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「AI作曲サービス」に音楽家は何を感じた? “ガチャ的な要素”が生み出す面白さを、タカノシンヤが語る

「AI作曲サービス」に音楽家は何を感じた? “ガチャ的な要素”が生み出す面白さを、タカノシンヤが語る

音楽ユニット「Frasco」のコンポーザーとして作詞・作曲・アレンジを手がけるタカノシンヤ。J-WAVEでは『GRAND MARQUEE』(毎週月~木 16:00~19:00)のナビゲーターを務めるなど、マルチに活動している。

そんなタカノへのインタビューが、AI作曲サービス「FIMMIGRM™」公式サイトに掲載中だ。同サービスは、agehaspringsの代表で音楽プロデューサーの玉井健二がプロデュース。ヒットソングの特徴を大量に学習し、抽出された特徴にランダムなベクトルを加えることで、全く新しいさまざまなパターンのメロディやコード進行を無限に生成できるというもの。

インタビューでは、タカノが音楽活動を本格化させた異色の経歴や、ものづくりとテクノロジーへの考え方、そして「FIMMIGRM™」を実際に使った感想を語っている。

・「FIMMIGRM™」サイト内のインタビュー
https://fimmigrm.studio.site/blog/20230601int_takanoshinya

J-WAVE NEWSでは、該当インタビューを転載。さらに、アートや万葉集から着想を得ることもあるというタカノの楽曲制作に迫ったトークを特別に掲載する。取材と執筆は、『GRAND MARQUEE』にレギュラーリポーターとして出演する近視のサエ子が務めた。(J-WAVE NEWS編集部)




「ぎりぎりこんにちわ、タカノシンヤです。」 首都圏の夕方、毎日ラジオから聴こえる声の主はタカノシンヤさん。J-WAVE(81.3FM) でナビゲーターを務め、音楽家としても活躍中の彼は波乱万丈の経歴を持つ。農業大学を卒業後は教員に、紆余曲折を経て面白法人カヤックに就職。会社員時代はコピーライターやプランナーとして活躍した。音楽を本格的に始めたのは社会人になってからだという。そんなタカノシンヤさんの独特な制作にまつわるお話と、「FIMMIGRM™」はじめAIとの共作についてお話をうかがった。
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タカノシンヤ

作曲を始めたのは社会人になってから。初めて作った曲が坂本龍一さんの番組で優秀作品になり、音楽家人生がスタートした。

──ラジオナビゲーターとしてご活躍中のタカノさんですが、「Frasco」では音楽活動をされています。ご自分で作曲を始めたのは何歳頃からでしょうか。

タカノ: 音楽活動もバリバリしております。「Frasco」というエレクトロユニットのトラックメイキング、作詞作曲をしつつ、「Coldhot」という三人組のダンスミュージックを作っているチームのプロデューサーもしています。チームの一員として、そこでもアレンジとトラックメイクをしています。 あとは作家として歌詞提供や音源制作の仕事もしています。
学生時代はバンドでベースを弾いていました。でも作詞作曲を始めたのは社会人になってからです。教員を辞めたあと2年間くらい海外をフラフラしてたんですが、帰国して会社員になった直後くらい、飲み会で峰さん(後に「Frasco」を組む相手)と出会ったのがきっかけです。彼女がGarageBandで作った曲を聴かせてもらって、そのクオリティに驚きました。やり方を教えてもらって、そこから曲作りにハマりました。それが2015年の5月でした。

──作曲を始めたのは遅い方だったんですね。バンドではなく、DTMがきっかけだったと。

タカノ: そもそも社会人なので時間が無かったんです。だからバンドではなくDTMという手段を取ったという。時間が無い分、テクノロジーに頼ろうと。 峰さんから「とりあえずなんか1曲作ってみてよ」とムチャぶりされたので、スマホのGarageBandでなんとなく打ち込んでみたらすごく楽しくて。スマホってどこでも使えるじゃないですか。だから当時勤めていた会社の通勤時間、往復2時間で、一年でトータル100曲ぐらい作ったんですよ。めちゃくちゃのめり込んでいました。

