、リンクを送ればAIが勝手に書いてくれるようになりました。
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小橋:今までプログラミングとかコード書けないとできなかったものが、キーワードを入れるだけでできちゃう世界がもう来ているってことですよね。

佐々木:キーワードで絵が描けるとしたら、人による違いってどう出るんですか?キーワードって誰でも言えるじゃないですか。

落合:キーワードが同じだったらほぼ同じですね。でも、丁寧にキーワードを記述できれば、いい絵とかいい曲が書けますよ。

佐々木:キーワードをどう表現するかで、その人の個性がでるってことですか?

落合:例えば、このカブトムシの絵は、「この夏、森で捕まえたカブトムシ (Beetle, I got in the forest this summer)」 っていうキーワードを元にAIが書いたんですけど、ワードを変えればこれがメスになったり、クワガタになったりとか、キーワードで違いがでてきます。
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小橋:これはネットで拾ってきた写真じゃなくて、AIが生成した絵ですよね。ってことはこの絵自体の著作権ってどうなるんですか?

落合:このレベルなら、パブリック・ドメインでしょうね。

AIが生成したものをストーリーにするセンスが大事

小橋:キーワードでCGを書くのが当たり前になってくると、それをどう組み合わせてストーリーにしていくかっていう、ストーリーを描くセンスの問題の方が重要になってくるって、以前、落合さんがおっしゃっていたと思うんですけど。
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落合:そうそう、もう速度の問題なんですよ。29秒の曲をAIが作曲するのに9秒しかかからないんです。何が言いたいかというと、僕たちは1年かけて論文書いたりするんですけど、もし9秒で論文が生成されるとするじゃないですか。で、9秒でつくられた論文を申請したら、ネイチャー誌に通ってしまったりするわけですよ。営業のパワポ資料も音楽もAIがそれなりのクオリティーのものをすごいスピードで生成してくる時代になっているんです。AIは、そのへんの作曲家よりも良い曲を出してきますよ。

佐々木:そうすると人は、どの音楽を聴くんでしょうね。人がつくったものとAIがつくったもの全部の中から良いものを聴くんですかね。

落合:もう良いとか悪いとか、誰がつくったとか関係なく音楽を聴くんでしょうね。

小橋:落合さんは、今までコードを書くとか猛勉強して技術を取得してきている訳じゃないですか。

落合:僕は、今日は木を彫らなきゃいけないとか、DJしなきゃとか、ヌード撮らなきゃいけないとか、やることがいっぱいあるので、そのための技術を毎回取得しなければいけないんですよ。DJの練習とかして。でもその習得した技術がテクノロジーによって全部吹っ飛ぶのであれば、それは僕にとっては幸せでしかないです。

小橋:技術を磨いて1つのよい作品を生み出すより、既にあるものを使ってよいストーリーを描くセンスの方が重要って話に関して、メディア業界にいる佐々木さんはどう思われますか?

佐々木:僕が関わっているのはエンタメではないので、まだ影響は少ないと思うんですけど、エンタメに近いところだったら影響は大きいでしょうね。小橋さんはメタバースの空間プロデュースをされてるじゃないですか、イベントにも影響あるんですか?
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小橋:イベントへの影響は、逆に言うとコストを下げながら新しいことを試せる部分はあるんですけど、日本だとAIがつくったものを使うのはダサいみたいな、それは本物じゃないみたいな空気がある気がします。ただ、海外はそんなの関係なく、ガンガンAIが生成したもの使っている。むしろどれだけ良いストーリーを描けるかのセンスの方が重要視されているので、そこを正々堂々とAIが生成したものとかを使えるようなイベントが日本でどれだけ増えていくかで、日本は世界と並べるかどうかが決まる気がします。

フェア・ユースがない日本の音楽著作権

落合:音楽著作権の問題は気になりますけどね。1度も聴いたことのない2つの曲のボーカル部分を消して、その2つの曲のトラックを瞬時に滑らかに合わせられることがテクノロジーで可能になっているんです。今まではDJがヘッドフォンで音を聴いて、耳でトラックを合わせていた訳ですよ。そうやってボーカルを消してトラックを合わせて聴いていると、原版が何か分からなくなるんですよ。「著作権って何?」っていう。今まで職人が職人芸って言っていたものはある程度、機械学習できるようになっちゃったんで、あとはキレの良さみたいなものになってきましたよね。

佐々木:著作権の議論って、いまどうなっているんですか?

落合:日本の現行法から定めようとすると、無理だと思います。著作権でフェア・ユースを導入しないと。日本ってフェア・ユースの考え方がないじゃないですか。

佐々木:海外だと、どんな感じなんですか?

落合:フェア・ユースがある場合は、「他者の権利は侵害しているが、両者にとって成立していれば問題ない」っていう扱いなんですよ。それで仮に、どちらかが訴えたとすると「当事者同士の訴訟で解決できる」ようになっている。例えば、僕が、佐々木さんが著作権を持っている音をミックスして、佐々木さんの認知度が上がる分には問題ないじゃないですか。けれど、佐々木さんが原版の著作権があるからと僕を訴えてくる場合とそうでない場合がありますよね。訴えてきた場合、日本では、あとは当事者同士の訴訟で解決できるようになっていない。実態に意味がないから、根本を解決しないと前に進まないかもしれない。
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Web 3時代をどう生きていけばよいのか?

佐々木:さっきの落合さんの話で、音楽やデザイン、記事、映像制作もAIで自動生成されるって話だったけれど、じゃあメディアにいるクリエイターとかプロデューサーってこの先どうすればいいんですかね?

落合:毎日楽しく自動化しながら仕事をすればいいんじゃないですか? いままで、職人か作家になるしか生きてく方法はなかったけれど、職人のほうが全滅したから、全員作家になるしかないんですよ(笑)。

小橋:これある意味、ルネサンスの再来みたいな感じですか?

落合:むしろ逆かもしれない。つまり、職人性がなくなってきちゃうから。

小橋:そうなってきたときに人間は今後、何を楽しんでき生きていけばいいんですかね?

落合:毎日楽しく、新しいことが起こることに素晴らしさを感じて生きて、最後は死ねばいいんだと思います。毎日が楽しいことを実感して、「今日も感動した」って言って生きる(笑)。

小橋:人間は何かを生み出すことに人生の時間を費やすより、もっと原始的な体験をしていくことに時間を費やした方がいいんですかね。

落合:つくることそれ自体も感動的になりますけれどね。

小橋:クリエイターって、デザイナーとか監督とかってイメージですけど、ある意味、どの分野でもみんながクリエイターになれるってことですよね。

佐々木:人は、そんなに必要なくなるんですかね……。

落合:これ、僕がつくった日本科学未来館の常設展示なんですけど。
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【常設展示のメッセージ】
自分の気持ちを音楽にして伝えられるようになる、色んな曲を自分好みに変えたりできる、それを公開して他の人に聴いてもらえる、人工知能(AI)も作曲できる、しかし人工知能の曲は価値が低いという先入観から中々聴いてもらえない。すると、人工知能の曲をより魅力的に演出する人が現れる。そういう楽しみ方もあるのか、作者が人か機械かなんて、どうでもいいじゃないか! 音楽に感動してもらう方法も、いろいろ登場する


落合:だから、大丈夫です、何とかなります。笑

(構成=反中恵理香)

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