──当初はコード理論も分からないまま、GarageBandのスマートコード機能を駆使して打ち込んでいたとのこと。YouTubeを見て参考にしながら、我流で100曲作られたそうですね。

タカノ:最初、峰さんに「1曲作ってみて」と言われた曲を、照れ隠しで「5分ぐらいで歌詞書くね」と言って、なんとなく言葉を当て嵌めてみたんです。峰さんも気に入ってくれたので本格的にレコーディングしたら、いい感じになった。友達に聴かせたら「すごくいいからラジオに送ってみなよ」と言われたんです。それでJ-WAVEの坂本龍一さんの番組に送ったら、まさかの優秀作品として取り上げてくださいました。そこから自信がついて、「じゃあちょっとこれでやっていこう」みたいな感じで音楽家人生がスタートしました。

テクノロジーはガンガン使っていく派

──タカノさんのように、社会人になってから本格的に音楽家人生がスタートするパターンは稀有だと思います。

タカノ:運が良かった(笑)。あとは、本当はずっと作曲をやりたかったんですが、自分の知識と技術ではできないと思っていたんです。ところがスマホの発展のおかげで、というかテクノロジーの発展のおかげで、自分がやりたいことが簡単にできるようになったというのが大きいですね。だから僕はテクノロジーはガンガン使っていく派です。

──AIが曲をジェネレートする「FIMMIGRM™」も、テクノロジーが発展して生まれたものです。AIとまではいかずとも、ここ10年、20年の間にサンプリングも簡単にできる時代になってきました。人によっては、こういったテクノロジーを活用することにネガティブな印象を抱く方もいらっしゃいます。

タカノ:僕はAIもサンプリングも全然アリだと思います。もちろん、ロイヤリティはクリアした状態、というのが前提ですが、そこにオリジナリティがあればいいと思います。僕の場合、サンプリングをする時はコーヒーをドリップする感覚ですかね。 豆のまま使わない。ちゃんと挽いて、お湯をかけて、ミルクも入れて……丁寧にアウトプットします。そうすることで個性が乗っかるし、それがサンプリング元に対しての敬意だと思います。

──「FIMMIGRM™」を使用することは「AIとの共作」といえると思いますが、自分以外、しかも人間ではくAIと共作することについてはどうお考えでしょうか。

タカノ:料理で例えると、ウェイパーや味塩を使うのと同じじゃないかな。冷凍餃子を買ってきてそのままチンして、「はい、僕が作った餃子です」というと語弊があると思うんです。 でも、冷凍餃子の上にパクチーをまぶして、酢と胡椒と、なんだろう……鷹の爪とか入れたり。そうすると自分のアレンジが加わっていますよね。これはオリジナル料理になる。そんな感じで、AIも素材のひとつだと思います。東南アジアとかに行くと、日本の即席麺をバキバキに割ってカレー粉と混ぜ合わせて焼きそばみたいにして屋台に並んでたりするじゃないですか。あれなんて、もう完全にオリジナル料理だよね。……うーん、なんかもっといい例えがありそうな気がするんだよな(笑)。

──とてもわかりやすい例えですよ(笑)。

タカノ:そもそも僕はチームで音楽を作るので。ひとりで作詞作曲もできるけど、ボーカルは誰かに依頼しなきゃならないし、ミックスやマスタリングはエンジニアさんがいないとまったくできない。だからAIもチームのひとりですね。

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社会人になってから音楽家人生スタートしたタカノシンヤ

「FIMMIGRM™」を使ってみたら「お皿を二枚ぐらい洗った段階で生成されてて……もう終わったの!?」

──実際に「FIMMIGRM™」を使われてみていかがでしたか? どの機能が魅力的でしたか?

タカノ:やっぱり「ワンクリックでトラック生成」というのがいいですよね。めっちゃ便利です。ジャンルもざっくり選べるし、UIが分かりやすくてとてつもなく操作が簡単。小学生でも使えそう。

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UI画像

あとなんと言ってもスピーディーですよね。この前、食器を洗っている間にトラック生成してもらおうと思ったら、お皿を二枚ぐらい洗った段階でもう生成されていて。「AI仕事はや! もう終わったの!?」 って(笑)。MIDI生成機能も助かりますね。自分の持っている音色が使える。リズムだったりメロディだったり、「もうちょっとこうしたい」という部分を自分でも調整できるのがいいですね。

AIのガチャ的な要素は、「ある意味、無意味」で良い。

──これから挑戦したいことがありましたら教えていただけますか。

タカノ:「意味」という世界を飛び越えたいです。お仕事で作詞提供となると、すごく「意味」を深く突き詰めなきゃならないんです。その反動なのかもしれませんが、自分の作品をそこから解放してみたいです。「意味」から解放されて、文脈も分断して。非連続的な作品をもっと作りたいです。例えば、いろんな人の寝言を収集して、寝言から歌詞を書くとか。誰かから偶然に出た何かをコラージュして作品を作るとか。そういったことをやりたいですね。ひとつひとつに意味は無いものの集合でも、「日本中の人たちの寝言から出たものを繋ぎ合わせたものなんだよ」ということに「意味」ができる。それも面白い。 AIもこのガチャ的な要素があるから、「ある意味、無意味」でいいですよね。今までも「意味」の無い歌詞を書いてきたけれど、結局はなんらかの意味があるんですよ。「本当に意味が分からない」ということはどうすればできるのか、挑戦したいです。

アート、万葉集…ものづくりの着想を得る作品は?

──曲を作るときに参考にするものはありますか?

タカノ: 絵を参考にして作ったりします。Frascoの楽曲に「イミテーションクラブ」というカニカマをひたすら吸い続ける歌があるんですけど、ムンクの「生命のダンス」を参考にしています。

──「ムンクの叫び」で有名なエドヴァルド・ムンクの絵画ですね。水辺の草原のような場所でペアになって踊っている男女が複数。それを見ている女性もいますね。水には月なのか、太陽なのか、白くて丸いものが反射しているように見えます。

タカノ: これってエロスとタナトスなんですよ(※諸説あり)。この中央にいる女性が着ている赤いドレスが性の象徴、この水面に映ってる天体は男性器に見えます。この絵に描かれている「生と死」をテーマにして「イミテーションクラブ」という曲ができました。カニカマを吸うって、ちょっと抽象的な行為じゃないですか。

──カニカマを吸う……言われてみると、エロティックですね。

タカノ:そう、エロティックです。最後に「カニカマを投げる」という歌詞があるんですが、そこは死を暗示して書きました。

──たしかに、「生命のダンス」で描かれている中央にいる女性がカニカマに見えてきました。

タカノ:そうでしょう(笑)。こんなふうに、たまに絵からインスパイアを受けて曲を作ることが多いですね。Helsinki Lambda Clubの「眠ったふりして」のリミックスをFrascoで出したんですけど、あの時は最初にルネ・マグリットの絵を思い浮かべました。

──ルネ・マグリットはシュルレアリスムの画家ですね。有名なところだとダリやミロなど、独特の静かさを持っているイメージです。

タカノ:ルネ・マグリット、サルバドール・ダリ……そういう作品をリミックスする前にいろいろ見ました。誰もいない街だったり、現実と非現実がミックスされている不思議さ。 ちょっとした寂しさみたいなものを絵から抽出しました。

──Frascoの楽曲は不思議なものが多いのですが、発想の元を聞くとなるほどですね。Twitterで万葉集に感激されているのを拝見しましたが……。

タカノ:万葉集めっちゃいいんですよ。高市黒人(たけちのくろひと)とかね、すげえいい。 繊細な短歌を書くんですよね。妄想の余白も含めて、万葉集ってリズムがあるじゃないですか。ダブルミーニングもバンバン使うし、めちゃくちゃ作詞の技法にすごい似てる。 すごく参考になります。 時代的には1000年以上前ですから、あたりまえですけどスマホもなかったし、SNSもなかったし、会いたい人になかなか会えない。連絡したくてもできない。今よりも簡単にコミュニケーションを取れない。そういう制約があるからこそ、ひとりの時にいろんなことを想像してしまうんだろうな。好きな人のことを思ったり、歌にその熱い思いを込めて読み返して浸ったり。

今って、YouTube、映画、音楽……人を楽しませるために全力で作ったコンテンツが溢れてますよね。でも当時はそういうコンテンツないから。短歌に向き合う気持ちが現代人からは想像がつかないレベルなんじゃないかな。

──今ならコンテンツからエンタテイメントを摂取するけれど、昔は自分で書いた短歌がエンタテイメントだったと。

タカノ:そうそう。真剣に誰かのことを想う、その切ない情景を全力で言葉にする。例えばですけど、好きな人のことを考えているときに、ちょうど赤い船が通ったとかね。その情景を繊細なタッチで言葉にして。そんなこと現代人はしないじゃないですか。もっと簡単に、YouTubeを見て笑ったり、映画見て泣いたりできますから。

例えば、こういうこう湯気ひとつとっても(ホットコーヒーから出ている湯気を眺めながら)この色の、ここの部分が何かに似てて……それがあの時の切ない気持ちとリンクする……みたいな繊細なところまで感情を持っていける人は(現代では)少ないんじゃないかな。だから、1000年以上前の人たちはすごいんですよ。素晴らしい表現がすごく多い。今のこの些細な心を忘れないようにしようという強い気持ちがあるんだと思う。

──カメラもないですもんね。今見た景色と感情をどれだけ強く心に焼き付けられるか。

タカノ:「あなたのことを、一人で考えていたら、窓の外からふわっと夜風が入ってきました。こんな偶然あるのかしら。これはあなただったのかしら。」っていう、確か読み人知らずの短歌があるんですけど。今の人は、風が入ってきてあなただったのかしらなんて、そんなこと思わないじゃん。思います? めちゃくちゃ熱くないですか? 万葉集すげえ(笑)。

──現代人でも、例えば私は先日とある人から来たLINEを「この言葉はどんな意味なんだろう」と多角的に妄想して何度も読み返したんですね。そういう妄想をしちゃうことは多いと思いますが、万葉集はそういう妄想の些細さが、解像度が、今とは比べ物にならないほど高い。

タカノ:そうなんです。文字に限りがあるぶん余白もあるしね。何回も何回も読んで、その余白を妄想する。いいなあ、いいですねえ(笑)。

(取材・文:近視のサエ子)

■タカノシンヤプロフィール
作詞・作曲・アレンジ、企画等を担当。Twitterの「すぃんや」アカウントではバズツイートを連発し最高でテキストツイートのいいね数が日本歴代30位以内にランクイン。ライブではプレゼンのようなスタイルでMCを行う。面白法人カヤックにて広告の企画やコピーライティングも。持ち前の明るさで一人コントもたまに行う。

■FIMMIGRM™(フィミグラム)とは
オリジナル曲をAIで無限に生成する楽曲作成サービス。ヒットソングの特徴を大量に学習し、抽出された特徴にランダムなベクトルを加えることで、全く新しいさまざまなパターンのメロディやコード進行を無限に生成することが可能。学習データの対象となる楽曲は、株式会社TMIKの代表であり、数々のヒット曲を創出し続ける音楽クリエイター集団agehasprings代表・音楽プロデューサー玉井健二が選定・プロデュースしている。

【番組概要】
放送局:J-WAVE(81.3FM)
放送日時:毎週月~木曜 16:00~18:50
番組名:GRAND MARQUEE
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann
番組サイト:https://www.j-wave.co.jp/original/grandmarquee/
番組ツイッター:https://twitter.com/GRANDMARQUEE813
番組インスタグラム:https://www.instagram.com/grandmarquee813/
番組LINEアカウント:https://lin.ee/BhuLatz
番組ハッシュタグ:#マーキー813

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番組情報
GRAND MARQUEE
月・火・水・木曜
16:00-19:00